- 公開日
- (更新日
相続登記の必要書類は? ケース別の種類や取得方法などを解説
- 監修者の名前
- 井上界弁護士
- 監修者の所属事務所
- 園田法律事務所
相続登記の申請に当たっては、登記申請書などの必要書類を提出しなければなりません。相続登記の必要書類は、どのような方法で財産を取得したかによって異なります。この記事では相続登記の必要書類について、常に必要となる書類・ケース別に異なる書類・各書類の取得方法・有効期限などを解説します。
目次
相続登記の必要書類1:常に必要となる書類
以下の書類は、相続登記の際に共通して必要となります。
※戸籍謄本の取得方法については、以下で紹介する方法のほか、2024年3月1日から戸籍がない市区町村役場でも申請ができるようになりました(広域交付)。詳しくは法務省のお知らせを参照ください。
必要書類 | 取得方法(作成方法) |
---|---|
登記申請書 | 1.法務局または地方法務局の窓口で交付を受け、必要事項を記載する 2.法務局ウェブサイトから様式をダウンロードして、必要事項を記載する |
不動産を取得する人の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)または戸籍個人事項証明書(戸籍抄本) | 1.戸籍がある市区町村の役所で申請する 2.戸籍がある市区町村の戸籍事務を取り扱う部署(機関)に対し、申請書などを郵送して申請する 3.コンビニエンスストアでマイナンバーカードを用いて申請する(自治体によっては対応していない場合あり) |
被相続人の本籍の記載がある住民票の除票または戸籍の附票の写し ※登記上の住所と本籍が一致する場合は不要 |
1.戸籍がある市区町村の役所で申請する 2.戸籍がある市区町村の戸籍事務を取り扱う部署(機関)に対し、申請書などを郵送して申請する |
不動産を取得する人の本籍の記載がある住民票または戸籍の附票の写し | 1.戸籍がある市区町村の役所で申請する 2.戸籍がある市区町村の戸籍事務を取り扱う部署(機関)に対し、申請書などを郵送して申請する 3.コンビニエンスストアでマイナンバーカードを用いて申請する(自治体によっては対応していない場合あり) |
不動産の固定資産評価証明書 | 1.不動産の所在地の市区町村の役所で申請する 2.不動産の所在地の市区町村の担当部署に対し、申請書などを郵送して申請する |
委任状 ※司法書士等に手続きを委任する場合のみ |
相続登記の手続きを委任する旨と委任先を記載し、署名・押印をして作成する |
なお、不動産を取得する人の戸籍全部(個人)事項証明書については、法定相続情報一覧図の写しで代用可能です。法定相続情報一覧図の写しは、以下のいずれかの登記所(法務局または地方法務局)に申し出ることで発行を受けられます。
- 被相続人の本籍地
- 被相続人の最後の住所地
- 申出人の住所地
- 不動産の所在地
相続登記の必要書類2:ケース別に異なる書類
さらに、不動産を相続する人の決め方に応じて、以下の書類が追加で必要になります。なお、戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)・除籍全部事項証明書(除籍謄本)・改製原戸籍謄本については、法定相続情報一覧図の写しで代用可能です。
遺言書に基づき不動産を取得する場合
必要書類 | 取得方法 |
---|---|
被相続人の死亡の記載がある戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)、除籍全部事項証明書(除籍謄本)または改製原戸籍謄本 | 1.戸籍がある市区町村の役所で申請する 2.戸籍がある市区町村の戸籍事務を取り扱う部署(機関)に対し、申請書などを郵送して申請する |
遺言書 ※原本。ただし、公正証書遺言の場合は正本または謄本、法務局で保管されている自筆証書遺言の場合は遺言情報証明書 |
1.自筆証書遺言の原本 ・被相続人の遺品等として保管されている ・法務局の遺言書保管所で保管されている 2.公正証書遺言の正本・謄本 ・被相続人の遺品等として保管されている ・公正証書遺言を作成した公証役場で再発行を受ける 3.遺言情報証明書 ・保管先の法務局または地方法務局で発行を受ける |
家庭裁判所の検認済証明書 ※公正証書遺言または法務局で保管されている自筆証書遺言については不要 |
家庭裁判所に遺言書の検認を申し立てて、検認期日の終了後に申請する |
遺産分割に基づき不動産を相続する場合
共通
必要書類 | 取得方法 |
---|---|
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)、 除籍全部事項証明書(除籍謄本)または改製原戸籍謄本 |
1.戸籍がある市区町村の役所で申請する 2.戸籍がある市区町村の戸籍事務を取り扱う部署(機関)に対し、申請書などを郵送して申請する |
相続人全員の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)または戸籍個人事項証明書(戸籍抄本) | 1.戸籍がある市区町村の役所で申請する 2.戸籍がある市区町村の戸籍事務を取り扱う部署(機関)に対し、申請書などを郵送して申請する |
協議の場合
必要書類 | 取得方法(作成方法) |
---|---|
遺産分割協議書 | 遺産分割の内容を記載した上で、相続人全員が印鑑登録された実印を押印して締結する |
相続人全員の印鑑登録証明書 | 1.印鑑登録のある市区町村の役所で申請する 2.コンビニエンスストアでマイナンバーカードを用いて申請する(自治体によっては対応していない場合あり) 3.印鑑登録のある市区町村の郵便局で申請する(自治体によっては対応していない場合あり) |
調停の場合
必要書類 | 取得方法 |
---|---|
調停調書の正本または謄本 | 1.家庭裁判所の窓口で交付を受ける 2.家庭裁判所に申請して郵送してもらう |
審判の場合
必要書類 | 取得方法 |
---|---|
審判書の正本または謄本 | 1.家庭裁判所の窓口で交付を受ける 2.家庭裁判所に申請して郵送してもらう |
確定証明書 | 1.家庭裁判所の窓口で交付を受ける 2.家庭裁判所に申請して郵送してもらう |
相続登記の必要書類に有効期限はある?
相続登記の必要書類には、原則として有効期限はありません。いつ取得したものであっても、相続登記の必要書類として利用できます。
ただし例外的に、不動産を取得する人および相続人の戸籍全部事項証明書または戸籍個人事項証明書については、被相続人の死亡後に取得したものでなければなりません。
遺贈や相続によって不動産の所有権を取得できるのは、被相続人の死亡時において生存している人に限られるためです。
相続登記の手続きは自分でもできる?
相続放棄の手続きは、司法書士などに依頼するのが一般的ですが、自分で行うこともできます。
自分で相続登記の手続きを行うと、司法書士などへの依頼費用を節約できる点が大きなメリットです。ただし、必要書類の準備などに手間がかかるほか、手続きに漏れが生じてトラブルになりやすい点がデメリットといえます。
相続登記の手続きを自分で行うか、それとも司法書士などに依頼するかについては、費用と手間や安心感を比較した上で適切にご判断ください。
まとめ
相続登記の手続きに必要となる書類は、家族構成や不動産を相続する人の決め方によって異なります。
スムーズに相続登記の手続きを進めるためには、あらかじめ必要書類を漏れなく揃えることが重要です。法務局または地方法務局に確認しつつ、必要に応じて司法書士などのアドバイスを受けましょう。
自分で相続登記の手続きを行うのが難しければ、司法書士などの専門家への依頼をおすすめします。必要書類の取得や登記申請の手続きを代行してもらえるので、手間が省ける上にミスを防ぐこともできます。
弁護士に相談すれば、司法書士の紹介を受けられることが多いです。遺産分割などについて弁護士に依頼する場合には、合わせて相続登記について司法書士を紹介してもらえるかどうか確認しましょう。
相続ガイド
生涯独身の「おひとりさま」が相続に向けてやっておくと良いこと7選、弁護士が徹底解説
生涯独身の「おひとりさま」が増えています。親族が誰もいない、もしくは疎遠になっている場合、自分が亡くなったあとの財産はどうなるのでしょうか。相続問題に詳しい田中伸顕弁護士に、おひとりさまが相続に向けてやっておくと良いことを聞きました。
「実家放置」の大きすぎる賠償リスク!4月から変わる相続登記のルール、注意すべきポイント
2024年4月1日に改正不動産登記法が施行され、相続登記が義務化されます。土地問題に詳しい荒井達也弁護士は「相続登記義務化をきっかけに、空き家などの不動産を放置したままにするリスクについて改めて考えてほしい」と話します。
相続や遺産分割の弁護士費用の相場はいくら?誰が払う?費用を抑える方法も解説
相続や遺産分割を弁護士に依頼した場合、費用がどのくらいかかるか不安な人もいるでしょう。この記事では、相続や遺産分割を依頼した場合の弁護士費用の内訳や相場を詳しく解説します。費用が払えない場合の対処法や弁護士の選び方についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
遺産を独り占めした人の末路は?そんなことできる?ケース別対処法を解説
相続する際、遺産を独り占めしたいと企む相続人も中にはいるでしょう。「遺産をすべて相続したい」と主張したり、遺産を隠したり使い込んだりするような場合です。また、「一人の相続人に全財産を譲る」という遺言が残されているケースもあります。このような場合でも、他の相続人には自身の相続分を主張する権利があります。この記事では、遺産の独り占めへの対処法を詳しく解説します。
寄与分とは?介護したらもらえる?認められる要件や相場、計算方法を解説
被相続人の生前に、介護や家業の手伝いなどの援助をしていた場合、相続する際に相続の取り分を増やしてほしいと考える相続人もいるでしょう。このようなケースでは、「寄与分」という形で相続分の増額を主張できる可能性があります。 寄与分が認められるのはどのような場合なのか、どの程度の増額が見込まれるのか、といった点について詳しく解説します。