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遺言執行者の報酬はいくら?報酬相場や決め方、誰が支払うのかについて解説

遺言執行者がいれば、遺言の内容に従った相続手続きをスムーズに進められます。その反面、相続人が遺言執行者の報酬を負担しなければならない点に注意が必要です。この記事では遺言執行者の報酬について、相続人・専門家・金融機関が遺言執行者となる場合の金額相場や、誰が支払うのかなどを解説します。

遺言執行者とは

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な職務を行う者です。遺言書に基づいて選任される場合と、利害関係人の請求に基づいて家庭裁判所が選任する場合があります。

遺言執行者を選任するメリット

遺言執行者の選任は必須ではありませんが、選任すれば相続手続きをスムーズに進められる点が大きなメリットです。

相続手続きは、相続人全員で行うのが原則です。しかし、相続人間でのスケジュール調整などに手間がかかります。

遺言執行者が選任されれば、遺言内容に基づく相続手続きを単独で行うことができます。相続人間でのスケジュール調整などが不要となるため、相続手続きをスムーズかつ着実に進めることができ、相続人の負担は大幅に軽減されます。

遺言執行者の業務

遺言執行者が行うべき業務は、以下のとおりです。

  1. 相続人の確定
    戸籍謄本などから相続人を確定します。

  2. 相続人に対する遺言内容の通知
    任務の開始後、遅滞なく遺言の内容を相続人全員に通知します(民法1007条2項)。

  3. 相続財産の調査・相続財産目録の作成
    相続財産の内容を調査して相続財産目録を作成し、相続人に交付します(民法1011条1項)。

  4. 相続財産の処分・移転
    遺言書の内容に従って、相続財産を処分および移転します。遺言執行者は単独で必要な手続きを行うことができ、相続人はそれを妨害してはなりません(民法1012条、1013条)。

  5. 相続人に対する報告・受取物の引渡し・費用の精算等
    相続財産の処分・移転の完了後、相続人に対して遅滞なくその経過および結果を報告します(民法1012条3項、645条)。
    さらに、遺言執行の過程で受け取った物を相続人に引き渡し、要した費用については相続人から償還を受けます(民法1012条3項、646条1項・2項、647条、650条)。

  6. 遺言執行者報酬の精算
    遺言執行の完了後、相続人に対して遺言執行者報酬を請求できます(1018条1項)。

遺言執行者になれる人

遺言執行者には、未成年者または破産者以外の人であれば就任できます(民法1009条)。特別な資格は必要ありません。

実際には、以下のいずれかの者が遺言執行者に就任するケースが多いです。

  1. 相続人
  2. 専門家(弁護士・司法書士・税理士・行政書士など)
  3. 金融機関(信託銀行など)

相続人

相続手続きを取りまとめてもらい、単独で必要な手続きを行うことができるように、相続人のうち1人を遺言執行者に指定することがあります。
遺言執行者報酬は無償または低額とされるケースが多く、コストを抑えたい場合は有力な選択肢です。

専門家(弁護士・司法書士・税理士・行政書士など)

遺言書の作成を専門家に依頼した場合は、その専門家を遺言執行者に指定するケースが多いです。
遺言執行業務に精通した専門家を選任すれば、スムーズかつ適切に遺言を執行してもらえるでしょう。

金融機関(信託銀行など)

信託銀行などの金融機関では、遺言書の作成・保管・執行をサポートする「遺言信託」のサービスを提供しています。
遺言信託を利用する場合は、金融機関を遺言執行者に指定するのが一般的です。

遺言執行者報酬の決め方

遺言執行者は、遺言書の定めまたは家庭裁判所の決定に従って報酬を受けることができます(民法1018条1項)。

遺言書に定めがある場合

遺言書に遺言執行者報酬の定めがある場合は、その規定に従って報酬が決まります。具体的には以下のように、定額や割合で報酬を定める場合があります。

  • 遺言執行者に対する報酬は、〇〇万円とする。
  • 遺言執行者に対する報酬は、遺産総額の〇%とする。

遺言書に定めがない場合

これに対して、遺言書に定めがない場合は、家庭裁判所に報酬付与の申立てを行うことができます。家庭裁判所は、相続財産の金額や遺言執行の内容などを考慮して、遺言執行者報酬の金額を決定します。

遺言執行者報酬の金額相場

遺言執行者報酬の金額相場は、遺言執行者が相続人・専門家・金融機関のいずれであるかによって異なります。

遺言執行者が相続人の場合

遺言執行者が相続人である場合、遺言執行者報酬は無償もしくは低額と定めるか、または特に定めないケースが多いです。

遺言において定めがない場合、遺言執行者である相続人は、家庭裁判所に対して報酬の付与を申し立てることができます。この場合、遺言執行者報酬は相続財産の1%から3%程度とされるのが標準です。

なお、遺言において定められた遺言執行者報酬が割に合わないと感じた場合には、遺言執行者に指定された相続人は就任を拒否することもできます。

遺言執行者が弁護士などの専門家の場合

弁護士などの専門家を遺言執行者に指定する場合は、遺言書において報酬額を明記するケースが多いです。その場合、具体的な報酬額は依頼先によって異なります。

たとえば弁護士は、「日本弁護士連合会弁護士報酬基準」(現在は廃止)を参考に遺言執行者報酬の金額を決めている例がよく見られます。同基準によれば、弁護士の遺言執行者報酬の金額(目安)は以下のとおりです。

対象財産額が300万円以下の場合 33万円
対象財産額が300万円を超え3000万円の場合 対象財産額の2.2%+26万4000円
対象財産額が3000万円を超え3億円以下の場合 対象財産額の1.1%+59万4000円
対象財産額が3億円超の場合 対象財産額の0.55%+224万4000円

司法書士・税理士・行政書士に依頼する場合の遺言執行者報酬は、上記よりも若干安い傾向にありますが、依頼先によって異なるので一概に言えません。
遺言書において専門家を遺言執行者に指定する際には、複数の専門家から見積もりを取得することをおすすめします。

遺言執行者が金融機関の場合

金融機関の遺言信託サービスを利用する場合には、遺言執行の手数料として相続財産額の0.22%から2.20%程度がかかります。
相続財産が少額の場合は手数料率が高くなり、多額の場合は手数料率が低くなる傾向にあります。

なお、遺言執行の手数料については、最低額を設定している金融機関が多いです(110万円から165万円程度)。

遺言執行者報酬は誰が支払うのか?

遺言執行者報酬は、遺言の執行に関する費用として相続財産が負担します(民法1021条)。したがって、特定の相続人だけではなく、遺言執行の対象となる財産を相続する人全員で遺言執行者報酬を負担することになります。

実務上は、遺言執行者が相続人に対して相続財産を移転する際に、遺言執行者報酬を控除するのが一般的です。他には、遺言の執行が完了した後、各相続人に対して相続分に応じた遺言執行者報酬を請求する方法もあります。

まとめ

遺言執行者報酬は、遺言書の定めまたは家庭裁判所の決定に従って決まります。

専門家または金融機関を遺言執行者に指定する場合は、遺言書において報酬を定めるのが一般的です。具体的な報酬額は依頼先によって異なるので、複数の専門家や金融機関の見積もりを比較しましょう。

遺言執行者を選任すると、その権限に基づいてスムーズに相続手続きを進めることができます。相続人に負担をかけたくなければ、遺言書において遺言執行者を指定するのがよいでしょう。

特に、相続発生後に何らかのトラブルが懸念される場合には、弁護士を遺言執行者に指定することをおすすめします。遺言書による相続対策をご検討中の方は、弁護士へご相談ください。

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この記事の監修者
監修者の名前
堀田善之弁護士
監修者の所属事務所
堀田法律特許税務事務所

大阪弁護士会所属。元国税職員の弁護士が、法務と税務の両面から相続問題の解決をサポートします。相続税に配慮した遺言書の作成や事業承継にも対応しております。相続問題や事業承継について不安や疑問のある方は、お一人で悩まずに、お気軽にご相談ください。

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