豊富な経験と丁寧な対応で相続問題に取り組む。
福岡市で20年以上のキャリアを持つ波多江愛子弁護士(あかつき法律事務所)に、事務所設立までの経緯や仕事をする上で大切にされていることを聞きました。地元福岡で「夜明けと新たな一日を依頼者に」という思いで「話をよく聞き、丁寧に説明する」ことを大切にしていると言われます。相続問題についても詳しくお話を聞きました。「相続は専門知識が必要なことに加え労力も時間もかかるので、早めに専門家のサポートを受けることが重要」とのこと。税理士や司法書士とも連携して問題解決に取り組んでいるそうです。その他、よくある相談と解決までの流れなどについても話を聞きました。( 福岡県弁護士会所属)
インタビュー
「夜明けと新たな一日を依頼者に」
事務所設立までの経緯を教えてください。
私は福岡の街で生まれ育ちました。福岡の街や人の役に立ちたくて福岡で弁護士となりました。
はじめに先輩弁護士の事務所で4年ほど経験を積んだ後、2004年に司法修習の同期と二人で事務所を開設しました。
事務所名はあかつき法律事務所にしました。あかつきは夜明けの時間帯のこと。これから夜が明け新たな一日が始まります。様々なトラブルの中にある依頼者の方に、夜明けと新たな一日をもたらす、そういう事務所でありたいという思いを込めました。
お仕事をする上で大切にしていることを教えてください。
依頼者に寄り添い、正当な利益を実現するための法的解決を目指すことが基本スタンスです。そのためには当たり前のことですが依頼者の話をよく聞くことと、きちんと説明することを大切にしています。
依頼者の話をよく聞くことで、依頼者の実現したい利益を的確に分析し、解決に必要な事実関係を正確に把握します。また、依頼者には法的な知識がないことがほとんどですから、解決までの方針や手続きを丁寧に説明しています。丁寧なコミュニケーションを通して、二人三脚で案件を解決していくよう心がけています。
相続問題と弁護士の役割
相続について、どんな相談が寄せられるのでしょうか。
最も多いのは「遺産分割協議がまとまらない」という相談です。相続人同士の人間関係が良好ではなく、お互いに譲れない、あるいは話もしたくないという状態で相談に来られる方も少なくありません。
また、「他の相続人に相続財産を使い込まれてしまったので取り戻したい」という相談も最近は増えている印象です。遺産分割はいま現にある遺産を分けるので、使い込まれてしまった(今残っていない)財産は基本的には遺産分割の対象にはなりません。それでは納得がいかないので、使い込まれた分を取り戻したいという相談です。
その場合、これまでは、不正使用した相続人の同意が得られずに遺産分割調停とは別に裁判を起こさなければならないこともあったのですが、民法が改正され、令和1年7月より、不正使用をした者の合意がない場合でも遺産分割調停で話し合うことができるようになりました。
遺産分割の問題で特有の難しさはどのような点にありますか。
大きく3つあります。一つ目は、遺産と一口に言ってもさまざまな財産がある点です。現金や預金など金額がわかりやすい財産ならよいのですが、不動産など価値が一定でないものについては、評価額が問題となります。また、法定相続分が決まっていても、不動産など分割しづらい財産がある場合には、実際の財産額が相続分にぴったり収まるとは限りません。どの財産を誰に割り当てるのかで話がまとまらないこともよくあります。
二つ目は、現存する財産以外の事情も考慮する必要があることです。例えば生前にある相続人だけが住宅購入の援助を受けていたというような事情がある場合には「特別受益」として、特別な計算が必要になることがあります。また、ある相続人が無償で家業に従事していたというような事情がある場合にも「寄与分」として特別な計算が必要な場合があります。このような事情があると、遺産分割がより複雑になります。
三つ目は、相続人間の人間関係が悪く、感情的な部分で話し合いが進みづらい場合があることです。「相手の言うとおりにはしたくない」「自分より相手の方が多く遺産をもらうことが許せない」など、気持ちの部分で対立していることも少なくありません。このような問題を当事者同士で解決するのは困難です。
相続問題で弁護士に相談するメリットはなんでしょうか。
大きく3つあります。一つ目は意見が対立する相手と直接やりとりする必要がなくなることで、精神的・肉体的な負担から解放されることです。話し合いで決着がつかず、遺産分割調停や審判に移行した場合でも、弁護士が代理人となって相手方と交渉します。
二つ目は、法律面のアドバイスが得られることです。相続についての正しい知識を得ることで、自身の権利を正しく主張できます。例えば、「相続人が依頼者含め兄弟3人しかいないから、法定相続分は三分の一ずつ」と思っていたとしても、特別受益や遺留分を考慮すると、三分の一よりも多くの遺産を主張できる場合があり得ます。専門家だからこそ、さまざまな要素を考慮して解決への道筋を提示できるのです。
三つ目は、依頼者の主張が法的に認められる可能性が低い場合に、無用な労力や時間をかけずに済むことです。依頼者の希望が法的に難しい場合には、難しいことを率直に伝え、それでも主張するメリットが依頼者にあるのかを専門家の観点から率直にアドバイスするようにしています。
時間が経つと証拠が散逸し、権利主張の機会を逃すことも
相談はどんなタイミングでしたらいいのでしょうか。
なるべく早くご相談ください。まず相続の手続きには、早めに対応しないと手続きそのものができなくなるものがあります。例えば、遺言の内容が偏っていて、自分の取り分が少ない場合に「遺留分」という権利を主張できる場合があるのですが、遺留分の請求には時効があり、相続が開始したことと遺留分が侵害されていることを知った時から1年以内に時効を止める対応をする必要があります。
また、時間が経つと証拠が散逸してしまい、裁判で主張が認められなくなる可能性があります。例えば、預金の取引履歴は多くは過去10年間分しか取り寄せられないので、生前に住宅購入の援助などでお金が動いた証拠を提出しなければならないような場合には、早めに証拠を集めておく必要があります。
弁護士に相談したり依頼したりすることに気が引ける方も多いかもしれません。しかし、相続人同士で話していると、こちらに不利になる事情を伝えてしまったり、不利な内容に合意してしまったりして、解決が遠のくことが少なくありません。特に合意については、後から覆すことは弁護士が入ったとしても原則としてできません。取り返しのつかない事態になる前に、弁護士に早めに相談することが一番です。
悩み続けるよりも、早めに相談を
初回の法律相談はどのような流れで進みますか。
相続の相談であれば、最初に大まかな内容をうかがって、相続人は誰か、遺産はどんなものがあるのか、どのように分けたいのか、あるいは何が不満なのかなどについて詳細を聞きます。その上で問題点を整理し、今後の見通しをアドバイスします。
依頼を検討する際の参考になるように、弁護士費用や契約内容についてもお話ししています。依頼を受けた後は、交渉を進めることもありますし、すでに人間関係がこじれているような場合には調停の中で話し合いをしていくこともあります。遺産分割の話し合いをする前提として、相続人や遺産が確定していない場合には、その調査から始めることもあります。相続に関連して税理士や司法書士が必要な場合は、事務所が持つネットワークですぐにご紹介できます。
最後に、相続のトラブルを抱えて弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
相続問題の解決には法律の専門的な知識が不可欠です。また、人間関係がもつれて問題になっている場合が多いので、精神的な面からも第三者のサポートが必要な分野です。その両方の役割を兼ね備えているのが弁護士です。
専門家に相談することで、精神的な負担を減らし、費やす労力を少なくできます。とにかく早く頼って相談して、専門家の力をフルに使ってください。いつでもお役に立ちたいと思っています。