依頼者が気持ちを話す時間を大切にし、前向きによい解決策を見つけられるようサポート
奈良県奈良市で「上松法律事務所」を経営する上松晋也弁護士(奈良弁護士会所属)に、相続案件に携わる上で心がけていることなどを伺いました。相続案件では感情論と法律論が重なることが多いため、依頼者の話をできるだけじっくりと聞くようにしていると語る上松弁護士。相続について弁護士に相談・依頼するメリットについても詳しく聞きました。
インタビュー
地元奈良で、困っている方の力になれるよう日々全力を尽くす
事務所設立の経緯を教えてください。
もともと独立したいという思いがあり、最初の3年間は勤務弁護士として経験を積みました。その後、現在の事務所を設立しました。
地元が奈良ということもあり、独立する場所は奈良にしようと最初から心に決めていました。
事務所の理念や大切にしていることを教えてください。
とにかく困っている方の力になりたい、その一心で毎日全力を尽くしています。常に考えを巡らせ、予想外の事態にも柔軟に対応しながら、依頼者のために最善を尽くすよう心がけています。
依頼者の満足度を高めるために取り組んでいることを教えてください。
できるだけ連絡や報告をしっかり行うことで、依頼者の不安を少しでも和らげられればと思っています。まだまだ改善の余地はありますが、意識しながら取り組んでいるところです。
相続案件に注力している理由を教えてください。
日頃から相続に関する相談が多く、自然と注力するようになりました。
地域のご年配の方々の話を聞くと、相続で悩んでいる方が多いので、少しでも役に立てればという思いで取り組んでいます。
相続について、よくある相談内容を教えてください。
遺産分割に関する相談や、遺言書を作りたいという相談もあります。
一番多いのは相続放棄に関する相談です。典型的なのは、親が借金を残して亡くなるケースです。また、遺産としてほとんど貯金がなく、田舎の家だけが残っているけれど、それもいらないので相続放棄を考えたいというケースもあります。
最近の相談の傾向を教えてください。
事務所を独立してから、相続放棄の期限延長の手続きを何件か対応しました。
相続放棄をするかどうか決めるための期限は本来3ヶ月とされています。ただ、あまり知られていない手続きですが、裁判所の許可を得れば、その期限を延長することが可能です。
一番多いケースは、親御さんと疎遠で、財産の状況が全くわからないという場合です。財産がどのようなものかを調べたいけれど、調査に時間がかかるため、相続放棄の期限を延長したいという流れになります。
調査の結果、相続放棄する方もいれば、相続することを決める方もいます。
こういった手続きはあまりないと思っていたのですが、独立してから何件か対応したので、意外と相談があるものだと感じています。
相続は、相続人にとって、人生の中間決算のようなもの
相続案件を手掛ける上で心がけていることを教えてください。
相続案件は、感情論と法律論が絡み合うことが多く、依頼者自身が状況を整理しきれないことも少なくありません。そのため、できるだけゆっくりとお話を伺い、依頼者の感情にも向き合いながら、本音や悩みを引き出すことを大切にしています。
打ち合わせでは、必要なことだけを聞いてさっと終わらせることもできますが、できるだけ依頼者の気持ちを話す時間を大切にしています。初回の相談時間では90分から2時間程度を確保しています。
また、依頼者が感情的になっているときには、少し高い視点で物事を見られるようなアドバイスを心がけています。
よくお話しするのは、親が亡くなった場合の相続は、人生の中間決算のようなものだということです。他の相続人が自分にとって不利な発言をする場合には、自分の過去の行動や発言に対して相手が何かしらの不満を抱いていることも少なくありません。弁護士という立場からさまざまな案件を見ていると、どちらか一方だけが悪いという極端な状況はあまりないことがわかります。
ですから、これまでの自分の行動を振り返り、今の状況でできることを一緒に考えていこうとお伝えしています。
このようにお話しすると、依頼者自身が冷静に考え、道を探す手助けができると感じます。今までの考えとは異なる視点から考えるきっかけになると思います。
相続について弁護士に相談するメリットを教えてください。
弁護士に相談することで、自分の意向を実現するために必要なサポートを受けられます。
「岡目八目」という言葉があるように、第三者の視点から自分の言動がどう見えるかを知ることが大切です。相手の立場も含めて、どう見えているのかを把握する機会になると思います。
場合によっては厳しい意見があるかもしれませんが、しっかりとお話を聞いていただければ、新たな道が開けるのではないかと考えています。
早めに弁護士に相談した方がよい理由を教えてください。
相続放棄には、亡くなったことを知ってから3か月以内という期限があります。そのため、もし親御さんが借金をしているかもしれないという話が出た場合は、できるだけ早く対応する必要があります。
特に、相続放棄をした方がよいかわからない場合には、財産調査が必要になる可能性もあるので、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
また、相続放棄をすると決めた場合にも、必要な書類の準備や申請手続きについてアドバイスを受けられるので、時間に余裕を持って相談していただければと思います。
一緒に話しながら、前向きによい解決策を見つけましょう
これまで取り組んできた相続案件の中で、印象に残っているものはありますか。
限定承認の手続きを行った案件が印象に残っています。
限定承認は、被相続人が残した負債を遺産の範囲内で返済するために、遺産や負債をすべて明らかにして整理する手続きです。
この案件では、被相続人は建築業を営んでいた個人事業主で、被相続人の妻と子どもから依頼を受けました。通常、限定承認は手続きが複雑なため、相続放棄を選ぶ方が多いのですが、被相続人が築いてきた仕事をしっかりと清算したいという家族の希望で、限定承認を行うことになりました。
被相続人には跡継ぎがいなかったため、重機や車両などを売却し、その売却金で銀行や取引先への負債を返済する流れになりました。地元の業者の方々とも多く話をし、被相続人が誠実に仕事をしていたことがよく伝わってきました。
また、被相続人の妻とも丁寧にお話しし、被相続人の生い立ちやこれまでの人生について詳しく聞きました。こうした話を通じて、被相続人がどれほど真摯に仕事に取り組んでいたかが強く感じられ、その思いに寄り添いながら手続きを進めました。
手続きがすべて完了した際、被相続人の妻から「長い間、事業主の妻として支えてきましたが、これでようやく肩の荷が下りた気がします。寂しさはありますが、ほっとしています」という言葉をいただきました。
私にとっても、被相続人の人生に深く関わらせていただいたことは、貴重な経験となりました。
先生の事務所ならではの強みを教えてください。
事務所は私1人で運営していますが、その分、全ての案件に私が直接対応します。依頼者とのコミュニケーションをしっかりと行い、迅速な意思決定ができるため、話がスムーズに進む点が強みだと思います。
初回相談の流れを教えてください。
初回相談では、依頼者の希望はもちろんのこと、わかる範囲で構いませんので、相続人として誰がいるのか、どのような遺産があるのかを伺います。人間関係や状況を把握するために、できるだけ資料を持ってきていただけると助かります。
口頭で説明すると混乱してしまう方は、メモに書いて持参していただくと冷静にお話しできると思います。
もし相続人や遺産がまったくわからない場合でも、それ自体が一つの情報になりますので、ご安心ください。
相続のトラブルを抱えて弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
相続トラブルは精神的に辛いことが多いかと思います。これまで信頼していた人が予想外のことを言う場面もあるかもしれません。
そういったお悩みも含めて、相談を通じて一緒にお話ししながら、前向きによい解決策を見つけられたらと思っています。