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土地の相続手続き、流れや分割方法、税金、注意点などを解説

- 監修者の名前
- 関根翔弁護士
- 監修者の所属事務所
- 池袋副都心法律事務所
土地を相続する際には、遺産分割・相続登記・相続税申告などの手続きが必要です。分割方法や税金などの注意点を踏まえつつ、スムーズな遺産分割を目指しましょう。この記事では土地の相続について、手続きの流れ・遺産分割の方法・税金・注意点などを解説します。
目次
土地を相続する際の手続きの流れ
土地を相続する際の手続きは、大まかに以下の流れで進行します。
- 土地を含めた遺産の分け方を決める
- 土地の相続登記(名義変更)を行う
- 相続税の申告・納付を行う
土地を含めた遺産の分け方を決める
遺言書がある場合は、その内容に従って土地を相続します。
遺言書がない場合や、土地の相続方法が遺言書に記載されていない場合には、協議・調停・審判によって遺産分割を行い、土地を含めた遺産の分け方を決めます。
土地の相続登記(名義変更)を行う
遺言書または遺産分割によって土地を相続することになった人は、法務局または地方法務局で相続登記の手続きを行い、所有権移転登記を取得します。
登記手続きの詳細については、後述します。
相続税の申告・納付を行う
課税対象となる相続財産等の総額が基礎控除額を超えている場合には、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告・納付を行います。
※基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数
なお、土地について小規模宅地等の特例の適用を受ける場合には、税額がゼロであっても相続税の申告が必要です。
相続した土地はどう分ける? 遺産分割の方法
相続財産である土地の分割方法は、「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」の4通りです。
現物分割
「現物分割」は、土地を分筆した上で物理的に分ける方法です。面積に応じて公平に分けやすい点がメリットである反面、土地が細分化しすぎると使いにくくなることがあります。
代償分割
「代償分割」は、一部の相続人が土地を取得する代わりに、他の相続人に対して代償金を支払う方法です。
土地を必要とする相続人と、そうでない相続人の両方のニーズを満たせるメリットがある反面、代償金の準備が難しいケースや、複数の相続人が土地の取得を希望するケースではうまくいかないことがあります。
換価分割
「換価分割」は、土地を売却して代金を分ける方法です。1円単位で公平に分割できる点がメリットですが、土地の場所や状態によっては買い手が付かないケースもあります。
共有分割
「共有分割」は、土地を複数の相続人と共有する方法です。複数の相続人が土地の取得を希望する場合に選択されることがありますが、共有者間でトラブルが発生するリスクが高いのが難点です。
土地の相続登記(名義変更)の手続き
土地の相続登記の申請先は、土地の所在地を管轄する法務局または地方法務局です。窓口申請のほか、郵送申請やオンライン申請も認められています。
相続登記手続きの必要書類は、土地の分割方法をどのように決めたかによって異なります。主な必要書類は以下のとおりです。
遺言書に基づいて土地を取得した場合の必要書類
- 登記申請書
- 遺言書
- 検認証明書
※公正証書遺言、法務局で保管されている自筆証書遺言については不要 - 被相続人の本籍が記載された住民票と戸籍の附票
- 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本、除籍謄本または改製原戸籍謄本
※法定相続情報一覧図で代用可能 - 土地を取得する者の戸籍謄本
- 土地を取得する者の住民票
- 土地の固定資産評価証明書
- 委任状(代理申請の場合)
遺産分割協議に基づいて土地を取得した場合の必要書類
- 登記申請書
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 被相続人の本籍が記載された住民票と戸籍の附票
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本または改製原戸籍謄本
※法定相続情報一覧図で代用可能 - 相続人全員の戸籍謄本
※法定相続情報一覧図で代用可能 - 土地を取得する者の住民票
- 土地の固定資産評価証明書
- 委任状(代理申請の場合)
相続した土地にかかる税金
相続した土地には、以下の税金がかかることがあります。
- 相続税
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 固定資産税
相続税
課税対象となる相続財産等の総額が基礎控除額を超えている場合には、原則として相続税が課されます。
※基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数
相続税の金額は、土地だけでなく相続財産等の総額を基に計算します。相続税が課される場合は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納付が必要です。
登録免許税
土地の相続登記の手続きを行う際には、法務局に登録免許税を納付する必要があります。
登録免許税の金額は、固定資産税評価額に一定の割合をかけて計算します。相続人が土地を相続した場合の税率は0.4%、相続人以外の者が遺贈によって土地を取得した場合の税率は2% です。
不動産取得税
不動産取得税は、相続した土地については非課税とされていますが、相続人以外の者が特定遺贈によって土地を取得した場合には課税されます。
この場合、不動産取得税の税率は固定資産税評価額の3%です。
固定資産税
毎年1月1日時点における登記簿上の土地所有者に対しては、固定資産税が課されます。固定資産税の税率は、固定資産税評価額の1.4%です。都市計画区域にある土地の場合は、さらに都市計画税が課されます。
相続した土地を売却する場合の手続き
相続した土地を売却する際の手続きは、大まかに以下のとおりです。弁護士に相談すれば、不動産業者や司法書士を紹介してもらえることがあります。
-
不動産業者への相談・依頼
不動産業者に対して、売却の仲介を依頼します。不動産業者に土地を買い取ってもらえることもあります。 -
買主候補との交渉
買主候補との間で、売却価格などの条件について交渉を行います。 -
売買契約の締結・手付金の支払い
条件面で合意がととのったら、その内容をまとめた売買契約を締結します。契約締結時に手付金(売却価格の5%程度)が支払われるのが一般的です。 -
売買の実行・所有権移転登記手続き
売買契約の定めに従い、土地の売買を実行して所有権を移転します。司法書士に依頼して、即日で所有権移転登記手続きを行うのが一般的です。
土地を相続する際の注意点
土地を相続する際には、特に以下の2点に注意しましょう。
- 管理の負担を考慮する、大変な場合は相続土地国庫帰属制度などを検討すべき
- 共有分割はトラブルになりやすい、他の方法による分割を
管理の負担を考慮する、大変な場合は相続土地国庫帰属制度などを検討すべき
土地が遠方に存在する場合などには、管理の負担が重くなることがあります。土地の相続を希望するかどうかは、管理の負担も考慮した上で慎重に判断しましょう。
管理が大変な土地については、「相続土地国庫帰属制度」を利用することも有力な選択肢です。一定の負担金を支払えば、相続した土地を国に引き取ってもらえることがあります。
詳しくは以下の記事で解説しているので、あわせてお読みください。
関連記事:相続土地国庫帰属制度とは?国が引き取る土地の要件、手続きの流れや費用を解説
共有分割はトラブルになりやすい、他の方法による分割を
土地の相続を希望する人が複数いるなど、分割方法についての話し合いがなかなかまとまらない場合でも、土地を共有のままにすること(=共有分割)は避けた方が無難です。
共有状態の土地については、賃貸や売却に当たって共有者間で意思決定を行わなければなりません。その際、共有者間で意見が食い違ってトラブルになるケースが非常に多く見られます。
共有トラブルを避けるため、遺産分割の際には現物分割・代償分割・換価分割のいずれかを行い、土地の共有状態を解消しておきましょう。
まとめ
土地の相続に関しては、遺産分割・相続登記・相続税申告などさまざまな手続きが必要となります。分割方法も複数存在し、それぞれ異なるメリット・デメリットがあるので、どの方法を選択するかについて慎重な検討が必要です。
弁護士に相談すれば、土地の相続手続きについて総合的なアドバイスとサポートを受けられます。税理士・司法書士・不動産会社と連携している弁護士であれば、あらゆる手続きについてワンストップで対応してもらえるでしょう。
土地の相続については、弁護士にご相談ください。

- 監修者の名前
- 関根翔弁護士
- 監修者の所属事務所
- 池袋副都心法律事務所
東京弁護士会所属。相続問題は複雑な法理論を必要とし、また、事実関係が複雑であり、収集すべき証拠も多くなる傾向にあります。当事務所では、手間を惜しまず綿密な計画を事前に立て、迅速に行動することをモットーとしています。
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