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相続放棄の費用相場|弁護士と司法書士どちらに依頼すべきか、費用を抑える方法も解説
- 監修者の名前
- 阿部由羅弁護士
相続放棄の手続きを自分でやる場合は、公的書類の取得費用と裁判所に納付する費用だけがかかります。その合計額は2500円から3500円程度です。弁護士または司法書士に依頼する場合は、さらに費用がかかります。この記事では、相続放棄にかかる費用、依頼先となる弁護士と司法書士の比較、弁護士費用を抑える方法などを解説します。
目次
相続放棄の手続きにかかる費用
相続放棄を行うに当たっては、申述書に戸籍謄本などを添付して、家庭裁判所に提出する必要があります。必要書類の準備や手続きは、自分で行うこともできますが、弁護士や司法書士に依頼することも可能です。
相続放棄の手続きには、主に以下の費用がかかります。
<公的書類の取得費用>
- 戸籍謄本:1通当たり450円
- 除籍謄本:1通当たり750円
- 改製原戸籍謄本:1通当たり750円
- 住民票の除票:1通当たり200円~300円
- 戸籍の附票:1通当たり200円~300円
※一般的には、合計1,000円~2,000円程度
<裁判所に納付する費用>
- 収入印紙(申述書に貼付):800円
- 連絡用の郵便切手:1人当たり500円前後 (裁判所によって異なる)
<弁護士費用または司法書士費用>
- 弁護士:1人当たり5万円~10万円程度
- 司法書士:1人当たり3万円~10万円程度
自分で相続放棄の手続きを行う場合は、上記のうち、公的書類の取得費用と裁判所に納付する費用だけがかかります。その合計額は2,500円から3,500円程度です。
弁護士または司法書士に依頼する場合は、さらに弁護士費用または司法書士費用がかかります。司法書士費用の方が若干安い傾向にありますが、実際の依頼費用は弁護士・司法書士によって異なります。
相続放棄は弁護士と司法書士のどちらに依頼すべき?
相続放棄を専門家に依頼する場合、依頼先としては弁護士または司法書士が候補となります。
相続放棄の手続きがよくわからず、専門家にすべて任せたいと考えている方は、弁護士への依頼をおすすめします。
弁護士が対応できる業務、できない業務
弁護士は、申述書の作成や戸籍謄本等の取得を本人に代わって行い、さらに代理人として相続放棄の手続きを進めることができます。申述書等を提出すると、家庭裁判所から照会書面が送られてきますが、その対応についても弁護士に一任可能です。
司法書士が対応できる業務、できない業務
司法書士に依頼する場合、申述書の作成や戸籍謄本等の取得は行ってもらえますが、代理人として相続放棄の手続きを進めてもらうことはできません。申述書等は本人が提出しなければならず、家庭裁判所の照会に対する回答も、本人が行う必要があります。
依頼費用の違い
依頼費用は、弁護士よりも司法書士の方が若干安い傾向にあります。ただし、実際の費用は依頼先によって異なるので、依頼前にあらかじめ見積もりをしてもらいましょう。
相続放棄の弁護士費用は誰が払う?
相続放棄の弁護士費用は、依頼者となる申述人(=相続放棄をする人)が自分で払うのが原則です。
ただし、亡くなった被相続人に多額の借金があった場合などには、複数の相続人が相続放棄をすることもあります。その場合、相続放棄をする相続人全員が、同時に弁護士へ依頼するのが便利です。公的書類を共通して利用できるほか、トータルの弁護士費用を抑えられる可能性があります。
複数の相続人が、相続放棄を同時に弁護士へ依頼する場合、弁護士費用の分担は相続人が話し合って決めることになります。
なお、相続財産から相続放棄の弁護士費用を支出することはできません。相続財産を使ってしまうと「法定単純承認」が成立し、相続放棄が認められなくなるので十分ご注意ください(民法921条)。
相続放棄の弁護士費用を抑えるには?
相続放棄の弁護士費用を抑えたい場合は、以下の方法が考えられます。
- 無料相談を利用する
- 複数の弁護士の見積もりを比較する
- 複数の相続人が同時に依頼する
無料相談を利用する
弁護士への相談時には相談料がかかるのが原則ですが、無料相談を受け付けている弁護士も多数存在します。無料相談では、相続放棄をすべきかどうかや申述手続きの流れなど、幅広い事柄についてアドバイスを受けられます。
少しでも弁護士費用を抑えたい方は、無料相談ができる弁護士に相談するのがよいでしょう。
弁護士ポータルサイト(=弁護士の情報がまとまっているウェブサイト)を利用すれば、無料相談ができる弁護士をスムーズに検索できます。
複数の弁護士の見積もりを比較する
相続放棄の弁護士費用は、依頼先の弁護士によって異なります。手続きの内容は同じでも、ある弁護士には10万円と言われたのに、別の弁護士は5万円だったということがよくあります。
弁護士費用を抑えて相続放棄を依頼したい場合は、複数の弁護士に相談して見積もりを取得し、それらを比較するのがよいでしょう。
費用の面に加えて、人柄や能力などの面から信頼できる弁護士を見極める観点からも、複数の弁護士に相談することをおすすめします。
複数の相続人が同時に依頼する
相続放棄をする相続人が複数いる場合には、足並みをそろえて同時に弁護士へ依頼すると、トータルの弁護士費用を抑えられる可能性があります。相続放棄の手続きがまとめて1回で済むため、バラバラに依頼を受けるよりも弁護士の手間が省けるからです。
特に、亡くなった被相続人が多額の借金を負っており、遺産総額がマイナスである場合には、相続人全員が相続放棄をするのが合理的です。この場合は、相続人全員が同時に弁護士へ依頼することで、相続放棄の費用を抑えられます。
相続放棄を自分で行う場合、家庭裁判所に相談できる?
相続放棄の手続きを自分で行えば、弁護士費用(または司法書士費用)を支払わずに済みます。
相続放棄の必要書類や手続きの流れなどは、家庭裁判所に質問すれば教えてもらえます。自分で相続放棄を行う場合は、家庭裁判所に相談してみましょう。
ただし家庭裁判所は、手続き以外の部分についてはアドバイスをしてくれません。たとえば、相続放棄をすべきかどうかの判断や、相続放棄に当たって注意すべきこと・してはいけないことなどについて、家庭裁判所は詳しく教えてくれません。
注意点を知らずに相続放棄の手続きを進めた結果、後にトラブルが生じるケースがよくあります。相続放棄に関するトラブルを避けるには、多少費用がかかっても弁護士に依頼するのが安心です。
まとめ
相続放棄の手続きは、多少費用がかかるとしても、弁護士に依頼して進めてもらうのが安心です。
相続放棄の弁護士費用は、1人当たり5万円から10万円程度が標準的です。無料相談を利用する、複数の弁護士の見積もりを比較する、複数の相続人が同時に依頼するなどの方法により、相続放棄の弁護士費用を抑えられる可能性があります。
相続放棄には期限(相続の開始を知った時から3か月以内)があるので、早めに手続きの準備を進めることが大切です。
亡くなった被相続人に多額の借金がある、遺産相続に関わりたくないなどの理由で、相続放棄をご検討中の方は、弁護士へご相談ください。
- 監修者の名前
- 阿部由羅弁護士
ゆら総合法律事務所代表弁護士(埼玉弁護士会所属)。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
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