約30年の弁護士経験、家事調停官としての知見も活かし、依頼者に有利な解決を目指します

大阪府大阪市北区で「荒川雄次法律事務所」を経営する荒川雄次弁護士(大阪弁護士会所属)に、相続分野への取り組みについて聞きました。1997年に弁護士登録し、長年にわたって法律トラブルの解決に尽力してきた荒川弁護士。豊富な経験をもとに見通しを立て、最新の法改正や裁判例の調査も徹底し、状況に応じた柔軟な対応で依頼者が納得できる解決に導きます。相続案件を手がける上での心構えや事務所の強みなどを聞きました。
インタビュー
弁護士として長年の経験。基本を大切に業務に取り組んでいます
これまでの経歴を教えてください。
1997年に弁護士になり、大阪市内の法律事務所に入所して多種多様な案件を経験しました。そして2008年11月に、自立してもっと力を付けたいという想い、そして自分のペースで一件一件丁寧に対応したいという想いから独立して、当事務所を開設しました。
事務所として、どういったことを大切にされていますか。
まずは、依頼者に対してできるだけわかりやすい説明をすることです。そのために、法律用語や専門用語を日常用語に置き換えて説明するといった工夫もしています。
また、可能な限り無駄がなくシンプルで有利な解決を目指すことも大切にしています。たとえば、裁判以外のもっと簡便な方法で十分有利な解決が可能ならその方法を選択しますし、到底勝てないような裁判を起こせば余分な時間や費用がかかり、精神的にも疲弊しますので、そういった無駄がないようにしています。
そしてご依頼いただく以上は、できる限り依頼者に有利な解決を目指すことも当然のこととして大切にしています。依頼者の意見を尊重して、重要なことは複数の選択肢を示して選んでいただくことも心がけています。
これらは弁護士として基本的なことですが、基本を徹底することは簡単ではありません。私は弁護士として長いキャリアがありますが、多くの経験を積めば積むほど、基本の大切さを実感します。
家事調停官としての経験も弁護士業務に活きています
相続案件に注力している理由を教えてください。
独立前に所属していた事務所では様々な種類の案件を経験しましたが、中でも相続や離婚といった家事事件は多く担当していましたし、2008年に独立してからは、さらにその割合が増えました。
また2012年から4年間、大阪家庭裁判所の家事調停官(非常勤裁判官)を務め、相続を含む数多くの家事事件に関わってきました。そういった経験を活かして、皆様のお役に立ちたいという想いから力を入れております。
家事調停官というのは、どういうお仕事でしょうか。
遺産分割調停や離婚調停において、裁判官と同等の権限で調停手続を取り扱う仕事です。非常勤ですから、普段は弁護士業務を行いながら、あるときは裁判官として様々な調停に関わるわけです。もちろん誰でもなれるわけではなく弁護士会の推薦を受けて裁判所が採否を決定しますので、一定の経験や信頼があってこそ選任されます。
家事調停官の経験が、弁護士業務にどのように活きていると感じますか。
非常勤裁判官として裁判所の内部に入って仕事をするので、裁判所の運用や仕事の仕方がわかったり、裁判官がどういう事実や証拠に着目するかといった思考方法も知ることができました。これによって、依頼者の代理人として調停に臨む際にどういうことを意識すればよいか、どういう風に調停を進めればよいかといったポイントがわかりました。
また多くの調停に関わることで、多くの弁護士の仕事ぶりを見られたことも大きいですね。よい部分は参考にして、よくない部分は反面教師にして、自分自身の弁護士業務に活かしています。
相続についてよくある相談内容を教えてください。
被相続人である親と同居していた子どもが生前に親の預金を使い込んだり、他界した後に勝手に引き出したりした疑いがあるという相談が多いです。そういった場合は、まずは入出金履歴を調査することから始めます。その結果、疑いが晴れることもあれば、逆に、思っていた以上の使い込みが発覚する場合もあります。
それ以外にも、遺言書を作成したいというご相談、被相続人が遺した遺言書に納得いかないというご相談、被相続人に借金があるので相続放棄したいといったご相談も多いです。
豊富な経験をもとに見通しを立て、臨機応変に対応します
相続案件を手掛ける上で心がけていることを教えてください。
まずは、先を見据えた戦略を立てます。私は常に、裁判になったらどうなるかをシミュレーションしています。そして裁判まで進んでも依頼者に利益にならないと思えば深追いせず、依頼者の納得を得て早めに譲歩して折り合いを付けたり、それ以上進まないという決断も時には必要であると考えています。
先ほど述べた「可能な限り無駄がなくシンプルで有利な解決」とはそのような意味を含んでいます。一方、大きく有利な展開が望めるのであれば、積極果敢に攻撃的な手を打っていく覚悟も持ち合わせています。
そして案件が進む中で、状況に応じた臨機応変な駆け引きを行います。そして最終的には解決することが弁護士の仕事ですから、的確な着地点を見定め、そこに確実に向かっていくことを心がけています。
先生のように長年の経験があると、見通しは立ちやすくなるのでしょうか。
もちろんです。ただ、全く同じ案件はありません。一口に遺産分割といっても、すべて違います。ですから経験に基づく見通しを立てながらも、決めつけすぎず、柔軟な対応が不可欠です。また自分の記憶や過去の経験にとらわれず、最新の文献や判例も調査して進めるようにしています。
先生の事務所ならではの強みや、他の事務所との違いはどんなところでしょうか。
争いが激しい案件、非常にこじれた案件も多く経験してきましたので、そういった案件でも対応できる経験と知識があることは強みです。
ご依頼いただいた当初は劣勢に立たされているように見えた案件でも、本人が気が付かないような糸口を見つけて猛反撃して逆転し、有利な解決に持ち込んだことは何度もありますし、諦めずに粘り強く対応できることも強みです。
そのほか、裁判所から相続財産清算人等の財産管理人に選任されたり、非常勤で市役所の仕事をしたりもしているので、相続人不存在、所在不明者、所有者不明土地建物、空家などの場合の対応や相続財産調査などにも詳しいといえます。
自己判断で対応して不利な展開になることも
相続について弁護士に相談・依頼するメリットを教えてください。
法律トラブルでは、証拠が非常に重要です。しかし、どういう証拠が有利に働くのか、それをどう集めればよいかというのは、弁護士でなければなかなかわかりません。そこで弁護士に相談・依頼することで、有利な証拠を集めやすくなるというのは大きなメリットです。
また自分で対応していると、目の前の問題をどう打開すればよいかわからない場合が多いはずです。そこで弁護士に相談・依頼すれば、法令及び判例の知識を駆使した緻密な法解釈を行い、難しい局面を打開するために必要な法的主張の方法を提示してもらえるというのも大変大きなメリットです。
紛争性の高い案件に対応できる一番の職業は弁護士ですから、トラブルに巻き込まれたり、トラブルになりそうという場合は弁護士にご相談ください。
早めに相談するメリットと、相談が遅れることによるデメリットを教えてください。
自己判断で対応することで、やらなくてよいことをやってしまって、不利な状況になることがあります。
たとえばご自身で遺産分割協議を行って、よくわからないまま書類にサインしたり、認めなくてよいことを認めてしまったりするケースは多いです。
そうなる前に弁護士に相談することで、不利な状況を避けられ、可能な限り有利に進めることができます。また、早めに相談するほうが精神衛生上もよいと思います。
相手方から納得がいかない提案をされた場合でも、弁護士に相談し、その提案が妥当なものかどうかを見定めることにより、無駄なわだかまりを持たずに済むこともありますので、まずは弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
これまで取り組んできた相続案件の中で、印象に残っているものはありますか。
最近の事例の中から、劣勢に立たされているように見えたところから依頼を受けて猛反撃し、攻撃的な手を打って有利な展開に持ち込んだケースを2つご紹介させていただきます。
1つは、母親が他界した時、約2000万円あった預貯金の残高はわずか20数万円まで減っており、通帳を預かっていた長男が「全部母親のために使った」と言い張るので、依頼者が他の弁護士に相談したうえ、半ばあきらめていたケースがありました。
また、同じその当事者間で、老朽化して近隣から撤去を求められていた、他界した父親名義の2つの建物について、長男は依頼者に対し、合計約500万円の解体費用を折半して負担することを執拗に求めていました。
依頼者は、「母親の遺産分割が解決するまで待ってほしい」と反論するのがせいいっぱいで、「半額負担の結論自体はやむを得ない」と覚悟していました。
預貯金については、不当利得返還請求訴訟を提起し、訴訟上の和解により約800万円を回収しました。建物については、遺産分割審判において、長男が既に遺産の一部分割により高額なプラスの財産である不動産を取得していることを主張した結果、相続人間の公平の観点から、マイナスの財産である2つの建物の双方について長男が取得すべきとの判断が下されたことから、依頼主は解体費用全額を負担せずに済みました。
長年にわたる過去のいきさつや多額の支出について、証拠と経験則に基づいて長男の矛盾に満ちた主張を1つ1つ論破することを積み重ねることにより、完勝といってもよい成果を挙げることができました。
もう1つは、複雑な家庭で育った依頼者の案件です。父親から会社を引き継ぎ、多額の生前贈与を受けていたことから、父親が亡くなったとたんに、母親の違う2人の兄弟から数千万円相当の遺留分減殺請求調停・訴訟、遺産分割調停と、別々に権利行使を受け、大きな財産上のダメージを被ることは避けられないと思われました。
別会社の株式を兄が大量に取得していた経緯が不明瞭であったことから、遺産確認請求訴訟等の別訴を複数提起して牽制することにより、遺留分減殺請求訴訟では、支払う和解金の金額を最小限に抑えた有利な和解に持ち込みました。
一方、遺産分割調停においては、別の相続人から譲り受けていた相続分に基づく権利を別途主張することにより、1000万円以上の具体的相続分額を認めさせることができ、ほぼトントンの結果を得ることができました。
同一当事者間で同時に訴訟と調停が4つも係属する乱戦となり、依頼者もつらいのではないかと思ったのですが、同じ家で育ったことのない兄弟同士で、腹を割ってぶつかり合ったこともなかったことから、言いたいことが言えて、意外とスッキリしたようでした。
結果にも満足していただき、事件の終了後、「裁判をやって、本当によかった」と言っていただけたのが印象的でした。
相続のトラブルを抱えて弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
相続問題は、親族間の問題という意味でも、法律関係が複雑という意味でも、法律問題の中でも特に難しい分野だと思います。ですから、弁護士を利用するメリットは大きいと考えています。相続分野は近年法改正も相次いでおり、さらに対応が難しくなっているところがありますので、一層弁護士を利用するメリットは大きくなったと言えます。
弁護士に依頼すると費用がかかるということで躊躇する方もいらっしゃいますが、特に高額な遺産が対象になるようなケースでは、依頼することで100万円単位、1000万円単位で相続できる金額が変わることも珍しくありません。実際、依頼してよかったと言っていただけることの方が多いと実感しています。
まだ紛争になっていないケースでも、弁護士に相談して、しっかりとした書面を作成して対策を講じることで、次世代の相続や将来の紛争防止にもつながります。ぜひお気軽にご相談ください。