高齢者・障害者支援の知見を活かして相続問題に注力 生前対策から紛争解決まで総合的にサポート
高知県高知市にある「弁護士法人やいろ法律事務所」の山本尚吾弁護士(高知弁護士会所属)に、相続分野の取り組みについて話を聞きました。弁護士に登録した当初から高齢者・障害者の支援に力を入れ、相続分野では他士業との連携を強固にし、ワンストップのサービスを提供しています。
インタビュー
ワンストップのサービスを提供。他士業とのやりとりもお任せください
事務所設立の経緯を教えてください。
2012年に弁護士登録をして、社会的弱者の方の支援に特に力を入れている事務所に入所しました。そこで約3年半働き、2015年9月に独立をして「山本尚吾法律事務所」を開設しました。
その後、2017年に市川耕士弁護士が加わり、2019年4月に現在の場所に移転し、2022年6月に高知県内で初めて事務所を法人化し、現在の「弁護士法人やいろ法律事務所」となりました。現在、私と市川弁護士が共同代表を務め、事務員が4名体制で業務をさせていただいています。
「やいろ」という名前は、高知県の県鳥である「ヤイロチョウ」から名付けました。この鳥は8色の羽を持つと言われており、「八」には末広がりの意味もあるため、縁起が良いと考えました。
また、「山本」「市川」「ロイヤー(弁護士)」の頭文字を取ると「やいろ」になること、さらに「やいろ」を逆から読むと「ロイヤー」になることも、この名前を気に入った理由の一つです。
事務所の理念を教えてください。
私たちが最も大切にしているのは、身近で、親しみやすく、そして頼りがいのある事務所であることです。法律事務所というと、一般的に敷居が高く入りづらい印象があると思います。悩みを抱えている方にとっては、なおさら気が重くなるものでしょう。そのような方々が、ほっと安心できるような場所でありたいと考えています。
また、私たちはワンストップサービスの提供を目指しています。相続問題では税理士や司法書士など、他の専門家との連携が必要になることが多くあります。依頼者の方がそれぞれの専門家に対して個別に資料を用意したり、説明をしたりするのは大変な負担です。
そこで、当事務所に依頼していただければ、弁護士以外の専門家とのやりとりもフォローさせていただき、依頼者の方の負担を少しでも減らせるようにと考えています。
バリアフリー化で高齢者も利用しやすい事務所に
相続分野に注力しようと思われたのはどのような理由からですか。
現在、私は、相続分野と交通事故分野を重点的に扱っています。これらの分野は多くの法律事務所が扱っているため、依頼者の方々はどこに相談すべきか悩まれると思います。
そのような状況の中で、専門分野として明確に打ち出すことで、相続問題などで困っている方々が迷うことなく安心して相談できるのではないかと考えました。
また、私は弁護士会の中で「高齢者・障害者支援」に関する委員会に所属しています。委員会の活動を通じて、必然的に高齢者の問題に触れる機会が増えました。その結果、相続分野への関心も深まりました。
多くの弁護士が扱う分野ではありますが、実は専門性の高い分野であり、過去の事実に対する事実認定の在り方や立証資料の収集など、高い知見が必要な分野であり、より質の高いサービスを提供するには、分野を絞って研鑽することが重要であると考えました。
現在の事務所に移転した際には、相続分野に注力するという方針をより具体的に実現するため、事務所のバリアフリー化を意識しました。
移転前は、エレベーターのないビルの3階に事務所があり、高齢者の方々にとっては利用しづらい環境でした。そこで、新しい事務所は1階に構え、高齢者の方や障害がある方も利用しやすい環境となりました。
加えて、事務所の前には駐車場も設けました。これにより、車で来られる方々にも便利に利用していただけるようになりました。
相続に関してどのような相談が寄せられますか。
大きく分けて「死後の対応」と「生前の対策」があります。
まず、死後の対応、つまり本来の相続問題についてですが、特に多いのは遺産分割協議がまとまらないというような相談です。分割割合は、単純に法定の相続分だけでは決められない場合もあり、一人の相続人が生前に多額の贈与を受けていたり、不動産の贈与を受けていた場合には、特別受益として他の相続人が法定相続分よりも多くもらえる場合もあります。
また、相続人の一人が、親の介護や生活援助などをしてきた場合には、寄与分として法定相続分よりも多くもらえる場合もあります。これらが争いになった場合には、過去にどのような事実があったのかということを証拠によって証明する必要があり、弁護士による関与が必要となる場合が多く、ご相談・ご依頼をいただくことが多いです。
また、一方の相続人が、相続財産に関する情報を独り占めして開示してくれないという相談も多くあります。このような場合、不動産、預金、保険、有価証券に関する情報を調査し、相続財産に関する情報を収集するなどします。
その他、生前に被相続人の多額の預金が引き出されていたというような、使途不明金の問題や、遺言書が作成されていて、相続財産が一切もらえないというような場合などに遺留分の請求をして一定の金銭の支払いをしていただくというようなご依頼もあります。
これらの問題は必ずしも調停や審判、裁判になるわけではありません。私は可能な限り話し合いでの解決を目指しており、調停や裁判に至らずに解決できるケースも多くあります。
また、親族間で争いになっておらず、話し合いがまとまっているケースでも、県外に住んでいる場合や、お仕事などが忙しい場合などに相続手続きがなかなかできなくて困っているという方から、ご相談・ご依頼をいただき、相続手続きを代行させていただくという場合もあります。
生前の対策についてはいかがでしょうか。
生前の対策としては、広く終活全般に関わっています。具体的には、親族に頼れる方がいない場合などに、認知症になった場合や入院した場合、死後の葬儀や遺骨の処理などに備えて、財産管理契約、任意後見契約、遺言の作成、死後事務委任契約などのサポートを行っています。
特に、生前の対策として、一番ご依頼が多いのは遺言書の作成です。遺言書の作成は手間で、「まだ大丈夫」と思われることは多いですが、病気になる時期や死期は選べませんので、お元気なうちの準備がとても重要です。死後のトラブルを避けることで、結局のところ、時間や労力、費用などを削減することできますので、手間と多少のコストはかかりますが是非遺言書の作成に取り組んでほしいです。
また、財産を調査した上で、最適な相続の進め方をマネジメントすることもあります。相続税対策は、生前の早い段階で取り組むことで選択肢を多く持てますので、早めに取り組むことが重要です。その他、親が認知症になっており、兄弟が親の預金を費消しているというような相談も多くあり、このような場合には成年後見の申立てをするなどの対応をすることもあります。
さらに、事業承継も扱っています。企業を経営されている方が、誰に事業を引き継ぐかという問題で悩まれている方も多く、事業承継の問題は、相続の問題や税務の問題とも大きくかかわりますので、税理士と連携しながら法的な支援をすることが必要不可欠です。
このように、相続に関しては幅広い案件を扱っており、それぞれのケースに応じて最適な解決策を提供できるよう努めています。
相続案件を手がける上で心がけていることを教えてください。
依頼者の意思をしっかりと実現することです。そのために、依頼者の話に丁寧に耳を傾けるよう努めています。実現が困難な部分については、専門家として適切な助言を行うようにしています。
相続は感情的な要素が絡む分野です。そのため、依頼者だけでなく、相手方に対しても慎重に接するよう心がけています。相手方の主張も踏まえたうえで、円満な解決方法がないのかを模索するようにしています。
解決方法としては、話し合いでの解決を重視しています。直接の交渉が難しい場合でも、調停を通じて和解を目指します。
ただし、話し合いでの解決が困難なケースもあります。そのような場合は、感情論にならないように注意を払いながら、客観的な事実関係を主張することに注力します。これにより、相手を必要以上に刺激することなく、依頼者の利益を最大限に守ることができます。
このようなアプローチを通じて、法的な解決だけでなく、家族関係の維持や将来的な幸福も考慮した総合的な問題解決を目指しています。相続は単なる財産分配の問題ではなく、家族の過去と未来に関わる重要な問題だと認識しています。そのため、常に慎重かつ丁寧な対応を心がけています。
他士業との連携で依頼者のニーズに合わせたトータルケアを実現
相続問題を弁護士に相談するメリットにはどのようなことがありますか。
まず、生前対策の分野では、総合的なマネジメントを行うことができます。相続は法律だけでなく、税金や登記など多岐にわたる分野に関係しますので、各分野の専門家と連携しながら最適なアドバイスを提供します。例えば、相続税対策が必要な場合は税理士と、不動産の登記が必要な場合は司法書士と連携し、依頼者のニーズに合わせたトータルケアを実現します。
また、将来の紛争を防ぐための助言も弁護士の重要な役割です。例えば、生前贈与をする場合にどのような証拠を残しておくべきか、あるいは遺言書を作成する場合に、被相続人の意思能力に疑義が生じないようにするにはどのような対策が必要かなど、法的な観点から適切なアドバイスができます。
死後の対応としては、弁護士は依頼者の代理人として活動できるという大きな特徴があり、特に親族間で対立がある場合、依頼者に代わって相手方と交渉することで、依頼者の精神的負担を大きく軽減することができます。
また、弁護士は事実認定のプロフェッショナルです。相続問題を解決する上で、生前贈与の事実などを立証する必要がある場合が往々にしてあります。弁護士は、そのための証拠などを収集し、その事実を立証するための支援をします。
相続問題は非常に複雑で重要な問題です。弁護士のサポートを受けることで、安心して問題解決に臨めることが、大きなメリットだと思います。
相続案件のやりがいをどういった点に感じられますか。
相続は人生の締めくくりとも言える重要な出来事です。私はこれをオセロに例えることがあります。人生の最後の瞬間で全てがひっくり返されてしまうようなことがあれば、それまでの人生が無になってしまうかもしれません。そのため、生前対策として、安心して最期を迎えられる環境づくりをサポートすることに大きなやりがいを感じています。
親族間の争い、いわゆる骨肉の争いを目にするのは辛いものがあります。相続を巡って親族同士が争うことは、当事者にとって非常に苦しい経験です。往々にして、相続問題から離れた些細なことで罵り合いが始まり、誰も得をしない状況に陥ることがあります。
このようなストレスを少しでも軽減し、円滑な相続の実現をサポートすることにも、やりがいを感じます。
相続問題における事務所の強みや特徴を教えてください。
まず第一に、親しみやすい雰囲気の事務所であることを心がけています。「こんなことで相談してもいいのだろうか」と躊躇せずに、気軽に相談できる環境を整えています。相続問題は早めの対策が重要ですので、このような気軽に相談できる雰囲気は大きな強みです。
次に、私自身が高齢者・障害者分野に長年携わってきた経験があります。その経験を活かして、相続分野を前面に打ち出している点が、高知県内では珍しい特徴だといえるでしょう。現在では取り扱う案件の多くが相続関連です。この分野に特化することで、より深い知見と経験を積むことができています。
また、税理士や司法書士との連携も当事務所の強みです。NPO法人「ビジネスサポートこうち」で中小企業支援を行っているのですが、この活動を通じて、他士業の方々とのネットワークを築くことができました。このネットワークにより、個人の相続問題はもちろん、事業承継にも対応できます。
これらの特徴により、依頼者の皆様に、親しみやすく、専門性が高く、かつ効率的なサービスを提供できることが、当事務所の大きな強みだと考えています。
最後に、相続トラブルを抱えている方へメッセージをお願いします。
生前の対策は、親としての最後の責任だと思います。子どもを相続争いに巻き込まないためにも、早い段階で準備することが重要です。早期にご相談いただければ、時間をかけてより良い相続対策が可能になります。
また、相続が発生した後の手続きに関しても、ご依頼していただければ、手続きの代行や相手方との交渉などを私が行うことで、不当に不利な立場となることを避けつつ、時間や労力などのご負担も軽減できるかと思います。
相続税の申告期間は10か月、事業をしている方などは4か月以内の準確定申告が必要です。家族を亡くして傷心している最中に、このような手続きを進めるのは大変な負担になりますので、そのご負担を最小限に抑えて、円滑に相続手続きを進められるようにサポートします。
「自分の家には紛争の恐れはない」という方でも、登記や相続税など、相続に関する総合的なアドバイスを提供していますので、まずは一度ご相談ください。