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相続手続きの必要書類一覧!取り寄せ方法を詳しく解説【改正戸籍法対応】
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- 小室光子弁護士
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相続手続きには様々な書類が必要です。手続きの内容によって、共通して必要な書類と、独自に必要な書類とがあります。この記事では、各相続手続きの必要書類について、それぞれどのような書類なのかも含めて詳しく解説します。
目次
相続手続きに使われる代表的な必要書類
相続手続きに必要となる代表的な書類には、次のようなものがあります。
- 戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本、住民票の写し、戸籍の附票
- 印鑑証明書
- 不動産登記簿謄本
- 固定資産評価証明書
- 預貯金の残高証明書
- 遺産分割協議書
- 遺言書の検認済証明書、家庭裁判所の審判書 など
それぞれについて、どのような書類なのか、相続手続きにおいて必要となる主な場面と入手方法を解説します。
戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本が必要となる主な場面と入手方法
戸籍謄本とは、戸籍に記載されている全員の身分事項を証明するものです。
除籍謄本は、戸籍に記載されている全員が結婚や死亡などにより戸籍から削除され、誰もいなくなった戸籍(除籍)の内容を証明するものです。
改製原戸籍謄本は、法律の改正により戸籍の様式が変更される前の古い戸籍(改正原戸籍)の内容を証明するものです。
これらの戸籍に関する書類は、相続手続きにあたって、まず相続人を調査するために利用されます。被相続人の出生から死亡までの戸籍をたどることで、今まで知らなかった相続人の存在が判明することもあります。
また、預貯金の払い戻しや不動産の相続登記など、遺産を相続人が実際に引き継ぐ際の手続きにも戸籍の提出が求められます。
戸籍謄本を取得する方法
戸籍謄本を取得する方法は2種類あります。1つは、本籍地のある市区町村役場で取得する方法です。窓口または郵送で交付を請求できます。また、マイナンバーカードを利用すれば、コンビニで取得できる地域もあります。
被相続人が結婚と離婚を繰り返していたり、転居をしたりなどで本籍地の変更が何度もある場合には、以前の本籍地のある市区町村役場にも戸籍謄本の取得を申請しなければなりません。
こうした戸籍取得の時間や手間を短縮するため、2024年3月1日から、全国どこの市区町村役場でも一括してすべての戸籍謄本を取得できるようになりました(広域交付)。取得したい戸籍謄本が複数の市区町村役場に存在する場合でも、一つの市区町村役場でまとめて申請できます。
ただし、郵送はできず、代理申請もできないため、本人が窓口に行く必要があります。また、戸籍の附票は広域交付の制度は利用できません。自身の取得したい戸籍謄本が広域交付で取得できるか気になる場合は、詳しくは最寄りの市区町村役場に問い合わせましょう。
戸籍謄本は何通必要?
戸籍謄本は手続きごとに提出する必要があるので、手続きの数だけ戸籍謄本が必要です。ただし、「原本還付」や「法定相続情報証明制度」という手続きを利用することで、用意する戸籍謄本を最小限に抑えることができます。
「原本還付」とは、戸籍謄本を提出した後に、必要な情報を確認がとれたら、提出した戸籍謄本を返却してもらえる手続きです。原本還付を受けることにより、1セットの戸籍謄本を別の手続きに使うことができます。原本還付が可能かどうかは、手続きの窓口に問い合わせてください。
「法定相続情報証明制度」とは、戸籍謄本の代わりに相続手続きに利用できる「法定相続情報一覧図」を作成する手続きです。法定相続人のそれぞれの続柄や氏名、住所などを記載した「法定相続情報一覧図」を自分で作成し、戸籍謄本とともに法務局へ提出すると、法務局が「法定相続情報一覧図の写し」を発行してくれます。この「法定相続情報一覧図の写し」を、戸籍謄本の代わりに相続手続きに提出できます。この制度は無料で利用できるので、相続手続きが多数ある場合には、先に「法定相続情報一覧図の写し」を複数枚取得しておくと便利です。
住民票の写し、戸籍の附票が必要となる主な場面と入手方法
「住民票の写し」とは、住民票の原本に記載されている事項を写したものです。 氏名や住所、生年月日などが記載されます。
戸籍の附票とは、新しく戸籍を作った時以降の住民票の移り変わりを記録したものです。
住民票の写しや戸籍の附票は、戸籍謄本に記載された住所と被相続人の最後の住所が異なる場合に、被相続人の最後の住所を証明するために利用されます。相続手続きでは、不動産の相続登記や、自動車の名義変更などで提出を求められることがあります。
住民票の写しを取得するには、住民登録をしている自治体の窓口に必要書類を提出します。
戸籍の附票を取得するには、本籍地のある自治体の窓口に必要書類を提出します。
印鑑証明書が必要となる主な場面と入手方法
印鑑証明書とは、市区町村役場に登録された印鑑を公的に証明する書類のことです。
遺産分割協議書を作成する際などに相続人の印鑑が必要になります。その印鑑が本当に相続人のものであることを証明するために、遺産分割協議書に相続人の印鑑証明書を添付します。
また、遺産分割協議書を用いて遺産の名義変更などの手続きを行う場合で、遺産分割協議書に印鑑証明書が添付されていない場合には、別途印鑑証明書の提出が求められることがあります。
印鑑証明書を取得するには、市区町村役場の窓口や、証明書自動交付機、コンビニエンスストア、オンラインで申請します。まだ印鑑登録をしていない場合には、先に印鑑登録を行います。
不動産の登記事項証明書・固定資産評価証明書が必要となる主な場面と入手方法
不動産の登記事項証明書とは、法務局に登録されている登記の内容を証明する書類のことです。
固定資産評価証明書とは、土地や建物などの固定資産の評価額を証明する書類です。
不動産の登記事項証明書は、遺産を調査する際に、不動産の名義や権利関係を確認するために使用します。また、不動産の登記名義を変更する際に提出を求められます。
固定資産評価証明書は、遺産分割をする際に、不動産の評価額を決めるための参考にします。また、遺産分割後に不動産の登記名義を変更する際、登録免許税の算定をするためにも必要です。
不動産の登記事項証明書を入手するには、法務局で必要書類を提出します。
固定資産評価証明書を入手するには、不動産が所在する市町村役場の窓口に必要書類を提出します。
預貯金の残高証明書が必要となる主な場面と入手方法
預貯金の残高証明書とは、預貯金口座の残高を証明する書類です。
預貯金の残高証明書は、遺産を調査する際に、預貯金の残高を確認するために取得します。また、相続税申告の際に必要書類として提出を求められます。
預貯金の残高証明書を取得するには、預貯金口座のある金融機関の窓口へ出向いて手続きを行います。
遺産分割協議書が必要となる主な場面と入手方法
遺産分割協議書とは、遺産分割について相続人全員が話し合って合意した内容を記載した書面です。
遺言が残されていない場合には、遺産の分け方を相続人が話し合って決める必要があります。その後、遺産の名義変更をする際に、その手続きが相続人全員の合意に基づいていることを証明するために、遺産分割協議書の提出が求められます。
遺産分割協議書は、どこかの窓口で入手するわけではなく、相続人が話し合いに基づいて作成します。
遺言書の検認済証明書が必要となる主な場面と入手方法
遺言書の検認済証明書とは、被相続人が自分で作成した遺言(自筆証書遺言)がある場合に、家庭裁判所で「検認」という手続きを受けたことを証明する書類です。
検認は、相続人に遺言の存在と内容を知らせるとともに、遺言書の状態や内容を明確にすることで遺言書の偽造を防止するための手続です。
自筆証書遺言に記載された内容をもとに遺産の名義変更などの手続きを進める場合には、検認済証明書の提出が求められます。
ここからは、各相続手続きごとに必要となる書類を紹介していきます。
遺産分割協議書を作成する際の必要書類
遺産分割協議書を作成する際に用意しておくとよい書類として、次のようなものが挙げられます。
- 被相続人の戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人の印鑑登録証明書
- 財産目録
- 相続放棄受理証明書
- 寄与分や特別受益を証明する書類
遺産分割協議書を作成する前提として、遺産分割協議を行う際には、相続人や遺産を調査しなければなりません。そのため、相続人を調べるための戸籍謄本や、遺産を調査した結果を一覧にした財産目録が必要になります。同様に、相続放棄をした相続人がいる場合には、相続放棄の手続きが完了していることを確認するために、相続放棄受理証明書をもらっておくとよいでしょう。
相続人の中に、寄与分や特別受益を主張する人がいる場合には、寄与分や特別受益について話し合うための資料として、それらを証明する書類を提出してもらいましょう。客観的な資料があることで話し合いを冷静に進めやすくなります。
遺産分割協議書には相続人の押印が必要です。押印に使われた印鑑が相続人のものであることを証明するために、各相続人の印鑑証明書を遺産分割協議書に添付しておくとよいでしょう。
遺産分割協議書の内容に不備があると、相続手続きができず、改めて作成し直す手間が生じます。もし内容に不安や疑問がある場合には、一度弁護士に相談することをおすすめします。
相続した預貯金を引き出すための必要書類
相続した預貯金を引き出す際には、金融機関にもよりますが、次のような書類の提出が求められます。詳しくは各金融機関に確認しましょう。
- 被相続人が生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続届
- 通帳・キャッシュカードなど
- 遺言書(遺言書がある場合)
- 検認済証明書(遺言書がある場合)
- 遺言執行者の選任審判書謄本(遺言執行者が選任されている場合)
- 遺産分割協議書(遺産分割協議書がある場合)
相続税申告の必要書類
相続税を申告する際には、必要書類として、申告書のほかに次のような書類の提出が求められます。
相続税申告の必要書類は、特例の適用の有無や、遺産の内容などによって異なります。詳しくは税務署に確認しましょう。
特例の適用がない場合に必要な書類 | 具体例など |
---|---|
マイナンバーを確認できる書類 | ・マイナンバーカードの写し ・マイナンバー通知カードの写し ・住民票(マイナンバーの記載があるもの)の写し など |
記載されたマイナンバーの持ち主であることを確認できる書類 | ・マイナンバーカードの写し ・運転免許証の写し ・身体障害者手帳の写し ・パスポートの写し ・在留カードの写し ・公的医療保険の被保険者証の写し など |
相続人を確認するための書類 | ・被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍謄本またはそのコピー(被相続人が亡くなった日から10日を経過した日以後に作成されたもの ) ・図形式の法定相続情報一覧図の写しまたはそのコピー(法定相続情報証明制度を利用した場合) |
遺言書または遺産分割協議書の写し | 遺言書または遺産分割協議書の写し |
相続人全員の印鑑証明書 | 遺産分割協議書に実印を押印した場合に必要です |
申告書に記載した金額の根拠となる資料 | 不動産がある場合 ・固定資産税評価証明書 ・登記簿謄本 ・公図、測量図 ・賃貸借契約書 など 有価証券がある場合 ・残高証明書 など 預貯金がある場合 ・残高証明書 ・通帳のコピー など 生命保険がある場合 ・支払通知書 など 非上場株式がある場合 ・過去3期分の税務決算書一式 ゴルフ会員権がある場合 ・ゴルフ会員権証書 過去3年以内の贈与がある場合 ・過去に税務署に提出した贈与税の申告書 債務や葬儀費用がある場合 ・残高証明書 ・領収書 など |
配偶者の税額軽減の特例を受ける場合
配偶者の税額軽減の特例を受ける場合には、次のような書類が必要です。
配偶者の税額軽減の特例を受ける場合に必要な書類 | 具体例など |
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マイナンバーを確認できる書類 | ・マイナンバーカードの写し ・マイナンバー通知カードの写し ・住民票(マイナンバーの記載があるもの)の写し など |
記載されたマイナンバーの持ち主であることを確認できる書類 | ・マイナンバーカードの写し ・運転免許証の写し ・身体障害者手帳の写し ・パスポートの写し ・在留カードの写し ・公的医療保険の被保険者証の写し など |
相続人を確認するための書類 | ・被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍謄本またはそのコピー(被相続人が亡くなった日から10日を経過した日以後に作成されたもの ) ・図形式の法定相続情報一覧図の写しまたはそのコピー(法定相続情報証明制度を利用した場合) |
遺言書または遺産分割協議書の写し | 遺言書または遺産分割協議書の写し |
相続人全員の印鑑証明書 | 遺産分割協議書に実印を押印した場合に必要です |
申告期限後3年以内の分割見込書 | 申告期限内に分割ができない場合に必要です。 |
申告書に記載した金額の根拠となる資料 | 不動産がある場合 ・固定資産税評価証明書 ・登記簿謄本 ・公図、測量図 ・賃貸借契約書 など 有価証券がある場合 ・残高証明書 など 預貯金がある場合 ・残高証明書 ・通帳のコピー など 生命保険がある場合 ・支払通知書 など 非上場株式がある場合 ・過去3期分の税務決算書一式 ゴルフ会員権がある場合 ・ゴルフ会員権証書 過去3年以内の贈与がある場合 ・過去に税務署に提出した贈与税の申告書 債務や葬儀費用がある場合 ・残高証明書 ・領収書 など |
まとめ
相続手続きには多くの書類が必要ですが、被相続人の戸籍謄本や遺産分割協議書など、他の手続きにも流用できる書類もあります。必要書類を効率よく入手するには、計画的に進めることが重要です。書類収集に時間がかかる場合や、忙しさから時間を十分に取れない場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
- 監修者の名前
- 小室光子弁護士
- 監修者の所属事務所
- こむろ法律事務所
旭川弁護士会所属。相続の問題は、専門的な知識が必要なことも多くあります。こじれてしまうと、長い時間を要したり、親族関係がうまくいかなくなったりすることもあります。心配なことがあったら先延ばしにせず、まずはお気軽にご相談ください。
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