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相続した土地の名義変更は自分でできる? 手続きの流れや費用などを解説

- 監修者の名前
- 田中伸明弁護士
- 監修者の所属事務所
- 旭合同法律事務所
土地を相続した場合は、法務局で名義変更(相続登記)の手続きを行う必要があります。この記事では土地の名義変更(相続登記)について、手続きの流れ・必要書類・費用・注意点などを解説します。
目次
相続した土地は名義変更(相続登記)が必要
土地の所有権を第三者に対抗(主張)するためには、所有権移転登記を備えなければなりません(民法177条)。たとえば、土地を売却または賃貸する際には、あらかじめ所有権移転登記を備える必要があります。
相続によって取得した土地についても、相続人は法務局で名義変更(相続登記)の手続きを行わなければ、第三者に対して所有権を主張することができません。
また、2024年4月1日以降は、相続等によって土地を取得してから3年以内の相続登記が義務化されます。2024年3月以前に取得した相続土地については、2027年4月1日までに相続登記の手続きを行わなければなりません。
相続によって土地を取得したら、早めに名義変更(相続登記)の手続きを行いましょう。
土地の名義変更(相続登記)手続きの流れ
相続した土地の名義変更(相続登記)の手続きは、以下の流れで行います。
- 司法書士などに依頼する
- 登記申請書・添付書類を準備する
- 法務局・地方法務局に対して登記を申請する
司法書士などに依頼する
専門家に登記手続きを依頼する場合、依頼先は主に司法書士となります。弁護士が対応していることもあります。
なお、自分で登記手続きを行うことも可能で、その場合は専門家への依頼は必要ありません。
登記申請書・添付書類を準備する
登記申請に当たっては、登記申請書と添付書類を法務局に提出する必要があるので、各書類を準備します。どのような書類が必要であるかは後述します。
法務局・地方法務局に対して登記を申請する
土地の所在地を管轄する法務局または地方法務局に対して、登記申請を行います。窓口における申請および郵送による申請のほか、オンライン申請も可能です。
土地の名義変更(相続登記)の必要書類
相続した土地の名義変更(相続登記)を申請する際には、主に以下の書類が必要になります。
- 遺言に基づく場合
- 登記申請書
- 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本、除籍謄本または改製原戸籍謄本
- 土地を取得する者の戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票、または戸籍の附票
- 土地を取得する者の住民票、または戸籍の附票
- 固定資産評価証明書
- 遺言書(検認が必要な場合は、検認調書も)
- 遺産分割協議に基づく場合
- 登記申請書
- 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、除籍謄本または改製原戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票、または戸籍の附票
- 土地を取得する者の住民票、または戸籍の附票
- 固定資産評価証明書
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 法定相続分に従う場合
- 登記申請書
- 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、除籍謄本または改製原戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票、または戸籍の附票
- 土地を取得する者の住民票、または戸籍の附票
- 固定資産評価証明書
土地の名義変更(相続登記)にかかる費用
相続した土地の名義変更(相続登記)を申請する際には、主に以下の費用がかかります。
- 公的書類の取得費用
- 登録免許税
- 司法書士などへの依頼費用
公的書類の取得費用
登記申請に当たっては、戸籍謄本などの公的書類を添付する必要があるので、その取得費用がかかります。具体的な金額は相続人の構成などによって異なりますが、合計数千円程度に収まるケースが多いです。
登録免許税
相続した土地の登記申請を行う際には、登録免許税を納付しなければなりません。
窓口申請または郵送申請の場合は、登記申請書に収入印紙を貼付します。オンライン申請の場合は、オンラインで登録免許税を納付することになります。
登録免許税の税率は、土地の固定資産税評価額に対して以下のとおりです。
- 相続人が土地を取得した場合:0.4%
- 相続人以外の者が遺贈によって土地を取得した場合:2%
なお、相続人が相続または遺贈によって土地を取得した場合において、数次相続(=複数の段階の相続)によって複数回の相続登記が必要である場合は、2025年3月31日までに登記手続きを行えば、登録免許税が1回分で済みます。
司法書士などへの依頼費用
相続登記の手続きを司法書士などに依頼する場合は、依頼費用を支払う必要があります。
司法書士に依頼する場合、具体的な金額は依頼先によって異なりますが、土地1筆当たり5万円から15万円程度が標準的です(登録免許税などは別途)。
土地の名義変更(相続登記)は自分でできるのか?
相続した土地の名義変更(相続登記)の手続きは、司法書士などに依頼せず自分で行うこともできます。
相続登記の手続きについては、法務局が「登記手続ハンドブック」を公表しています。自分で相続登記の手続きを行う際には、登記手続ハンドブックを参照して必要書類を準備しましょう。
ただし、相続登記の手続きには専門的な部分があるため、一般の方が自分で調べながら対応するのは大変です。
また、登記申請書や戸籍謄本など多くの書類を準備する必要があるため、時間と労力が大幅にかかります。さらに、申請書類に不備があると補正を求められるなど、二度手間となってしまうケースも多いです。
相続登記の手続きをスムーズに行うためには、司法書士などへの依頼をおすすめします。申請書類の準備から実際の申請手続きまで、必要な対応を一任できるので安心です。
すでに弁護士に依頼している場合は、弁護士に相談すれば司法書士の紹介を受けることができます。
土地の名義変更(相続登記)に関する注意点
相続した土地の名義変更(相続登記)は、2024年4月1日に施行される改正不動産登記法によって義務化されます。相続の開始および土地の所有権取得を知ってから3年以内に手続きを行う必要があるため、早めに準備を進めましょう。
また、相続登記を行わないままに次の相続が発生すると(=数次相続)、多段階の相続登記が必要になることがあります。手間が増える上にトラブルのリスクも高まるので、数次相続が発生する前に遺産分割を完了し、速やかに相続登記の手続きを済ませましょう。
まとめ
相続した土地の名義変更(相続登記)は、土地の所在地を管轄する法務局または地方法務局に対して、窓口・郵送・オンラインのいずれかの方法で申請します。2024年4月1日以降は3年以内の相続登記が義務付けられるため、早めに登記申請を行いましょう。
相続登記の手続きに当たっては、主に司法書士に依頼するか、または自分で行うのかの2通りの選択肢があります。
自分で対応すれば司法書士費用を節約できますが、登記手続きには専門的な部分が多いので、基本的には司法書士に依頼するのが安心です。遺産分割などについてすでに弁護士へ依頼している場合は、弁護士に相談すれば信頼できる司法書士を紹介してもらえるでしょう。
相続手続きは、専門家に依頼することがトラブルの回避に繋がります。相続登記を含む遺産相続に関するお悩みは、弁護士にご相談ください。

- 監修者の名前
- 田中伸明弁護士
- 監修者の所属事務所
- 旭合同法律事務所
愛知県弁護士会所属。相談者様・依頼者様から丁寧にご事情をお伺いして、それぞれのご家庭にとって望ましい解決策を真摯に検討・ご提案いたします。当事者だけでは解決が難しい相続問題も、弁護士が法的に整理して対応すれば解決できます。
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