依頼者の価値観を尊重し、ベストな方法で相続問題を解決。使い込みなど難しい事案もお任せください
鹿児島県鹿児島市「谷山中央法律事務所」の佐野浩基弁護士(鹿児島県弁護士会所属)に、相続分野の取り組みについて聞きました。生まれ育った谷山地区の司法アクセスを改善したいという思いから事務所を開設した佐野弁護士。依頼者とのコミュニケーションを重視し、一人ひとりのニーズに合った方法で解決を目指します。相続についてよくある相談や、事務所の強みなどを聞きました。
インタビュー
お悩み解決のため、真摯に向き合います
弁護士になったきっかけ、事務所設立の経緯について教えてください。
高校生のときに、授業の一環として先輩の職場を訪問する機会があり、東京の法律事務所を訪問した際に「自分の名前で仕事をしている姿がかっこいい」と感じて、弁護士を志しました。
司法修習後は鹿児島市中心部の事務所で経験を積み、2024年に独立しました。谷山地区を選んだのは、私が生まれ育った地域であることと、この地域の司法アクセスを改善したいと思ったことが理由です。
鹿児島市は裁判所の周りに法律事務所が集中しています。市南部の谷山地区には私が事務所を開設するまでほとんど法律事務所がなく、ここに住んでいる方は弁護士に相談するためにわざわざ中心部まで足を運ばなければならない状況でした。地元に弁護士がいればより気軽に相談していただけるようになると考え、ここで独立することを決めました。
事務所の理念や、大切にしていることを教えてください。
依頼者の悩みを解決するために、どういう手段を取るのがベストかを常に考えています。
弁護士に対して、調停や裁判を起こすのが仕事というイメージがある方もいると思います。しかし私としては、むやみに法的手段に訴えるべきではないと考えています。もちろん、紛争解決のために調停や裁判をするのがベストな場合もありますが、むしろ紛争が激化して解決が遠のくケースも少なくありません。法的手段に訴えるべきか、裁判外の話し合いで解決を目指すべきかは、慎重に判断するようにしています。
一方で、最終的に法的手段を執れるのも弁護士の強みです。司法書士など弁護士以外の士業は、必ずしも、裁判で代理人として争うことはできません。話し合いでの解決を目指す場合も、最終的には調停や裁判というカードも切れることを見据えて交渉に臨んでいます。
理念を実現するために、具体的にどのようなことをおこなっていますか。
依頼者の話をよく聞き、その方の価値観を尊重することです。人によって重視することは異なり、早期解決を望む方もいればお金と時間をかけてでも徹底的に争いたい方もいます。そのため、ご本人がどういう解決を希望するのか念入りに聞くようにしています。
早期解決を希望する場合は、法的手段を取ると解決までの時間がかかるため、基本的には話し合いでの解決を目指します。ただし場合によっては、裁判を起こすことで100万円以上も多く取れる可能性があるなど、依頼者にとってよりメリットがある結果につながるケースもあります。
「早さを取るか、金額を重視するか」というふうに選択肢が複数ある場合は、それぞれのメリット・デメリットなどを丁寧に説明し、どの解決方法を選ぶか依頼者と相談しながら決めています。
使い込みの相談多数。話し合いによる、負担が少ない解決を目指します
相続案件に注力している理由を教えてください。
都市部に比べて高齢化が進んでいるため、相続の相談がかなり多いことが一つの理由です。また、前の事務所に所属していたときは相続の依頼の大多数を私が担当し、様々なケースを手がけて経験を積むことができました。地域に密着した事務所として、これまで蓄積してきた知見を活かして皆様のニーズに応えたいという思いから、力を入れて取り組んでいます。
相続についてよくある相談内容と、解決までの流れについて教えてください。
当事務所に寄せられる遺産分割トラブルの相談のうち、4〜5割に使途不明金、いわゆる「使い込み」の問題がからんでいます。兄弟間で「親の遺産を使い込まれたかもしれない」という疑いが生じて相談に来る方が多いです。
使い込みが疑われる案件では、まず客観的な資料を集めます。金融機関から被相続人の少なくとも過去10年分の取引履歴を取り寄せて、いつ、どれぐらいの金額が引き出されているのかを洗い出します。併せて、被相続人の生活状況や通院歴なども調べます。
その上で、出金があった時期の被相続人がどんな状況だったかを照らし合わせて、不自然な部分がないか分析していきます。「この出金は怪しい」という目星がつけられたら、銀行の出金票の筆跡確認をおこない、誰が引き出したのかを調べることもあります。
使い込みの事実を追求するには、とにかく証拠集めが重要です。証拠収集や生活状況を丁寧に聞き取り、さまざまな資料を集めた上で、相手方と交渉します。相手方が使い込みを認めた場合は、使い込んだ金額を差し引いて遺産分割の手続きをおこないます。
使い込みの問題は、遺産分割の手続きとは別に裁判を起こして解決をはかる方法もありますが、そうすると決着がつくまでに数か月、長ければ1年以上かかることもあり、依頼者の負担が大きくなります。相手方と話し合う余地が全くない、通知を送っても無視されるなどのやむを得ない場合を除き、できるだけ話し合い、もしくは調停の段階で解決できるように進めていきます。
相続案件を手掛ける上で心がけていることを教えてください。
相続は調査の占める割合が大きい案件です。相続人は現在いる兄弟たちだけなのか、遺産は何がどのくらいあるのかなど、まず前提となるものをしっかりと、取りこぼしのないように調査することが重要だと考えています。
また、相続は感情的な対立が大きい分野でもあるので、法律でドライに割り切るのではなく、依頼者の感情にも配慮しながら進めるようにしています。
相続分野の幅広い経験が強み。丁寧な対応で、希望に沿う解決を導きます
相続について弁護士に相談するメリットを教えてください。
相続関係の調査や登記、相続税申告などは司法書士や税理士でもできますが、相続人間での話し合いで依頼者の代理人になれるのは弁護士だけです。調停や審判などに移行した場合もそのままサポート可能なので、話し合いが決裂したとしても、最終的に何らかの結論を得られるところまで持っていくことができます。
調停は弁護士なしで臨むこともできますが、弁護士という交渉のプロを代理人に立てることで、有利に調停を進められます。弁護士は依頼者の状況や希望を整理し、調停委員とその後ろにいる裁判官に向けて論理的に主張を展開します。ご自身だけで臨むよりも調停委員や裁判官の理解を得やすく、希望する条件で解決できる可能性が高まります。
事務所ならではの強みや、他の事務所との違いを教えてください。
相続にあたっては不動産がからむことも多いですが、当事務所は不動産業者とのつながりがあるため、評価額の算定や売却などもスムーズに対応できます。
また、相続税の申告が必要な方については、相続税申告に精通した税理士の先生をご紹介することも可能です。
相続分野の幅広い経験も強みです。遺言作成から手続きの代行、遺産分割のトラブル解決まで様々な依頼に対応してきました。使途不明金の問題や遺産確認の裁判、養子縁組の無効確認の裁判なども経験しており、相続に関する問題であれば大抵のことには対応可能です。
これまで取り組んできた相続案件の中で、印象に残っているものを教えてください。
遺産分割の事案で印象深いケースがあります。母親が亡くなり、相続人は3人の子どもたちで、そのうちの1人から依頼を受けました。
母親が亡くなって戸籍を確認したところ、自分たち兄弟のほかに前夫との間に子どもがいることがわかりました。母親の遺産はほとんどが再婚したあとに築いたものであり、再婚した夫の家から代々伝わる土地と建物も相続していました。
依頼者は、異父兄弟と一度も会ったことがなく、できればその方に相続放棄をしてほしいと希望していました。気持ちは理解できるのですが、法律のルール上は異父兄弟にも相続権があるので、強制的に放棄させることはできません。
そこで、なるべく穏便にこちらの思いを伝えるために、手紙を送るという方法を試みました。依頼者に生前の母親の様子や遺産の内容などについて丁寧に聞き取りをおこない、「こういう言い方なら聞いてもらえるだろうか」と協議しながら作り上げた手紙を、相手の方に送りました。
その結果、思いが伝わり、相続放棄をすることに承諾していただけたのです。兄弟3人で全ての遺産を取得することができ、依頼者には「父と母が残してくれた財産を守れた」と非常に感謝されました。
他の相続人に相続放棄をしてほしいという相談は毎年一定数あり、丁寧な対応をすれば半分以上の方が放棄に応じてくださる印象です。この案件も、依頼者と打ち合わせを重ねて丁寧に文面を練ったからこそ、相手方と対立することなくスムーズに解決できたのだと思います。
相続案件について、弁護士への相談を検討している方へのメッセージをお願いいたします。
相談していただくことで、弁護士と一緒に、感情を整理したり法的観点から解決方法を検討したりすることができます。話をするだけでも気持ちがかなり楽になるので、少しでも気になることがある場合は1人で抱えず、早めにお問い合わせいただければと思います。