傾聴を理念に依頼者が抱える相続問題を解決〜弁護士事務所の少ない流山市で地域に密着した活動を
千葉県流山市「かえで法律事務所」の森伸之弁護士(千葉県弁護士会所属)に、相続分野の取り組みについて話を聞きました。「相続問題の解決には依頼者の話を聞くことが何よりも大事」と話す森弁護士。その根拠や相続問題を弁護士に相談するメリット、これまでの活動で印象に残っている相続案件について聞きました。
インタビュー
依頼者の望みを理解するためには傾聴が大事
事務所を設立した経緯を教えてください。
2017年に弁護士登録をして、浦安市にある法律事務所に就職しました。そこで約3年間、勤務弁護士として経験を積み、2021年に独立して現在の事務所を開設しました。
流山市は人口が増加傾向にある一方で、弁護士の数が比較的少ない地域です。出身地である千葉県で活動するならこの地域が良いだろうと考え、流山市を拠点として選びました。地域に根ざした活動を通じて、皆様のお力になれるように日々取り組んでいます。
事務所の理念を教えてください。
依頼者の話をしっかりと聞くことです。依頼者が何を望んでいるのかを正確に理解するためには、丁寧に話を聞くことが不可欠です。
そのため、予定していた相談時間を超えてしまったとしても、すぐに打ち切ることなく、依頼者の話を十分に聞くように努めています。依頼者が抱えている問題に対して、適切な解決策を見つけるためには、この姿勢が非常に重要だと考えています。
相続問題に注力しているのはどのような理由からですか。
企業案件よりも個人からの相談が多いのですが、個人案件の中でも特に相続案件が多く、自然と注力することになりました。
流山市は古くからの住民が多い地域と、新しく人口が増加している地域が混在していますが、どちらの地域からも相続に関する相談が頻繁に寄せられます。そうした背景もあって、相続は当事務所において重要な分野の一つとなっています。
実は、以前勤めていた浦安市の事務所では、相続の相談が少なかったのです。ですから、独立して流山で活動を始めたときに、これほど多くの相続相談が寄せられるとは予想していませんでした。
現在は、地域の方々のニーズに応えられるよう、知識をさらに深め、最善の解決策を提案できるよう努めています。
調停を活用することで最適な解決を目指す
どのような相続が寄せられますか。
相続に関する相談は非常に多岐にわたりますが、特に多いのは、相続財産を巡って親族同士で争いが起きているケースです。当事者間での話し合いでは解決が難しいために、弁護士に相談に来るというケースがよく見られます。
一方で、揉め事は起きていないものの、相続の手続きがわからずに相談に来る方も少なくありません。たとえば、被相続人の銀行預金や生命保険の解約、不動産の登記など、相続に伴う手続きをどうすれば良いのか尋ねられることも多いです。
弁護士というと、紛争解決のイメージが強いかもしれませんが、こうした法的手続きに関するアドバイスやサポートも大事な業務の一つです。
揉めているケースではどのような解決を目指すのですか。
直接の交渉が難しい状態にあることが多いため、調停の利用を検討します。調停は、第三者である調停委員が間に入ることで、冷静な話し合いが可能になり、解決への糸口が見つけやすくなります。
揉めている原因が、必ずしも相手方にあるとは限りません。中には、依頼者の要望が法律に則っていないために話し合いが進展しないケースもあります。そのような場合には、しっかりと法律的な根拠を示しながら、現実的な解決策を提案し、依頼者に理解してもらうことが重要です。
特に、寄与分や特別受益といった問題は、明確な根拠や証拠がなければ裁判所に認められにくいため、依頼者にもその点を理解してもらわなければなりません。
依頼者の希望を全面的に押し通すのではなく、法的な現実を踏まえた上で、最善の解決に導くことが大切です。無理な主張を続けても裁判所が認めてくれなければ、最終的に不利になるのは依頼者ですから、しっかりと見通しを伝え、依頼者の利益につながる解決を目指します。
相続案件を扱う上で心がけていることを教えてください。
最も大切にしているのは、依頼者の話をよく聞くことです。初回の相談はもちろん、受任後もメールや電話での相談に迅速に対応できるよう体制を整えています。
また、依頼者から連絡があった際には、できる限り早く返信することを心がけ、安心感を持ってもらえるよう努めています。
さらに、費用について事前にしっかりと説明することも重要です。多くの方は、弁護士へ相談する際にかかる費用について不安を抱きます。問題が解決した後に費用面でトラブルが起きては、依頼者にとっても不満が残ってしまうので、着手金や報酬がどのように発生するかを詳しく説明し、納得していただいてから受任するようにしています。
紛争化していなくても弁護士に相談するメリットはある
相続問題を弁護士に相談するメリットにはどのようなことがありますか。
当事者同士で話し合いが難しい問題を解決に導ける点です。相続問題は感情的な対立が絡むため、話し合いが進展しないことも多くありますが、弁護士から冷静で的確なアドバイスを受けることで、法的な筋道を立てて問題を整理できます。
調停は弁護士をつけずに自分で臨むことも可能ですが、調停委員や裁判官に自分の考えや感情を理解してもらうには、的確な主張をしなければなりません。弁護士を代理人にすることで、法的根拠をもとに主張を組み立てることができ、有利な結果を引き出せる可能性が高まります。
これまでの活動で印象に残っている相続案件はありますか。
兄と妹の遺産分割調停で、妹側の代理人を務めたケースです。調停の申立は相手方である兄からでしたが、彼には代理人がついていませんでした。依頼者である妹も最初は自分で調停に臨んでいたのですが、話が進展しなかったため、調停委員の助言を受けて弁護士に相談することを決めたそうです。
私は依頼者から詳細な状況を聞き取り、相続財産などの調査を行いました。その結果、依頼者側に落ち度はなく、むしろ相手方の要求が法律からかけ離れているものだとわかりました。そこで依頼者には、「一切譲歩する必要はない」と説明し、その方針で調停に臨みました。
しかし、調停では合意に至らず、最終的に審判に進むことになりました。さらに、相手方は裁判所の判決にも納得せず、不服申し立てをしたのです。最終的に申し立てが棄却されたことで解決しましたが、そこまでの執念には、正直なところ驚きました。
そこまでする相手ですから、依頼者は相当なストレスを感じていたと思います。もし弁護士が介入していなければ、どこかで不本意な妥協をしていたかもしれません。私が代理人として入ることで、依頼者の権利をしっかりと守ることができ、依頼者からも深く感謝されました。
この案件を通じて、相続問題において弁護士が介入することの重要性を改めて実感しました。
最後に、相続問題で悩みを抱えている方へ、メッセージをお願いいたします。
紛争がすでに表面化している場合はもちろん、そうでない場合でも、弁護士に相談する価値は十分にあります。ご相談いただいた内容によって、弁護士よりも司法書士や税理士など他の専門家が適していると判断した場合には、そちらを紹介することも可能です。
また、弁護士に相談したからといって、必ずしも依頼をしなければならないわけではありません。相談だけで終わる場合もありますし、継続的な相談という形でのサポートもあります。
相続に関して「どう進めていいかわからない」といった初期の段階でも、弁護士は解決への道筋を示すことができます。悩みを抱えたままにせず、ぜひお気軽にご相談ください。皆様の不安や問題を少しでも軽減できるよう、しっかりとお手伝いさせていただきます。