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親が元気なうちに確認すべきこと5選、「まだ相続対策は必要ない」は大間違い【弁護士が解説】
もうすぐ年末年始を迎え、実家に帰省する人も多いでしょう。このタイミングで親と一度話しておきたいのが、相続や親が亡くなった後の話です。 「うちの親はまだまだ元気だから必要がない」、「うちはお金がないから大丈夫」、「兄弟仲がいいから大丈夫」と考えがちですが、「終活」にくわしい武内優宏弁護士は「相続対策は、元気なうちに準備しておくもの」と強調します。 さらに、相続で揉めないためには、「親がどうしたいかという意向を聞いておくことが一番大切」だといいます。そこで、親が元気なうちに確認すべきことを5つ挙げてもらいました。
目次
その1 お墓や遺骨をどうしたいかを聞いておく
先祖代々続くお墓がある場合、今後もお墓を持ち続けるのかどうかは話しておくと良いでしょう。
例えば、お墓が福岡にあり、親が札幌、子どもが東京に住んでいるというケースでは、お墓を管理し続けるのは大変です。ただ、親の意向もなしに、自分の世代で墓じまいを選択するのもなかなかプレッシャーですよね。
また、お墓がない場合は、新たにお墓を建てるのか。建てないとしたら、遺骨は納骨堂に預けるのか、散骨するのか、送骨するのか、樹木葬にするのか。費用にも差があります。納骨堂に預けるとなると一般的に数十万円かかることもありますし、遺骨を寺院に送って納骨してもらう送骨であれば、費用は数万円からできます。
親の意向を聞いておくと、あとから迷うことなく手続きができます。
その2 お葬式をどうするかを聞いておく
まず、お葬式をやるのかどうか。お葬式をやる場合には、規模や誰を呼びたいかを聞いておくと良いでしょう。万が一の時に、自宅の電話や親の携帯の電話帳を見ても、いったい誰に連絡すればいいのか分かりません。
親の交友関係を知らない場合、キーマンだけでも聞いておくと後々助かります。例えば、「(親が入っている)合唱サークルのリーダー、彼女に言うと皆に伝わると思うよ」と聞いていれば、まずキーマンに報告と相談をすることになるでしょう。
また、葬儀社などをどこにするか、生前に複数社見積もりを取っておいても良いと思います。実は、葬儀での料金トラブルは珍しくなく、消費者庁にも「慌てて選んだ葬儀社から希望とは異なる契約を強く勧められた」「葬儀の見積書がもらえず、請求も高額だと思う」という相談が寄せられています。
人は亡くなると、病院や施設、警察などの霊安室に運ばれるのが一般的ですが、遺体を安置できる時間には限りがあるので、どこかに遺体を搬送しなければなりません。ご自宅に連れて帰ることができれば良いのですが、そうでない場合、遺体の安置施設がある業者(葬儀社)リストを紹介されることもあります。
そのまま葬儀の話をされ、短時間で十分な話し合いができないまま、あれよあれよと見積もりが高額になってしまうことがあります。
こうしたことから、消費者庁も葬儀については事前に情報収集し、葬儀社を探しておくことを推奨しています。親がある程度の年齢になったら、準備しておくといいことの一つです。
その3 遺品・デジタル遺品をどうするかを聞いておく
特に自宅が賃貸の場合は、物件の引き渡し手続きがありますので、すばやく遺品整理をしなければなりません。
亡くなった人のものを捨てるのは、思い入れもありハードルが高いことです。捨てるものと捨てて欲しくないもの、形見分けで誰かにあげたいものがあるかについては、生前に聞いておくことをお勧めします。
また、最近よくご相談があるのが、亡くなった人が契約していたサブスクリプションサービスなどが分からないというものです。
昔はなんでも郵便でお知らせが届いていたので、亡くなったあとの郵便物を1か月ほど追っていれば、どのようなものを契約していたのかが分かりました。しかし、今はスマホで完結しているために、手がかりが何もないのです。
サブスクリプションサービスのほか、ネット銀行のアカウントやネット証券のアカウントなども聞いておくと良いでしょう。
また、iPhoneやパソコンのパスワードが分からないままだと何もできなくなってしまうので、亡くなった後に分かるようにパスワードはどこかにまとめておいてもらいましょう。
その4 生存確認の方法を決めておく
特に、親が一人暮らしであれば、生存確認の方法を決めておいたほうがいいです。誰にも看取られることなく自宅で突然亡くなり、その後しばらく放置されてから発見される「孤立死(孤独死)」も今や珍しくはありません。
そこで、まず定期的に自宅に訪問する人が誰かいるのかを確認しましょう。
地域の包括支援センターの人や近所の人とのコミュニケーションがある場合には、帰省の際に一言挨拶をして、自分の連絡先を伝えておくだけでも良いと思います。やはり異変を感じてもいきなり警察に連絡するのはハードルが高いですから、家族の連絡先を知っていたら気軽に連絡ができて良いですよね。
また、郵便局や新聞販売店、牛乳宅配などが自宅に訪問し、離れて暮らす家族の代わりに高齢者を見守るサービスも出ていますので、そうしたものを活用するのも一つの手だと思います。
その5 亡くなった後に手続きする人の労力や出費に報いるような相続対策を考える
人が亡くなったあとには、相続も含むさまざまな手続きがあります。よくセミナーでもお伝えしているのですが、相続は亡くなった後に一番頑張った人が一番損する制度なんです。
遺産分割というのは亡くなった時点での財産を精算する制度です。そのため、亡くなった後の手続きで発生したお金については、相続人間で合意があれば別ですが、法的には遺産分割で考慮できません。
例えば、葬儀費用は、喪主と葬儀社の間の契約なので、他の相続人には請求できません。
もちろん相続人間の仲が良ければ平等に負担してくれると思いますが、法的には相続債務にならないのです。これは遺品整理の費用も同じで、数十万円の請求のために訴訟を起こすとなると費用も手間もかかりますから、泣き寝入りになるケースが多いです。
相続での争いの火種というのは、こうした「なんで私だけが大変な思いをしているのに遺産分割は平等なんだ」「なんだかモヤモヤする」といった感情から生まれます。誰かがモヤモヤすることがなければ揉めません。ですから、亡くなった後の手続きをする人が決まっているなら、その人にプラスになるような対策をしておくと良いです。
具体的には、遺言書で相続分を増やす旨を書いたり生前贈与をしたりといった方法が考えられますが、生命保険の保険金受取人に指定しておくことも一つの手です。
遺言書は元気なうちに
以上が「親が元気なうちに確認すべきこと5つ」になりますが、やはり一番良いのはエンディングノートや遺言書を書いておいてもらうことです。
「遺言なんて不吉な…」という方がいらっしゃいますが、死ぬ間際に書く「遺書」と混同されていると思います。遺言は元気なうちでなければ書けないものです。認知症になって遺言能力がないとみなされると、遺言書を作っても無効となってしまいます。
人はいつ死ぬかわかりません。「争族」になることを防ぐために、ぜひ年末年始のタイミングでご家族と相続について話し合ってみてください。
【取材協力弁護士】
武内優宏弁護士/法律事務所アルシエン
葬儀社や納骨堂、海洋散骨業界団体など「終活」に関わる事業会社の法律顧問や遺言・相続に関する案件特に「おひとり様」の法律問題を多く扱う。近著に『Q&A 孤独死をめぐる法律と実務』(日本加除出版)等がある。
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