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相続や遺産分割の弁護士費用の相場はいくら?誰が払う?費用を抑える方法も解説

相続や遺産分割を弁護士に依頼した場合、費用がどのくらいかかるか不安な人もいるでしょう。この記事では、相続や遺産分割を依頼した場合の弁護士費用の内訳や相場を詳しく解説します。費用が払えない場合の対処法や弁護士の選び方についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。

遺産相続の弁護士費用の費目

弁護士に依頼する場合の費用は、主に以下のような費目に分けられます。

  • 相談料
  • 着手金
  • 報酬金
  • タイムチャージ
  • 日当

これらの料金は、一律に決まっているわけではありません。法律事務所や弁護士ごとに異なります。

具体的な料金は、法律事務所がホームページなどで紹介していることが多いので、依頼を検討する際は確認してみましょう。

相談したい法律事務所のホームページがない場合は、相談する前に電話などで問い合わせてみましょう。

※料金には別途消費税がかかります。

「法律相談料」とは

「法律相談料」は、弁護士に依頼する前に「どのようなことに悩んでいるか」を弁護士に相談するときにかかる費用です。

「30分5000円」など、時間単位で金額が決まっていることが多いです。初回の相談料を無料にしている事務所もあります。

法律相談時に支払うことが一般的です。

「着手金」とは

「着手金」は、実際に遺産分割協議の代理人などを弁護士に依頼するときに支払う費用です。

着手金は、依頼人が希望した通りの結果とならなかった場合にも支払う必要があります。依頼するタイミングで支払うことが一般的です。

着手金の金額の決め方

着手金や報酬金の決め方は、法律事務所によって異なります。

たとえば、以下の表は、弁護士ドットコムのホームページに掲載されている、ある法律事務所の料金表です。

この事務所では、どのようなことを頼むかによって金額が固定で決められています。

  • 交渉 + 調停:30万円
  • 審判:20万円

一方で、固定の金額を決めずに「割合(%)」で着手金を定めている法律事務所もあります。次の表のように着手金を定めています(経済的利益については後で解説します)。

  • 経済的利益が300万円以下の場合:8%(最低額10万円)
  • 経済的利益が300万円を超え3000万円以下の場合:5%+9万円
  • 経済的利益が3000万円を超え3億円以下の場合:3%+69万円
  • 経済的利益が3億円を超える場合:2%+388万円

「報酬金」とは

「報酬金」は、一般的には、依頼したことが解決したときに支払うお金です。

相続の案件でいえば、弁護士に依頼したことによって得られた相続分(経済的利益)に、一定の割合で支払うことが一般的です。

たとえば、弁護士ドットコムのホームページに掲載されている、ある法律事務所の料金表では、次のような報酬金を定めています。

  • 交渉 + 調停:50万円もしくは経済的利益の10%の高い方
  • 審判:50万円もしくは経済的利益の10%の高い方

このように、固定の料金と、経済的利益を基準にした料金のいずれか高い方を支払う料金設定にしている場合があります。

また、経済的利益を基準にした料金だけを設定しているケースもあります。

  • 経済的利益が300万円以下の場合:16%(最低額20万円)
  • 経済的利益が300万円を超え3000万円以下の場合:10%+18万円
  • 経済的利益が3000万円を超え3億円以下の場合:6%+138万円
  • 経済的利益が3億円を超える場合:4%+676万円

報酬金についても、法律事務所によって料金設定は様々なので、法律相談時や依頼するときに確認しましょう。

「経済的利益」の具体例

相続の案件で「経済的利益」というと、主に以下の2種類の考え方があります。

  • 弁護士が介入したことによって相続の取り分が増加した場合の、その増加分が「経済的利益」
  • 依頼者が得られた相続分全てが「経済的利益」

以下のような場合を例に、報酬金を計算してみましょう。

  • 弁護士に依頼する前の相続人同士の話し合いでは、受け取る遺産は100万円だった
  • 弁護士に代理人を依頼したことで、受け取れる遺産が300万円に増えた
  • 報酬金は経済的利益の10%

経済的利益を、「弁護士が介入したことによって相続の取り分が増加した場合の、その増加分」と考えた場合、経済的利益は200万円ということになります。

報酬金は経済的利益の10%なので、20万円(200万円の10%)になります。

一方、依頼者が得られた相続分全てが「経済的利益」の場合、今回のケースでは300万円が経済的利益です。

この場合の報酬金は30万円(300万円の10%)です。

この他にも、報酬金をどのように計算するかは弁護士や法律事務所によって異なる場合があります。どのように計算するかは、依頼する前にしっかり確認しておくようにしましょう。

「日当」とは

「日当」は、弁護士が遠方に出張する必要がある場合に支払う費用です。

料金は、「移動時間が何時間未満だと何万円、何時間以上だと何万円」のように、移動時間の長さなどに応じて設定していることが一般的です。

日当についても、具体的な料金設定は弁護士によって異なるので、相談時などに確認しましょう。

「タイムチャージ」とは

着手金や報酬金ではなく、「かかった時間」で報酬を計算する弁護士もいます(タイムチャージ)。

時間あたりいくらなのか、どのような時間に費用が発生するのか、依頼する際に、しっかりと確認しておきましょう。

遺産相続の弁護士費用の相場

弁護士費用の料金体系は、弁護士が自由に設定できますが、かつて日本弁護士連合会が定めた報酬基準(旧日弁連報酬基準)があり、弁護士費用が自由化された現在でも、この基準が弁護士の間で一定数利用されていることから、ひとつの目安となっています。

そのため、この記事では、旧日弁連報酬基準を弁護士費用の相場の目安として紹介します。

「法律相談料」の相場は30分5000円、初回無料のケースも

「法律相談料」は、30分ごとに5000円です。法律事務所によっては初回無料にしているケースもあります。

「着手金」の相場は最低10万円、経済的利益により変動

「着手金」の相場は、最低10万円です。

着手金の額は、経済的利益の額によって変動します。遺産分割協議の交渉や、遺産分割調停を依頼する場合には、下記の金額から3分の2を減額する場合があります。

  • 経済的利益の額が300万円以下の場合:8%
  • 300万円を超え、3000万円以下の場合:5%+9万円
  • 3000万円を超え、3億円以下の場合:3%+69万円
  • 3億円を超える場合:2%+369万円

具体的な着手金の金額は、以下のようになります。

  • 経済的利益の額が100万円の場合:10万円
  • 1000万円の場合:59万円
  • 1億円の場合:369万円
  • 10億円の場合:2369万円

「報酬金」の相場は「経済的利益」による

「報酬金」の額は、経済的利益の額によって変動します。ただし、遺産分割協議の交渉や、遺産分割調停を依頼する場合には、上記の金額から3分の2を減額する場合があります。

  • 経済的利益の額が300万円以下の場合:16%
  • 300万円を超え、3000万円以下の場合:10%+18万円
  • 3000万円を超え、3億円以下の場合:6%+138万円
  • 3億円を超える場合:4%+738万円

具体的な報酬金の金額は、以下のようになります。

  • 経済的利益の額が100万円の場合:16万円
  • 1000万円の場合:118万円
  • 1億円の場合:738万円
  • 10億円の場合:4738万円

「日当」の相場は半日3〜5万円、1日5〜10万円

「日当」の相場は、半日(往復2時間を超え4時間まで)の場合は3万円以上5万円以下、1日(往復4時間を超える場合)の場合は5万円以上10万円以下です。

相続や遺産分割を依頼した場合の弁護士費用の具体例

以上の相場を参考に、遺産分割を弁護士に依頼した場合の具体的な弁護士費用を計算してみましょう。

弁護士に遺産分割協議を依頼して協議が成立し、経済的利益が1000万円の場合

  • 相談料:5000円

  • 着手金:59万円

  • 報酬金:118万円

  • 合計:177万5000円

遺産分割協議を依頼したが協議が成立しないので、調停も依頼する場合

遺産分割協議から継続して調停を依頼する場合には、着手金が通常の2分の1となります。

  • 相談料:5000円
  • 遺産分割協議の着手金:59万円
  • 遺産分割調停の着手金:29万5000円
  • 報酬金:118万円
  • 合計:207万円

遺産分割以外の相続に関する弁護士費用の相場

遺言書作成や相続放棄など、遺産分割以外の相続に関する手続きの代行を依頼する場合の費用を紹介します。

遺言作成費用の相場は13万〜23万円

定型の遺言の作成を弁護士に依頼した場合の費用相場は、10万円〜20万円です。公正証書にする場合には、プラス3万円がかかります。

多くの法律事務所では、公正証書遺言を作成するのが通常なので、遺言作成費用の相場は、13万円〜23万円ということになります。

遺言執行者の報酬の相場は遺産総額による

遺言の内容を実現するために遺言執行者の就任を弁護士に依頼する場合、基本的な遺言執行のときの報酬の相場は、経済的利益(遺産総額)の額により変動します。

  • 経済的利益の額が300万円以下の場合:30万円
  • 300万円を超え、3000万円以下の場合:2%+24万円
  • 3000万円を超え、3億円以下の場合:1%+54万円
  • 3億円を超える場合:0.5%+204万円

具体的な報酬の金額は、以下のようになります。

  • 経済的利益の額が100万円の場合:30万円
  • 1000万円の場合:44万円
  • 1億円の場合:154万円
  • 10億円の場合は:704万円

相続放棄の手続きを依頼する費用の相場は10万〜20万円

相続放棄の手続きを弁護士に依頼する場合の費用相場は、特に複雑な事情がなければ10万円以上20万円以下です。

遺留分侵害額請求権を行使するための内容証明郵便の作成は3〜5万円

遺留分侵害額請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は、次のとおりです。

  • 遺留分侵害額請求権を行使するための内容証明郵便の作成で特に複雑又は特殊な事情がない場合:3万円以上5万円以下
  • 相手方との交渉:経済的利益による

相手方との交渉を依頼する場合には、着手金と報酬金が発生します。

着手金の額は、次のとおりです。最低10万円となっています。

  • 経済的利益の額が300万円以下の場合:8%
  • 300万円を超え、3000万円以下の場合:5%+9万円
  • 3000万円を超え、3億円以下の場合:3%+69万円
  • 3億円を超える場合:2%+369万円

報酬金の額は、次のとおりです。

  • 経済的利益の額が300万円以下の場合:16%
  • 300万円を超え、3000万円以下の場合:10%+18万円
  • 3000万円を超え、3億円以下の場合:6%+138万円
  • 3億円を超える場合:4%+738万円

遺産分割協議書の作成のみを依頼する費用相場は10万円から

遺産分割協議で相続人全員の合意ができている場合、遺産分割協議書の作成のみを弁護士に依頼することができます。その場合の費用相場は、経済的利益の額(遺産総額)により変動します。

内容が定型の場合

  • 経済的利益の額が1000万円未満の場合:10万円
  • 1000万円以上1億円未満の場合:20万円
  • 1億円以上の場合:30万円以上

相続や遺産分割の弁護士費用は誰が支払う?

弁護士費用は、依頼者が負担するのが原則です。

弁護士は、あくまで依頼者の代理人であり、相続人全員の代理人ではないからです。

ただし、依頼者側で相続人調査や遺産調査を行い、相続人全員の利益につながっているような場合には、相続人全員の合意に基づき、弁護士を依頼した相続人の取得分を増やすことで、実質的に弁護士費用を遺産の中から負担したのと同じような扱いにすることは可能です。

弁護士費用が払えない場合の対処法と費用を抑える方法

無料法律相談を活用する

無料の法律相談を提供している法律事務所が数多くあります。ホームページやポータルサイトで確認し、無料相談が可能な法律事務所を選びましょう。

ただし、無料相談の範囲や条件は法律事務所によって異なるため、事前に確認するようにしましょう。

法テラスを利用する

収入や資産が一定の範囲内であれば、法テラスの民事法律扶助制度を利用できます。これにより弁護士の着手金を立て替えてもらい、後で分割返済することが可能です。

ただし、利用できる条件があるため、詳細は弁護士や法テラスに確認しましょう。

分割払いや完全成功報酬制

法律事務所によっては、着手金の分割払いや、完全成功報酬制を採用している場合があります。

分割払いでは、事件が終了するまでに着手金を何回かに分けて支払います。

完全成功報酬制では、事件が成功に終わった場合のみ報酬を支払います。

法律事務所ごとの条件やルールを確認しましょう。

複数の弁護士に相談する

弁護士費用の料金体系は、法律事務所によって異なります。複数の弁護士に相談して料金を比較し、自分の予算に合った費用を選ぶことが大切です。

まとめ

相続や遺産分割の弁護士費用は、依頼内容や弁護士によって異なりますが、一定の費用がかかります。費用の内訳や相場を把握し、依頼した場合にどうなるかシミュレーションしておくとよいでしょう。費用に関する不安がある場合には、相談の際に率直に質問してみましょう。費用面も含めて納得のいく形で進められるよう、慎重に弁護士を選びましょう。

五十嵐康之弁護士の画像
この記事の監修者
監修者の名前
五十嵐康之弁護士
監修者の所属事務所
法律事務所穂

相続での揉め事は、大事な人が亡くなった直後なので、通常の揉めごと以上の精神的な衝撃があります。お一人で悩まれず専門家に相談してください。一人で悩まれるより良い方法がきっと見つかるはずです。

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