不動産が絡む揉めごとや使い込みの相談多数。依頼者の権利を守り、公平な相続の実現をサポート
福岡県北九州市にある「岡部・江上法律事務所」の江上裕之弁護士(福岡県弁護士会所属)に、相続分野への取り組みについて聞きました。税理士や司法書士、不動産業者などと連携し、相続の悩みに幅広く対応している江上弁護士。「相続は一生で何度も経験することではないので、わからないことがあって当然」と話し、少しでも不安を感じたら気軽に相談してほしいと呼びかけます。
インタビュー
2名の弁護士がそれぞれの強みを活かし、地域の方々の悩みを解決
先生の事務所について教えてください。
当事務所は2017年に開業し、今年で8年目になります。司法修習の同期であり、既に独立していた岡部友和弁護士の事務所に私が合流して、現在の「岡部・江上法律事務所」という名称になりました。
岡部弁護士は損保会社をはじめ企業の顧問を務めていて、破産管財事件の経験も豊富です。一方、私は弁護士になった当初から相続や労働、医療の問題に注力してきました。それぞれが自分の強みを活かせる分野を担当し、依頼者の問題解決をサポートしています。
不動産をめぐる対立や使い込みの相談が多数
相続についてよくある相談を教えてください。
最も多いのは、不動産がからむトラブルです。遺言書がないと特に揉めやすいですね。誰が不動産を取得するのか、いくらと評価するのか、といった点をめぐって相続人同士で対立するケースがよく見られます。
不動産について揉めると、弁護士が入っても話し合いで解決できず、調停や審判に進むことが多いです。遺言があれば紛争リスクをかなり抑えられるので、不動産をお持ちの方はぜひ、相続に備えて遺言を作ることをお勧めします。複数人で共有するのではなく、「自宅を長男に相続させる」というふうに、誰か一人に引き継いでもらう形にすると揉めにくいです。
最近増えているのは使い込みの相談です。例えば、お父さんが亡くなるまでの間、長男夫婦が介護をしていて、その間に、百万円単位でお金が引き出された形跡がある。どう考えてもお父さんが自分で出金したとは考えられないので、長男夫婦が勝手に引き出したのではないかーー。このように、不正な出金が疑われるケースについての相談をよく受けます。
すでに揉めている方から相談を受けることが多いのですか。
そうですね。当事者で話し合ったけれど決裂してしまい、自分たちではどうにもならない状態になってから相談に来る方が圧倒的に多いです。
揉めている方から相談を受けた場合、まず、財産の内容がわかっているかどうかを聞いて、解決方針を決めていきます。
特定の相続人が財産を取りまとめていて開示してくれない場合は、話し合いでの解決が難しいケースが多いです。そのため、最初から調停や裁判を視野に入れて、適切な進め方を検討します。
一方、遺産の内容がある程度わかっている場合は、裁判になった場合の結果を見据えて和解案を作成し、話し合いでの解決をはかります。
中には、「あいつの代理人の言うことは信用できない」と不信感を持つ方もいます。そのような方には、一つの方法として、「この和解案を持って、別の弁護士のところに法律相談に行ってみてください」とお伝えすることがあります。
実際にそう提案して別の弁護士の法律相談を受けてもらった結果、「あの代理人は妥当なことを言っているんだな」と納得してもらえて、話し合いで解決したケースもあります。
正当な相続分を取得できるようサポート
揉める前の相談もありますか。
はい。家族が亡くなって間もなく、まだ他の相続人と話をしていないタイミングで相談に来る方もいます。話し合いで解決する可能性が少しでもあるなら、いきなり弁護士を入れるのではなく、まずは相続人同士で話をしてみるよう勧めることが多いです。
まずは相続に関する法律のルールや手続きの流れなどを説明し、その上で、個別の事情に応じて話し合いの進め方をアドバイスします。
相続について、弁護士に依頼するメリットはどのようなことですか。
正当な相続分を取得できる可能性が高くなることです。例えば、被相続人の財産が生前に他の相続人によって不正に出金された場合、依頼者は、本来相続できるはずの財産を得ることができません。
弁護士に依頼していただければ、相手方に対して、不正に使い込んだ分を返還するよう請求します。その後、返還された分を含めて改めて遺産分割協議をおこなうことで、それぞれの相続人が適切な相続分を取得することができます。
初めて先生の事務所に相談に行く際、必要な持ち物などがありましたら教えてください。
被相続人の通帳など、財産の内容が分かる資料があれば一通り持ってきていただけると、話がスムーズに進みます。
不動産がある場合は、大体どのくらいの価値があるかが分かる資料、たとえば固定資産の評価証明書や通知書などがあればぜひお持ちください。具体的には予約の電話の際にお伝えしますのでご安心ください。
他士業とのネットワークを活かして相続問題全般に対応
先生の事務所の強みについて教えてください。
以前別の事務所に勤務していたときからのご縁で、北九州でも大手の税理士事務所と連携をしています。また、懇意にしている司法書士もいるので、相続税や登記手続きなどを含め、相続に関する様々な問題にワンストップで対応することが可能です。
相続財産に不動産がある場合は、査定を取ったり、値付けをして売り出したりするなどの手続きが必要になることがあります。これらの手続きも、土地家屋調査士や不動産業者と協力して対応できます。
ちなみに、値付けと一口に言っても、不動産の値段の付け方には何種類かの方法があります。
最もオーソドックスな方法は、実際に売れそうな価格、いわゆる市場価格を適正に算出する方法です。ただ、厳密に算出するとなると不動産鑑定士に本鑑定を依頼する必要があり、50~60万円ほどの費用がかかります。
財産の総額などから考えて、費用を支払ってまで本鑑定を依頼するメリットがない場合は、簡易鑑定で算出するという方法もあります。本鑑定より大まかな数字にはなりますが、金額の目安がわかり、かつ本鑑定よりも費用を抑えられます。
揉めるリスクが低い場合は必ずしも鑑定を受ける必要はなく、当事務所とつながりがある不動産業者に査定書を作成してもらって解決するケースもあります。
依頼者の事情や目的に応じて、一番メリットのある方法を柔軟に提案しています。
相続について不安やトラブルを抱えている相談者に向けて、メッセージをお願いします。
相続の問題は、一生のうちに何度も経験することではありません。ですので、そもそもどういうふうに遺産を分けることが基本なのかなど、皆さんがご存じないのは無理のないことです。
私は、初回30分間の無料相談にも対応しています。「どのように相続の手続きを進めればよいかわからない」など少しでも不安に感じることがあれば、気軽に相談にお越しください。きっと何かしら解決のヒントをお伝えできると思います。
また、財産をお持ちの方には、あらかじめ遺言を残しておくことを強くお勧めします。遺言があれば、相続人は原則として遺言の内容に沿って財産を分けることになります。誰がどの財産を取得するかを話し合う必要がないので、揉めごとの発生を回避できます。特に、不動産は分割方法をめぐってトラブルになる可能性が高いので、お持ちの方は遺言を用意し、誰にどのように引き継いでほしいか指定しておくとよいでしょう。
もちろん、遺言についての相談・依頼も承っていますので、ぜひお問い合わせください。どのような内容であれば、ご自身の思いを反映でき、かつ相続人のトラブルを防げるのか、一緒に考えていきましょう。