遺産分割から生前対策まで、どの段階からでも相談可能 他士業とも連携「お気軽にご相談を」
福岡県福岡市で「ざっしょのくま法律事務所」を経営する城戸美保子弁護士(福岡県弁護士会)に、事務所の特徴や相続でよくある相談について聞きました。セカンドオピニオンを受けることもあるという城戸弁護士。「少しでも不安や疑問を感じたら、そのタイミングでお越しください」と呼びかけています。
インタビュー
マンションの一室に事務所、相談しやすい環境です
事務所設立の経緯を教えてください
2007年に弁護士登録し、10年ほど共同事務所で働いたあと、2017年に「ざっしょのくま法律事務所」を設立しました。
私が弁護士になった頃から、弁護士会などでは「弁護士をより身近に」といったスローガンを出すようになりましたが、当時は裁判所近くに法律事務所が集中していました。
以前の事務所は福岡地方裁判所に近いところにありましたが、隣の自治体に住む相談者さんから「一度も自分の住んでいる市から出たことがないので、事務所までどうやっていったら良いですか」と尋ねられたことがありました。
そこで、近隣にお住まいの方がアクセスしやすいように、開業場所を市境のあたりである博多区東雲町にしました。
「ざっしょのくま法律事務所」はどのような事務所ですか。
親しみやすさと丁寧な聞き取り、説明をモットーにしている事務所です。
当事務所はレジデンスタイプのマンションに入っていて、看板も出していないので、法律事務所に行くことを知られたくない人にはメリットが大きいと思います。
玄関で靴を脱いで入っていただく形なので、堅苦しさも比較的感じずにいられるのではないかなと考えています。
ご意向を聞いた上で方針を決めていきます
相続案件に注力している理由を教えてください。
当事務所は個人のお客さまが中心です。相続に関わらない人はほとんどいないと思いますので、アクセスしやすい場所に気軽に相談いただける法律事務所があることで、地域の方に貢献できると考えています。
相続についてよくある相談内容を教えてください。
遺産分割の中でも、ご兄弟が多くて争っているケース、相続人と疎遠で争うケース、前妻の子どもと後妻が争っているケースなどが寄せられます。
まずは依頼者の意向をよく聞いた上で、できることとできないことをお話しします。その中で優先順位をつけながら、これまでの経験からの見込みや制度についてお伝えし、都度方針を決めていきます。
遺産分割に関するご相談を受けた場合には、必ず財産調査と相続人調査をおこないます。どのような財産と負債があるのかを把握した上で、交渉で成立しなさそうであれば、比較的早めに調停を申し立てます。依頼者の意向や依頼者から伺った相手方の性格、要望などを考慮して、解決方法を選んでいきます。
最近の相談の特徴や傾向があれば教えてください。
当事務所付近は鉄道の駅が新設されたり駅周辺が再開発したりしているので、地価が上がっています。そのため、これまでほったらかしにしていた不動産に関する案件や生前対策に関するご相談が増えています。
財産調査と相続人調査は必ずおこないます
これまで取り組んできた相続案件の中で、印象に残っているものはありますか。
父のお金を使い込んでいた妹に対して、遺産分割調停の中で取り分を調整するよう主張し、有利な解決ができたケースです。お兄さんがすでに亡くなられていたため、お兄さんのお子さんからの依頼でした。
元々、お兄さんがご両親の面倒を見ていたのですが、先にお兄さんが亡くなったので、妹が途中から「自分が面倒を見る」といってご両親を自宅近くに連れて行きました。ただ、実際には自分で面倒を見るのではなく施設に入れており、お父さんの預貯金を使い込んでいました。
事前に施設の記録や銀行の通帳履歴などの証拠から、お父さん自身がお金を引き出しているのではないということを把握していました。このように遺産の使い込みがあった場合、訴訟(不当利得返還請求)で争うこともできますが、時間も手間もかかります。そのため、調停の場で交渉しようと考えました。
当初、家事審判官は「使い込みの話は、遺産分割とは別問題なので」と遺産分割の調停で扱おうとしませんでしたが、「審判官からきちんと話していただければ解決できる」と説得し、調停の中で解決ができました。
全てのケースで確実な証拠が収集できるとは限りませんが、事前に資料を収集しておけば、調停の場でも「訴訟でも勝てるだけの証拠があるが、調停では法定通り分割した上で、別で訴訟をやるのか」との交渉が可能です。
相続案件を手掛ける上で、心がけていることを教えてください。
基本的なことになりますが、財産と相続人の調査、事案の特徴を把握することは非常に大事にしています。セカンドオピニオンで来られたケースで、相続関係説明図を作らず財産もよく把握しないまま調停を申し立てていて、実は相続人が兄弟以外にもいたということがありました。
相続人は被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を取って家系図を書いて把握し、相続財産は考えつく金融機関や保険会社に全て当たってみるなどして、依頼者と協力しながらできる限り調査をおこなっています。
難しく考えずどの段階からでもご相談ください
相続について弁護士に相談するメリットを教えてください。
最初に司法書士に相談した方で散見されるのが、特定の財産だけに関する遺産分割協議書を作ってしまうケースです。
司法書士は紛争になっている案件を扱ってはいけないので、「相続登記のために、この家だけ長男の名義にしたい」というご相談がきた場合、その財産だけで遺産分割協議書を作ることが多いようです。ただ、他の預貯金などの財産については遺産分割協議をしていないままなので、次の相続時に蒸し返しされて揉めることになります。
「うちの子どもたちは揉めないので大丈夫です」と話す方もいるのですが、どんな家庭であっても相続で争う可能性はあります。相談時にリスクも把握した上でそれを引き受けるのと、全くリスクを把握せずに大丈夫と思い込むのは雲泥の差ですので、一度弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
先生の事務所ならではの強みや、他の事務所との違いはどんなところでしょうか。
司法書士や税理士など他士業の専門家と一緒に、公的施設で3か月に1回相続無料相談会を開いていますので、連携が可能です。私自身も簡単な登記業務であれば対応できます。
また、裁判所から後見人や後見監督人、相続財産清算人の業務も拝命しており、相続事件だけでは身につかない知識を得ています。
相続のトラブルを抱えて弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
難しく考えなくても、家系図(相続関係説明図)や財産がわかる資料をお持ちいただければ、どの段階であっても相談ができます。また、被相続人の介護や判断能力の問題で悩んでいる方についても、生前対策のアドバイスができます。
少しでも不安や疑問を感じたら、そのタイミングでお越しください。一度相談で終わらせて、実際に依頼が必要な段階になったらお越しいただくこともできます。「今相談していいのだろうか」と考えずに、ご予約の上でお気軽にお越しください。