相続弁護士 ドットコム
公開日
(更新日

遺言信託とは?費用やメリットやデメリット、仕組みや流れを解説

各金融機関は、遺言書の作成をサポートする「遺言信託」を受け付けています。遺言信託は一見便利なようですが、専門家への依頼が別途必要になるなど、ワンストップでのサポートとはいかないケースも多いです。サービス内容や手数料などを確認した上で、本当に遺言信託を利用すべきかどうかよく検討しましょう。 この記事では遺言信託について、仕組み・メリットとデメリット・費用・手続き・トラブルなどを解説します。

遺言信託とは?

「遺言信託」とは、金融機関が提供している、遺言書の作成・保管・執行をサポートするサービスです。

遺言信託の利用者は、担当者のアドバイスを受けながら遺言書の内容を検討し、公正証書遺言を作成します。その際、金融機関を遺言執行者に指定するのが一般的です。

公証役場から交付を受ける遺言書の正本は、相続財産に関する資料、戸籍謄本類、印鑑証明書などとあわせて、金融機関に預けて保管してもらいます。

利用者が亡くなった際には、金融機関が遺言執行者として、遺言書の内容に従って遺産の処分や移転を行います。

遺言信託のメリット・デメリット

金融機関の遺言信託には、メリットとデメリットの両面があります。ご自身の状況に照らして、どちらが大きいのかをよく検討した上で、遺言信託を利用するかどうか判断しましょう。

遺言信託のメリット

金融機関の遺言信託の最大のメリットは安心感です。

遺言信託を利用すると、遺言書の作成・保管・執行について、金融機関の一貫したサポートを受けられます。ご自身が亡くなる際にも、金融機関は存続している可能性が非常に高いので、確実に遺言執行をしてもらえるでしょう。

また、途中で遺言に関する不安が生じた際にも、金融機関の担当者へいつでも相談できます。

遺言信託のデメリット

これに対して、金融機関の遺言信託の大きなデメリットは、トータルのコストが高くなりがちな点です。

金融機関の遺言信託の手数料は、弁護士などの専門家に遺言書の作成サポートを依頼する際の費用よりも割高な傾向にあります。

また、遺言信託の手数料には、専門家への依頼費用が含まれていません。

たとえば遺産分割トラブルが生じて弁護士に依頼する場合、不動産の相続登記を司法書士に依頼する場合、相続税の申告を税理士に依頼する場合などには、金融機関に支払う手数料とは別に専門家への依頼費用が発生します

上記の各費用をトータルすると、金融機関の遺言信託にかかる費用は、かなり高くなってしまうことがあります。

遺言信託にかかる費用

金融機関の遺言信託を利用する際には、基本手数料・遺言書保管料・遺言執行報酬という3つの手数料がかかるのが一般的です。また、遺言書を変更する際には変更手数料も発生します。

基本手数料

遺言信託サービスの利用を開始する際に支払う手数料です。22万円から33万円程度が標準的です。

遺言書保管料

公正証書遺言の正本等の保管に関する手数料です。毎年5500円から1万円程度かかります。

遺言執行報酬

遺言執行の手数料です。遺産額に応じて0.22%から2.20%とされるケースが多く、遺産総額によって料率が変わります。遺言執行報酬の最低額は、110万円から165万円程度に設定されるのが一般的です。

遺言書の変更手数料

遺言書を変更する際にかかる手数料です。1回当たり5万5千円程度が標準的です。

遺言信託に関する手続きの流れ

金融機関の遺言信託を利用する際の手続きは、おおむね以下の流れで進行します。

  1. 遺言書の作成に関する相談
  2. 公正証書遺言の作成
  3. 遺言書の保管
  4. 相続開始、遺言書の存在の通知
  5. 遺言執行

遺言書の作成に関する相談

金融機関の担当者に相談しながら、遺言書に記載する内容を決定します。担当者からは、家庭の事情や利用者自身の希望などを踏まえたアドバイスを受けられます。

公正証書遺言の作成

遺言書の内容が固まった段階で、利用者自ら公証役場に行き、公正証書遺言を作成します。公正証書遺言の作成に当たっては証人2名が必要ですが、金融機関に依頼すれば証人を用意してもらうこともできます。

なお、公正証書遺言の作成にかかる公証人手数料や証人日当などは、遺言信託の手数料に含まれていません。

遺言書の保管

公正証書遺言を作成した後、正式に金融機関に対して遺言信託の申込みを行います。

遺言信託の利用開始に当たっては、金融機関に公正証書遺言の正本、相続財産の明細、財産に関する資料、戸籍謄本類、印鑑証明書などを預けます。
また、利用者が亡くなった際に、遺言書の存在を通知する人(=死亡通知人)も指定します。

相続開始、遺言書の存在の通知

遺言信託の利用者が亡くなって相続が開始した際には、親族などがその旨を金融機関に連絡します。

金融機関は、あらかじめ指定された死亡通知人に対して、遺言信託によって公正証書遺言の正本等を保管している旨を通知します。

遺言執行

金融機関は遺言執行者として、遺言書の内容に従い、遺産の処分や移転を行います。

遺言執行者は単独で遺言執行に必要な手続きを行うことができ、相続人がそれを妨害することはできません。相続人に対しては、遺言執行者から相続財産目録が交付されるほか、遺言執行の状況などについて報告が行われます。

金融機関が受け取る遺言執行報酬は、相続財産から控除されます。

遺言信託でよくあるトラブル

金融機関の遺言信託に関するトラブルは、手数料の内訳やサポートの範囲などを正しく理解していなかったことに起因して起こるケースが多いです。

たとえば、以下のようなトラブルがよく見られます。

費用が想定よりもはるかに高額となった

金融機関に支払う手数料だけでなく、公正証書遺言の作成費用や弁護士・司法書士・税理士などへの依頼費用が別途発生した結果、トータルの費用が思ったよりも高くなってしまい、後悔する方がいらっしゃいます。

他の相続人との揉め事を解決してもらえず不満が残った

金融機関は、相続人同士の間で生じたトラブルの解決に当たることはできません。弁護士法72条により、相続トラブルの解決を取り扱うことができるのは、原則として弁護士または弁護士法人のみとされているためです。

遺言信託の高い手数料を支払ったのに、金融機関にトラブル対応を行ってもらえないことについて不満を持つ方がいらっしゃいます。

金融機関の遺言信託は、コストやサポートの範囲を正しく理解し、納得した上で利用することが大切です。

まとめ

遺言信託サービスの最大のメリットは、組織基盤が安定している金融機関により、長期間にわたって遺言書に関するサポートを受けられる安心感です。

その一方で、金融機関の手数料は割高である上に、別途さまざまな費用が発生するため、トータルでのコストは高くなってしまう傾向にあります。コストを抑えたい方は、金融機関の遺言信託を利用するのではなく、弁護士などの専門家へ直接依頼した方がよいでしょう

弁護士に相談すれば、ご家庭の状況やご本人の希望を踏まえて、適切な遺言書の案文を作成してもらえます。公証役場とのやり取りや遺言執行についても依頼できるなど、金融機関の遺言信託と同等以上のサポートを受けられるケースが多いです。

また、万が一相続トラブルが発生したとしても、弁護士に依頼していればスムーズに対応してもらえます。

遺言書の作成を考えている方は、金融機関の遺言信託と併せて、弁護士への依頼もご検討ください

堀田善之弁護士の画像
この記事の監修者
監修者の名前
堀田善之弁護士
監修者の所属事務所
堀田法律特許税務事務所

大阪弁護士会所属。元国税職員の弁護士が、法務と税務の両面から相続問題の解決をサポートします。相続税に配慮した遺言書の作成や事業承継にも対応しております。相続問題や事業承継について不安や疑問のある方は、お一人で悩まずに、お気軽にご相談ください。

相続ガイド