相続登記や農地、空き家など不動産の遺産分割相談に多数の実績「相続問題は早めの対策や対応が重要です」
弁護士法人萩原総合法律事務所常総支所の板垣真吾弁護士に、相続問題でよくある相談や大切なことについて聞きました。茨城県筑西市、常総市、ひたちなか市の3カ所に事務所を構え、地域の方々が弁護士にアクセスしやすい環境を目指している同事務所。相続問題を弁護士に依頼する1番のメリットは、時間的、精神的な負担が軽減される点だといいます。(茨城県弁護士会所属)
インタビュー
綺麗な遺産分割が難しい不動産、長年登記が止まっているケースも
事務所の理念を教えてください。
2009年に当事務所の代表を務める萩原慎二が開設し、現在までで茨城県筑西市、常総市、ひたちなか市の3カ所に事務所を展開しています。
事務所の理念は「一番になる」「結び導く」「創り出す」です。時代が変化する中で生き残るには、唯一無二の存在であることが大切です。茨城県内で最大規模の拠点数、弁護士数となることを目標に掲げています。
地域の方にとってかけがえのない存在になることも使命だと考えています。現時点では常総市内にある法律事務所は当事務所のみとなっていますが、弁護士がいない地域に拠点を出して、誰もが弁護士にアクセスしやすくすることも目指しています。地元の方々に「あの事務所に行けば法律問題はどうにかなる」と思っていただけるよう、日々、問題の解決に取り組んでいます。
相続案件に注力している理由を教えてください。
茨城県は古くからの農家が多い地域で、相続に潜在的な問題を抱えています。
まず、相続財産に不動産が入っていることが多く、綺麗に分けるのが難しいために、相続人間でトラブルになる可能性が高いです。また、農地は簡単には売却ができません。そもそも農家を継ぐのか、農地を分けるならどうするのかなど、問題が深刻化しやすいです。
また、昔からの慣習で、長男が財産も責任も全て相続してきたというご家庭が多くあります。その場合、何世代も前から土地の名義変更がされず、登記が止まっていることもあります。いざ現管理人が相続人となり土地の登記をしようとすると、何世代にも前にさかのぼって、遠い親戚と遺産分割協議をしなければいけません。
相続問題は、時間がたてば立つほど解決が難しくなってしまいます。登記のみであれば司法書士など他の士業でも対応できますが、他の相続人との交渉等が必要になるケースでは弁護士のサポートが必要になります。
最も多い相談は遺産分割協議、農地や空き家はどうすべき?
相続についてよくある相談内容を教えてください。
遺産分割協議についての相談が一番多いです。すでに争いになっているケースよりも、どのように対応するのが良いのか、相続の方向性自体についてご相談される方が多いです。
最近よくあるご相談は、相続登記が古いままで、多数の相続人の合意を得なければ登記できないという状況になっているケースです。すでに戸籍を集めて相続人を把握した段階で依頼される場合には、他の相続人とお話し合いをして遺産分割の協議をまとめる形でお受けします。
まだ相続人を把握していないケースでは、人数や状況によっては弁護士費用が大きくかかってきますので、費用対効果をお示しした上で、実際にどう対応されるかを検討していただきます。調べてみたところ、他の相続人の中で高齢者や認知症になってしまっている方がいる、相続人が行方不明で親族の誰も居場所がわからない、ということもあります。
農地相続についてのご相談もあります。農地を持っているものの農業をしていない場合は、通常、近隣の農地を所有している方に購入していただくか、無償譲渡することが多いです。ただ、最近は「自分の代で農家を辞めようと思っている」という近隣の方も多いので、売れないこともあります。そうした場合、農地転用できるのかも含めて検討していきます。
不動産は綺麗に遺産分割することが難しいです。不動産はあるものの相続人の誰かが既に住んでいる、現預金はあまりないといったケースもあります。他の相続人には現金だけでご納得いただくか、不動産の評価額は何を基準にするか、譲歩できるところは譲歩し金額面での落とし所を探っていきます。
相続放棄では「相続放棄したいが空き家を放置することになってしまう。近隣住民から苦情が来ると困るがどうしたらいいか」という相談があります。
一定の場合には相続放棄後も空き家の管理義務を負ってしまうことや、最終的に相続人が誰もいなくなった場合には相続財産清算人を選任する必要があることなどをご説明しています。
これまで取り組んできた相続案件の中で、印象に残っているものはありますか。
兄弟間で遺留分について激しく争った事案がありました。調停で和解はできたものの、遺言書を工夫したり、生前に財産を調整していたりすれば、争いを防げたのではないかと考えさせられるものでした。
相続の生前対策については「もう少し先でいいだろう」とお考えの方が多く、当事務所への相続に関する相談割合としてはまだ少ないですが、紛争を防ぐことができますので積極的に対策していただいた方が良いと思っています。遺言書を書いている方もいらっしゃいますが、遺留分など法的な問題まで考慮して作っている方はなかなかいません。
相続で争いが起こるのに、財産の多い少ないは関係ありません。少なければ少ないで「もっとあったはずだ」という争いになることもあります。私の印象では、亡くなられた方と相続人との間で意思疎通ができていない場合や、相続財産が綺麗にスパッと分けられず、どなたかに不公平感が残るようなケースで争いが起きやすいと感じています。
相続案件を手掛ける上で心がけていることを教えてください。
徹底的に争うことはできるだけ避けるようにしています。相続の特徴として、相続人同士はご兄弟や親子だったり、遠縁であったとしても親戚関係があったりするものです。相続問題が終わった後も関係が続いていきますので、相続問題で関係が破綻するのはよくないと感じています。お互いが納得できるところで譲歩しあい和解ができれば、依頼者にとってもメリットが大きいと思います。
基本的には依頼者の希望に沿った形で請求をしますが、要求自体が明らかに過剰な場合にはなかなか難しい旨を率直にご説明します。譲歩が必要だと考えれば、メリットとデメリットを示した上で和解をご提案することもあります。
早くて正確な処理は弁護士にお任せ、他士業との連携で不動産調査も対応可能
相続について弁護士に相談するメリットを教えてください。
一つ目は、時間的精神的な負担が軽減される点です。相続人や相続財産を調査するには、戸籍などの資料収集に時間や手間がかかります。特に、お勤めの方ですと一人でやるのは難しいので、弁護士に任せていただければ、早くて正確な処理が可能です。
遺産分割協議を進める場合でも、兄弟姉妹だけであればそんなに大変ではありませんが、遠方にいるよく知らない親戚とお話をするとなると、かなり労力が大きいものになります。連絡窓口を弁護士に一本化していただくことで、精神的な負担が軽くなります。
二つ目は、トラブルの発生や長期化を避けられる可能性が高いことです。弁護士に生前対策をご相談いただければ、トラブル回避の対策を提示できます。相続後にトラブルが発生してしまった場合でも、弁護士が間に入って冷静に正確な事情説明をしたり話し合いを進めたりすることで、比較的早期に、かつ、円満に解決することが可能になります。
先生の事務所ならではの強みや、他の事務所との違いはどんなところでしょうか。
地域の周辺の司法書士や不動産業者との連携体制がありますので、必要に応じて他の士業をご紹介したり、不動産の評価額について調査することも可能です。不動産の査定売却についても円滑に処理できます。
また、弁護士法人として受任する体制をとっていますので、個人事務所と違い長期的な依頼にも対応できます。元気なうちに遺言書を作成していただき、当事務所で保管して、当事務所の弁護士が遺言執行者として遺産分割を行うといった10〜20年のスパンでご依頼いただくことも可能です。
相続のトラブルを抱えて弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
相続問題は早めの対策や対応が重要です。当事者同士で争いがあってもなくても、手をつけるのが遅くなるほど処理が難しくなります。相続登記が何カ月か遅れるだけで、その間に他の相続人が亡くなってしまって、さらに相続人が増えるということも実際にあります。
調停や訴訟になっていればもちろんですが、他の相続人と交渉が必要となると、基本的には弁護士しか対応ができません。また、生前対策となると税理士にご相談される方も多いと思いますが、実際に紛争化した場合の解決の流れやよくあるトラブルについては、弁護士の方が理解していますので、紛争自体を防止することについてもご相談いただくと良いと思います。
相続について考える機会があれば、ぜひ弁護士にご相談ください。