相続問題を解決し、より良い人生への一歩をサポート。親身な対応で依頼者の心の負担も軽減
京都市中京区で「新保法律事務所」を経営する新保英毅弁護士(京都弁護士会所属)に、相続への取り組みについて聞きました。依頼者の経済的な利益を実現することに加え、家族への思いを整理して、新たな人生への一歩を踏み出せるようにサポートしたいと話す新保弁護士。依頼者一人ひとりと真摯に向き合い、複雑な相続問題を納得の解決に導きます。
インタビュー
親やきょうだいへの思いに区切りをつけ、自分の人生を生きられるように
事務所設立の経緯を教えてください。
弁護士登録後、京都市内の事務所で勤務弁護士として経験を積み、2012年に独立しました。
弁護士になった当初から「いずれは独立したい」と思っていたので、最初の事務所には期間限定で修行をさせていただく前提で入りました。5年くらいで独立しようと考えていたのですが、とても居心地がよい事務所で、結果的に8年間勤務しました。70歳の所長と私の二人だけの事務所で、所長には本当によくしていただきました。所長から教わったことは、弁護士として仕事をする上での礎になっています。
事務所の理念や大切にしていることを教えてください。
依頼者の人生が依頼する前よりも良くなるように、ということを常に意識しています。最終的に依頼者がどれだけの金額・財産を得られるかはもちろん重要ですが、同じくらい重要なのが、気持ちの上での区切りをつけられるようにすることです。
特に相続の案件では、親やきょうだいとの関係が完全にこじれてしまった状態で依頼される方が少なくありません。血がつながった者同士の関係は、他人同士の関係よりもデリケートで難しいと感じます。当事者は、親子なのに、あるいは血を分けたきょうだいなのに、なぜ自分の思いが伝わらないんだろう…と苦しんでいます。家族だからこそ相手に期待してしまって、思いどおりにいかないときの落胆が大きいのです。
ただ、相手への不満に囚われている間は、自分の人生をちゃんと生きられません。弁護士が間に入ることで、家族に対する思いを整理するきっかけを作れれば、それも私たちの存在意義です。
「亡くなった親が依頼者を含む子どもたちのことをどのように考えていたのか」「兄弟姉妹それぞれが親や他のきょうだいにどんな思いを抱いているのか」。依頼者に、こういった部分に目を向けてもらうことで、相手方への見方が変わり、対立感情が和らぐこともあります。
依頼した後に家族仲が修復できれば一番よいでしょう。ただ、それが難しくても、依頼者自身が家族との関係やこれまでの人生を振り返ったりすることを通して、気持ちに区切りをつけて、新しい未来への一歩を踏み出すサポートを提供したいと思っています。
理念を実現するために心がけていることを教えてください。
できる限り話をよく聞くことです。中には、調停や裁判をする上で直接は関係のない話をたくさんされる方もいますが、しっかり聞くようにしています。
たとえば、「亡くなった親は弟ばかり可愛がって、自分はあまりよくしてもらえなかった」「自分は親の言いつけにしたがって家業を継いだけれど、他の兄弟は自由に生きてきた」といった話はよく出てきます。自分はずっと我慢してきたのに遺産の取り分が他のきょうだいと同じなのは納得できない、と不満に思っている方は少なくありません。
気持ちはわかるのですが、法律のルールではきょうだいは均等に財産を分ける原則になっています。調停や裁判で「他のきょうだいより取り分を増やしてほしい」と主張しても、なかなか認められず、最終的には法律どおりの結論になることが多いです。
結果を受け入れられるかどうかは、そこに至るまでのプロセスが大事だと考えています。依頼者の話をよく聞いて、調停でも主張を尽くして、できる限り依頼者の思いを裁判所に届けられるように努めています。
遺産分割のトラブルから生前対策まで、幅広く対応
相続についてどのような相談が寄せられますか。
一番よくあるのは、親が亡くなって、きょうだい間で遺産分割の話がまとまらず困っているケースです。「兄が遺産を独り占めしようとしている」「親の面倒を全く見ずに好き勝手してきた弟が、親が亡くなった途端、2分の1の権利を主張してきた」など状況は様々ですが、いずれにせよ、当事者同士では冷静に話し合うことが難しくなっている方が多いです。
使い込みに関する相談も寄せられます。よくあるのは、親の財産が思ったよりも少ない場合に、同居していたきょうだいに対して、「自分のために勝手にお金を使ったのでは?」という疑いが生じるケースです。
生前の親の生活状況や、同居していたきょうだいが介護をしていた場合はその費用などを確認し、悪意を持って使い込んだのか、それとも親のために必要な支出だったのかを調査していきます。使い込みを疑っている方、疑われている方、どちらからの相談にも対応しています。
相続対策に関する相談もありますか。
はい、遺言作成の相談が多いです。様々な案件を手がけてきて実感していますが、相続発生後のトラブルを防ぐために、遺言はぜひ書いた方がいいと思います。
依頼者には、誰に何をどのくらい渡すかだけではなく、そのような内容にした理由も書くようにお勧めしています。例えば、きょうだいで取り分が異なる場合、親が何を思ってそのような分け方にしたのかがわからないと、きょうだい間で対立が生じる可能性があります。
無用なトラブルを防ぐために、遺言には自身の意思を明確に記すことが大切です。
使い込みを立証し、約1億円を取り戻せたケースも
相続について弁護士に依頼するメリットを教えてください。
一つは、経済的なメリットです。例えば、他のきょうだいが遺産を独り占めしていて、自分は法律上認められた相続分すらもらえていない。このような場合は、弁護士に依頼し、相続できる遺産の割合などを適切に主張してもらうことで、本来もらえるはずの取り分を獲得することが期待できます。
また、精神的負担が軽くなることもメリットです。家族間で相続の話をするのは結構ストレスが大きいんですよね。スムーズに話ができればいいのですが、実際は、自分の希望を伝えたら相手から思いもよらない反論が返ってきたりして、やりとりを続ける中で徐々に気持ちが削られていくことはよくあります。我慢して自分で対応しようとするよりも、第三者である弁護士に任せてしまう方が絶対に楽です。
「弁護士を入れると角が立つのではないか」と思われるかもしれませんが、私の経験上、「弁護士がそう言うなら」「法律でそうなっているなら仕方ないか」と受け入れてもらえることが多いです。直接相手方に言いにくい話は代わりに伝えますので、言いたいことを言えずに損をするデメリットも回避できます。
これまで取り組んできた相続案件の中で、印象に残っているものはありますか。
使い込みの案件が印象に残っています。家庭裁判所の調停で折り合いがつかず、地方裁判所での裁判を経て、3年以上かかって解決しました。相手方の使い込みを主張・証明し、結果的に1億円近くのお金を取り戻すことができました。
亡くなった母親の相続で、相続人は長男と次男の二人です。長男は母親と同居して財産の管理をおこなっていました。相続発生後に次男が財産の内容を調べたところ、銀行の取引履歴に不審な点が見られたため、「兄が勝手に使い込んだのではないか」との疑いが生じ、当事務所に相談に来られました。
この案件では、細かい証拠の積み重ねが解決のカギとなり、特に依頼者が母親との行動記録を日記につけていたことが大きなポイントでした。母親と一緒に暮らしていたのは長男ですが、依頼者も定期的に家に行って母親の面倒を見たり、食事に連れて行ったりしていて、そのことを克明に日記に書いていたんです。
裁判で、長男に対して、いつ何の目的でどのくらいのお金を引き出したかを細かく追及したところ、長男の主張と依頼者の日記の内容が全く異なっていたり、話が二転三転したりと、不自然な点が多々見られました。長男の説明が母親の生活実態と乖離していることを主張・立証する中で、裁判所にも長男の説明に不合理な点があることを理解してもらい、最終的に、使い込んだ金額の返還を認める判決を獲得できました。
依頼者は、お金が返ってきたことはもちろん、自分が母親のためにやってきたことが結果につながって嬉しい、ととても喜んでいました。今も記憶に残っている案件です。
第三者である弁護士だからこそ、冷静な視点で問題を解決できる
初回の相談ではどのような対応をしているのでしょうか。
まず、家族関係を聞き取ります。どなたがいつ亡くなったのかと、およその財産額、借金の有無、不動産がある場合は誰が住んでいるか、といった情報を一つひとつ聞いて整理します。
次に、話し合いの経過を聞きます。相続人同士で話し合いをしたか、相手はどういう主張をしているか、依頼者の希望は伝えたか、といったことですね。
これらを把握した上で、今後の見通しを立てます。依頼者の話が全て事実だとすると、最終的に裁判になった場合はどのような結論になる可能性が高いかを提示します。結論に至るまでのプロセス、つまり、まずは交渉を試みて、難しければ遺産分割調停、審判、裁判に進むという流れや、依頼者の話が事実でもこういう証拠がなければ裁判で認めてもらうことは難しい、といったことも示します。
現在の状況や今後の流れについて、依頼者が俯瞰的に把握できるように説明することを心がけています。
相続のトラブルを抱えて弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
相続のように家族間で発生するトラブルは、お互いが感情的になりやすく、当事者だけではなかなか解決が難しいケースが多いです。
弁護士は、親でもきょうだいでもない第三者の立場だからこそ、冷静な視点で、依頼者が悩んでいること・苦しんでいることを解決するお手伝いができます。
お一人で抱えこむ必要はありません。悩んでいる方はぜひ早めにご相談ください。