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死因贈与とは?遺贈との違いから契約書の書き方、相続税がかかるかについても解説

本人が亡くなったことを機に財産を譲り渡す方法としては、相続・遺贈(遺言書)のほかに「死因贈与」があります。死因贈与を行うに当たっては、生前の段階で死因贈与契約書を締結しておきましょう。また、死因贈与には相続税がかかることがある点にも注意が必要です。この記事では死因贈与について、遺贈との違い、贈与契約書のひな形、税金(相続税)の取り扱いなどを解説します。

死因贈与とは?

死因贈与とは、贈与者が死亡したことを効力の発生条件として贈与をおこなうことです。

死因贈与をする側(=贈与者)と受ける側(=受贈者)は、贈与者の生前の段階で死因贈与契約を締結します。贈与者が死亡すると、死因贈与契約に基づき、贈与者の財産の所有権が受贈者に移転します

死因贈与は、相続や遺贈と並んで、贈与者の死亡を機に財産を譲り渡す方法の一つです。

死因贈与と遺贈の違い・共通点

死因贈与は、贈与をする側の意思によって、その死亡を機に財産を譲り渡す法律行為である「遺贈(=遺言による贈与)」と比較されることが多いです。

死因贈与と遺贈は異なる種類の法律行為ですが、共通している部分もあります。

死因贈与と遺贈の違い

死因贈与と遺贈は、主に以下の2点が異なります。

1.法律行為の種類

死因贈与は、贈与者と受贈者が締結する契約です。
これに対して、遺贈は遺言者(遺贈者)の単独行為に当たります。

2.方式

死因贈与契約は、どのような方式で締結しても構いません。書面で締結する場合も書式は任意で、口頭での締結も認められます。

これに対して遺贈は、民法で定められた方式に従った遺言書により行わなければなりません。方式要件を満たしていない遺言書(遺贈)は無効となります。

ただし、無効な遺言書による遺贈であっても、受遺者が遺言者の生前に遺言の内容を知っており、遺言者の生前に受遺者の承諾の意思表示がなされた場合には、死因贈与として有効となる余地があります(広島高裁平成15年7月9日判決など)。

死因贈与と遺贈の共通点

死因贈与と遺贈は異なる種類の法律行為ですが、贈与(遺贈)する側の死亡を機に財産を譲り渡す点で、実質的には同じ効果をもたらすものです。

そのため死因贈与には、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定が準用されます(民法554条)。

具体的には、以下の規定が準用されると解されています(なお、受遺者が先に死亡した場合の規定(民法994条)については、見解が分かれています)。

1.遺言執行に関する規定(民法1006条以下)

死因贈与契約において贈与の執行者を指定し、指定された執行者が就任すれば、遺言執行者と同様に、死因贈与の内容を実現するために必要な一切の行為をする権利義務を負います

2.遺贈の撤回に関する規定(民法1022条、1023条)

贈与者の最終意思を尊重する観点から、死因贈与は贈与者の意思によって一方的に撤回できると解されています(最高裁昭和47年5月25日判決)。

なお、死因贈与の内容と、その後になされた死因贈与や遺贈の内容が抵触する場合は、抵触する部分について死因贈与が撤回されたものとみなされます。

ただし遺贈とは異なり、遺言書の方式によって撤回する必要はなく、死因贈与の撤回の方式は自由とされています。

また、負担付き死因贈与について、受贈者がすでに負担の全部またはそれに類する程度の履行をした場合は、特段の事情がない限り贈与者による死因贈与の撤回は認められません(最高裁昭和57年4月30日判決)。

さらに、死因贈与と遺贈は、いずれも相続税の課税対象となる点が共通しています。死因贈与に課される相続税については後述します。

死因贈与の契約書について

死因贈与を行う際には、死因贈与契約書を作成することが望ましいです。契約書がなくても死因贈与は有効ですが、相続人との間でトラブルになる可能性があるのでご注意ください。

死因贈与契約書のひな形

死因贈与契約書のひな形を紹介します。実際の死因贈与の内容を反映した上で、適宜ご利用ください。

死因贈与契約書

○○(以下「甲」という。)と××(以下「乙」という。)は、以下のとおり死因贈与契約書を締結する。

第1条(死因贈与)
甲は乙に対し、甲が死亡することを停止条件として、甲の死亡と同日付で下記の【不動産/預貯金】を贈与することを約し、乙はこれを承諾した。

【不動産の場合】
(土地の表示)
所在:○○県○○市……
地番:○○番○○
地目:○○
地積:○○.○○平方メートル

(建物の表示)
所在:○○県○○市……
家屋番号:○○番○○
種類:○○
構造:○○
床面積:1階 ○○.○○平方メートル
    2階 ○○.○○平方メートル

【預貯金の場合】
金融機関名:○○銀行
支店名:○○支店
種別:普通
口座番号:○○○○○○○
口座名義人:○○ ○○

以上

第2条(執行者)
甲は、前条の死因贈与につき、下記の者を執行者に指定する。

住所:○○県○○市……
氏名:○○ ○○
生年月日:○年○月○日
以上

第3条(合意管轄)
本契約に関する紛争については、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

以上、本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙が署名捺印した上で、各自1通を保管する。

○年○月○日

甲:○○県○○市…

乙:○○県○○市……

死因贈与契約書がないとどうなる?

死因贈与は口頭でも成立するため、契約書の作成は法律上必須ではありません

しかし死因贈与契約書を作成しないと、贈与者が亡くなった際、相続人との間でトラブルが発生するリスクが高くなります

契約書がないと、受贈者は、死因贈与契約を締結した事実やその内容を証明することが困難です。
相続人から「死因贈与なんてなかったんじゃないか」「そんなに多くの財産を死因贈与するなんてあり得ない」などと主張された場合、契約書がないことは受贈者にとって不利に働きます。

このようなトラブルから受贈者を守るためには、必ず死因贈与契約書を作成すべきです。すでに死因贈与の合意をしているものの、契約書をまだ作成していない場合は、速やかに作成しましょう。

死因贈与には相続税がかかることがある

死因贈与は、相続や遺贈によって取得した財産と同じく、相続税の課税対象となります。

相続税は、課税対象財産の総額から、被相続人の債務や葬儀費用と基礎控除額を控除した額に対して課されます。

相続税の課税対象財産の例

  1. 相続、遺贈、死因贈与によって取得した財産

  2. 被相続人の死亡前3年以内に贈与された財産
    ※2024年以降の贈与については、被相続人の死亡前7年以内

  3. 相続時精算課税の適用を受けて贈与された財産

  4. 生命保険金
    ※生命保険金のうち、「500万円×法定相続人」までの部分は非課税

  5. 被相続人の死亡によって支給される退職手当金
    ※退職手当金のうち、「500万円×法定相続人」までの部分は非課税

など

相続税の基礎控除額

基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数

※相続放棄をした人も、法定相続人の数に算入する
※養子については、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで法定相続人の数に算入する

相続税の計算方法は複雑なので、正確な申告・納税を行うためには税理士への相談をおすすめします。

まとめ

死因贈与は、ご自身の死後に家族などへ財産を引き継ぐ方法の一つです。他の相続人とのトラブルを避け、確実に死因贈与を行うためには、死因贈与契約書を作成した上で、信頼できる人を執行者に指定しましょう。

弁護士には、死因贈与契約書の作成や、死因贈与の執行者への就任などを依頼できます。その他の相続対策(遺言書や家族信託など)についても、弁護士に相談すればアドバイスを受けられます。

相続対策をご検討中の方は、弁護士にご相談ください。

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この記事の監修者
監修者の名前
太田貴久弁護士
監修者の所属事務所
西川・太田法律事務所

札幌弁護士会所属。相続トラブルは親戚との間で発生します。親戚関係は事件解決後も続くことから、私は、将来を見据えた解決方法を探ることを心がけています。紛争が深刻化する前にお早めにご相談ください。

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