「相続は人生の集大成」〜依頼者の気持ちに寄り添い、家族の関係性に配慮した相続サポート
神奈川県大和市「林間国際法律事務所」の大原義隆弁護士(神奈川県弁護士会所属)に相続分野の取り組みについて話を聞きました。相続トラブルを未然に防ぐために、生前対策に注力しているという大原弁護士。相続問題を弁護士に相談するメリットや、相続案件を扱う上で心がけていることについて聞きました。
インタビュー
依頼者の満足度を第一に考える
事務所を設立した経緯を教えてください。
2016年に弁護士登録をして、大手企業に対する法務サービス提供を専門とする都内の法律事務所に入所しました。小学生の頃から中国語を学んでおり、その語学力を活かせる分野を考えたときに、企業法務が適していると感じたからです。
しかし、実際に大手企業の案件に携わるうちに、大きな案件に携わることへやりがいを感じつつも、依頼者と直接対話し、気持ちに寄り添いながら問題を解決していく個人案件のほうが自分には向いているのではないかと考えるようになりました。そこで、入所から満3年が経過したタイミングで、個人案件を中心に扱う横浜市内の事務所へ移籍をしました。
2か所目の事務所では、相続問題や不動産関連の案件を中心に経験を積みました。そして、より多くの方々に寄り添った法的支援を提供したいという思いから、弁護士6年目を迎えたときに独立して、現在の事務所を開設するに至りました。
事務所の理念を教えてください。
私が最も大切にしているのは「依頼者の満足度」です。裁判に勝つことは重要ですが、それ以上に大切なのは、依頼者が結果に納得し、次に進む気持ちの整理ができるかどうかだと思っています。
たとえ結果が期待を下回ることがあったとしても、依頼者がその結果に納得し、気持ちに整理をつけて次のステップに進むことができるのであれば、それが最良の結果だと考えています。逆を言えば、例え裁判に勝っても、気持ちの整理ができず、次に進むことができないのであれば、それでは良い結果とは言えないと思います。
そのため、依頼者に結果にご納得いただき、次に進む気持ちになっていただけるように全力を尽くすのが弁護士のなすべき仕事であり、その中でも、解決に至るまでの「過程」にどれだけ力を尽くすることができるかが重要であると考えています。
具体的には、依頼者の要望をしっかりと理解し、報告・連絡・相談を徹底することで、依頼者に納得していただき、また、お気持ちの整理をつけていただきながら手続を進め、最終的な結果にも納得感を感じていただけるよう努めています。
相続分野に注力されているのはどのような理由からですか。
相続は、人生の集大成だと思います。そこに立ち会うことができるという点に、大きなやりがいを感じています。
相続発生前の遺言書の作成を始めとする終活から、相続発生後の対応まで幅広く関わりますが、いずれの場合も、被相続人が望むのは、家族の間で争いが生じないことだと思います。
しかし、実際には相続が原因で仲の良かった家族が対立するケースも少なくありません。そのような状況で、相続人間の関係の維持または修復・改善を目指しながら、財産や思いを引き継ぐお手伝いができることに、意義を感じています。
また、相続案件では、被相続人の人生や価値観に触れる機会も多く、依頼者から聞くエピソードを通じて、人生の物語を読むような感覚を得ます。これは私自身にとっても非常に学びが多く、弁護士としてだけでなく、一人の人間として成長できる貴重な経験です。
相続案件は、他の法律分野に比べて特に人間関係や感情が絡み合う場面が多いため、時には多大なエネルギーが必要になることもあります。しかし、その分、依頼者の気持ちに寄り添い、人間関係や価値観を尊重しながら問題を解決していくことに、大きな達成感があります。
トラブルを未然に防ぐ生前対策に注力
どのような相談が寄せられますか。
相談の中で特に多いのは、寄与分や特別受益に関する問題です。例えば、「父の介護をしていたのだから、相続分をもっと多く受け取れるはず」という寄与分の主張や、「兄はマイホームの頭金として生前贈与を受けていたはずだ」という特別受益の指摘などです。
寄与分や特別受益の問題は、感情面が大きく関わってきます。被相続人と同居していた相続人は、献身的に介護をしてきたという自負があります。一方で、離れて暮らしていた相続人からすると、同居のメリットを享受していただけではないかと映ることもある。このように、立場が変われば見え方も大きく変わってきます。
こうした問題を解決するためには、裁判所を有効的に活用することです。ただし、その場合も相手方の主張に最低限のリスペクトを持つことが重要だと考えています。「それは違う」「嘘だ」といった感情的な応酬に陥ってしまうと、解決がさらに遠のいてしまいます。
依頼者には、認めるべき部分はきちんと認め、感謝すべきところは感謝するよう助言し、最善の解決を目指すように心がけています。
生前対策に力を入れているそうですね。
相続における争いが起こらないことが理想ですので、遺言書の作成や家族信託、任意後見など、予防的な法務に注力しています。こういった対策を早めに講じることで、家族間のトラブルを未然に防ぐことができます。
ただ、まだまだ生前対策の認知度が十分とはいえません。終活の一環としてエンディングノートの作成なども含め、多くの方にこうした対策を知っていただきたいと思っています。終活や生前対策の重要性を広めることが、結果的に多くの家族を救うことにつながると考えています。
認知度を上げるための取り組みとして、事務所を構えている大和市を中心に、隣接する座間市や海老名市でも活動を行っています。これらの地域の専門士業の方々とチームを組み、朝市での無料相談会やセミナーなどを開催し、地域に根ざした活動を続けています。
遺言書作成において意識していることはありますか。
「誰に何を渡すか」だけでなく、その背後にある依頼者の気持ちをしっかりと反映させることです。
遺言書というのは、法律的には相続人にどの財産をどのように分配するかを明記しておけば成立しますが、それだけでは将来的なトラブルを防ぐことは難しい場合があります。そこで私は、付言事項を重視しています。
付言事項というのは、財産の分配理由や故人の思いを遺言書に添える部分です。例えば、「なぜ長男にこの財産を渡すのか」「長女にはこういう理由でこの分配にした」など、分配の背景にある気持ちや理由を明記することで、相続人同士がその決定に納得しやすくなります。
家族それぞれが被相続人を大切に思い、全員が被相続人の遺志を汲もうと考えていても、思い出の事実に関するタイミングの違いや感性の違いなどが原因となり記憶や見方が変わり、解釈が分かれてトラブルに発展することがあります。付言事項があれば、被相続人自身の気持ちが明らかとなり、なぜそのような分配をしたのかを理解する手がかりとなり、不満やトラブルを防ぐ助けになります。
遺言書は、財産を分配するための法律文書であると同時に、故人が家族に残す最後のメッセージともいえます。ですから、財産のことだけでなく、家族への思いや感謝の気持ちを伝える手紙の役割を果たすものにしたいと考えています。それが、残された家族にとっても大切な心の支えになるはずです。
相続案件を手がける上でどのようなことを心がけていますか。
当事者同士の関係が「ノーサイド」で終わるようにすることです。相続手続きが終わった後も、家族同士が再び交流を持てる状態に戻る、あるいは少なくとも対立が続かないようにすることを目指しています。
例えば、相手方とのやり取りは私を介して行い、当事者が互いに感情をぶつけ合うようなことは避けます。そうすることで、必要な法的手続きを進めながらも、家族関係を守ることができます。
また、書面の作成においては、単なる法的主張に終始せず、その背景にある気持ちや事情を丁寧に説明するよう心がけています。「なぜそのような主張をするのか」「どのような思いがあってのことなのか」といった感情面への配慮を怠らないようにしています。
特に重視しているのは、お互いの立場や事情の「見える化」です。相手方の状況が具体的にイメージできれば、理解も深まり、感情的な対立も避けやすくなります。
相続を機に家族の交流が途絶えてしまうことは、誰にとっても不幸な結果です。依頼者の気持ちを大切にしながら、できる限り円満な解決を目指しています。
アットホームな雰囲気で気軽に相談しやすい事務所
相続案件を弁護士に相談するメリットにはどのようなことがありますか。
精神的なストレスを大幅に軽減できます。相続人同士が直接話し合いを行うと、どうしても感情的になりやすく、「売り言葉に買い言葉」となってしまうことがあります。また、些細な誤解が積み重なり、本来なら解決できたはずの問題が、より複雑化してしまう場合もあります。
弁護士が間に入ることで、感情的な対立を防ぎ、より冷静な話し合いが可能になります。気持ちのすれ違いや誤解があった場合も、第三者である弁護士が適切に補正することで、建設的な解決に向かいやすくなります。
また、弁護士を代理人とすることで、「最大の味方」を得ることができます。他の人には言いにくい悩みや不安も、弁護士には安心して打ち明けることができ、依頼者は自分が一人ではなく、信頼できるチームメンバーといるという安心感を得られます。
相続案件における事務所の強みや特徴を教えてください。
私たちの事務所の強みは、何よりも依頼者の気持ちに寄り添うことを大切にしている点です。相続案件では、依頼者それぞれに事情や思いがあります。方針を一方的に押しつけることはせず、まずは「依頼者が何を望んでいるか」を丁寧に聞き、その意向に沿ったサポートを行います。
また、当事務所はアットホームな雰囲気で、どんなことでも気軽にご相談いただける環境を整えています。依頼者からも「話しやすい」「相談しやすい」という言葉をいただくことが多く、それが私たちの自信にもつながっています。
相続案件においては、法律的なサポートだけでなく、心の支えにもなれるような事務所でありたいと考えています。
最後に、相続問題で悩みを抱えている方へメッセージをお願いします。
相続に関するトラブルで思い通りにいかず、つらい思いをされている方が多いと思います。また、家族や親族との良好だった関係が崩れてしまい、心を痛めている方もいらっしゃるかもしれません。私たちは、そうした関係の修復を含め、全力でサポートさせていただきます。
「権利を主張して取るべきものを取る」ということだけでなく、家族との関係性を大切にしながら解決していきたいとお考えの方には、特にお力になれると思います。相続問題の解決と人間関係の維持という2つのバランスを取りながら、悩みを抱える皆さんが納得できる解決へと導けるように努めています。お一人で悩まず、まずは気軽にご相談ください。