弁護士歴45年以上の経験と実績〜事実を明確にすることで複雑な相続問題も適切な解決に導く

東京都中央区「森法律事務所」の森仁至弁護士(第一東京弁護士会所属)に相続分野の取り組みについて話を聞きました。弁護士歴45年以上の経験を持ち、これまで多くの相続問題を扱ってきた森弁護士。相続問題を弁護士に相談するメリットや印象に残っている事案などについて聞きました。
インタビュー
銀座に事務所を開設して40年
事務所設立の経緯を教えてください。
1978年に弁護士登録をし、最初の4年間は新橋にある法律事務所で勤務弁護士として働きました。その後、銀座に事務所を開設し、40年以上が経ちます。
当時、多くの弁護士にとって独立は殆ど当然予定のことでした。友人たちの中には6年、10年と勤務弁護士を続けた後に独立した人もいましたが、最終的にはみな自分の事務所を構える道を選んでいます。
私自身、勤務年数を4年と決めていたわけではありませんでしたが、事務所の所長からの勧めもあり、独立に踏み切ることにしました。
事務所の理念を教えてください。
法律の専門家として「きちんとした仕事をすること」、そして「誠実であること」を常に心がけています。
具体的には、事実関係を徹底的に、かつ正確に調査することを何よりも重視しています。依頼者の話に耳を傾け、必要な情報を徹底的に集めることで、真実に基づいた最適な解決策を見出すことができます。この基本を徹底することで、依頼者の信頼に応えたいと思っています。
事実を正確に把握することが問題解決の出発点
相続分野に注力しているのはどのような理由ですか。
弁護士登録をして10年が経過した頃から、相続に関する相談が徐々に増えてきました。当時は、独立して自分の事務所を構えていたこともあり、分野を限定せずに幅広い法律相談に対応していました。そうした中で、相続案件に多く携わるようになり、経験と知識が蓄積されました。
その結果として、相続関係が得意分野の一つになりました。ニーズの高い分野でもありますので、依頼者の期待に応えるために、これまでの経験をさらに活かしていきたいと考えています。
どのような相談が多いですか。
兄弟間の相続争いが多いと感じます。親子関係が悪化したケースもありますが、圧倒的に兄弟間の対立が目立ちます。
私の印象では、相続がきっかけで争いになるというよりも、それ以前から兄弟の関係がぎくしゃくと不仲になっている場合が多いように感じます。そのため、いざ相続の話し合いが必要になったときに穏やかに解決できず、時には会話自体ができないことも少なからずあり、結局弁護士に依頼するのだと思います。
相続は単なる遺産分割の問題ではなく、家族の感情や歴史が複雑に絡み合う、繊細な問題です。こうした背景を理解した上で、依頼者が納得できる解決策を提供することを心がけています。
そのような兄弟間の紛争にはどのように対応するのですか。
まず私が重視するのは、事実を正確に把握することです。何が原因で関係がうまくいかないのかを明らかにし、次に相続財産が具体的に何であるのかを徹底的に調査します。場合によっては、一部の相続人が遺産を隠しているケースや、被相続人が亡くなる前に財産を使い込んでいる状況もあります。こうした事実をすべて洗い出すことが、解決の出発点です。
事実が明らかになれば、あとは着地点を見つけて交渉するわけですが、交渉が難航するようであれば、早い段階で家庭裁判所での調停を推奨しています。
調停には大きな利点があります。依頼者または代理人である弁護士からの連絡では、相手が全く応答しないといった問題が頻繁に発生しますが、裁判所からの呼び出しであれば、必ず進展が期待できます。
相続問題は、時には5年、10年と争いが長期化するケースもあります。したがって、スムーズかつ確実に解決へと導くため、調停を積極的に活用するのが良いと考えています。
相続案件を扱う上で心がけていることはありますか。
冷静に事実を聞き取ることです。依頼者が感情的になっている場面でも、私は第三者として事実を正確に把握し、それに基づいて対応することを最優先としています。
依頼者の多くは、感情が高ぶっていることが少なくありません。そのため、冷静な視点を持つ弁護士の存在が非常に重要です。当事者間で感情が絡み合い、話し合いが難航しているときこそ、弁護士が冷静な第三者として間に入り、理性的に進める役割を果たすべきだと思います。実際、弁護士が介入することで、解決への道筋が見えてくるケースは少なくありません。
また、感情的なわだかまりがある当事者同士は、お互いに会うことさえ嫌がり、厳しい応答に終始してしまいがちです。そうした場面で弁護士が冷静に事実を整理し、双方の意見を代弁することで、当事者も落ち着いて向き合える状況が生まれることがあります。
依頼者の感情を理解しつつも、弁護士自身は冷静であること。それが、適切に問題を解決するために不可欠な姿勢だと考えています。
相続問題の解決には根底にある感情にも目を向ける
これまでの活動で印象に残っているエピソードはありますか。
ある兄弟姉妹間の遺産分割問題が印象に残っています。
相続人は3人兄弟で、私は長男と長女の代理人を務めたのですが、末の弟が遺産分割協議に一切同意せず、法定相続分に基づいた提案や、更に有利な譲歩案を出しても受け入れず、裁判所の調停も2年を超える長期にわたり膠着状態に陥っていました。
まさに打つ手がない状況の中、予期せぬ展開が訪れました。突然、相手方から「話をしたい」と連絡が来たのです。雪の降る日、私は指定された小さなホテルに出向き、ロビーで2時間ほど話をする中で、相手方の胸の内を知りました。
彼は、エリートコースを歩んだ兄や姉と常に比較され、いつも劣等感を抱かされてきたのです。両親や兄姉から粗略に扱われてきた長年の鬱憤が、遺産分割という局面で噴出したのでしょう。私は彼の幼少期からの痛みと向き合い、静かに耳を傾けました。
驚くべきことに、その対話から1か月も経たないうちに、弟は当初拒否していた遺産分割提案を受け入れ、調停が成立しました。彼が本当に求めていたのは、遺産ではなく、自分の感情を理解してもらうことだったのかもしれません。
この経験から、相続問題の本質は財産の分割ではなく、家族の感情にあることを深く学びました。法律の専門家として、ときには数字や条文以上に、人の心に寄り添うことの重要性を改めて感じました。
相続問題を弁護士に相談するメリットにはどのようなことがありますか。
当事者同士では話し合いが進まない状況でも、前に進められることです。弁護士は法律の専門家として問題の見通しを立てることができるため、依頼者が今後どのように進むべきかを明確に示すことができます。
例えば、訴訟に発展した場合、どちらが法的に有利かを正確に見極めることができますし、感情がもつれて話し合いが難航している場合でも、法律に基づいた冷静で理性的な判断を下し、依頼者にとって最善の解決策を提案できます。
相続分野における事務所の強みや特徴を教えてください。
45年以上の弁護士キャリアを通じて、多様で複雑な相続案件を数多く経験してきました。その中には、相続が長期間放置された結果、相続人が60人を超えるような複雑な案件もありました。
そうしたケースにも対応できたのは、これまでの経験と蓄積された知識、そして冷静な判断力のおかげだと考えています。この先も、依頼者が抱える問題に対して最善の解決策を見つけるための努力を惜しまず、安心して相談していただける事務所であり続けたいと考えています。
最後に、相続トラブルを抱えている方へメッセージをお願いいたします。
弁護士は医者と同じように、能力、熱意、誠実さ、そして得意分野、解決方針は決して一様ではありません。依頼者と弁護士の間にも相性があります。誰に依頼するかによって結果が変わりますので、慎重に選ぶことが重要です。そのためにも、複数の弁護士、法律事務所に相談することをお勧めします。同じテーマで複数の弁護士に相談してみると、その違いがよく分かるはずです。
相続問題は、解決までに時間がかかる場合も少なくありません。また、家族間の問題であるだけに、その後の人生に大きな影響を与える可能性があります。だからこそ、弁護士を選ぶ際には、法律上のアドバイスだけでなく、話を聞く姿勢や親身になって対応してくれるか、相性が合うかなどを見極めて、信頼できる弁護士をパートナーに選んでいただきたいと思います。