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遺産分割調停とは?手続きの流れや有利に進める方法を解説
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- 関根翔弁護士
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- 池袋副都心法律事務所
遺産分割協議がまとまらない場合には、遺産分割調停を利用することで、話し合いが進むことを期待できます。この記事では遺産分割調停のメリットとデメリット、手続きの流れや申立方法、調停を有利に進める方法を解説します。
目次
遺産分割調停とは
遺産分割調停とは、遺産の分け方について相続人の間で合意ができない場合に、家庭裁判所の裁判官と調停委員が間に入って各相続人の主張を聞き取り、相続人に解決策を提案したり、アドバイスしたりすることで、相続人の合意成立を目指す手続きです。
遺産分割調停を利用した方がよいケース
遺産分割調停は、相続人間での意見の相違や対立が生じている場合に利用されます。
例えば、遺産の価値や配分方法について合意が難しいと感じる場合や、相続人同士のコミュニケーションが難しい場合に遺産分割調停を利用することで、話し合いが進むことを期待できます。
遺産分割調停を利用するメリットとデメリット
遺産分割調停のメリットは、裁判官や調停委員が第三者として関与するため、相続人同士の話し合いに比べて冷静に話し合いを進めることができる点です。
また、相続の専門的な知識を持つ裁判官や調停委員が解決案を提示するため、法律的に公平な解決を期待できます。
一方で、遺産分割調停のデメリットは、申立ての準備に手間や時間がかかったり、相続人が裁判所に出向かなければならない点です。
また、相続人のうち1人でも合意が得られない場合には調停が不成立となります。調停にかかる時間はケースによりますが、数か月から1年以上かかる場合があります。
さらに、こちら側の主張が必ずしも認められるとは限らないため、満足のいく結果が得られない可能性もあります。
遺産分割調停の申立て手続きと必要書類
遺産分割調停の手続きを開始するためには、まず、家庭裁判所に申立書と必要書類を提出します。相続人であれば一人で申し立てることができます。
遺産分割調停を申し立てる管轄裁判所
遺産分割調停を申し立てられるのは、次のいずれかの家庭裁判所です。
- 相手方の住所地を管轄する家庭裁判所
- 当事者が合意して定めた家庭裁判所
遺産分割調停の申立てに必要な費用
- 被相続人1人につき収入印紙1,200円分
- 連絡用の郵便切手代(申立てをする家庭裁判所によって異なります)
遺産分割調停の申立てに必要な書類
- 遺産分割調停申立書(遺産目録、当事者目録を含む)
- 申立書の写し(相手方の人数分)
- 被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票または戸籍附票
- 遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金通帳の写し等)
遺産分割調停の流れ
遺産分割調停の期日
遺産分割調停の申立てが受理されると、家庭裁判所が調停を行う日(調停期日)を決めて、相続人全員に期日を連絡します。
1回目の調停は、申立てから2か月ほどで開催されることが一般的です。調停は平日の昼間に行われ、1回の所用時間は2時間ほどです。
調停委員は、遺産の分け方や割合などに関する意見を申立人と相手方から聞き、合意に向けた助言を行います。
1回目の調停で合意がまとまらない場合、約1〜2か月後に2回目の調停期日が設定されます。何回か調停を行っても合意に至らないと調停委員が判断した場合、調停は不成立となり、審判に移行します。
遺産分割調停期日の流れ
遺産分割調停は、主に以下のような流れで進めます。
相続人の範囲を確認する
まずは、相続人が誰かを確認します。ただし、相続人の中に養子縁組や婚姻の無効を主張する人がいる場合には、別途裁判で確定させる必要があります。
遺産の範囲を確認する
次に、遺産分割の対象となる遺産の範囲を確認します。遺産分割調停の申立時に提出した遺産目録や添付書類で確認しますが、遺産目録以外の遺産があると主張する相続人がいる場合には、その相続人に証拠書類の提出が求められます。
遺産の価値がどの程度なのか(遺産の評価)を確認する
遺産にどの程度の価値があるかを確認します。たとえば、不動産の場合は固定資産税評価額や相続税評価額などを参考にして評価額を話し合います。
相続人全員の意見が一致しない場合、裁判所が選任した鑑定人による鑑定が行われることがあります。その場合、鑑定費用は相続人が負担します。
特別受益や寄与分を主張する相続人がいる場合は、その主張について話し合う
「生前に被相続人の介護をしていたから、私の遺産の取り分を増やすべき」「生前にマンションの頭金を被相続人に援助してもらっていたから、その分はあなたの遺産の取り分から減らすべき」。
遺産分割の話し合いを進めると、こうした主張をしてくる相続人が出てくることがあります。自身の相続分を増やす、あるいは、特定の相続分を減らすことを目的とした主張で、それぞれ「寄与分」「特別受益」といいます。
関連記事:特別受益とは?持ち戻しの計算方法や時効、具体例についても解説
寄与分と特別受益を主張する相続人がいる場合には、その主張を認めるかどうかを話し合うことになります。
また、相続人以外の親族が貢献を主張している場合(特別寄与)には、その点についても話し合う必要があります。
どの遺産を、誰が、どのくらい取得するのかを話し合って決める
相続人が誰か、遺産の範囲・評価、寄与分・特別受益を認めるか否かについて、話し合いがまとまれば、どの遺産を、誰が、どのくらい取得するのか決めて、合意できれば遺産分割調停は成立することになります。
遺産分割調停が成立した後の手続き
遺産分割調停が成立すると、家庭裁判所は合意の内容を記した「調停調書」を作成します。
調停調書の正本や謄本を利用して、不動産の名義変更や預貯金の払戻しなどの手続きが行えるようになります。
調停調書に記載された内容に従わない相続人がいる場合でも、調停調書をもとに強制執行ができます。
遺産分割調停が不調に終わった後の手続き
遺産分割調停で合意できない場合、または調停委員が調停を不成立と判断した場合には、審判手続きに移行します。この移行は自動的に行われ、別途審判の申立てをする必要はありません。
審判に移行すると、家庭裁判所が審判期日を設定し、「審判」という形で遺産分割に関する判断を下します。
ただし、裁判所の判断は法律に基づくものであり、相続人の意向を反映するわけではありません。審判の決定に不満がある場合は、特定の期間内に即時抗告を行うことで、高等裁判所による再判断を求めることが可能です。
高等裁判所は、即時抗告を受けて主張を認めるか、差し戻すか、自ら判断を下すかのいずれかの結論を出します。
遺産分割調停の申立書の記載例
遺産分割調停の申立書は裁判所のサイトからダウンロードできます。記載例は以下のとおりです。
遺産分割調停を有利に進めるには
遺産分割調停を有利に進めるために意識したいポイントを解説します。
法的なルールに基づいた主張を展開する
遺産分割調停では相続人の合意が尊重されますが、争点となる部分では法律の考え方に基づいた解決案が提示されます。自身の主張を裁判官や調停委員に理解してもらうためには、法律のルールに則って主張することが重要です。
適切に主張できるか不安な場合は、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
客観的な証拠資料を準備する
遺産分割調停で、自分の主張が他の相続人と対立した場合には、主張を裏付けるための証拠資料の提出が求められることがあります。
このような場合には、適切な資料を用意し、自分の主張が正しいことや、相手の主張の矛盾点を資料に照らし合わせて説明しましょう。自分と相手のどちらが正しいかは、第三者である裁判官や調停委員には判断がつきません。
感情的にならずに、冷静に証拠資料を提出することで、調停委員の心証をよくすることができます。
相手方の言い分を理解する
遺産分割調停は相続人全員の合意を目指す手続きです。自分の意見を通すばかりでなく、相手の主張にも耳を傾け、譲歩できる点があれば譲歩することも大切です。
そのためには、自分の中で譲れない部分と譲歩してよい部分の優先順位をつけて、きちんと主張することが大切です。
まとめ
遺産分割調停は、裁判所を介して相続人全員の合意を目指す手続きであり、勝ち負けを決めるわけではありません。調停を有利に進めるには、自分の意見や希望を整理し、法的な考え方に沿って冷静に主張することが大切です。
しかし、他の相続人に対する感情的な思いを割り切ることは容易ではありません。また、法的知識や客観的な資料を集めて、効果的に主張することが難しい場合もあるでしょう。そのような場合には、法律の専門家である弁護士にぜひ相談してください。
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東京弁護士会所属。相続問題は複雑な法理論を必要とし、また、事実関係が複雑であり、収集すべき証拠も多くなる傾向にあります。当事務所では、手間を惜しまず綿密な計画を事前に立て、迅速に行動することをモットーとしています。
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