丁寧な説明と粘り強い交渉で依頼者の権利を守る。相続に注力する弁護士の強みは「豊富な経験」
北海道札幌市で「猪瀬法律事務所」を経営する猪瀬健太郎弁護士にインタビューを行いました。猪瀬弁護士は2010年に弁護士登録後、北海道内の司法過疎地で勤務されたのち、2015年から札幌で独立されています。具体的に、事務所の理念や相続分野への思い、事務所の強みなどをお聞きしました。(札幌弁護士会所属)
インタビュー
留萌での勤務を経て札幌へ
事務所設立の経緯を教えてください。
私は、司法試験に合格し、司法修習を終えた後、札幌の弁護士法人すずらん基金法律事務所(以下「すずらん事務所」といいます。)に入所しました。この事務所は、北海道内の弁護士過疎地域に赴任する弁護士を養成するための法律事務所です。
将来的に自分の事務所を開きたいと考えていた私は、弁護士の少ない地域に赴任し、自分の力で事件解決に取り組まなければならない環境に魅力を感じて、すずらん事務所に入所しました。
すずらん事務所において約1年8か月の養成期間を経た後、道北の留萌市にある「留萌ひまわり基金法律事務所」の所長として3年間過ごしました。当時、人口2万4000人ほどの町には弁護士が2人しかいませんでした。当然、相談や依頼はその2人の弁護士に集中します。忙しい毎日でしたが、その分、やりがいのある充実した時間を過ごすことができました。
その後、留萌から札幌に戻って今の事務所を開きました。その頃には、一人で事務所を立ち上げるために十分な知識と経験を得ることができていました。
事務所の理念を教えてください。
本来、ご自身の権利を持っているのにそれが不当に奪われたり、義務がないのに何かを強制されたりするなど、世の中には法律の届かないところで理不尽に苦しんでいる人が多くいます。声の大きい者が勝つのではなく、法律に従って権利を持った人がきちんと勝てる世の中にしたいと思っています。
ご相談やご依頼を受ける場面では、そもそも弁護士に会うこと自体、初めての方が多くいらっしゃいます。そのため、「話しやすさ」や「説明の分かりやすさ」に気を配るようにしています。弁護士ですので、当然、法律の話をするのですが、専門用語ばかりで何を言っているのか分からない、といったことがないように気を付けています。丁寧にご説明することで、依頼者との信頼関係が築かれるものと考えています。
相続は弁護士が大いに役立てる分野
相続分野に力を入れている理由を教えてください。
私たち弁護士が特に役立つことのできる分野だからです。
一般の方々が思っている以上に「相続」には様々な法律上の争点があります。何も知らないまま話し合ったり、遺産を受け取ってしまうことで、反対に不利益を被ってしまうケースもあります。今はインターネットで誰でも簡単に情報を得られる時代になりましたが、実際にはケースバイケースで判断しなければならないことも多いため、インターネットで得た知識がご自身のケースでも適用されるかについては慎重な判断が必要です。
例えば、「特別受益」という言葉があります。亡くなった方から生前に財産を受け取っていた相続人がいる場合に、それを相続の際に考慮できるかどうかといった問題です。「特別受益」があるかどうかによって結論にも差が出ますが、その判断は弁護士でも難しい場合があります。
実際に他の相続人から「これしか渡せない」と言われていたケースでも、弁護士が介入することで状況が変わり、より多くの遺産を受け取れたケースも多々あります。そのような仕事は、依頼者が本来持っている権利(本来受け取るべき遺産)を実現することにつながりますので、やりがいを感じます。
また、「遺言書」と一口に言っても、その種類は様々です。特に「自筆証書遺言」と呼ばれる遺言書は、その要件が厳しく、適切に作成しなければせっかくの遺言書が無効となってしまうこともあります。無用な相続人間の争いを避ける意味でも、一度弁護士に相談することをお勧めします。
どのような相談が寄せられていますか?
私の事務所では、生前からの相続対策や亡くなられた後の遺産分割の相談まで、相続に関する相談内容は実に幅広いです。
例えば、遺産分割については、相続人同士で話し合いがまとまらなかったケース、相続人の一部と連絡が取れないケースのご相談が多いです。また、遺言書が残されている場合には、遺言執行者が遺言の内容に従って遺産を分配するのですが、遺言書の内容に納得できないとのことで遺留分侵害額の請求を希望される方もいらっしゃいます。
最近では相続放棄に関するご相談も多いです。家庭裁判所に対する相続放棄の申述には期限があることをご存じの方も多いのですが、期限を過ぎてしまった後にご相談に来られる方もいらっしゃいます。
その場合でも、期限を過ぎたからといって一律に受け付けてもらえないわけではなく、例えば、後から多額の借金が見つかった場合のように、裁判所に対して期限を過ぎた理由を丁寧に説明すれば申述を受け付けてもらえることも間々あります。
もっとも、何をどのように説明すればよいか、専門知識や経験が求められる部分でもありますので、一度弁護士に相談されることをお勧めします。
依頼者の納得感と信頼関係を重視
相続の依頼に対応する上で、心がけていることはありますか?
相続の事案は普段から身近な親族どうしの争いになることが多いため、その分、感情的になりやすいという特徴があります。そのため、依頼者から、感情的な部分も含め、時間をかけてお話を伺うことを心がけています。
なぜなら、その方々が感情的になってしまう背景には、往々にして法律的に主張可能な事情が隠れていることが多いからです。例えば、「あの人は昔から親に色々もらっていた」、「私は仕事を犠牲にして親の介護をしていた」などといった不満がある場合、「特別受益」や「寄与分」の主張が可能な場合があったりします。
依頼者の話をよく伺った上で、その感情の根っこにある問題点を法律的な観点から整理し、主張できる可能性を探るのです。実際に話を伺っていくと、単なる人間的な好き嫌いの問題ではなく、不公平を感じるのも当然だろうという事情のあることが多くあります。そのような事情を法律の土俵に乗せて主張することで、より公平な解決が目指せるものと考えています。
相続における事務所の強みを教えてください。
前提として、依頼者との関係性を最も大切にしています。弁護士がご依頼を受ける際、依頼者との間で委任契約を結ぶのですが、委任契約はお互いの信頼関係の上に成り立つ契約といわれています。
相互に信頼関係があれば話もしやすいですし、弁護士としても法律的に重要なことを聴き取りやすくなるため、結果として、より良い解決策をご提案することができます。実際、丁寧な主張・立証をするためには、主張を裏付ける証拠が必要です。そのための弁護士と依頼者の共同作業は欠かせません。
弁護士経験を重ねるなかで、資料の収集や情報聞き取りの際に、「この資料があるはず」「このことを聞かなければ」という引き出しが増えました。培った経験は、最善の結果を導き出す力だと自負しています。
また、最終的に依頼者に納得していただくことを大切にしています。そのためには、単に紛争が解決すればよいのではなく、解決するまでに依頼者が自分の伝えたいことを伝えられたか、希望を叶えるため弁護士ができることを全力でしてくれたのかなどの過程も大切になってきます。
実際には、100%依頼者の希望どおりの結果にならないこともあります。それでも、解決したときに「これで納得がいきました」「ありがとうございました」と感謝の言葉をいただけることも多くあります。
最後に、私の事務所では、これまで相続に関する多くのご相談やご依頼を受けてきましたので、弁護士として豊富な実績と経験があることも強みの一つです。
印象に残っている依頼はありますか?
法曹業界の専門誌「判例タイムズ」の1490号に掲載された、自筆証書遺言の有効性を争う特殊なケースで勝訴した経験が印象に残っています。
この事案は、一見すると財産目録の記載方法に問題があり、遺言書が無効になりそうなケースでした。しかし、遺言者の思いを実現したいという依頼者のご希望を叶えるべく、遺言書が作成された経緯などを丁寧に主張・立証したところ、最終的にはその遺言書の有効性を裁判所に認めてもらえました。
解決までに時間はかかりましたが、これで遺言者に顔向けできると依頼者には大変喜ばれました。
まずは法律に基づいた見通しを確認しませんか
相続のトラブルを抱えて弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
「相続」の問題に関しては、ご本人だけで考え、判断するにはどうしても限界があるものと思います。どうしたらよいか分からない、何が正解か分からないといった状況に置かれていらっしゃるのであれば、まずは私たち弁護士にご相談いただければと思います。
弁護士に依頼するかどうかは別として、ご自身の考えが法律に照らして合っているのか、間違っているのか、相手に対して何を主張することができるのかといった見通しを知ることができるだけでも、弁護士に相談する価値はあるものと思っています。
これまで多くのご相談を受けてきましたが、皆さん、進むべき方向性が見えてくると、目標ができて少し気が楽になるものです。実際に初回のご相談が終わるときには、「すっきりしました」「これで方向性が見えました」といったお声を多くいただきます。
今まさに相続の問題で悩まれているようでしたら、一度お悩みをお聞かせください。解決への糸口をお示しすることができるものと思います。