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【改正戸籍法対応】相続手続きに必要な戸籍謄本の取り方は?誰が、どこで請求できるのか、注意点も解説

一部の相続手続きでは、戸籍謄本等を提出する必要があります。必要な戸籍謄本等の取得に時間がかかるケースもあるので、余裕をもって準備を進めましょう。この記事では、相続手続きに必要となる戸籍謄本等について、取り方(請求方法)や注意点などを解説します。

一部の相続手続きでは、戸籍謄本等が必要となる

相続手続きを行うに当たっては、戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本(以下「戸籍謄本等」と総称します)の提出が必要となることがあります。

戸籍謄本

戸籍簿の記載事項の全部を証明する書類。正式名称は「戸籍全部事項証明書」。

除籍謄本

除籍簿(=全員が除籍となった戸籍の情報が登録された公簿)の記載事項の全部を証明する書類。正式名称は「除籍全部事項証明書」。

改製原戸籍謄本

コンピュータ化より前の戸籍簿の記載事項の全部を証明する書類。

相続手続きに戸籍謄本等が必要な理由

相続手続きにおいて戸籍謄本等の提出を求められるのは、相続人が誰であるかを確認するためです。

遺産相続における相続人は、被相続人との続柄によって決まります。
たとえば、被相続人の配偶者と子は常に相続人となります。被相続人に子がいなければ、両親などの直系尊属が相続人となり、直系尊属もいなければ兄弟姉妹が相続人となります。

戸籍謄本等には、被相続人の家族関係が記載されているため、戸籍謄本等を確認すれば相続人が誰かであるかを特定可能です。

相続手続きを受理する会社や行政機関においては、相続人が誰であるかを確認するため、戸籍謄本等の提出を求めています。

戸籍謄本等が必要な相続手続きの例

戸籍謄本等が必要な相続手続きとしては、以下の例が挙げられます。

  • 預貯金の相続手続き
  • 有価証券の相続手続き
  • 不動産の相続登記
  • 相続放棄、限定承認
  • 相続税申告

など

相続手続きにおいて取得すべき戸籍謄本等の種類

相続手続きにおいて取得すべき戸籍謄本等の種類には、おおむね以下の4つのパターンがあります。実際に必要となる戸籍謄本等の種類については、相続手続きを受理する会社や行政機関にご確認ください。

1. 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本または改製原戸籍謄本

相続関係の全体像を確認するため、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等の提出を求められることがあります。

2.被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本、除籍謄本または改製原戸籍謄本

相続関係の全体像の確認までは不要で、被相続人が死亡したことだけを確認できればよい場合は、被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本等の提出を求められます。

3.手続きを行う相続人の現在の戸籍謄本

相続人が生存していること(=相続権があること)を確認するために、提出を求められることがあります。

4.他の親族の戸籍謄本、除籍謄本または改製原戸籍謄本

先順位相続人が死亡したために相続権を得た場合や、親が死亡して代襲相続により相続権を得た場合には、死亡した親族の戸籍謄本等の提出を求められることがあります。

被相続人(または他の親族)の出生から死亡までの戸籍謄本等が必要な場合は、請求先の市区町村役場にその旨を伝えましょう。戸籍情報を調べた上で、必要な証明書を交付してもらえます。

戸籍謄本等の取り方(請求方法)

戸籍謄本の取り方には、本籍地のある市区町村役場に請求する方法と、本籍地以外の市区町村の窓口で請求する方法(広域交付)とがあります。

本籍地のある市区町村役場に請求する方法

戸籍謄本等を請求できる人

戸籍謄本等を請求できるのは、以下のいずれかに該当する人です。

  • 請求する戸籍謄本等に記載されている人(=本人)
  • 本人の配偶者
  • 本人の直系尊属(父母、祖父母など)
  • 本人の直系卑属(子、孫など)
  • 任意代理人(請求者の委任状が必要)
  • 法定代理人(法定代理権を証明する書類が必要)
  • 正当な請求理由がある第三者(債権者、弁護士など)

弁護士に依頼すれば、職務上請求によって、必要な戸籍謄本等をすべて揃えてもらえます。

戸籍謄本等の請求先

戸籍謄本等の請求先は、戸籍簿(または除籍簿・改製原戸籍)が保存されている市区町村役場です。

窓口での請求のほか、郵送による請求も認められています。戸籍に記載されている本人であれば、マイナンバーカードを利用してコンビニで戸籍謄本の交付を受けられる自治体も増えています。

全国の市区町村役場のうち任意の役所に請求する方法(広域交付)

戸籍謄本等を請求できる人

戸籍謄本等を請求できるのは、以下のいずれかに該当する人です。

  • 請求する戸籍謄本等に記載されている人(=本人)
  • 本人の配偶者
  • 本人の直系尊属(父母、祖父母など)
  • 本人の直系卑属(子、孫など)
    本籍地のある市区町村役場に申請する場合と異なり、郵送や代理人による請求はできません。請求できる人が市区町村の戸籍担当窓口に行って申請する必要があります

戸籍謄本等の請求先

広域交付の場合は、全国の市区町村役場で請求できます。自宅や勤務先の最寄りの市区町村役場など、利用しやすい場所を選びましょう。

戸籍謄本等の請求の必要書類・手数料

戸籍謄本等を請求する際の必要書類と手数料は、下表のとおりです。

窓口請求の必要書類

  • 請求書
  • 本人確認書類(提示)
  • 委任状(任意代理人による請求の場合)
  • 法定代理権を証明する書類(法定代理人による請求の場合)
  • 本人との続柄が確認できる資料(本人以外の者が請求する場合)

郵送請求の必要書類

  • 請求書
  • 本人確認書類の写し
  • 手数料(定額小為替、普通為替または現金書留で納付)
  • 返信用封筒
  • 返信用切手
  • 委任状(任意代理人による請求の場合)
  • 法定代理権を証明する書類(法定代理人による請求の場合)
  • 本人との続柄が確認できる資料(本人以外の者が請求する場合)

コンビニ交付の必要書類

  • マイナンバーカード

広域交付の必要書類

  • 請求書
  • 申請者の本人確認書類(顔写真付きのもの)

※戸籍謄本のみ

戸籍謄本等の種類 手数料
戸籍謄本 450円
除籍謄本 750円
改製原戸籍謄本 750円

※コンビニ交付の場合は割り引かれる場合あり

戸籍謄本等の有効期限は?

戸籍謄本等に有効期限はありませんが、相続手続きによっては、発行から一定期間内の戸籍謄本等の提出を求められることがあります(例:発行から3か月以内など)。

相続手続きを行う会社や行政機関に、受理してもらえる戸籍謄本等の発行時期を確認しておきましょう。

戸籍謄本等を取得する際の注意点

相続手続きのために戸籍謄本等を取得する際には、特に以下の2点にご注意ください。

  1. 必要な戸籍謄本等の種類をあらかじめ確認する
  2. 戸籍謄本等を揃えるには時間がかかることがある

必要な戸籍謄本等の種類をあらかじめ確認する

必要な戸籍謄本等に漏れがあると、相続手続きを受理してもらえません。この場合、改めて戸籍謄本等を取得し直さなければならず、二度手間になってしまいます。

スムーズに相続手続きを進めるため、必要な戸籍謄本等の種類はあらかじめ確認しておきましょう。

戸籍謄本等を揃えるには時間がかかることがある

相続手続きに必要な戸籍謄本等を揃えるには、複数の市区町村役場へ請求しなければならないケースが多いです。そのため、すべての戸籍謄本等が揃うまでには、思いのほか時間がかかることがあります。

特に相続放棄・限定承認や相続税の申告など、期限が設けられている手続きを行う際には、スケジュールを立てて計画的に戸籍謄本等を取得しましょう。

相続手続きの負担を軽減できる「法定相続情報証明制度」

相続手続きに必要な戸籍謄本等が揃っても、その束を金融機関や法務局などへ何度も提出するのは面倒です。提出した戸籍謄本等の束が戻ってきてから、次の手続きを行うことを繰り返していては、相続手続きに時間がかかってしまいます。

このような手間や時間を省くためには、法務局の「法定相続情報証明制度」を利用するのが便利です。登記官が発行する「法定相続情報一覧図」の写しを、戸籍謄本等の束の代わりに提出できるので、スムーズに相続手続きを進めることができます。

詳しくは以下の記事で解説しているので、あわせてお読みください。
関連記事:法定相続情報証明制度とは?メリットや手続きの流れ、かかる費用を解説

まとめ

相続手続きをスムーズに進めるためには、必要書類を漏れなく揃えなければなりません。特に戸籍謄本等については、取得に時間がかかるケースが多いので、余裕をもって準備を進めましょう。

弁護士に依頼すれば、職務上請求によって必要な戸籍謄本等を揃えてもらえます。ご自身で戸籍謄本等を揃えるのが難しい方は、弁護士にご相談ください。

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この記事の監修者
監修者の名前
大和幸四郎弁護士
監修者の所属事務所
武雄法律事務所

地元密着型の弁護士です。生前整理アドバイザーの資格を有しており、終活のカウンセリングも行っています。相続問題に25年以上携わってきました。元家事調停委員です。司法書士や税理士などの専門家と連携し、ワンストップで対応が可能です。

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