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家族信託は危険?よくあるトラブル5選 後悔しないために知っておくべきこと
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- 堀田法律特許税務事務所
家族信託は認知症対策や相続対策として有用ですが、利用に当たってはリスクにも注意が必要です。弁護士など専門家のアドバイスを受けて、慎重に検討した上で家族信託を利用するかどうか判断しましょう。この記事では、家族信託の危険性が顕在化したトラブル事例や、家族信託で後悔しないためのポイントなどを解説します。
目次
家族信託は危険なのか? トラブル事例を紹介
家族信託は、信頼できる家族に、財産の管理や処分を任せる仕組みです。認知症対策や相続対策として、家族信託は幅広く活用されています。
しかし、家族信託には良い面ばかりではなく、トラブルのリスクも潜んでいます。特に以下のようなトラブルは、家族信託についてよく発生しているので注意が必要です。
- 信託契約書の不備によるトラブル
- 受託者の暴走・横領・職務怠慢など
- 多額の初期費用・ランニングコスト
- 思いがけない税金の発生
- 相続発生後の遺留分トラブル
信託契約書の不備によるトラブル
本人(=委託者)の生前に家族信託を設定する際には、委託者と受託者が信託契約書を締結します。
信託契約書には、財産管理に関するルールのほか、家族信託開始後に生じるさまざまな事態を想定して、各事態への処理方法を明記しなければなりません。そのため、信託契約書の内容は非常に複雑となります。
十分な知識や検討に基づいて信託契約書を作成しないと、契約条項が互いに矛盾している、トラブルの処理方法が不明確だったために紛争が生じるなど、深刻な事態に発展しかねません。
受託者の暴走・横領・職務怠慢など
家族信託の大きな特徴は、良くも悪くも財産を管理・処分する受託者に大きな権限が与えられる点です。
受託者は、信託契約などに従うという条件付きですが、信託財産の管理を単独で行うことができます。たとえば不動産が信託財産である場合、その賃貸・改修・売却などは、受託者が行うことになります。
受託者が受益者のためにきちんと職務を行わなければ、家族信託は機能不全に陥ってしまいます。
受託者が勝手な判断で無謀な資産運用をしたり、信託財産を横領したり、職務を放棄したりすると、受益者の利益が害されてしまうでしょう。
多額の初期費用・ランニングコスト
家族信託の設定を専門家に依頼する場合は、50万円から100万円程度の初期費用がかかります。また、家族信託の開始後も、受託者の報酬や税務申告の税理士費用などのランニングコストが発生することがあります。
コストについてよく調べずに家族信託を始めてしまうと、予想外にコストがかさんで不満を抱えることになるかもしれません。
思いがけない税金の発生
家族信託を利用するに当たっては、以下の税金が課されることがあります。
- 贈与税
税率:10%~55%
課税タイミング:委託者が受託者へ財産を信託譲渡した時(相続税が課される場合を除く) - 相続税
税率:10%~55%
課税タイミング:(1)委託者が受託者へ財産を信託譲渡した時(その後、委託者が3年以内※に死亡した場合に限る)※2024年以降は7年以内となる予定、(2)受益者が死亡した時 - 所得税・住民税
税率:所得税は5.105%~45.945%、住民税は10%
課税タイミング:信託から収益の分配を受けた時 - 登録免許税
税率:土地は固定資産税評価額の0.3%、建物は固定資産税評価額の0.4%
課税タイミング:不動産の信託登記を行った時 - 固定資産税
税率:固定資産税評価額の1.4%程度
※都市計画地域では、固定資産税評価額の0.3%程度の都市計画税も課される
課税タイミング:毎年(1月1日時点における登記簿上の所有者に対して課税)
特に贈与税と相続税は、信託財産の金額によっては非常に高額となる場合があります。申告・納付を怠っていると、税務調査を経て多額の追徴課税を受けるおそれがあるので要注意です。
相続発生後の遺留分トラブル
「遺留分」とは、相続できる遺産の最低保障額です。兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分が認められています(民法1042条1項)。
関連記事:遺留分とは?法定相続分との違いや計算方法、誰が請求できるかもわかりやすく解説
家族信託によって信託譲渡した財産が多額に及ぶ場合には、委託者の死後、受益者が相続人から遺留分侵害額請求(民法1046条1項)を受けるおそれがあります。
関連記事:遺留分侵害額請求とは?請求のやり方や期限、請求された場合の対処法も解説
遺留分に関するトラブルは、調停や訴訟などの法的手続きに発展し、親族間の深刻な対立に繋がる可能性が高いです。
家族信託で後悔しないためのポイント
家族信託について後悔しないようにするためには、以下のポイントを念頭に置いたうえで対応しましょう。
- 他の選択肢と比較する(成年後見制度・生前贈与・遺言書など)
- コストの見通しを明確化する
- 信頼できる専門家に依頼する
他の選択肢と比較する(成年後見制度・生前贈与・遺言書など)
認知症対策や相続対策として、家族信託は唯一の選択肢ではありません。
認知症対策としては成年後見制度(成年後見・保佐・補助・任意後見)、相続対策としては生前贈与や遺言書など、別の選択肢もあります。
たとえばコストに関しては、家族信託よりも他の選択肢を選んだほうが安く済む場合が多いです。家族信託を利用すべき特別の理由がなければ、他の選択肢の方がよいかもしれません。
また、成年後見制度では後見人等が身上監護(=生活・医療・介護などに関する契約を代理人として締結すること)をすることができます。身上監護は、家族信託では対応できない事項です。
関連記事:成年後見人になれる人とは?家族はなれる?あとから変更できるのかも解説
家族信託を利用すべきかどうかについては、他の選択肢とも比較した上で、状況に応じて適切に判断しましょう。
コストの見通しを明確化する
家族信託を利用するに当たって、大きなネックとなるのがコストです。設定時の初期費用や受託者報酬・税理士費用などに加えて、贈与税や相続税などの税金も発生することがあります。
家族信託によって思いがけず損をしないためには、設定前の段階でコストの見通しを明確化することが大切です。
どの時期にどの程度のコストが発生するのかを正しく把握した上で、それでもメリットがあると判断した場合に限り、家族信託を利用しましょう。
信頼できる専門家に依頼する
家族信託の設定に当たっては、専門家のアドバイスを受けることを強くおすすめします。
特に信託契約書の作成については、家庭によって異なる個別の事情を反映する必要があるため、高度に専門的な検討が求められます。また、贈与税や相続税などのシミュレーションを行う際には、税金に関する専門的な検討も必要です。
ご自身だけで家族信託を設定しようとすると、さまざまなトラブルに繋がりかねません。家族信託を利用する際には、信頼できる専門家にご相談ください。
家族信託を依頼する専門家の選び方
家族信託について相談できる専門家には、主に以下の種類があります。
- 弁護士
法律および紛争解決の専門家です。さまざまなトラブルのリスクを想定した上で、適切な内容の信託契約書を作成してもらえます。
登記手続きについては司法書士、税務については税理士を紹介してもらえることが多いです。 - 司法書士
登記業務の専門家です。信託契約書の作成のほか、登記手続きも依頼できます。
ただし紛争対応については、対応可能な範囲が狭く限定されています。 - 税理士
税務の専門家です。家族信託に関する贈与税・相続税のシミュレーションや、税務申告などを依頼できます。
信託契約書の作成や登記業務には対応できないので、弁護士や司法書士と併用しましょう。
対応業務の広さやトラブル対応、隣接士業との連携などを考慮すると、家族信託の設定については、まず弁護士に相談するのがおすすめです。必要に応じて、司法書士や税理士の紹介も受けられます。
家族信託について依頼する弁護士を選ぶ際には、契約実務と相続の両方に精通しているかどうかに注目しましょう。
たとえば企業向けに契約書の作成・レビュー等を取り扱いつつ、相続案件にも多数対応している弁護士であれば、信託契約書をきちんと作り込んでくれる可能性が高いです。
また、家族信託の依頼費用は弁護士によって異なるので、複数の弁護士の見積もりを比較することをおすすめします。
まとめ
家族信託には幅広い使い道がある一方で、トラブルのリスクも潜んでいます。弁護士などのアドバイスを受けながら、本当に家族信託を利用すべきか否か、リスクを抑える方法はないかなどをよく検討しましょう。
- 監修者の名前
- 堀田善之弁護士
- 監修者の所属事務所
- 堀田法律特許税務事務所
大阪弁護士会所属。元国税職員の弁護士が、法務と税務の両面から相続問題の解決をサポートします。相続税に配慮した遺言書の作成や事業承継にも対応しております。相続問題や事業承継について不安や疑問のある方は、お一人で悩まずに、お気軽にご相談ください。
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