教員時代に磨いた傾聴力や家事調停委員の経験を活かし、相続の悩みを円満解決へ
千葉県成田市で「なりた総合法律事務所」を経営する宇藤和彦弁護士(千葉県弁護士会所属)に、相続案件を手がける上での心構えや強みを聞きました。約15年間の教員経験を経て弁護士になり、家事調停委員も務めるなど、多彩なキャリアを持つ宇藤弁護士。依頼者の話をじっくりと聞いて的確な見通しを立て、相続問題を解決に導きます。
インタビュー
依頼者とのコミュニケーションを大切にしています
これまでの経歴を教えてください。
出身は熊本県で、鹿児島の高校を経て、九州大学文学部に進学しました。大学卒業後はトラック運転手などのアルバイトをしながら教員免許を取得し、千葉県内の公立高校で約15年間国語の教員をしていました。その後、50歳を目前に一念発起し、弁護士になるために千葉大学法科大学院に進学しました。
2012年に弁護士になったのと同時に、同じ年に司法試験に合格した仲間と当事務所を設立しました。独立にあたって先輩弁護士にも大変お世話になり、今では私も含め4名の弁護士が所属する事務所に成長しました。また2018年12月から現在まで、千葉家庭裁判所の家事調停委員も務めています。
弁護士としての信念や大切にしていることを教えてください。
誠実に、依頼者の気持ちに寄り添いながら解決することです。
具体的にいうと、たとえば依頼者の言うことをよく聴くことです。弁護士の中には、自分が必要だと思うことだけ質問して、それ以外のことにはあまり耳を傾けない人もいます。しかしそれだと、自分の視野に入っていない情報を見落としてしまうんですね。
一方、しっかり依頼者の話を聴いておくことで、そのときすぐに役立つ情報ではなくても、後になって解決の糸口や重要な証拠につながるヒントが得られることは少なくありません。依頼者が訴えたいことや実現したいことをきちんと知るためにも、まずは話をよく聴くことが大事だと思っています。
また、あまり勝ち目がない案件、費用対効果が見合わない案件など、他の弁護士が敬遠するような案件でも、できるだけ引き受けたいと思っています。何件も法律事務所を回ったけれど断られ続けている方は、私が断ってしまうとまた他の弁護士を探す必要がありますし、こうして弁護士になったからには、より多くの人のお役に立ちたいと思うからです。
依頼者とのコミュニケーションで心がけていることを教えてください。
まず、コミュニケーション不足にならないように、ということは心がけています。また、解決に向けた方針について、依頼者から意見は聴きますが、法律的にできないことはできないと伝えるようにしています。どうしても依頼者と方針が合わないときは途中で辞任することもありますが、やはりできないことはできませんからやむを得ないと思っています。
家事調停委員の経験を活かし、当事者が歩み寄れる着地点を見極めます
相続について、どのような相談が多いでしょうか。
遺産分割協議に関する相談が多いです。たとえば、「親や配偶者が他界してなにから手を付ければよいかわからない」という手続き全般に関する相談もありますし、「法定相続分とは違う割合で分割を提案されて困っている」「一部の相続人が被相続人の生前に財産を譲り受けていて、不公平だ」など遺産の分け方に関するトラブルで相談に来る方もいます。
2018年から家事調停委員を務められているということですが、どういった仕事なのでしょうか。
相続で言うと、話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に遺産分割調停というものを申し立てます。調停というのは、裁判所がどちらの言い分が正しいか決めるものではなく、裁判所が間に入って話し合いで解決を目指す手続きです。
そして、当事者双方から話を聴いて、問題点を整理したり、ケースに合った解決策を考えたりするのが家事調停委員の仕事です。
どういう方が家事調停委員になるのでしょうか。
豊富な知識・経験や専門的な知識を持つ人の中から、最高裁判所が任命します。具体的には、原則として40歳以上70歳未満で、弁護士、医師、大学教授、公認会計士などの専門家をはじめ、各分野から選ばれます。
もちろん誰でもなれるものではなく、弁護士の中でも限られた人しかなれませんし、不適任とされれば途中から任命されなくなります。
家事調停委員を務めるようになって、弁護士業務にどのような影響がありましたか。
家事調停委員は中立的な立場で双方から話を聞きます。ですから、どういうケースだとどういう主張が出てきて、どういうところで対立が起きるのかというポイントがわかるようになりました。そして家事調停委員は話し合いをまとめる仕事ですから、どういう解決であれば互いが歩み寄れるかという着地点を常に意識するようになりましたね。
この経験を経たからこそ、常に先の展開を考え、よりスピーディーかつスムーズな解決ができるようになったと思います。
家事調停委員は、適宜裁判官と評議をしながら調停を進めていきます。ですから、裁判官の視点や考え方が分かるようになったことも、自分が依頼者の代理人として調停に臨むときの主張の仕方や話の進め方に活かせています。
家事調停委員を長年されてきた経験も踏まえ、早期に遺産分割調停を申し立てたほうがよいと思われるか、それとも調停をせずに解決したほうがよいと思われるか、いかがでしょうか。
それはケースバイケースです。調停をせずに合意を目指せるならそのほうが早く解決できますし、調停までいかないと解決しそうにないケースについて延々と話し合いを続けるのもよくありません。その見極めは、弁護士としての知識や経験が試されるところだと思います。
教員時代も今も、「聴く」ことを大切にしています
先生の強みや、他の事務所との違いはどんなところでしょうか。
家事調停委員を長く務めてきましたから、解決までの筋道がわかることは強みです。
また教員として約15年の経験がありますが、弁護士も教員も、相手の話を聴くという点は同じです。つまり教育の現場では、頭ごなしに「ああしろ」「こうしろ」というのではなく、まず生徒の言い分を聴かないとうまくいきません。
弁護士が依頼者やトラブルの相手などと関わるときも同じで、まずは聴くことが大切です。傾聴の技術は教員生活を通じて磨いてきましたから、今もその経験が活きています。
これまで取り組んできた相続案件の中で、印象に残っているものはありますか。
依頼者が不動産を相続するということで相続人間で協議ができていたのですが、相続人の一人が海外に住んでいて、印鑑登録証明書の提出ができないケースがありました。登記には通常、印鑑登録証明書が必要ですから、困って相談に来られたのです。
それで私は、登記を行う法務局に連絡して必要な書類を確認し、最終的には大使館を通じて、本人が遺産分割協議書にサインしたという証明書を発行してもらいました。なかなかないケースなので手探りな部分もありましたが、無事に登記ができて依頼者に喜んでいただけたことが印象的でした。
疑問や悩みがあれば、一度ご相談ください
どういう場合に弁護士に相談するとよいでしょうか。
あくまでも目安ですが、ある程度の遺産がある、具体的には700〜800万円以上の遺産がある場合は相談したほうがよいと思っています。また、被相続人の生前に大きな財産を受け取っている相続人がいたり、遺産を管理していた相続人が遺産を使い込んだ疑いがある場合、使途不明金がある場合なども、弁護士に相談することをお勧めします。
遺産の額が大きいケースや、使い込みなどトラブルの種が潜んでいるケースは、当事者同士で対処しようとすると大きな争いに発展することがあります。
弁護士に相談することで、どのように解決すべきか、専門的なアドバイスを受けられるので、判断を誤って間違った方向に進んでしまうリスクを避けられます。
早めに相談するメリットと、相談が遅れることによるデメリットを教えてください。
相続放棄(3ヶ月)のように期限が決まっている手続きに関することなら、早めにご相談いただくのがよいですが、そういう場合でなければ遅くなっても大丈夫だと思います。「もう手遅れだ」と諦めず、思い立ったときにいつでも相談にお越しください。
初回相談までの流れを教えてください。
まずは電話かWebフォームからご予約ください。そのうえで、ご予約いただいた日時に事務所までお越しください。その際に、相続人の関係性や遺産の内容を書いたメモをご用意いただいたり、登記簿や通帳など関係する資料をお持ちいただくと、より具体的なアドバイスが可能です。
相続のトラブルを抱えて弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
相続人間に感情的な対立が生じている、相続人の一人に使い込みの疑いがあるなど、なにか疑問や悩みがあれば、一度弁護士に相談してみてください。アドバイスを受けて、解決に向けて何をすればいいのかが分かると、随分気持ちが軽くなるはずです。じっくりとお話を伺い、今後の道筋をお示しできればと思います。気軽にお問い合わせください。