弁護士歴35年以上、遺産分割専門の家裁の調停委員も経験。遺留分や不動産を含む相続もお任せを
静岡県静岡市で「あい法律事務所」を経営する荒巻郁雄弁護士(静岡県弁護士会)に相続分野でよくある相談や揉めやすいポイントについて聞きました。遺産分割の調停委員の経験も10年以上になる荒巻弁護士。 「法的にできることとできないことをお伝えした上で、できることは一生懸命やらせていただきます」と話しています。
インタビュー
弁護士歴35年以上、相続事件を扱う件数は増加傾向
「あい法律事務所」はどのような事務所か教えてください。
私は1985年に弁護士になり、1988年に「あい法律事務所」を設立しました。弁護士歴は35年以上になりますが、これまで地域密着で相続や交通事故、離婚、不動産トラブルなど一つ一つ真面目に誠実にやってきました。
最近の相続事件の傾向はありますか。
最近は相続事件が増えているように感じます。他の弁護士に聞いても同じようで、家裁の調停事件が増えています。
昔は長男が全財産を相続するという家督相続制度の名残があることが多かったのですが、最近はそうした意識も薄れてきましたので、他の兄弟姉妹がきちんと権利を主張することが多いです。
遺留分や遺産分割、寄与分は揉めることが多いです
相続についてよくある相談内容を教えてください。
遺産分割で揉めるケースが多いです。
一つは、遺言書があるものの、内容に偏りがあり、遺留分が問題になるものです。遺言書が残されている場合、遺言の内容にもよりますが、ある程度それを前提に考えていくことになります。分配が少ない人はどういう内容であれば納得するのか。分配が多い人はそれに応じられるか。交渉でまとまることも多いですが、決着がつかなければ調停、審判あるいは裁判へと移行していきます。
もう一つは、遺言書がないので遺産分割協議をしたものの、話がまとまらないとか誰かが応じてくれないとかで相談に来るものです。
相続財産が預貯金だけであれば分けるのも簡単ですが、ほとんど不動産という場合、そのままでは分けられないので揉めることになります。一つの家を半分に分けるわけには行かないので、不動産が一つしかないような場合には、誰がそれをもらうかで議論になります。原則、現時点でその家を使用している人がもらって、他の相続人に代償金を払うことが多いです。
どうしてもお互いが譲らないとなると、売却して金銭で分けることになります。ただ、売却せずに継いで行きたいという思いがあるような場合、その方が折れることで話がまとまることが多いですね。
また、寄与分も争いになることがあります。「被相続人の生前に貢献があれば、内容を問わず寄与分がもらえる」と誤解されているケースが多いのですが、実際には狭き門です。
例えば、「お父さんが病気がちで、病院に毎回連れて行った」ということを寄与分と主張される方がいますが、法的にはその貢献が被相続人の財産の維持や増加に貢献したかどうかがポイントになります。
これまで担当した中では、夫の家業である農業の手伝いを長年無報酬で手伝ってきた妻のケースなどで認められたことがあります。
もう一つ、特別受益の有無でもめることも多いです。特別受益というのは、被相続人の生前に財産の一部をもらっている人がいる場合などのことです。
これまで取り組んできた相続案件の中で、印象に残っているものはありますか。
18年前、亡くなったお父さんの相続案件でご依頼を受け、最近お母さんが亡くなり、二次相続についてもご依頼を受けました。最初の相続(一次相続)では、配偶者であるお母さんが財産のほとんどを相続したのですが、今回はそれを子どもたちに分配し直すことになりました。弁護士を長くやっているからこその経験ですが、再び相続に携わることになり、とても印象的でした。
財産の内容が全く分からない場合もご安心ください
相続案件を手掛ける上で、心がけていることを教えてください。
基本的なことですが、まず相続財産にどのようなものがあるのか、相続人は誰がいるのか、をきちんと調べることです。その内容によって、どう分けるのが合理的かが大きく変わってきます。
あとは、生前の特別受益があるかどうかも調査が必要です。例えば、「姉が結婚した時に家を建てるお金を出してもらっていた」というのであれば、それを含めた形で相続分を計算する必要があります。
初回の相談で何か持っていくものはありますか。
相続人はどういう人がいるのか、財産はどういうものがあるのかを整理しておいていただきます。お話を聞いた上で、大まかな方針をお伝えし、正式に依頼するかを検討してもらいます。
中には、亡くなった方との行き来がまったくなく財産の内容が全く分からないという方もいます。相続人が兄弟姉妹でなおかつその代襲相続人という場合などです。その場合は、財産調査から依頼していただくことになります。
親と離れたところに住んでおり、あまり行き来もしていなかったようなケースでは、兄弟姉妹や親戚などに照会状を送るなどして、何か手がかりを見つけて調査していくことになります。
揉めた後に交渉できるのは弁護士だけです
相続について弁護士に相談するメリットを教えてください。
物事を正しく解決するためには、弁護士への依頼をおすすめします。
最近はネットでも相続に関する情報はたくさん出ていますので、相談に来ている人も知識をお持ちです。行政書士、司法書士、税理士も相続に関する相談を受けているので、そちらに相談に行かれる方もいます。
ただ、相続人がそれなりに皆裕福で、困っている人や欲が深い人がいなければ、弁護士が介入しなくても話がまとまることが多いのですが、揉めたあとに交渉して解決まで導くことができるのは弁護士だけです。弁護士以外の専門家は、代理人となって他の相続人と交渉することが禁じられているためです。
早めに相談していただければ、要求できることとできないこと、応じなければいけないことと応じなくていいことに振り分けられます。また、しなくてもいい約束をさせられたり、のまなくてもいい要求をのまされたりしなくて済みます。自分たちだけで交渉を始めてこじれてしまうと、それをまたゼロからやり直すのには時間と費用がかかってしまいます。
先生の事務所ならではの強みや、他の事務所との違いはどんなところでしょうか。
遺産相続の調停委員の経験を10年以上しています。この経験は代理人業務にもとても活かされています。
遺産分割は感情論が先行することが多いですが、法的に通らない主張をしても、認められることはありませんから時間の無駄ということになります。代理人として、依頼者が置かれている法的な立場を丁寧にご説明し、「こうなっているからここまでは請求できるけど、これは難しい」とお話するようにしています。そうすることで、調停委員からも理解が得られますし、調停がスムーズに進みます。場合によっては、審判に移行した場合の予測もしながら妥協点を探すこともあります。
相続のトラブルを抱えて弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
できることとできないことをご説明した上で、納得していただけるのであれば、できることを一生懸命やらせていただきます。ただ、黒を白にすることは弁護士といえどもできないことはご理解いただきたいと思います。こんなことを弁護士に聞いていいのかと心配することはありません。初回相談は無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。