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代襲相続の範囲はどこまで?相続分がどうなるかについても解説

- 監修者の名前
- 太田貴久弁護士
- 監修者の所属事務所
- 西川・太田法律事務所
相続が発生する前の段階で、被相続人の子や兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合などには、「代襲相続」によって孫や甥・姪などが相続人になることがあります。代襲相続が発生すると、相続人が増えてトラブルになるリスクが高まるので、弁護士に依頼するのが安心です。 この記事では代襲相続について、発生するケース・対象となる親族・相続分・注意点などを解説します。
目次
代襲相続とは
「代襲相続」とは、相続権を失った人の代わりに、その子が相続権を得ることをいいます。
民法において代襲相続が認められているのは、代襲相続人の将来的な相続に対する期待を保護するためです。
親が相続権を失った場合、その分親の財産が減るため、自分が将来的に相続できる財産も減ります。本人には責任がないにもかかわらず、親の相続権の喪失によって子が不利益を被ってしまうのは酷な面があります。
そこで民法では、一定の事由によって親が相続権を失った場合には、子に代襲相続人として遺産を相続することを認めています(民法887条、889条)。
代襲相続が発生するケース
代襲相続が発生するのは、以下のいずれかに該当する場合です。なお、相続放棄は代襲相続の対象外である点にご注意ください。
- 相続開始以前に相続人が死亡した場合
- 相続欠格に該当した場合
- 推定相続人の廃除の審判がなされた場合
相続開始以前に相続人が死亡した場合
被相続人よりも先に推定相続人が亡くなった場合は、推定相続人の子が代襲相続人となります。
たとえば祖父が亡くなった際、その子である父がすでに死亡していた場合には、代襲相続によって祖父の遺産を相続できます。
相続欠格に該当した場合
相続欠格によって相続権を失った人の子は、代襲相続によって相続人となります。
相続欠格となるのは、以下のうちいずれかの行為をした場合です(民法891条)。
-
故意に被相続人・先順位相続人・同順位相続人を死亡させ、または死亡させようとしたために刑に処せられたこと
-
被相続人が殺害されたことを知りながら、告発または告訴をしなかったこと
※是非の弁別がない場合、および殺害者が自己の配偶者または直系血族であった場合を除く -
詐欺または強迫によって、遺言やその撤回・取り消し・変更を妨害したこと
-
詐欺または強迫によって遺言をさせ、または遺言を撤回・取り消し・変更させたこと
-
被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿したこと
推定相続人の廃除の審判がなされた場合
被相続人に対する虐待や重大な侮辱、その他の著しい非行があった推定相続人については、被相続人の申立てにより、家庭裁判所が廃除の審判を行います(民法892条)。
家庭裁判所によって推定相続人の廃除の審判を受けた人は、相続権を失います。この場合、廃除によって相続権を失った人の子が代襲相続人となります。
代襲相続人になれる人は?どこまでの親族が対象?
代襲相続人になれるのは、被相続人の子が相続権を失った場合はその直系卑属、被相続人の兄弟姉妹が相続権を失った場合はその子である甥・姪です。
被相続人の子が相続権を失った場合、孫以降何代でも代襲相続できる
被相続人の子が死亡・相続欠格・廃除によって相続権を失った場合は、その子である被相続人の孫が代襲相続人となります(民法887条2項)。
また、被相続人の孫が同様に相続権を失った場合は、さらにその子である被相続人のひ孫が代襲相続人となります。玄孫以降も同様で、被相続人の直系卑属であれば、理論的には何代でも代襲相続することが可能です(同条3項)。
被相続人の兄弟姉妹が相続権を失った場合、甥・姪のみ代襲相続できる
被相続人の兄弟姉妹が死亡・相続欠格・廃除によって相続権を失った場合は、その子である被相続人の甥・姪が代襲相続人となります(民法889条2項)。
被相続人の孫以降の直系卑属は何代でも代襲相続できますが、被相続人の甥・姪が相続権を失った場合には、その子(=又甥、又姪、姪孫)は代襲相続人になりません。
被相続人の兄弟姉妹の代襲相続は、甥・姪の一代までに限られています。
代襲相続人の相続分はどうなる?
代襲相続人の相続分は、相続権を失った人(=被代襲者)と同じになります。代襲相続人が複数いる場合は、人数に応じて均等に相続分を按分します。
(例)
法定相続分が4分の1である被相続人の子を代襲相続する場合
被代襲者の子の人数 | 代襲相続人1人当たりの法定相続分 |
---|---|
1人 | 4分の1 |
2人 | 8分の1 |
3人 | 12分の1 |
4人 | 16分の1 |
代襲相続に関する注意点
代襲相続が発生している場合は、以下の各点に十分ご注意ください。
- 相続人が増えてトラブルが生じやすくなる
- 代襲相続人を参加させないと、遺産分割が無効になる
- 代襲相続人にも遺留分がある、ただし甥・姪は例外
相続人が増えてトラブルが生じやすくなる
代襲相続人が複数いる場合は、通常の相続に比べて相続人の数が増えます。また、代襲相続人と他の相続人の関係性が疎遠であるケースも多いため、遺産分割について揉めてしまうリスクが高くなります。
トラブルなく遺産分割を終えるためには、弁護士のサポートを受けることが効果的です。弁護士に依頼すれば、他の相続人との間で調整を行い、円満な遺産分割に向けて尽力してもらえます。
代襲相続人を参加させないと、遺産分割が無効になる
遺産分割は、相続人全員が参加して行わなければなりません。代襲相続人も相続人であるため、その全員が遺産分割に参加する必要があります。
相続人のうち1人でも遺産分割に参加していない場合、その遺産分割は無効です。
特に疎遠な代襲相続人を遺産分割に参加させない例が見られますが、遺産分割が無効・やり直しとなってしまいます。遺産分割には必ず、代襲相続人を含めたすべての相続人を参加させましょう。
代襲相続人にも遺留分がある、ただし甥・姪は例外
代襲相続人は、相続権を失った人(=被代襲者)の遺留分(=相続などによって取得できる財産の最低保障額)も引き継ぎます。
代襲相続人の遺留分割合は、相続権を失った人(=被代襲者)と同じです。代襲相続人が複数いる場合は、人数に応じて均等に遺留分を按分します。
(例)
遺留分が8分の1である被相続人の子を代襲相続する場合
被代襲者の子の人数 | 代襲相続人1人当たりの遺留分 |
---|---|
1人 | 8分の1 |
2人 | 16分の1 |
3人 | 24分の1 |
4人 | 32分の1 |
代襲相続人の遺留分を無視して生前贈与や遺贈を行うと、相続発生後に代襲相続人が遺留分侵害額請求(民法1046条1項)を行い、相続トラブルが発生するおそれがあるので注意が必要です。
なお、被相続人の甥・姪には、代襲相続人である場合も遺留分は認められていません。被代襲者である被相続人の兄弟姉妹に遺留分が認められていないためです(民法1042条1項)。
まとめ
代襲相続が発生すると、相続人の数が増えたり、関係性が疎遠な人同士が相続人になったりするため、相続トラブルのリスクが高くなります。円満に遺産分割を終えるためには、弁護士に相談してサポートを受けましょう。
弁護士に依頼すれば、各相続人とのコミュニケーションを通じて、できる限りすべての相続人が納得できるような解決策を検討・提案してもらえるでしょう。協議が決裂して調停・審判へ移行する場合でも、必要な準備や手続きを弁護士に代行してもらえます。

- 監修者の名前
- 太田貴久弁護士
- 監修者の所属事務所
- 西川・太田法律事務所
札幌弁護士会所属。相続トラブルは親戚との間で発生します。親戚関係は事件解決後も続くことから、私は、将来を見据えた解決方法を探ることを心がけています。紛争が深刻化する前にお早めにご相談ください。
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