弁護士法人サイオン総合法律事務所福岡支店

沖縄の事務所で経験を積み、地元福岡で開業

弁護士登録から現在の事務所に入所するまでの経緯を教えてください。

琉球大学法科大学院を卒業し、司法試験に合格した後、司法修習を経て2019年に沖縄県のサイオン総合法律事務所に入所しました。学生時代から慣れ親しんだ沖縄での仕事は非常にやりがいがあり、多くの経験を積むことができました。しかし、いつかは地元に戻って仕事をしたいとも考えていたため、2024年4月に出身地である福岡市城南区に事務所を開設しました。

独立を考えた際、第二の故郷ともいえる沖縄との絆を大切にしたいという思いが強くありました。そこで、サイオン総合法律事務所の福岡支店という形態をとらせていただくことにしました。

現在も沖縄の本店とは緊密に連絡を取り合っています。案件によっては共同で受任するケースもあり、常に連携を図りながら業務を進めています。

事務所の理念としてどのようなことを掲げていますか。

沖縄の本店が掲げている「地域に根ざした法律事務所」という理念を、福岡支店でも大切にしています。私の地元でもある城南区を中心に地域に密着した法律事務所でありたいと考えています。

沖縄での勤務を通じて、地域に対する理解があることが、紛争解決において非常に重要だと感じました。福岡でも変わらず、地域の方々との関係性を大切にしていきたいと思っています。

もう一つ、「対話を大事にすること」も理念として掲げています。依頼者が何を求めているのか、何が最適な解決策なのかは、対話を通じて初めて見えてきます。単なる会話にとどまらず、依頼者の考えを深く理解するために傾聴し、法律的な考え方を丁寧に説明することが、真の問題解決に繋がると考えています。

相続分野に注力する理由を教えてください。

理由は主に2つあります。

1つ目は、相続分野は非常に専門性が高く、弁護士としてのやりがいを強く感じるからです。例えば、寄与分の問題があります。親の世話をしたからといって、それだけで当然に他の兄弟よりも多くの財産を相続できるわけではありません。親の世話をしたという事実だけでなく、生前の健康状態や生活状況、介護等の具体的な内容など詳しく精査する必要があります。

相続に関しては、資料の収集や論理的な組み立てが不可欠で、高度な専門性が求められる論点が多くあります。このような複雑な問題に対して解決策を見出していくプロセスにやりがいを感じています。

2つ目の理由は、高齢社会における社会的ニーズの高まりです。特に私たちの事務所がある六本松より南の地域は、高齢者が多い地域でありながら弁護士事務所が少ないのです。相続分野に力を注ぐことは、こうした地域のニーズに応え、地元への貢献にもなると考えています。

対話を重ねることが最適な解決に繋がる

相続問題においては、どのような相談が寄せられますか。

よくあるのは、親が亡くなって遺産分割をする際に兄弟で意見が対立してしまい、どう進めれば良いか困っているという相談です。また、「何から始めたらいいのかわからない」という相談も少なくありません。

相続に関する相談は、遺産分割だけではありません。生前の相談であれば「自分の意思をしっかりと残しておきたい」という希望から、遺言書作成の相談に来る方もいます。

さらに、相続放棄に関する相談もあります。親が亡くなった後、書類の中に借金の通知書が混ざっており、「どう対応したら良いのか」といった相談も寄せられます。

遺産分割で揉めているケースではどのような方針で解決を目指すのですか。

依頼者としっかりと対話を重ね、依頼者が置かれている状況や、法律上の見通しをきちんと理解してもらうことが重要だと考えています。事務所の理念でもある、依頼者との対話を大切にし、最適な解決策を共に考えることが基本です。

まずは、依頼者の要望が認められるか見通しをしっかりと検討します。ときには、依頼者の一定の譲歩が解決の糸口になると見込まれる場合もあり、その場合には見通しを丁寧に説明し、どのようにすることが依頼者にとって最適であるか一緒に考えます。

一方で、相手方の要求が認められる範囲を明らかに超えているような場合には、裁判所の審判を視野に入れながら手続きを進めます。裁判を行う際の時間や費用についても、依頼者と十分に話し合い、最終的にどの選択が最適かを見極めながら進めていきます。

どのようなケースであれ、依頼者が納得できる形で解決を目指すことが、私たちの目標です。

相続案件を手がける上で心がけていることはありますか。

依頼者が真に望む解決点を意識することを大事にしています。

対話の中で、依頼者が真にどのような解決を望んでいるのかがわかってきます。できるだけ現金を取得したい、どうしても生家の土地建物を取得したい、相続人以外の親族との関係性を壊したくない、可能な限り早く手続きを終わらせたいなど、依頼者の思いは様々です。依頼者が望む解決に向けて、アプローチを検討します。

その実現のために、柔軟な解決が期待できる交渉や調停の段階を大事にしています。

相続問題を弁護士に相談するメリットにはどのようなことがありますか。

感情が絡みやすい相続問題を、法的な視点から客観的に判断できる点です。相続法と当事者の考えにはしばしばずれが生じます。弁護士に相談することでそのずれを整理し、法律に基づいた公平な解決策を導き出すことができます。

例えば、兄と弟の2人の相続人がいるケースで、兄は「長男がすべての財産を相続するべきだ」と主張し、弟は「兄よりも親の世話をしていた自分が全財産を相続するべきだ」と主張していた場合、どちらの主張も現行の法律には当てはまりません。

このような双方が法律の土俵に乗っていないケースでは、当事者同士での話し合いが平行線をたどることが多いといえます。弁護士が介入し、法的視点を加えて話し合いをすることで、適切な解決が期待できます。

また、仲の良い兄弟であっても、相続をきっかけに関係が険悪になるケースは少なくありません。早めに弁護士に相談していただければ、問題が深刻化する前にそのリスクを減らし、スムーズな解決へと導くことができます。

福岡と沖縄を拠点に地域に根ざした活動

相続案件における事務所の強みや特徴を教えてください。

相続案件において豊富な取り扱い実績があることです。沖縄の事務所に所属していた頃から相続分野に注力してきましたので、遺産分割や遺留分、遺言、相続放棄、さらには相続財産管理人の申し立てなど、多岐にわたる相続関連の案件を数多く手がけてきました。この経験を活かし、依頼者にとって最適な解決策を提案できることが強みです。

さらに、福岡と沖縄に拠点を持ち、それぞれ地域に根ざした活動を行っている点も、他の事務所にはない特徴だと思います。相続人が両地域に分かれて住んでいる場合など、地域をまたぐ相続案件にも効果的な対応ができます。

また、両地域の不動産事情や地域特有の慣習なども熟知しているため、よりきめ細かなサービスを提供することが可能です。

これまでの活動で印象に残っている案件やエピソードを教えてください。

4人兄弟が相続人となり、それぞれが異なる主張を展開し、感情的な対立も激しく、解決が困難を極めたケースです。この案件では、遺産の評価、特別受益、寄与分、遺産の具体的な分け方など、遺産分割に関わるほぼ全ての論点について争いがありました。

私は依頼者の代理人として、裁判官と他の相続人の代理人に対して、しっかりと証拠を揃えて論理的に主張していくことを心がけました。その結果、解決までに歳月を要しましたが、最終的には依頼者に納得していただける結果を得ることができました。

私が対話の重要性を実感したのは、まさにこの案件がきっかけでした。依頼者にしっかりと状況と見通しを説明し、どのような主張をすべきかを共に考え、納得できる「落としどころ」を依頼者と一緒に考えました。対話を重ね、依頼者と信頼関係を築けたからこそ、最終的な解決に繋がったのだと思います。

最後に、相続問題で悩みを抱えている方へメッセージをお願いいたします。

相続問題は、家族や親族間で避けられない問題であり、誰にでも起こり得ることです。そのような問題が発生した際に、できるだけ大きなトラブルに発展させずに解決することが重要です。

トラブルを大きくしないためにも、早い段階で弁護士に相談することをぜひご検討ください。もしすでにトラブルに巻き込まれている場合も、できるだけ早くご相談いただければ、状況に応じた最適な対応策を一緒に考え、問題解決へ向けて進んでいくことができると思います。どうぞお気軽にご相談ください。