紛争の予防から、起こってしまった紛争の解決まで幅広い視点で相続問題に取り組む
北海道札幌市「尾崎祐一法律事務所」の尾崎祐一弁護士(札幌弁護士会所属)に相続分野の取り組みについて話を聞きました。精力的に相続問題に取り組んでいる尾崎弁護士。相続問題を弁護士に相談するメリットや事務所の特徴などを聞きました。
インタビュー
相続問題は一度こじれると収拾がつかなくなる
事務所を設立した経緯を教えてください。
1988年に弁護士登録をして、札幌市内の法律事務所に就職しました。以来、約30年にわたり多くの案件に携わり、弁護士としての研鑽を重ねてきました。
弁護士として沢山の事件を扱わせてもらい勉強になり、そろそろ自分の考えや責任で仕事をしたいと考えて独立を決意して、2017年に現在の事務所を開設しました。
事務所の理念を教えてください。
個人や企業を問わず、皆さまが抱える法律トラブルを、きちんと解決に導くことを理念としています。
法律問題に直面したとき、多くの方が不安を感じたり、どう対処すべきか悩んだりすると思います。そんな時に頼れる存在として、依頼者の立場に立ち、最善の解決策を見つけ出すことを常に心がけています。
相続分野に注力しているのはどのような理由からですか。
長年の弁護士活動を通じて、相続案件は一度こじれてしまうと収拾がつかなくなるケースが多いと感じています。それゆえ、弁護士が紛争当事者の代理人として法律に照らし合わせ且つ冷静に問題の解決を図ることが必要と考えています。単なる遺産分割の問題だけでなく、家族間の感情的な対立が絡むため、問題が深刻化しやすいのです。
以前の事務所では、相続分野の責任者として多くの案件を担当していましたが、独立してからはより一層、相続分野に注力するようになりました。少しでも多くの方々の問題解決に貢献できればと考えています。
依頼者の話を丁寧に聞き、置かれた状況を正確に把握する
どのような相談が寄せられますか。
様々な相談が寄せられますが、多いのは、「遺産の分割の仕方がわからない」という相談です。家族間で揉めている場合もあれば、争いにはなっていないけれど、今後の対応について専門家の意見を聞きたいという方も多いです。
相続が紛争に発展しやすいのは、複数の相続人の中に欲を出す人がいたり、家族環境が複雑だったりする場合です。たとえば、被相続人が再婚をしている場合に、先妻の子どもと後妻との間で対立が生じるといったケースがあります。
遺産分割で揉めているようなケースではどのように解決をするのですか。
まずはじめに、法定相続分などの法律上の解釈を丁寧に説明します。その上で、具体的な分割案など、実現可能な解決策を提示していきます。話し合いがまとまらない場合には、裁判所での遺産分割調停を利用し、それでも解決しなければ審判に進むことになります。
私自身、交渉に時間をかけるより、早い段階で調停を利用することが多いです。理由は、弁護士に相談に来る時点で、すでに当事者間で話し合いが難しい状況にあることがほとんどだからです。
いたずらに交渉を重ねるよりも、調停を活用して効率的に話し合いを進める方が依頼者にとって有益だと考えています。仮に調停が不成立だったとしても、審判という形で裁判所が最終的な決定を下してくれるため、解決の道筋が見えやすくなります。
相続案件を手がける上で心がけていることはありますか。
相続問題の解決には、依頼者が置かれた状況を正確に把握することが不可欠です。どのような遺産があるのか、どのような分割方法を希望しているのか、その希望が法律上実現可能かどうかをを早期に理解する必要があります。そのため、依頼者の話をしっかりと聞くことを心がけています。
また、依頼者の心情に寄り添う姿勢も大切にしています。「この話は法的解決に直接関係ない」と判断できる内容でも、決して途中で遮ることはせず、依頼者の思いをしっかりと受け止めるようにしています。
このような理由から、私の事務所では相続の相談時間を他の分野より長めに設定しています。表面的な事実関係だけでなく、その背景にある家族関係や感情まで理解することで、より適切な解決策を見出すことができると考えているからです。
ペットのための年金についてもお考えなのでしょうか。
5年ほど前から、「アニライフ年金」というペットの信託のサービスを始めました。これは、ペットを飼っている人があらかじめ財産を信頼できる人に託し、自分がペットを飼えなくなった際に、その財産から新しい飼い主に飼育費を支払う仕組みです。
このサービスを始めたきっかけは、11年前に私自身が犬を飼い始めたことにあります。愛犬と暮らす中で、ペットを取り巻く様々な問題に触れるようになりました。特に心を痛めたのは、飼い主を亡くした犬が、新しい飼い主が見つからないまま殺処分されてしまうという話でした。
「もし自分に何かあったとき、愛犬はどうなってしまうのだろう」と不安を感じました。そこで、信託の仕組みを活用して、ペットが将来困らないようなサポートができないかと考え、「ペットのための年金制度」を始めたのです。
事務所が住宅地の中にあるため気軽に訪れやすい
相続の問題を弁護士の方に相談するメリット
故人の財産状況を客観的に把握できる点にあります。プラスの財産だけでなく、負債を含めた正確な財産状況を把握することは、相続手続きを進める上で極めて重要です。弁護士に相談することで、相続問題に向き合うための適切なスタートラインに立つことができるのです。
一方で、相談の遅れが深刻な不利益を招くケースもあります。典型的な例が、相続放棄の機会を逃してしまうケースです。相続放棄には期限があり、その期限を過ぎてしまうと、たとえ多額の借金があったとしても、相続を放棄することができなくなってしまいます。
幸い、最近では相続に関する知識が一般の人にも普及しており、相続放棄の期限を完全に逃してしまうようなケースは減少傾向にあります。しかし、相続問題は複雑で専門的な判断を要する場面が多いため、できるだけ早い段階での専門家への相談をお勧めしています。
これまで手がけた相続案件で印象に残っているものはありますか。
親が亡くなり、3人の兄弟に一筆の土地が残された案件がありました。法的には平等に分ければ済む話だったのですが、1人の相続人と連絡が全く取れない状況でした。
その方の居所は判明していたものの、こちらからの文書による連絡には一切応答がなく、やむを得ず裁判所に調停を申し立てることになりました。私は当初、この方が出廷せず、最終的には審判での解決になるだろうと予測していました。
ところが、第1回の調停期日に、それまで頑なに連絡を拒否していたその方が出廷されたのです。実は、この方は幼少期に親戚に預けられ、他の兄弟とは離れて育ったという背景がありました。
自分を親戚に預けた被相続人への反感や親元で育った兄弟に対する複雑な感情から、彼らの代理人である私からの連絡を拒絶していたのです。「自分は親戚のもとで苦労して育ったのに」という思いが、長年胸の内にあったようでした。
しかし、とても真面目な性格の方で、裁判所からの正式な通知に対してはきちんと応じる義務を感じ、調停の場に来られました。そして調停の席で、被相続人への積年の思いを吐き出すと、すんなりと法定相続分での分割に同意し、初回の調停で解決に至りました。
表面的には単純な遺産分割の問題でも、その背後には家族の歴史や深い感情が隠れていることがあります。時には、その感情を受け止め、表現する場を設けることが、問題解決の鍵となるという、相続問題の本質を考えさせられる貴重な経験となりました。
相続分野における事務所の強みや特徴を教えてください。
長年にわたり相続案件を手がけてきたため、豊富な経験と知識があります。依頼者が相続に関して何もわからない場合でも、相続人の特定や財産調査など一から丁寧にサポートして、迅速に手続きを進めることが可能です。
また、当事務所はオフィスビルの中ではなく、住宅地にある戸建ての家を利用しています。ビルの中にある事務所だと、エレベーターを上がる間に重い空気を感じたり、料金や手続きに対して不安が募ったりすることがあるようです。その点、当事務所は敷居が低く、リラックスした雰囲気で相談できると、依頼者の方々から評価をいただいています。
最後に、相続トラブルを抱えている方へメッセージをお願いします。
相続問題は、1人で抱え込まずに、まずは専門家に相談することが大切です。1人で悩んでいると時間だけが過ぎてしまい、状況が悪化することもあります。
早めに相談に来ていただければ、無駄な時間を省き、適切な対策を早く打てる可能性が高まります。相続問題の解決に向けて、専門的な知識と経験を活かしながら誠心誠意サポートさせていただきますので、お気軽にご相談ください。