- 公開日
- (更新日
遺産分割協議証明書とは?遺産分割協議書との違いや作成方法を書式付きで解説
- 監修者の名前
- 永原裕也弁護士
- 監修者の所属事務所
- 永原法律事務所
「遺産分割協議証明書」とは、各相続人が遺産分割協議の内容を証明する書類です。相続人が遠方にいたり連絡が取りづらかったりする場合に、遺産分割協議書の代わりに作成することができます。この記事では遺産分割協議書との違いや遺産分割協議証明書のメリットとデメリット、遺産分割協議証明書の書式について詳しく解説します。
目次
遺産分割協議証明書とは
「遺産分割協議証明書」とは、各相続人が遺産分割協議の内容を証明する書類です。 遺産分割協議で合意した内容が記載されます。
「遺産分割協議証明書」と「遺産分割協議書」は、名称や作成方法が異なりますが、効力は同じです。相続人全員の遺産分割協議証明書を提出することで、不動産の相続登記や預貯金の払い戻しなどの相続手続きを行うことができます。
遺産分割協議証明書と遺産分割協議書の違い
遺産分割協議証明書と遺産分割協議書の違いは、主に「作成方法」と「記載内容」にあります。
まず作成方法について、遺産分割協議書は、全ての相続人が一つの同じ書面に署名押印します。相続人の署名押印が1人でも欠けていると、遺産分割協議書は無効となります。
一方で、遺産分割協議証明書は、各相続人が個々の書面に個別に署名押印します。 不動産の相続登記や預金の払い戻しなどの相続手続きをする際には、相続人全員分の遺産分割協議証明書が必要です。
記載内容については、書面の作成日が異なる場合があります。遺産分割協議書の作成日は統一されているのに対し、遺産分割協議証明書の作成日は各相続人の署名押印したタイミングによって揃わないケースがあります。 この場合、最も遅い日が遺産分割協議の成立日となります。
遺産分割協議証明書のメリット
相続人の中に連絡を取りづらい人や遠方にいる人がいても作成しやすい
遺産分割協議証明書のメリットは、相続人の中に連絡を取りづらい人や遠方にいる人がいる場合でも作成しやすい点です。
遺産分割協議証明書は、相続人各自が個別に作成するため、遠方に居住する相続人同士での書類のやり取りが容易です。全員の署名押印を1枚の書面に集める必要がないため、郵送や通信手段を利用して迅速に手続きを進めることができます。
また、相続人の中に連絡が取りにくい人がいる場合でも、協力的な相続人から順に書類を集めることができます。
遺産分割協議証明書のデメリット
遺産分割協議証明書の内容や署名が偽造される可能性がある
遺産分割協議証明書は個別に作成するため、全員で1つの書面を作成する遺産分割協議書に比べると偽造のリスクが高まります。偽造を防止するには、押印に実印を使用し、印鑑登録証明書の提出を求めるなどの対策が必要です。
相続人が協力しないと相続手続きが進まない
遺産分割協議証明書の作成に協力しない相続人がいる場合には、その他の相続人の遺産分割協議証明書を作成できたとしても、結局相続手続きが進まない可能性があります。
遺産分割協議証明書では対応してもらえない可能性がある
相続手続きでは、遺産分割協議書の提出が求められることが一般的なため、担当者が遺産分割協議証明書の扱いに慣れていない場合には、対応を断られる可能性があります。
遺産分割協議証明書のひな方
遺産分割協議証明書のひな方を紹介します。
表題
まずは冒頭に「遺産分割協議証明書」と表題を記載します。「遺産分割協議書」と間違えないように注意してください。
被相続人の情報
誰の相続についての遺産分割協議証明書なのかを特定するために、被相続人の情報を記載します。
具体的には、被相続人の名前、生年月日、死亡日、本籍地などを記載します。
遺産分割協議の合意
遺産分割協議を行って、各相続人が合意をした旨を記載します。
具体的には、「上記の被相続人の相続人である◯◯◯◯と◯◯◯◯は、遺産について協議を行った結果、次のとおり分割することに同意した。」などと記載します。
相続財産の分け方
各相続財産について、どの財産を誰が取得するのかを特定する必要があります。記載方法は、遺産分割協議書を作成する場合と同じです。詳しくは遺産分割協議書の記事で解説しているので、あわせてお読みください。
相続人の署名・押印
遺産分割協議証明書には、相続人が個別に署名・押印をします。署名は直筆で、押印に使用する印鑑は実印を使用しましょう。実印を持っていない場合は、市区町村役場で印鑑登録をしておきましょう。
遺産分割協議証明書の書式ダウンロード
遺産分割協議証明書の書式を以下のリンクからダウンロードできます。ぜひご活用ください。
このひな形は、遺産分割協議証明書に関する情報提供を目的としたものであり、内容を保証するものではありません。遺産分割協議証明書を作成する際は、弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
遺産分割協議証明書は、遺産分割協議書と同じ効力を持ちますが、メリットだけでなくデメリットもあるため、相続人の状況によって、どちらを作成するか慎重に決めましょう。
遺産分割協議書と遺産分割協議証明書のどちらを作成すべきか、他の相続人と事前に話し合うことも大切です。
遺産分割協議証明書の作成方法や文案に不安がある場合には、相続の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
- 監修者の名前
- 永原裕也弁護士
- 監修者の所属事務所
- 永原法律事務所
愛知県弁護士会所属。遺言書作成から遺留分・遺産分割まで幅広く相続の対応をしている。相談者に「安心」を提供することをモットーに、司法書士・税理士や不動産・保険等の専門家とも連携し、相談者一人一人の事情に沿ったオーダーメイドの解決をしている。
相続ガイド
生涯独身の「おひとりさま」が相続に向けてやっておくと良いこと7選、弁護士が徹底解説
生涯独身の「おひとりさま」が増えています。親族が誰もいない、もしくは疎遠になっている場合、自分が亡くなったあとの財産はどうなるのでしょうか。相続問題に詳しい田中伸顕弁護士に、おひとりさまが相続に向けてやっておくと良いことを聞きました。
「実家放置」の大きすぎる賠償リスク!4月から変わる相続登記のルール、注意すべきポイント
2024年4月1日に改正不動産登記法が施行され、相続登記が義務化されます。土地問題に詳しい荒井達也弁護士は「相続登記義務化をきっかけに、空き家などの不動産を放置したままにするリスクについて改めて考えてほしい」と話します。
相続や遺産分割の弁護士費用の相場はいくら?誰が払う?費用を抑える方法も解説
相続や遺産分割を弁護士に依頼した場合、費用がどのくらいかかるか不安な人もいるでしょう。この記事では、相続や遺産分割を依頼した場合の弁護士費用の内訳や相場を詳しく解説します。費用が払えない場合の対処法や弁護士の選び方についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
遺産を独り占めした人の末路は?そんなことできる?ケース別対処法を解説
相続する際、遺産を独り占めしたいと企む相続人も中にはいるでしょう。「遺産をすべて相続したい」と主張したり、遺産を隠したり使い込んだりするような場合です。また、「一人の相続人に全財産を譲る」という遺言が残されているケースもあります。このような場合でも、他の相続人には自身の相続分を主張する権利があります。この記事では、遺産の独り占めへの対処法を詳しく解説します。
寄与分とは?介護したらもらえる?認められる要件や相場、計算方法を解説
被相続人の生前に、介護や家業の手伝いなどの援助をしていた場合、相続する際に相続の取り分を増やしてほしいと考える相続人もいるでしょう。このようなケースでは、「寄与分」という形で相続分の増額を主張できる可能性があります。 寄与分が認められるのはどのような場合なのか、どの程度の増額が見込まれるのか、といった点について詳しく解説します。