悩みを抱える人にあたたかく寄り添い、解決の道筋を提示。笑顔で帰れる事務所でありたい
広島県尾道市に「山脇・山内法律事務所」を構える山脇将司弁護士(広島弁護士会)に、相続案件を手掛ける上での心構えや事務所の強みを聞きました。2008年から地元・尾道市で事務所を経営し、多数の相続案件を取り扱ってきたという山脇弁護士。調停委員の経験も活かして問題解決への適切な道筋を示します。「悩みがあっても相談後は笑顔になれる事務所でありたい」と話し、ホッと安心できる朗らかな対応を大切にしています。
インタビュー
地元・尾道の方々に法的サービスを届けたい
これまでの経歴を教えてください。
広島県尾道市出身で、青山学院大学・中央大学法科大学院(ロースクール)を卒業しました。2008年に弁護士になると同時に、他の弁護士と共同で「尾道しまなみ法律事務所」を開設しました。
そして2014年に、同じ「尾道しまなみ法律事務所」に所属していた山内奈保子弁護士と当事務所を開設して現在に至ります。また近時は、広島家庭裁判所尾道支部の家事調停委員も務めています。
弁護士になると同時に尾道市で事務所を開設されたのは、どういった経緯だったのでしょうか。
広島県内の弁護士の大半が広島市中心部に集中していて、尾道市は非常に弁護士が少ない地域です。私も当初は広島市内の事務所に就職しようと考えていました。
大きなきっかけになったのは、先輩の一言でした。私が尾道市出身であることを知った先輩弁護士から、「弁護士が少ない地域には、弁護士の力を必要としている方がたくさんいる。すぐにでも尾道市に事務所を構えたほうがよい」と勧められたんです。
広島市や尾道市の先輩弁護士から「困ったことがあったらいつでもサポートするよ」と言っていただいたことも後押しになりました。
どういった想いから、現在の事務所を開設されたのでしょうか。
利益相反といって、弁護士は、同じ事務所の他の弁護士がすでに引き受けている案件について、その案件の別の当事者から依頼を受けられないんです。前の事務所は私も含め3名の弁護士がいましたから、利益相反を理由にお断りすることが結構ありました。
ところが尾道市には弁護士自体が少ないので、断られた方は困ってしまうわけです。そこで、市民の皆様にとって相談先の選択肢が増えればと思い、事務所を開設しました。
実際に尾道市で活動されてきて、どういったことを感じますか。
尾道市から広島市中心部まで相談に行こうと思うと、往復3〜4時間はかかります。その気になれば行けない距離ではありませんが、かなりハードルが高いです。小さなお子さんがいらっしゃる方、ご高齢の方、持病をお持ちの方であればなおさらです。その結果、相談を諦めてしまって、トラブルが大きくなることも当然ありえます。
その点、普段自分が暮らしている街に弁護士がいれば、相談のハードルはずいぶん下がります。実際に「地元の先生だから相談に来ようと思いました」と言われたことは何度もあります。
事務所として、どういったことを大切にされていますか。
来ていただいた方が、「安心しました」「ホッとしました」と言って笑顔で帰れる事務所でありたいと思っています。
法律相談に来られたときは、深刻な顔をされている方がほとんどです。でも私は、「深刻な顔のまま帰らせたくない」と思っています。もちろん真剣にお話はしますが、できるだけ朗らかにコミュニケーションを取ることを心がけています。当然ですが、偉そうな態度や横柄な対応はしません。私も尾道出身なので、地元の方言も交えながら話すようにしています。
また、依頼者が必要以上に悩んでいる場合は、「そんなに悩まなくて大丈夫ですよ」といった声掛けもします。もちろん、実際に深刻な相談も少なくないですが、その場合でもきちんと見通しを伝え、解決策を提案することで、安心していただけるように努めます。
事務所は明るい雰囲気になるように内装などにもこだわり、尾道を描いた絵も飾っています。相談室の窓からは瀬戸内海が見えるようになっていて、少しでも気持ちが前向きになる環境づくりも意識しています。
遺産分割から遺言書作成まで幅広く取り扱っています
相続案件に注力している理由を教えてください。
スムーズに相続が済めば、残された人の人生はずいぶん楽になると思うんです。相続でもめると、身近な人を亡くして悲しい上に、争いを収束させるために時間を取られたり、親族間の仲が悪くなったりして、当事者に更なる負担がかかりますから、そうならないようにお手伝いしたいという想いがあります。
相続について、どういったご相談が多いでしょうか。
遺産分割協議、遺言書作成、遺留分侵害額請求、相続放棄など、相続全般についてご相談いただいています。
遺産分割協議については、たとえば「兄弟姉妹の仲が悪くて話し合いが進まない」「自分勝手な提案をしてくる相続人がいて困っている」「配偶者と同居していた家に住み続けたい」「何代も前から遺産分割が終わっておらず不動産の名義を変えられない」など、様々なご相談があります。
遺産の中に不動産がある方からの相談も多いです。特に、山林や畑、なかなか買い手が付かない土地・建物の処分に困っているということで相談されることがよくあります。
調停委員の経験を通じて、「聴く」ことをより大切にするようになりました
先生の事務所ならではの強みや、他の事務所との違いはどんなところでしょうか。
まず、私が家庭裁判所の調停委員を務めていることです。相続の話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に遺産分割調停というものを申し立てます。調停とは、裁判所が当事者の間に入って話し合いで解決を目指す手続きです。そして、調停委員は、当事者双方から話を聴いて、問題点を整理したり、ケースに合った解決策を考えたりする役割を担います。
調停委員を務めるようになって、弁護士業務にどのような影響がありましたか。
話を聴くことの大切さを改めて実感しました。調停では当事者の話を直接聴く機会が多いのですが、できるだけさえぎらずに聴き続けることで、こちらの話に耳を傾け、解決に向けて前向きになってくださることも多いです。調停委員になる前も話を聴くことは意識していましたが、自分の依頼者に対しても、一層丁寧に話を聴こうと意識するようになりました。
また調停委員は、裁判官と評議しながら調停を進めるのですが、裁判官の考え方や着眼点を知ることができました。そのおかげで、私が依頼を受けて調停に臨むときに、より的確な主張や証拠提出ができるようになったと感じます。
ほかにも事務所の強みや特徴はありますか。
女性弁護士が所属しているので、「女性の先生の方が話しやすい」という方には柔軟に対応できます。複数の弁護士が所属していることで、互いの知識や経験を共有できますし、進め方に迷ったときには意見やアイディアを出し合えます。
また、地域の他の専門家と連携できることも強みです。税理士、司法書士、不動産業者などと協力しあって、依頼者にとってよりよい解決、より負担をかけない進め方を意識しています。
電話や来客の対応をするスタッフの雰囲気が、とてもよいと言っていただくことも多いです。仕事も的確で速く、優秀なスタッフがいることで私もとても助かっています。
「もめるかも」と思った時点で一度ご相談ください
相続について弁護士に相談するメリットを教えてください。
弁護士は法律の専門家で、様々なケースを経験していますから、解決に結びつく的確なアドバイスを受けられることは大きなメリットです。相談することで、今後どういうことが起きるのか見通しを立てられて心構えや準備ができるメリットも大きいですね。
相談が早ければ早いほど、選べる選択肢が多いです。裏を返せば、相談が遅れるほど選択肢が限られてしまうので、早めに相談することをお勧めします。
これまで取り組んできた相続案件の中で、印象に残っているものはありますか。
自分の家が建っている土地が数代前の方の名義になっていて、自分の名義に変更したいというご相談がありました。私に相談する前に別の弁護士に相談したところ、相続ではなく時効で取得するという方法を勧められたとのこと。私も最初はその方法がよいと思ったのですが、時効で取得すると、税金がとても高額になることがわかりました。
さすがにそれは負担が大きすぎます。他に方法はないか考える中で、ふと、「何代もそこに住んでいるということは、遺産分割協議書はないものの協議自体は済んでいたのではないか」と思い至りました。関係者から話を聞いた結果、証明できそうな見通しが立ったので、他の相続人に対して、依頼者が所有権を持っていることを確認する訴訟を起こすことにしました。
ただ、その他の相続人というのが、調べてみると多数いたんです。中には、依頼者が名前も住所も知らない方や、海外に住んでいる方もいました。依頼者に代わって、当事務所が一人ひとり調査し、コンタクトを取りました。
そして裁判を起こした結果、争ってくる方は一人もおらず、無事に依頼者の名義に登記できました。依頼者は、高額な税金を支払う必要もなく、安心して住み続けられるということでとても喜んでくださいました。
相続のトラブルを抱えて弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
「このままでは揉めるかも」と思った時点で一度相談にお越しいただくのがベストです。まだ相談する段階ではないだろう、自分で何とかできる、と思っているうちに一人では抱えきれないほど問題が大きくなることもあります。相談だけであれば費用の負担もそれほど大きくないので、気軽にお問い合わせいただければと思います。
相談することで、状況が整理でき、問題を解決するための見通しが立ちます。進むべき方向がはっきりすれば、ずいぶん気持ちが楽になるはずです。
必ずしも依頼する必要はなく、ご自身で対処できる可能性も十分にあります。無理に依頼を勧めることはないのでご安心ください。何か不安やお困りごとがあれば、遠慮なくご相談いただければと思います。