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任意後見制度のデメリットとは?成年後見との違いや費用などをわかりやすく解説
- 監修者の名前
- 小室光子弁護士
- 監修者の所属事務所
- こむろ法律事務所
任意後見制度を利用すると、認知症などに備えて、財産を管理してもらう人をあらかじめ指定できます。法定後見(成年後見・保佐・補助)との違いや、それぞれのメリット・デメリットを正しく理解した上で、状況に合わせて使い分けましょう。この記事では任意後見制度について、メリットやデメリット、成年後見との違い、費用などを解説します。
任意後見制度とは
任意後見制度とは、本人が十分な判断能力があるときに、あらかじめ自分で選んだ人(任意後見人)に、本人の判断能力が低下した際の財産管理などを任せる制度です。
任意後見制度の目的
任意後見制度の目的は、将来本人の判断能力が低下する事態に備えて、あらかじめ信頼できる人に財産管理などを任せられるようにすることです。
任意後見人には、あらかじめ締結した任意後見契約に基づき、本人の代わりに一定の行為をする代理権が与えられます。
たとえば、預貯金や不動産などの管理、年金の受け取り、税金などの支払いなど財産管理を代理でおこないます。また、介護や入院時の契約締結や費用の支払い、手続きなどの手配も仕事の一つです。
重要な法律行為(契約など)を、本人に代わって任意後見人が行えるようになるため、本人が認知症などで判断能力が不十分になった際の財産管理などをスムーズに行うことができます。
任意後見人と任意後見監督人の役割
任意後見制度では、「任意後見人」と「任意後見監督人」が本人の財産管理などに携わります。
任意後見人は、代理人として本人の財産を管理します。任意後見契約で定められた権限の範囲内で、任意後見人が本人のためにすることを示して法律行為(契約など)をした場合、その効果は本人に帰属します(民法99条1項)。
任意後見監督人は、任意後見人の職務が適正に行われているかどうかを監督します。
成年後見人などとは異なり、任意後見人は本人が自由に選べますが、その人選について家庭裁判所のチェックが入りません。そのため、任意後見人に騙されたりお金を使い込まれたりなどして、本人の利益が害されるリスクが高いと考えられます。
そこで任意後見については、任意後見監督人の選任が必須とされています。家庭裁判所によって選任される任意後見監督人が監督を行うことで、任意後見人の職務を適正化し、本人の利益の保護が図られています。
任意後見制度のメリット
任意後見制度には、法定後見制度(成年後見・保佐・補助)と比較した場合に、メリット・デメリットの両面があります。任意後見制度のメリットは、以下のとおりです。
任意後見人をあらかじめ本人が選べる
成年後見人・保佐人・補助人とは異なり、任意後見人は本人が自分で選べるため、信頼できる人に財産の管理を任せられます。
任意後見人の権限の内容を自由に決められる
民法で権限の内容が決まっている成年後見人・保佐人・補助人とは異なり、任意後見人の権限は任意後見契約で自由に定められるため、本人のニーズに応じたサポートが可能です。
将来の認知症対策として活用できる
成年後見・保佐・補助は本人の判断能力が低下してからでなければ利用できませんが、任意後見契約は判断能力が低下する前の段階で締結するため、将来の認知症対策として利用できます。
任意後見制度のデメリット
これに対して、任意後見制度のデメリットは、以下のとおりです。
任意後見人と任意後見監督人の両方に報酬を支払う必要がある
監督人の選任が任意である成年後見・保佐・補助とは異なり、任意後見では任意後見監督人の選任が必須とされています。
そのため、任意後見人と任意後見監督人の両方に報酬を支払う必要があり、経済的負担が増える可能性があります。
任意後見人の報酬に注意
家庭裁判所が報酬額を決定する成年後見人・保佐人・補助人(+任意後見監督人)とは異なり、任意後見人の報酬額は任意後見契約によって自由に決めることができます。
契約内容や依頼する専門家によっては、任意後見人の報酬が高額になることがあるので注意が必要です。
取消権が認められず、本人の保護が不十分となるおそれがある
成年後見人・保佐人・補助人には、本人が単独でした行為についての取消権が認められています。
これに対して任意後見人には、本人の行為の取消権が認められていません。たとえば、本人が勝手に財産を処分してしまった場合には、その処分行為を取り消すことができず、本人の保護が不十分となってしまうおそれがあります。
判断能力が低下してからでは、任意後見契約を締結できない
本人の判断能力の低下が進み、意思能力を失うに至った場合には、任意後見契約を締結できなくなります(民法3条の2)。この場合は、法定後見制度を利用しましょう。
任意後見と法定後見(成年後見など)の違い
任意後見と同じく、判断能力が低下した本人の法律行為をサポートする制度として「法定後見」があります。法定後見は、本人の判断能力低下の程度に応じて「後見(成年後見)」「保佐」「補助」の3種類に分かれています。
任意後見と法定後見の主な違いは、以下のとおりです。
後見人等の選任方法
任意後見人は、あらかじめ本人が任意後見人となる人を選ぶことができます。
これに対して成年後見人・保佐人・補助人は、家庭裁判所が選任します。申立ての際に候補者を推薦できますが、推薦した候補者が選ばれるとは限りません。
本人の判断能力低下の程度
任意後見は、認知症や精神障害などにより、支援を受けなければ、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することが難しい場合に開始します。
これに対して、「後見(成年後見)」「保佐」「補助」は以下のとおりです。
- 後見(成年後見)
支援を受けても、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することができない場合 - 保佐
支援を受けなければ、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することができない場合 - 補助
任意後見と同じ
判断能力低下の進行度としては、後見(成年後見)がもっとも進んでおり、保佐は中程度で、補助はもっとも軽度です。
監督人が必要かどうか
任意後見は、任意後見監督人の選任が必須とされています。
これに対して、成年後見では後見監督人、保佐では保佐監督人、補助では補助監督人の選任が可能とされていますが、必須ではなく任意です。
後見人等の権限の内容
任意後見人には、任意後見契約で定められた行為の代理権が付与されます。
これに対して、成年後見人には包括的な代理権が、保佐人・補助人には家庭裁判所の審判によって同意権・取消権(+代理権)が付与されます。
成年後見人・保佐人・補助人の権限内容については、民法でルールが定められています。
任意後見制度を利用する際の手続き
任意後見制度を利用する際の手続きは、以下のとおりです。
任意後見契約の締結・登記
本人の判断能力が正常な段階で、本人と任意後見受任者は任意後見契約を締結します。
任意後見受任者というのは、判断能力が不十分となったときに、任意後見人となってくれる人のことをいいます。
任意後見契約は、任意後見契約に関する法律により、公正証書で締結しなければなりません(同法3条)。公正証書を作成した後、公証人の嘱託により、法務局において任意後見契約の登記が行われます(後見登記等に関する法律5条)。
任意後見監督人の選任
本人の判断能力が低下して不十分となった場合、本人・配偶者・四親等内の親族・任意後見受任者は、家庭裁判所に対して任意後見監督人の選任を申し立てます。
家庭裁判所は任意後見の開始要件を審査した上で、適任と思われる者を任意後見監督人に選任します。
任意後見人を監督する任意後見監督人が選任されると、任意後見受任者は任意後見人となります(任意後見契約に関する法律2条3号、4号)。
任意後見の開始
任意後見監督人が選任されると、任意後見人は任意後見契約に従い、本人の財産の管理を開始します。
任意後見制度を利用する際の費用
任意後見制度を利用する際には、主に以下の費用がかかります。
任意後見契約の締結時に支払う費用
総額2万円程度
公証役場の手数料
- 法務局に納める印紙代
- 法務局への登記嘱託料
- 書留郵便料
- 正本および謄本の作成料
任意後見監督人の選任申立て時に支払う費用
総額数千円程度(鑑定が必要な場合には10万円程度)
- 申立手数料
- 登記手数料
- 連絡用の郵便切手
- 鑑定料
任意後見人の報酬
- 任意後見人との契約によって自由に決めることができる
- 身内が任意後見人になる場合は、無報酬とするケースもある
任意後見監督人の報酬
家庭裁判所が事案に応じて決定しますが、相場は以下のとおりです。
- 管理財産額が5000万円以下の場合:月額5000円~2万円程度
- 管理財産額が5000万円を超える場合:月額2万5000円~3万円程度
まとめ
任意後見制度は認知症対策などに活用できますが、法定後見制度(成年後見・保佐・補助)と比較するとメリット・デメリットの両面があります。
それぞれ制度の特徴を踏まえた上で、判断力が不十分になった人を保護するのにもっとも適切な制度は何かをよく検討しましょう。
画像素材:PIXTA
- 監修者の名前
- 小室光子弁護士
- 監修者の所属事務所
- こむろ法律事務所
旭川弁護士会所属。相続の問題は、専門的な知識が必要なことも多くあります。こじれてしまうと、長い時間を要したり、親族関係がうまくいかなくなったりすることもあります。心配なことがあったら先延ばしにせず、まずはお気軽にご相談ください。
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