相続法の改正にも瞬時に対応して適切なアドバイスを提供〜身近な弁護士として依頼者に寄り添う
東京都中央区「アーチ日本橋法律事務所」の吉岡正太郎弁護士(東京弁護士会所属)に相続分野の取り組みについて聞きました。「相続分野は法改正が多く、学び続けることが必要不可欠」と話す吉岡弁護士。相続分野を扱う上でどのようなことを心がけているのかや、弁護士に相談するメリットなどを聞きました。
インタビュー
法律と人との架け橋に
事務所を開設した経緯を教えてください。
「弁護士に相談するのは敷居が高い」と感じている方はまだまだ多いと思います。そうした心理的な壁を取り除き、誰もが気軽に相談できる事務所をつくりたいと考え、2012年に「市民に身近な弁護士」という理念を抱いて事務所を開設しました。
「アーチ」という事務所名は、所在地が日本橋に近いことに加え、「法律と人との架け橋になりたい」という思いを込めて付けました。
相続分野に注力している理由を教えてください。
相続が複雑で専門性の高い分野であることが、注力している理由の1つです。
相続法は頻繁に改正されるため、常に最新の法律知識を学び続けることが不可欠です。しかし、多くの弁護士は、離婚問題、交通事故、債務整理、企業法務など、幅広い案件を扱っているため、新しい法律をすべて把握するのが難しいのが実情です。実際、新法に適応できていないと感じる弁護士を見る機会も少なくありません。
そのため、私は裁判所が主催する勉強会に積極的に参加し、常に最新の法律情報にアップデートしています。また、単に法律を学ぶだけでなく、その知識を一般の方々に分かりやすく伝えることも、弁護士としての重要な使命だと考えています。
もう1つの理由は、相続問題が「家族間の争い」という特性を持っているからです。遺産分割が原因で、長年築いてきた親族の関係が崩れることも少なくありません。親族間の争いを完全に解決することは難しいかもしれませんが、険悪な状況から少しでも関係を修復し、問題を解決できたときにやりがいを感じます。
オープンなコミュニケーションで信頼関係を構築
どのような相談が寄せられますか。
遺言書の作成や相続放棄の手続きなど、内容は多岐にわたりますが、特に多いのは遺産分割に関するトラブルです。
遺産分割で問題が発生する原因として、遺留分や寄与分の主張、財産の使い込みといったケースが見られます。こうした問題は、家族間の感情的な対立を引き起こしやすく、話し合いだけでは解決が難しいことが少なくありません。
財産の使い込み問題はどのように解決するのですか。
よくある主張として、「被相続人から承諾を得ていた」というものがあります。この主張が正当なものなのかを確認するために、いくつかのポイントを精査していきます。
まず、被相続人の判断能力がどの程度あったのかを調査します。介護認定記録や施設の介護記録、病院のカルテなどを取り寄せ、被相続人が財産の管理や贈与の判断を適切に行える状態だったかを検証します。
被相続人の判断能力に問題がないことが判明した場合、次に焦点を当てるのは財産の使途です。単に「承諾があった」というだけでは不十分で、具体的に何に、どのように財産が使われたのかを明確にする必要があります。この段階で、使途不明金なのか、生前贈与として特別受益と見なすべきなのかを慎重に判断していきます。
財産の使い込みは、厳密には遺産分割とは別の事件として扱われます。しかし、財産のほとんどが使い込まれてしまった場合、遺産分割だけでは不十分であり、使い込みの問題を解決した後に、遺産分割を行うというアプローチが必要になることもあります。
使い込み問題は綿密な調査が必要な上に、対応も難しいことから、依頼者には「何が問題となり、どのような手続きが必要なのか」を丁寧に説明しながら、適切な解決策を提案するよう心がけています。
相続案件を手がける上で心がけていることはありますか。
依頼者本人の意思を尊重することです。相続問題は、直接の当事者だけでなく、配偶者や家族など周囲の意見が大きく影響し、案件を複雑化させることがよくあります。
離婚問題と同様に、相続においても、周囲の意見に振り回されやすい状況があります。そのため、依頼者には「最終的な決定は、あなた自身が行うべきです」というメッセージを丁寧に伝えるよう心がけています。
また、相続案件の特性上、解決までに長い時間がかかることが多いため、依頼者との信頼関係の構築に特に注意を払っています。単に法律の専門家として振る舞うのではなく、依頼者の感情に寄り添いながら、オープンなコミュニケーションを意識しています。
依頼者によっては、かしこまった態度では本音を話しづらいと感じる方もいます。あえてフランクに接して、肩の力を抜いて話せる関係をつくることで、安心して悩みを打ち明けられる環境を整えることが大切だと考えています。
相続問題を弁護士に相談するメリットにはどのようなことがありますか。
相続は単なる財産の分配ではなく、法的な問題と実務的な問題の両方が絡み合う、非常に専門性の高い分野です。遺産の範囲確定や相続人の特定といった法的な課題はもちろん、不動産評価や相続税の問題など、幅広い専門知識が求められます。
これらすべてを一般の方が独力で対応するのは、非常に困難で時間とエネルギーを要します。しかし、弁護士に委ねることで、正確かつ効率的に手続きを進めることができます。
また、相続問題は家族の歴史や人間関係が大きく影響する問題です。感情の対立により冷静な話し合いが難しくなることもありますが、弁護士が間に入ることで当事者同士の直接対立を避け、建設的な話し合いを進めることができます。
市民に身近な弁護士として依頼者に寄り添う
印象に残っている相続案件を教えてください。
母親の財産をめぐる兄弟間の争いでした。依頼者は母親とは別居しており、財産の管理は母親と同居していた兄が行っていました。しかし、相続が発生した後も、兄は「すべて自分がやっておく」と主張し、財産の詳細を開示しようとしませんでした。
そこで、財産の開示を求めたところ、生前・死後にわたる財産の大幅な移動が判明しました。毎日のように上限まで現金を引き出していたり、定期預金を解約したりと、財産の大半が使い込まれていたのです。
相手方は「母親の承諾を得ていた」と主張しました。しかし、資料を取り寄せて調査を進めた結果、母親には認知症の傾向があったことが明らかになりました。
最終的には和解により解決しましたが、実に6年近くの歳月を要しました。一部は生前贈与として認められたため、不明金については支払いを求めました。また、残りの財産を依頼者がすべて相続する形で帳尻を合わせようとすると、相続税に関して不公平が生じるため、相続税についても慎重に調整を行いました。
長期にわたる調査と粘り強い交渉の結果、依頼者に満足していただける結果に導けたことが印象に残っています。
相続分野における事務所の強みや特徴を教えてください。
常に最新の法律知識を維持していることだと自負しています。法改正は頻繁に行われますが、裁判所主催の研修に積極的に参加するなどして、常に最新情報にアップデートしています。そのため、依頼者には最新かつ正確な法的アドバイスを提供できていると思います。
また、豊富な調停経験を持っていることも大きな強みです。多くの調停を手がけてきたことで、案件の見通しを正確に立てる力が培われています。相続問題は一つひとつ異なる特性を持ちますが、経験に基づいた的確な予測と戦略提案ができることは、依頼者にとって大きな安心につながるでしょう。
最後に、相続問題で悩まれている方へメッセージをお願いします。
相続は非常に専門性の高い分野です。それに加えて、親族間の問題であるため、感情的になりやすい性質を持っています。
問題が複雑化してからご相談いただくよりも、早い段階でお話をいただく方が、はるかに円滑な解決につながります。小さな不安や疑問があれば、それが大きな問題に発展する前に、ぜひ専門家に相談することをお勧めします。
私たちは「市民に身近な弁護士」をモットーに、気軽に法的サービスを受けられる環境づくりに取り組んでいます。相続に関するお悩みがございましたら、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。最適な解決策を一緒に見つけていきたいと思います。