地元徳島で地域密着型の丁寧な対応が強み 他士業とも連携して相続問題をワンストップで解決に導く
徳島県鳴門市で泉法律事務所を構える泉智之弁護士(徳島弁護士会)。地元に根ざした豊富な経験と、専門家ネットワークを活かした独自のアプローチで相続問題を解決に導く泉弁護士に、相続問題に注力する理由や、思いについて詳しく話を聞きました。
インタビュー
東京で経験を積み、地元徳島で独立開業
まず先生の経歴についてお聞かせください。弁護士になられてから現在の事務所を開設されるまでの流れを教えていただけますか。
私は元々東京で2年ほど早稲田リーガルコモンズ法律事務所に勤務していました。そこでは本当に幅広い分野の事件を扱っていました。一般的な民事・刑事事件はもちろん、再生可能エネルギー関係など少し変わった分野も経験しました。
その後、地元である徳島県に戻って独立開業しました。元々、地元に戻る予定でしたので、最初の事務所で2年経験させていただいた後、地元に帰ってきました。
すぐに徳島で開業するという選択肢はなかったのでしょうか。
そうですね、やはりいきなり徳島で独立するよりも、どこかで経験を積みたいという思いがありました。徳島にも知り合いの先生はいましたが、幅広い経験を積みたかったので、早稲田リーガルコモンズ法律事務所でお世話になりました。
相続問題「ここに来れば全部できます」といえる体制に
東京から徳島に戻られて、仕事の違いを感じることはありますか。
そうですね、まず事件数が違います。東京はもちろん人口数も多いですが、弁護士数も多いです。今は状況が少し変わっているかもしれませんが、1万人あたりの弁護士数は地元の方が少なかったです。離婚や相続事件は、経済規模の大小にかかわらず存在しているため、事件の多さに追われています。
事件の内容にも地方ならではの特徴があります。不動産の価値が、同じ県内、特に、場合によっては同じ町内でも大きく異なり、宅地でも全く価値がないこともあれば、換価困難だと思った農地に大きな評価がつくこともあったりします。
東京にいた際は業者の机上査定を利用していましたが、地場の不動産業者を通じて、地元の不動産事情を理解していることが重要です。
事務所のポリシーや、先生なりのこだわりがありましたら教えてください。
独立開業した当初は、何でも来るものは拒まずという感じでやっていたのですが、事件に取り組む中で、依頼者の方へ価値を提供できると感じる分野が見えてきましたので、現在は、相続や交通事故、債務整理分野に注力しています。
例えば相続の場合、税理士、司法書士、不動産鑑定士、土地家屋調査士などのさまざまな士業の先生とのつながりも増えてきたので、不動産の売却や測量、登記、相続税の申告、所得税の申告など、一体的に解決できるようになってきました。依頼者の方に「ここに来れば全部できます」と言えるようになったんです。
相続に注力されている理由は何でしょうか。
やはり、人はいつか亡くなるので、相続の問題は絶対になくなりません。誰もが一生に何度か遭遇するテーマですし、誰しもが問題を抱えやすい分野だと思います。
もちろん、すごく揉めるケースもあれば穏便に終わるケースもあります。ほぼ争いがないけれども、相続人が何十人もいて手続きをどのように進められばよいか分からないというケースもあれば、兄弟2人で骨肉の争いをしているケースもあります。
悩みは様々ですが、程度の差こそあれ、必ずこの問題は発生するので、弁護士が取り組むべきテーマだと思っています。
3年もの調査を経て、一部の遺産を取り戻せた使い込み事案
これまで取り扱った中で、特に印象に残っている事例を詳しく教えていただけますか?
使途不明金に関する事件が特に印象に残っています。2億円あったはずの遺産が、蓋を開けてみたら200万円しかなかったというケースがありました。
具体的には、ある高齢の女性が亡くなり、その相続人である子供たちが遺産分割の協議を始めようとしたときのことです。生前、母親は「2億円ほどの預金がある」と話していたそうですが、実際に確認してみると、残高はわずか200万円しかありませんでした。
まず、銀行の取引履歴を過去10年分ほど取り寄せて調査しました。すると、デイサービスに通っているだけの母親の口座から、毎年数千万円もの不審な出金があったことが判明したんです。
最初は、警察に被害届を出すことを試みました。しかし、誰が出金したのかを特定することが難しく、警察では対応できないと言われてしまいました。次に、検察庁に告訴状を提出しましたが、こちらも最終的には不起訴処分となり、進展はありませんでした。
最後の手段として、税務署に相談に行きました。贈与税・相続税の脱税の可能性があると伝え、調査を依頼したんです。税務署は脱税の可能性がある事案には非常に積極的に動いてくれます。結果として、税務署の調査により、使途不明金の一部として数千万円が発見されました。
使途不明金が絡むケースでは、全く回収できないというケースも残念ながらありますが、諦めずに様々な手段を講じることで依頼者にとって有利な結果を実現することができましたので、印象に残っています。
相続事件の難しさはどのような点にあると感じていますか。
やはり感情が絡むところが一番難しいですね。遺産の多寡にかかわらず揉めるケースがあります。特に農家の方の場合、「長男が相続するもの」という古い考え方が残っていて、それが原因でトラブルになることもあります。
また、遺産の内容によっては解決が困難なケースもあります。例えば、農地しかないような場合、それを分割してしまうと農業が続けられなくなってしまうといった問題が生じます。遺産が多くて揉めている場合よりも、分割すると生活が立ち行かなくなるような場合の方が、解決が難しいと感じることがあります。
そのような難しい事件に取り組むやりがいはどこにありますか。
解決したときに依頼者に満足していただけるのが一番のやりがいですね。相続事件は基本的に財産が入ってくるので、金銭的な面での満足ももちろんあります。それだけでなく、家族間の揉め事のため、大きな精神的ストレスを抱えていらっしゃる方が多く、紛争が解決することで解放されることにもなり、その点でも、感謝していただけることが多い分野だと感じています。
他士業と連携し、一層充実したリーガルサービスを提供したい
今後、相続分野でどのような展開を考えておられますか。
私としては、現在もさまざまな士業の先生と協力して事件の解決に努めていますが、そのネットワークをさらに広げていきたいと思っています。特に、税理士や司法書士の先生方と協力して、一体的に解決できる範囲を広げていけたらいいですね。
また、事務所の所在地の関係で徳島県の北部の事案を中心に取り扱っていますが、県内・県外のより広い範囲でサポートできるよう、各地域の専門家とのつながりを増やしていきたいと考えています。
最後に、相続でお悩みの方へメッセージをお願いします。
相続問題で悩まれている方は、なるべく早くご相談いただくことをお勧めします。ストレスが身体症状として現れる方も多いですので、抱え込まずに専門家に相談することが大切です。
相談の際は、今までの経緯を一つ一つ丁寧に教えていただければと思います。詳しい情報をいただくほど、より良い解決策を提案できる可能性が高まります。思い出すこと自体がストレスになるかもしれませんが、ゆっくりとお話しいただければ、一緒に悩みを共有し、解決に向けて進んでいけると思います。
また、被相続人となる方、つまり財産を残す側の方にもお伝えしたいことがあります。特に農家の方などは、まだ「長男が全てを相続する」という古い考え方を持っている方もいらっしゃいます。しかし、そういった考え方が後々トラブルの原因になることもあるので、なるべく早い段階で遺言書を作成するなど、相続対策を考えておくことをお勧めします。
相続は避けられない問題です。でも、適切に対処すれば、家族の絆を深める機会にもなります。専門家のサポートを受けながら、前向きに取り組んでいただければと思います。