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成年後見人になれる人とは?家族はなれる?あとから変更できるのかも解説

成年後見人は、判断能力がほとんどない状態になった人の代わりに、財産を適切に管理し、本人のサポートをします。では、成年後見人になれる人とは、どんな人なのでしょうか。家族でもなれるのでしょうか。 この記事では、成年後見人になれる人や実際の選任状況、選任方法や変更ができるかどうかなどを解説します。

成年後見人になれる人は誰? 家族でもなれる?

成年後見制度は「法定後見」と「任意後見」の2種類に分かれ、法定後見はさらに「成年後見」「保佐」「補助」の3種類に分かれます。成年後見人・保佐人・補助人は、家庭裁判所が適任者を選任する一方、任意後見人は本人が選び、あらかじめ任意後見契約を締結します。

成年後見人になるために、特別な資格は必要ありません。本人の家族であっても、成年後見人に選ばれることがあります。

ただし、欠格事由に該当する人は成年後見人になることができません。

成年後見人に資格は不要、家族でも選ばれる場合がある

成年後見人になるために、取得すべき資格は特にありません

実際には司法書士・弁護士・社会福祉士などの専門家が選ばれるケースが多いですが、これらの資格は必須ではありません。本人の家族であっても、家庭裁判所に適任と判断されれば、成年後見人に選ばれることがあります。

欠格事由に当たる人は、成年後見人になれない

ただし、以下の欠格事由(民法847条)に該当する人は、成年後見人になることができません。

  1. 未成年者
  2. 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人・保佐人・補助人
  3. 破産者
  4. 本人に対して訴訟をしている者または訴訟をした者、ならびにその配偶者および直系血族
  5. 行方の知れない者

成年後見人は誰が選ばれることが多い?

成年後見人には、親族が選任されるケースもありますが、それ以外の第三者が選任されるケースの方が多数となっています。

最高裁のデータによると、2022年に成年後見・保佐・補助が開始された事件のうち、親族が成年後見人等に選任されたケースは19.1%(7560件)にとどまる一方で、親族以外の者が選任されたケースが80.9%(3万2004件)にのぼっています。
成年後見人等と本人との関係別件数・割合

親族の中では、子どもが成年後見人等に選任されるケースが53.4%(4037件)ともっとも多くなっています。

親族以外の者の中では、司法書士が36.8%(1万1764件)ともっとも多く、次いで弁護士が27.1%(8682件)、社会福祉士が18.3%(5849件)となっており、親族よりも専門家が選任されるケースが多いです。

出典:「成年後見関係事件の概況―令和4年1月~12月―(最高裁判所事務総局家庭局)」

親族と専門家それぞれのメリット・デメリット

親族が成年後見人に就任することと、司法書士・弁護士・社会福祉士などの専門家(第三者)が成年後見人に就任することには、それぞれメリット・デメリットがあります。

実務上は、特に家族が成年後見人に就任することのデメリットが懸念された結果、家族以外の第三者が成年後見人に選任されるケースが多くなっています。

親族が成年後見人になるメリット・デメリット

親族が成年後見人に就任することの主なメリットは、成年後見人報酬を節約できる点です。

成年後見人は、家庭裁判所に対して相当の報酬を付与するように請求できます(民法862条)。成年後見人報酬は、本人の財産から支払わなければなりません。

専門家など第三者が成年後見人に就任する場合、報酬付与の申立てが行われた結果、例えば、大阪家庭裁判所では、月額2万円から6万円が標準的な報酬額のめやすとなっています(報酬基準は各地の家裁によって異なります)。

出典:「成年後見人等の報酬額のめやす」(大阪家庭裁判所、令和4年2月)

これに対して、親族が成年後見人に就任する場合は、金銭的な見返りを求めず、報酬付与の申立てを行わないケースが多いです。この場合、成年後見人報酬を支払わずに済むため、本人の経済的負担が軽減されます

その一方で、本人の親族である成年後見人は、本人の財産を自己の財産と混同したり、勝手に使い込んだりするケースもあります。

成年後見人は、本人のために善良な管理者の注意をもって財産を管理しなければなりません(民法869条、644条)。

しかし、成年後見人が本人の親族である場合は、預かった資産と自分の資産とを分けて管理する意識が薄い場合があり、その結果、不適切な財産管理が行われてしまうことがあります。その結果、本人の利益が害されてしまうおそれがあります。

第三者が成年後見人になるメリット・デメリット

本人の親族ではない専門家が成年後見人に就任すれば、財産の混同や使い込みなど、親族が成年後見人になる場合のリスクを最小限に抑えられます。

司法書士・弁護士・社会福祉士などの専門家は、職業倫理に基づいて成年後見人としての職務を行います。また、親族も第三者である成年後見人の職務を厳しく監視する傾向にあるため、財産の混同や使い込みなどが行われるリスクは低いといえるでしょう。

その反面、親族以外の専門家が成年後見人に就任する際には、毎月成年後見人報酬を支払う必要があります

報酬額の目安は、各地の家裁によって異なります。例えば、大阪家庭裁判所の場合、管理する財産の金額に応じて以下の目安額となっています。

成年後見人が管理する財産の額 成年後見人報酬の目安額(月額)
1000万円以下 2万円
1000万円超5000万円以下 3万円~4万円
5000万円超 5万円~6万円

出典:「成年後見人等の報酬額のめやす」(大阪家庭裁判所、令和4年2月)

成年後見人は家庭裁判所が選任する

成年後見人には、家庭裁判所が適任者と思われる人を選任します。後見開始の申立てを行う際に成年後見人の候補者を推薦できますが、推薦した候補者が必ず選ばれるとは限りません。

家庭裁判所が成年後見人を選ぶ際の判断基準

家庭裁判所が成年後見人を選ぶ際には、主に以下の要素を考慮します。

  • 本人の心身の状態
  • 本人の生活や財産の状況
  • 成年後見人候補者の職業や経歴
  • 本人との利害関係の有無
  • 成年後見人候補者が法人の場合は、事業の種類や内容など
  • 本人の意見
    など

財産が比較的少額であり、親族関係に大きな問題がない場合には、親族が成年後見人に選ばれることも多いです。

これに対して、管理すべき財産が高額の場合や、親族関係についてトラブルが生じている場合には、親族ではない専門家が成年後見人に選ばれる傾向にあります。

成年後見人の候補者は推薦可能、ただし選ばれるとは限らない

家庭裁判所に後見開始の審判を申し立てる際には、成年後見人の候補者を推薦できます。

ただし、実際に成年後見人として選ばれるのは、家庭裁判所が適任であると判断した人です。申立ての際に本人などの推薦があったことは考慮要素の一つですが、家庭裁判所はそれだけでなく、さまざまな事情を総合的に考慮して成年後見人を選びます。

したがって、推薦した候補者が成年後見人に選ばれるとは限らない点にご注意ください。

成年後見人は変更できる?

成年後見人は、辞任または解任によって変更できる場合があります

成年後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て辞任できます(民法844条)。正当な理由として認められるのは、病気・高齢・遠隔地の転居などです。

辞任する成年後見人は遅滞なく、新たな成年後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければなりません(民法845条)。

また、成年後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所が成年後見人を解任できます(民法846条)。

「不正な行為」とは、後見人が被後見人の財産を横領するなど違法な行為または社会的にみて非難されるべき行為、「著しい不行跡」とは、品行がはなはだしく悪いことです。また、「その他その任務に適しない事由」とは、後見人の権限を濫用したり、不適当な方法で財産を管理したり、任務を怠ったりした場合です。

後見監督人・成年被後見人(本人)・本人の親族・検察官は解任の申立てができるほか、家庭裁判所の職権で成年後見人が解任されることもあります。

成年後見人が解任された場合は、成年被後見人(本人)・本人の親族・検察官の請求によりまたは職権で、家庭裁判所が新たな成年後見人を選任します(民法843条2項)。

まとめ

成年後見人には本人の家族も選ばれることがありますが、実際には8割程度のケースで、家族以外の専門家が成年後見人に選ばれています。

成年後見人は家庭裁判所が適任者を選任するので、家族が成年後見人になることを希望していても、そのとおりに選ばれるとは限りません。司法書士・弁護士・社会福祉士などの専門家が選任されることも想定しておきましょう。

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この記事の監修者
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太田貴久弁護士
監修者の所属事務所
西川・太田法律事務所

札幌弁護士会所属。相続トラブルは親戚との間で発生します。親戚関係は事件解決後も続くことから、私は、将来を見据えた解決方法を探ることを心がけています。紛争が深刻化する前にお早めにご相談ください。

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