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相続財産とは?範囲や調べ方、相続税がかかる財産などを解説

亡くなった被相続人が死亡時に所有していた財産は、「相続財産」として遺産分割の対象となります。遺産分割を行う際には、あらかじめ相続財産を漏れなく調べましょう。なお、相続財産に当たらない財産に対しても、相続税が課されることがあるのでご注意ください。この記事では、相続財産の範囲や調べ方、相続税がかかる財産などについて解説します。

相続財産とは?

「相続財産」とは、亡くなった被相続人が死亡時に所有していた一切の権利義務をいいます(民法896条)

相続財産は、被相続人との続柄によって決まる相続人が承継します。相続人のうち誰が相続財産を承継するかについては、遺産分割協議等を通じて決めることになります。

なお、相続財産のことを「遺産」と呼ぶ場合もありますが、呼称が異なるだけで意味の違いはありません。

相続財産に当たるもの

相続財産には、亡くなった被相続人が死亡時に所有していた一切の権利義務が含まれます。

たとえば、以下のような財産が相続財産に当たります。

  1. プラスの財産(権利)
  • 現金
  • 預貯金
  • 有価証券(株式、投資信託など)
  • 不動産
  • 貴金属類(金、プラチナなど)
  • 美術品
  • 骨董品
  • 貸付債権
  • 売掛金債権
  1. マイナスの財産(義務)
  • 借金
  • 買掛金債務
  • 連帯保証債務
    など

相続財産は原則として、遺産分割の対象となります。ただし、遺言書によって取得者が指定されている場合は、その内容に従って相続財産を分けることになります。

また、相続財産のうち可分である債権・債務については、相続の発生によって法律上当然に分割されるため、遺産分割の対象になりません(債権の当然分割について最高裁昭和29年4月8日判決、債務の当然分割について最高裁昭和34年6月19日判決)。

例えば、被相続人が誰かに貸していたお金や事業で発生した売掛金などです。

ただし例外的に、預貯金については当然分割の対象とならず、遺産分割の対象となります(最高裁平成28年12月19日判決)。

相続財産に当たらないもの

亡くなった被相続人が死亡時に所有していたものでなければ、相続財産には当たりません。

たとえば以下のような財産は、相続財産に該当しません。

  • 被相続人から生前贈与を受けた財産
  • 家族信託(民事信託)を通じて交付された財産
  • 被相続人の死亡によって支払われた死亡保険金
  • 被相続人の死亡によって支払われた死亡退職金
  • 被相続人と配偶者が不動産を共有していた場合における、配偶者の共有持分
    など

ただし後述するように、相続税との関係では、相続財産でないものも課税対象となる場合があります(=みなし相続財産)。

相続財産の調べ方

遺産分割を行う際には、あらかじめ相続財産を確定する必要があります

被相続人が生前に相続財産をリストアップしてくれていればスムーズですが、どのような相続財産があるのかについて、被相続人自身もきちんと把握していなかったケースが非常に多いです。その場合は、相続発生後に相続人が調査を行わなければなりません

相続財産を調べる方法は、財産の種類によって異なります。代表的な相続財産の調べ方は、下表のとおりです。

相続財産の種類 調べ方
・現金
・美術品
・骨董品
被相続人の遺品を調べる
・預貯金 被相続人の口座がある金融機関に対して照会を行う(全店照会が可能な場合あり)
・有価証券(株式、投資信託など) 被相続人の口座がある証券会社に対して照会を行う
・不動産 登記簿謄本を確認する
所在地の市区町村役場で名寄帳を確認する
・車 被相続人の遺品を調べる
運輸支局で登録名義を確認する
・貴金属類(金、プラチナなど) 被相続人の遺品を調べる
貸金庫などを探す
・貸付債権
・売掛金債権
・借金
・買掛金債務
・連帯保証債務
契約書を調べる
被相続人口座の入出金履歴を調べる

どの種類の相続財産についても、まずは被相続人の遺品から手掛かりを探すことになります。細かい手掛かりも見落とさないようにして、相続財産を漏れなく調べましょう。

相続税のかかる財産

相続などによって取得した財産は、相続税の課税対象となります。課税対象財産の総額が基礎控除額※を超えた場合は、相続税の申告を行わなければなりません。

基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数
※法定相続人の数にカウントできる養子の数は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです。
※相続放棄をした人がいる場合でも、その人は法定相続人の数に含めることができます。

相続財産は、相続税の課税対象となります。

また、遺産分割の場面とは異なり、相続税との関係では、以下の財産も相続税の課税対象となります。これらの財産は「みなし相続財産」と呼ばれています。

  1. 生命保険の死亡保険金・損害保険金
  2. 死亡退職金
  3. 被保険者が被相続人以外の者である生命保険の解約返戻金請求権
  4. 定期金および定期金に関する権利
  5. 特別縁故者が受けた財産分与、特別寄与料
  6. 低額での財産譲り受け、債務の免除による利益
  7. 遺言による信託の受益権
  8. 相続開始前3年以内(2024年以降は7年以内)に贈与を受けた財産
  9. 相続時精算課税に基づき贈与を受けた財産
  10. 事業承継税制により、贈与税の納税を猶予されていた財産
  11. 贈与税の非課税特例に基づき一括贈与を受けた、教育資金または結婚・子育て資金の管理残額

詳しくは以下の記事で解説しているので、あわせてお読みください。
関連記事:みなし相続財産とは? 通常の相続財産との違いや相続税の取り扱い、非課税枠などを解説

相続税の申告を行うに当たっては、相続財産だけでなく、みなし相続財産も調査した上で計上しなければなりません。課税対象財産の計上漏れがあると、後に税務調査で指摘を受けて追徴課税が行われるおそれがあるので要注意です。

弁護士および税理士のサポートを受けながら、課税対象財産を漏れなくリストアップし、正しく相続税額を計算しましょう。

相続税のかからない財産

相続財産またはみなし相続財産に当たるものであっても、以下の財産については、相続税が非課税とされています。

  1. 墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物
    ※骨董的価値があるなど投資の対象となるものや、商品として所有しているものには相続税がかかります。

  2. 宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によって取得した財産で、公益を目的とする事業に使われることが確実なもの

  3. 地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人またはその人を扶養する人が取得する心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利

  4. みなし相続財産である生命保険金などのうち、500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分

  5. みなし相続財産である死亡退職金などのうち、500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分

  6. 個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産で一定の要件を満たすもの
    ※相続人のいずれかが引き続きその幼稚園を経営することが非課税の条件です。

  7. 相続や遺贈によって取得した財産で、相続税の申告期限までに国または地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附したもの、または相続や遺贈によって取得した金銭で、相続税の申告期限までに特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの

また、課税対象財産の総額が相続税の基礎控除額以下である場合は、相続税がかかりません。さらに、被相続人の配偶者が相続した財産については、税額軽減の特例を利用できます。

まとめ

相続財産を漏れなく調査することは、遺産分割を一回で完了するため、および相続税の申告・納付を正しく行うために非常に重要な作業です。

相続財産の内容を正しく把握するためには、弁護士に調査を依頼することをおすすめします。

弁護士に依頼すれば、さまざまな調査方法を活用して相続財産を確定し、トラブルのないように相続手続きを進めてもらえるでしょう。相続税の申告が必要な場合には、税理士を紹介してもらうこともできます。

相続財産の調査や、その他の相続手続きに関するお悩みは、お早めに弁護士までご相談ください。

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馬場亨二弁護士
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馬場亨二法律事務所

東京弁護士会所属。相続については様々なご家庭の事情でお悩みの方が多いかと思います。納得いかない話もあろうかと思います。ご自身の思いが大きな声にかき消され、流されそうになることもあるかと思いますが、そのような時は弁護士にご相談ください。一人で悩まず、お話をお聞かせください。

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