デジタル資産や不動産の相続に精通〜相続財産の活用方法も含めた総合的なアドバイスを提供

大阪府大阪市「tou法律事務所」の西村啓弁護士(大阪弁護士会所属)に相続分野の取り組みについて話を聞きました。不動産やデジタル資産の相続に力を入れているという西村弁護士。特にデジタル資産に関しては、今後ますます注目されていくことから、啓蒙活動や新たなツール開発も含めた取り組みを考えているそうです。
インタビュー
深い思考と迅速さで依頼者をサポート
事務所設立の経緯を教えてください。
2009年に弁護士登録をして、大阪市内の法律事務所に入所しました。そこでは、不動産案件や知的財産権に関する紛争など、幅広い案件に携わりました。また、法人の事業再生案件なども手がけ、多様な経験を積みました。
独立志向が強かったわけではなく、以前の事務所では自由に活動させてもらえたので居心地はとても良かったんです。しかし、自分の専門性をさらに高めていきたいという思いが強くなり独立を決意して、2024年4月に「tou法律事務所」を開設しました。
現在は、web3関連事業、不動産事業、そしてクリエイティブ産業を中心としたリーガルサポートを提供しています。事務所名の「tou」には、「問う」「闘」「to U」という意味を込めています。依頼者のパートナーとして共に考え、闘い、そして活路を切り開く存在でありたいという思いを表現しています。
事務所の理念を教えてください。
迅速に問題を解決すること、そしてレスポンスの早さを常に心がけることです。依頼者にとって、これが最も大切なことだと考えています。
しかし、ただ早ければいいというわけではありません。拙速な対応や適当な処理は、むしろ依頼者の利益を損なう可能性があります。専門家としての緻密な調査と深い思考を決して怠らず、迅速さと専門性の両立を心がけています。
難易度の高い案件も精力的に取り組む
相続分野に注力される理由としてはどういったところにありますか。
これまで不動産分野に特に関心を持って取り組んできましたが、相続案件では不動産が重要な位置を占めています。単なる遺産分割だけでなく、相続後の不動産の利活用についてのサポートなど、これまで培ってきた経験と知識を十分に活かせる分野だと考えています。
また、暗号資産や電子マネーといったデジタル資産にも強い関心を持っています。今後の相続問題では、デジタル資産の取り扱いがますます重要になってくるでしょう。
相続という場面は、故人の大切な資産を次世代に確実に引き継ぐ重要な場面です。家族の大切な資産を適切な形で引き継いでいけるよう、全力でサポートしていきたいと考えています。
どのような相談が多いですか。
一般的な遺産分割の案件が多いのですが、他の弁護士が敬遠するような案件も積極的に引き受けています。
例えば、遺言の無効や、過去に成立した遺産分割調停の無効を争うケースなど、難易度の高い紛争も取り扱っています。もちろん、事案の規模や必要なリソースを考慮しながらではありますが、意欲的に取り組んでいます。
以前の事務所に在籍していた時から、相続に関する複雑な紛争処理を数多く手がけてきました。こうした困難な案件を解決に導くことにやりがいを感じますし、私の特徴の一つだと自負しています。
相続案件を扱う上で心がけていることはありますか。
最も大切にしているのは「コミュニケーション」です。依頼者との信頼関係を築くことが、問題解決の第一歩だと考えています。特に相続案件では、ご高齢の依頼者も多いので、法的な説明もわかりやすく丁寧に行うように心がけています。十分に理解していただくまで繰り返し説明することもあります。
また、依頼者の話をじっくりと聴くことを大切にしています。「他の法律事務所ではまったく話を聞いてもらえなかった」という理由でセカンドオピニオン的に相談に来た方からも、満足してもらえることが多いです。
相続問題では感情的になっている依頼者も少なくありません。そのようなときに理屈で説明しようとしても、逆効果になることがあります。依頼者を論破しようとしても無意味ですし、それは絶対にやるべきではないと思っています。まずは依頼者の話を聞いてしっかり受け止め、そのうえで丁寧に説明することが大切だと思います。
デジタル資産分野に力を入れていきたい
相続問題を弁護士に相談するメリットにはどのようなことがありますか。
依頼者の権利を適切に守り、経済的な不利益を防ぐことができる点です。一見シンプルに見える遺産分割でも、財産の評価方法や特別受益の判断など、専門的な知識が必要な場面が多々あります。
実際の相続案件では、弁護士が付いている相続人と付いていない相続人との間で、最終的な取分に大きな差が生じることがあります。これは、複雑な訴訟になればなるほど顕著です。場合によっては、取分がゼロになってしまうのか、数千万円を受け取れるのかという極端な差になることもあります。
複雑な相続案件では、専門的な法的知識がない方が自力で対応するのは極めて困難です。ですから、ご自身の権利を適切に守るためにも、早い段階での相談をお勧めします。弁護士に相談することで、予期せぬ不利益を被ることを防げます。
相続案件における事務所の強みや特徴を教えてください。
相続案件の中心は財産に関する問題です。そのため、相続法の知識だけでなく、財産の種類や特性に関する深い理解が求められると思っています。私は不動産やデジタル資産といった分野に深く関わってきましたので、これらの知識や経験は当事務所の強みだと考えています。
特にデジタル資産については、相続財産として注目される場面が増えてきました。ただ、デジタル資産には特有の問題があります。例えば、暗号資産などはスマートフォンやパソコンの中にしかデータが存在しないため、その発見自体が困難なケースが少なくありません。
また、存在はわかっていても、適切なアクセス方法が分からないという問題も多々あります。その結果、何千万円もの暗号資産を保有していたにもかかわらず、見逃されてしまうということも起こり得ます。こうした問題に対応できる知識と経験を持っていることは、当事務所の大きな特徴だと思います。
不動産に関しては、単なる相続手続きだけでなく、相続後の不動産の処分や活用についてのアドバイスも行っています。相続で取得した不動産を、どのように活用すれば相続人の方々にとって最も有益になるのか、専門的な視点及び幅広いネットワークから提案しています。
相続分野における今後の展望を教えてください。
デジタル資産に関する取り組みを強化していきたいと考えています。その一環として、啓蒙活動にも力を入れていくつもりです。デジタル資産はまだ一般的な認知度が低く、その扱い方や相続の準備が整っていない方が多いのが現状です。
何の対策もしないまま亡くなられると、相続人が暗号資産などのデジタル資産を発見するための調査に苦心することになります。これは決して望ましい状況ではありません。本来であれば、生前に相続人との間でアクセス情報を適切に共有しておくことが重要です。そのため、デジタル資産の生前対策に関するアドバイスも、今後の重要な業務になってくると考えています。
デジタル資産の相続問題は今後、ますます重要性を増してくる分野です。そのため、この分野に特化したサービスやプロダクトの開発も視野に入れています。私自身が単独で開発するというよりは、この分野に関心を持つ方々と協力しながら、新しいソリューションを生み出していければと考えています。
最後に、相続トラブルを抱える方へメッセージをお願いします。
相続に関する専門家は数多くいるので、「誰に相談すればいいのかわからない」とお困りの方も多いのではないでしょうか。そんなときは、まずは弁護士にご相談いただくことをお勧めします。
特に最近では、従来の不動産や預貯金だけでなく、デジタル資産など新しい形の財産も増えてきています。こうした複雑化する相続問題に対応するためにも、早めの相談が重要です。
相続に関することで少しでも気になることがありましたら、できるだけ早い段階でご相談ください。適切な対応方法をご提案させていただきます。