弁護士歴40年以上の経験で相続問題を解決〜依頼者との信頼関係を大切に納得のいく解決を目指す

大阪府大阪市「高橋修法律事務所」の高橋修弁護士(大阪弁護士会所属)に相続分野の取り組みについて話を聞きました。弁護士歴40年以上のキャリアがあり、その間には書籍を出版するなど、精力的に相続分野に取り組んできた高橋弁護士。相続分野を扱う上で心がけていることや相続問題を弁護士に相談するメリットなどを聞きました。
インタビュー
書籍の出版をきっかけに相続相談が増加
事務所設立の経緯を教えてください。
1979年に司法試験に合格し、1982年に弁護士登録をしました。最初の3年間は大阪の法律事務所に勤務しましたが、1985年に独立し、現在の事務所を設立しました。気がつけば、弁護士としてのキャリアは40年以上になります。
弁護士を志した頃から、いずれは独立することを考えていました。最初に勤務した事務所の所長にも「3年後には独立します」と伝えていたんです。
もちろん、先輩弁護士から学ぶことは多々ありますが、私は1人で案件に取り組む方が経験を深く身につけられるのではないかと考えていました。そうした思いもあって、早くから独立を決意していたのです。
事務所の理念を教えてください。
法律家として、「人のため少しでも役に立ちたい」という思いがあります。また、依頼者との信頼関係の構築を重視しています。
具体的には、案件を受任する際に、事件の見通しや弁護士費用などについて、丁寧に説明することを心がけています。依頼者に十分に理解していただいた上で、仕事を進めていくことが何より重要です。
事前の説明不足が原因で後々トラブルになることもあります。信頼関係が崩れてしまうと、依頼者のための最善の仕事もできなくなってしまいますから、たとえ時間がかかっても、依頼者との対話を大切にし、相互理解を深めることが大事だと考えています。
相続分野に注力しているのはどのような理由からですか。
相続に関する書籍の執筆がきっかけでした。6回も改訂を重ねベストセラーとなった「遺産分割の実務」(清文社発行)など、ホームページにも記載の相続に関する多くの著書を出版する機会をいただいたのですが、この本の出版を機に相続に関する相談が増えていきました。
また、執筆のために相続法について深く研究し、専門的な知識を蓄積できたことも、この分野に力を入れるようになった理由の一つです。実務経験と専門的知識の両方を持ち合わせていることは、依頼者により良いサービスを提供する上で大きな強みになっていると考えています。
最後には「互譲の精神」も必要
どのような相談が多いですか。
遺言を作成したいというケースと、遺産分割トラブルに関する相談が多いです。
遺言書については、その重要性を認識していながら、実際の作成までなかなか踏み切れない方が多いように感じます。しかし、遺言を残すことでその後のトラブルを防げるケースも多く、とても大切だと感じています。
以前、顧問先の会社のオーナー社長から遺言書作成の相談を受けました。その方は独身で、法定相続人は妹1人という状況でした。会社の株式をすべて所有されていたため、遺言書がない場合、株式はすべて妹が相続することになります。そうなった場合、「会社の将来が不安定になるのではないか」と、役員や従業員の方々が心配し、社長に遺言書作成を懇願したのです。
その後、社長が亡くなられましたが、遺言書があったおかげで会社は何のトラブルもなく事業を継続することができました。これは遺言書の重要性を示す典型的な例だと思います。
このような経験を通じて、私は遺言書の作成を強くお勧めしています。
遺言書作成の相談を受けた際に気をつけていることはありますか。
依頼者の意思能力の確認です。公正証書遺言であっても、遺言者に遺言能力がなければ法的効力を持ちません。
特に近年は認知症の方が増えていることもあり、より慎重な対応が必要になっています。そのため、必ず本人に来所していただき、直接会話をさせていただきます。その対話の中で、判断能力が十分にあるかどうかを丁寧に確認しています。また、後に有効性が争われる可能性がある遺言の場合、遺言作成の様子をビデオ撮影することもあります。
遺産分割で揉めているケースでの解決方針を教えてください。
すでに紛争状態にあるケースでは、直接交渉での解決は難しいのが実情です。相続は家族間の問題であるため、他人同士の争いよりも感情的にぶつかり合い、問題がより複雑になります。
そのため、遺産分割調停を申し立て、家庭裁判所で第三者を交えて話し合いをするのがベストだと考えています。経験上、裁判所に入ってもらい円滑に進めることで、現実的で最適な解決につながることが多いと感じています。
相続案件を手がける上で心がけていることはありますか。
依頼者に有利な解決を目指すことはもちろんですが、最後には「互譲の精神」も必要です。調停や話し合いで解決を図る場合、双方が譲り合わなければ解決しません。しかし、依頼者の中には自分の権利ばかりを主張し、譲る姿勢を全く持たない方もいます。
法曹の役割は、勝ち負けを決めるだけでなく、トラブルを解決することにもあります。もちろん、依頼者にとって有利な解決を目指しますが、それだけを優先してしまうと、解決までの時間が長引いたり、不自然な形で終わってしまうこともあります。
そのため、依頼者には最終場面では「互譲の精神」も必要だとお伝えし、場合によっては譲歩することも必要だと説明します。お互いが譲る姿勢を持つことで、解決までの道筋が見えてきますし、早期解決にもつながり、依頼者にとってもメリットがあると考えています。
依頼者が何を望んでいるかを見極める
相続問題を弁護士に相談するメリットにはどのようなことがありますか。
法律の専門家の視点から状況を整理できることです。相続問題の当事者は、どうしても感情が先行してしまい、冷静な判断が難しくなることが多いです。
私は、相談に来た方には、まずはじめに法律的にどのような解決が可能なのか、判例ではどのように扱われているのかなど、客観的な説明をしています。そうすることで、ご自身が直面している状況を客観的に理解してもらうように努めています。
最近では、インターネットで情報を収集してから相談に来られる方も増えています。ただ、その情報が断片的であったり、正しい知識とは異なるケースも少なくありません。専門家に聞くことで、他の解釈の可能性や、より適切な解決方法について、得られることが依頼者にとってのメリットだと思います。
相続分野における強みや事務所の特徴を教えてください。
弁護士としてのキャリアは40年以上になります。相続案件に限らず、離婚事件など、家庭裁判所で扱うさまざまな案件に長年携わってきました。そうした経験が、私の一つの強みだと思います。
時代の変化とともに、調停の方法も変わってきました。最近ではウェブ会議を活用した調停も増えていますが、基本はやはり「話し合い」です。依頼者ができるだけ早く納得できる形で解決を図ることを最優先に考え、これまで取り組んできました。
長年積み重ねてきた経験を生かし、柔軟かつ丁寧なサポートを心がけています。それが当事務所の特徴だと思います。
これまでの活動で印象に残っている相続案件はありますか。
印象に残っている案件の一つに、会社経営者の遺産分割調停があります。依頼者は被相続人の孫で、父親が既に他界していたため代襲相続人という立場でした。
被相続人は会社を経営していた方で、依頼者は将来的にその会社経営にも参画したいという希望を持っていました。そのため、会社の株式を他の相続人と均等に相続したいという要望があったのです。
相手方は被相続人から事業を引き継いでいた娘夫婦、つまり依頼者にとって叔母と叔父にあたる方々でした。経営者の立場からすれば、株式の分散は避けたいという考えがあり、親族とはいえ、将来的な経営の複雑化を懸念して、株式の分配には強く反対していました。
相手方からさまざまな遺産分割案が提示されましたが、いずれも株式の分配は一切認めないという内容でした。しかし、依頼者の希望は明確で、「どうしても株を取得したい」というものでした。そこで、その希望に沿って遺産分割調停を進めていくことになりました。
調停では、相手方から寄与分の主張など様々な反論があり、かなりの時間を要しました。しかし、粘り強い話し合いの結果、最終的に株式の均等相続を実現することができました。
現金などその他の相続財産については譲歩する形になりましたが、最優先の希望であった株式取得が実現できたことで、依頼者からはたいへん喜んでいただけました。
相続案件では、依頼者が「何を望んでいるのか」をしっかり把握することが何よりも大切だと感じています。このケースでは依頼者の希望を達成できたことが、私にとっても大きな喜びとなりました。
最後に、相続問題で悩まれている方へメッセージをお願いします。
相続問題は誰にとっても複雑で、感情が絡むとさらに解決が難しくなることがあります。そんなときこそ、専門家の力を借りることで、冷静に状況を整理し、最適な解決策が見つかるものです。
「これだけは譲れない」と思うこともあるでしょう。でも、少し視点を変えることでスムーズな解決に向かうケースも多いんです。私たちは、依頼者のご希望をしっかりと伺い、最善の方法を一緒に探していきます。
最近は、メールや電話で気軽にご相談される方も増えています。相続問題で悩まれている方は、ぜひ一度ご相談ください。早めの相談が、心に余裕を生み、解決への第一歩になります。一人で抱え込まず、まずは専門家の話を聞いてみてください。きっとお力になれると思います。