問題解決のため根本的な原因を探る。約20年の経験を活かし、依頼者の未来につながる相続を

東京都文京区で「富士見坂法律事務所」を経営する井上義之弁護士にインタビューを行いました。2006年の弁護士登録以来、約20年にわたり相続問題に注力する井上弁護士。困難な事案にも粘り強く取り組み、最善の解決を目指します。事務所の理念や相続の対応方針、事務所の強みなどを聞きました。(第一東京弁護士会所属)
インタビュー
根本的・最終的な解決を目指して
事務所の理念や大切にしていることを教えてください。
形式的なマニュアル通りの対応ではなく、個別の状況やニーズに細やかに応じることを心がけています。依頼者の希望を丁寧に聞き取り、表面的・短期的な解決ではなく、根本的・最終的な解決を目指すことが私のモットーです。
たとえば、依頼者が相談時に考えておられる解決策が必ずしも問題の根本的な解決・最終的な希望の実現に最適ではない場合があります。私は、依頼者の最終的な希望の聞き取りを重視し、その希望の実現に向けて個別具体的に最善の策を提案していくことを大切にしています。
また、相談の際には、問題の争点・今後の方針・メリット・デメリットなどをできるだけ丁寧にわかりやすく説明するように心がけています。
相続分野の対応の際に心がけていることを教えてください。
相続問題は、普段トラブルとは無縁の方でも否応なしにまきこまれてしまうこともある身近な問題と言えます。
しかも、交通事故などの赤の他人とのトラブルとは異なり、親族関係が前提となるため、感情面の負担などもあり、当事者の負担が大きくなりがちといった特徴があります。そこで、負担が大きくならないように、法律家に早めに相談し助力を求めることをお勧めしております。
そして、私としては、相続に関して依頼を受けた際には、とにかく依頼者の希望をしっかり聞き取り、金銭面だけではなく、人間関係なども包括的に考慮し、依頼者の希望の実現に最大限尽力いたします。
そのためには、一見矛盾するようにも思えますが、一方的な主張をするだけではなく、相手の立場も尊重・考慮した対策が結局、依頼者の希望の実現に近道であることが多々あります。
特に、判決だけでは最終的な解決が困難な場合などは、粘り強く関係者の納得を得られるような対応が重要となります。
また、相手方の立場も考慮した対応をすることで、早期解決という結果が得られる可能性も高く、そういった意味でも、急がば回れという形で、誠実な対応が結局は依頼者の利益につながることもあります。
いずれにせよ、依頼者の希望の短絡的・形式的な実現を目指すことでかえって依頼者に不利益が及ぶことが絶対にないように、相続分野の依頼を受ける際は、依頼者とじっくり話し合い、何を重視し、どういう方針で処理を進めるかを慎重に検討していくことにしております。
相続分野ならではの難しさはありますか?
相続の難しさは、法律の適用だけでは解決できない場合が多いことです。裁判所も、判決では解決できない側面があることを理解しているからこそ、和解を非常に強く勧めてくることがあります。
法律トラブルの解決方法は、言ってしまえば、裁判所による強制的な解決か、当事者間の合意による解決のいずれかしかない、と言えます。
そして、相続の場合、裁判所による強制的な解決では、依頼者にとって最善の結果には至らないことが多々あります。双方の当事者が納得した結果ではないため、親族間に感情的な不満が残ってしまうほか、裁判所の決定にかかわらずそれに沿った任意の支払がなく親の遺産を競売にかけるしかなくなるといったケースもあります。
また、「原告の請求を認めません」という判決が出ても、それは話が振り出しに戻るだけで、問題は何も解決しない場合もよくあります。
そういった意味で、相続の分野では当事者間の合意形成(和解)が重要な意味を持ちます。
そして、当事者間で和解するには、誠実に粘り強く交渉を続けていくことが重要です。相手の気持ちにも配慮しつつ、粘り強く解決の糸口を探ることが、結果として依頼者の希望の実現につながります。
親族間トラブルだからこそ話し合いで解決を
相続分野でよくある相談内容を教えてください。
相続開始後の遺産分割に関する相談が多いです。特に、誰も引き取りたくない財産がある場合は話し合いが難航する傾向があります。当事者だけでは折り合いがつかず、相談に来られる方が多いです。
また、生前対策の相談も増えています。会社経営者の方から「今は元気だが、将来の相続に向けて整理しておきたい」という相談や、お子様方から「親が会社を放置しているが、相続時に大変なことになるのでは」という相談を受けることがあります。特に会社の株式や、休眠状態の会社の処理など、現金や預金以外の資産に関する相談が目立ちます。
実際、ある案件では事業用の土地や重機を多数保有する会社の整理を依頼されました。株式は全て所有していても社長が別の人に変わっていて協力を得られない状況であったため、社長を解任し、取引先との関係整理や機械の処分など、一つずつ丁寧に対応して解決に至りました。このように、さまざまな要素が絡み合う複雑な案件も少なくありません。
どのように相続問題の解決を進めていきますか。
まずは、状況の把握・整理、依頼者の希望を徹底的に調査したうえで、必要に応じて関係者に話し合いのテーブルについてもらうようにします。
任意で応じてもらえない場合は、裁判所を利用して集まってもらうこともあります。中には途中で「もう嫌だ…」と言い出す方もいますが、粘り強く話し合いを継続できるよう努めています。
そして次に、相手方を含む関係者の希望をできる限り聞き出します。希望が出てこない場合は進展が難しいため、「具体的な希望を出してください」と促したりします。
例えばその中で、特定の財産の相続を希望する方が出てきたら、「では、(引き取り手がなかった)こちらの財産も一緒に引き取ってもらえませんか」といった提案をして、解決に向けて進めたりもします。
また、高齢の方で意思表示が難しい場合は、後見人をつけることもあります。さまざまな工夫をしながら、できる限り関係者全員の希望を聞き出し、調整していくことが重要です。
相続の話し合いで行き詰まったときは、どのように対応していますか。
長年の経験を活かし、さまざまなケースを想定して、幅広い角度から解決の糸口を探っています。
具体例を挙げると、ある遺産分割の案件では5人の相続人のうち、私の依頼者1人と残り4人で話がまとまりにくい状況でした。本来は5人全体での解決が望ましいのですが、依頼者の話をよく聞いていくと、「全ての問題が解決しなくても、自分だけでも紛争状態から離れたい」という本心がわかったのです。
そこで1対4の構図で解決を目指すことを提案し、全員の了承を得ました。4人の配分は決まらないままだったものの、依頼者1人分の分割内容については合意を得られたのです。杓子定規で「絶対に全員で遺産分割をしなければならない」という考えでは、決してたどりつけないゴールだったと思います。
約20年の経験と粘り強さが生む確かな解決力
相続分野における事務所の強みを教えてください。
広い視点から解決策を検討すること、粘り強く取り組み、諦めないことが当事務所の強みです。たとえ時間がかかっても、さまざまなアプローチで解決を目指します。実際に、相続発生から数十年経過したような遺産分割の案件や、事業承継を含む会社整理も絡んでくる案件など、難しい案件も解決へ導いてきました。どんなに複雑でも、依頼者の希望を実現するべく全力を尽くしています。
また、北朝鮮の方が相続人に含まれるケースなど、特殊な案件に対応できることも特徴です。約20年の経験を活かし、ほかの事務所で引き受けてもらえなかったような難しい案件でも、最高の解決に導きますので、安心してご相談ください。
他士業との連携について教えてください。
事業承継など、会社関係の対応が求められる案件では、会社法の知識だけでなく、税務に関する知識も必要です。特に生前対策では、相続税対策が重要な課題となります。そのため、税理士との協力関係を常に保っています。そのほか弁護士周辺業(弁理士・司法書士・不動産鑑定士・公認会計士など)とも連携し、総合的な解決を目指しています。
また、より良い解決方法を考えるうえでは、関係者のグループ分けも重要です。たとえば、5人の相続人がいる場合、全員で協力できるのか、それとも一部の相続人だけで協力して進めるべきかの見極めが必要です。この線引きは、税金対策の範囲にも影響するため、案件の初期段階で慎重に判断します。関係者の関係性も把握したうえで、解決方法を検討します。
より良い解決方法を見つけませんか
相続トラブルを抱えている方へメッセージをお願いします。
まずは専門家である弁護士に相談することをお勧めします。弁護士に相談することで、自分では想像していなかった解決方法が見つかることがあるでしょう。また、対話を通じて、自分の状況や希望を整理することも可能です。
どのような解決方法があるのか、自分にとって望ましい解決方法は何なのかを確認してみませんか。関係者や相手方と一緒に相談に来ていただいても構いませんので、まずはご相談ください。