沖縄の文化に精通した地元出身弁護士が、地域特有の相続トラブルを解決
沖縄県浦添市の「みやぎ法律事務所」で相続問題を扱う宮城健吾弁護士にお話を伺いました。宮城弁護士は「依頼者の悩みに寄り添い、感情面にも配慮しながら問題を解決すること」を大切にし、依頼者が安心して相談できる環境を整えています。インタビューでは、相続における弁護士の役割や印象に残る案件、相続で悩む方々へのアドバイスなどをお聞きしました。(沖縄弁護士会所属)
インタビュー
依頼者の守られるべき権利を守る
事務所設立の経緯と理念を教えてください。
沖縄市内の法律事務所で7年ほど勤務を積んだのち、独立を決意しました。子育てや生活のバランスを考えて、妻の地元である浦添市に事務所を開設することにしました。
私は法律の専門家として、依頼者が希望することであっても法律的に無理なことは無理と伝えるようにしています。依頼者に寄り添うことは大切ですが、「ここまではできるが、これ以上は難しい」という線引きをしっかり行うことが重要です。
この線引きをしないと、解決までに費用や時間がかかり、依頼者に不利益が生じてしまいます。当事務所のホームページに掲げている「守られるべき利益を守れる弁護士」というフレーズには、依頼者の利益を法律的に正しい範囲で守るという意味を込めています。
依頼者の主張を全て肯定するのではなく、法律に基づいた正しい判断での対応が、最終的に依頼者の利益になると考えています。
沖縄独自の相続文化と向き合う
沖縄出身の弁護士として、地域特有の相続問題にどのように対応していますか。
沖縄では、「長男が家や仏壇を継ぐ」という風習が根強く残っており、例えば、財産や仏壇を継ぐために、孫が祖父の養子になるケースもあります。
仏壇を継いだ家では、お盆や正月に親族が集まり、おもてなしをしなければならず、大きな負担になります。そのため、「仏壇を継いでいるのに、他の兄弟と平等に財産を分けるのは不公平だ」と思う方も少なくありません。
相続の相談では、「自分は仏壇を継ぐから、もっと財産を受け取ってもいいはずだ」と主張する長男と、「いや、法定相続分通りに平等に相続するべきだ」と主張する他の相続人との間で対立が生じるケースがあります。
長男側から依頼を受けた場合は、「気持ちはわかりますが、基本的には法定相続分で分割する必要があります」と説明した上で、どの財産を引き継ぎたいか、意向を聞いていきます。財産の額よりも内容についてすり合わせをする形です。一方、長男以外の相続人から依頼を受けた場合は、法定相続分に従って財産を分けるよう長男と話して、納得を得られなければ調停、審判で決着をつけます。
どちらの立場の方から依頼を受けたとしても、法律的に妥当なラインを示しつつ、依頼者が納得できる解決を目指して、相手方との交渉を進めていきます。
他に、沖縄特有の相続問題はありますか。
よく問題になるのが「軍用地」です。軍用地とは、基地の中にある土地で、所有者には毎年基地から地代が支払われます。この地代は安定収入の源として価値があり、土地が売買される際には地代の約50倍で取引されるのが一般的です。例えば、年間300万円の地代が発生する土地は、約1億5000万円で売買される可能性があります。
過去には、軍用地を持分で相続することが一般的でした。持分とは、土地や収益を複数の相続人がそれぞれの割合で共有する形式です。しかし、現在では持分での相続はあまり行われず、相続分をお金で清算する形が主流となっています。この変更により、土地そのものを物理的に分割する必要がなくなり、相続の手続きがシンプルになりました。
土地を分割しても実際には現金化まで時間がかかる場合がありましたが、現在では評価額に基づいて速やかに現金で清算されるため、相続人にとっても解決が早くなっています。もし清算に問題が生じた場合でも、軍用地の地代を差し押さえることで解決できるため、依頼者は安心して相続手続きを進めることが可能です。
相続案件を手掛ける上で心がけていることを教えてください。
依頼者にとって最も負担が少なく、納得のいく解決方法を提案することです。特に相続の問題は親族間が感情的に対立しやすく、長引くほど当事者のストレスが増大するため、できるだけ早い段階での合意成立を目指しています。
沖縄は親族間の関係性が強いため、その繋がりを壊さないように進めることが重要です。依頼者の感情に寄り添いつつ、法的にできること・できないことを明確にしながら、最も実現しやすく、親族間の摩擦が生じにくい解決策を探ります。
相続問題をスムーズに解決し、事後のトラブルも防ぐ
先生の事務所ならではの強みや、他の事務所との違いはどんなところでしょうか。
沖縄の文化や慣習を理解している点です。地元の方は、県外の弁護士に対して、「県外の人にはわからない」と思いがちで、特に年配の方ほどその傾向が強いようです。沖縄出身の弁護士として、地元の文化や風習に深い理解を持ち、依頼者に寄り添ったサポートを提供できることは私の強みだと思います。
また、前の事務所に所属していたときには不動産案件を多く取り扱っていました。その経験は、軍用地など不動産が絡む相続に対応する上で活きていると感じます。
相続について弁護士に相談するメリットを教えてください。
相続人同士で遺産分割をおこなうと、感情的な対立が生じ、トラブルになることが多々あります。弁護士が入ることで、法的に適切な方法で問題を解決できるようサポートします。当事者が納得できる形で解決することで、相続が終わった後に新たなトラブルが発生することも防止できます。
相続で問題になりやすいのが土地の評価額です。高く評価すべきか、安く評価すべきか、評価方法は何がいいのかーー。そういったことをご自身で判断するのが難しい場合もあると思います。
弁護士に相談していただければ、個別の事情を伺った上で、評価額や評価方法についてアドバイスします。弁護士のアドバイスを受けた結果、遺産分割の方向性が変わることもありますので、判断に迷う場合は一度ご相談ください。
忙しい方でも相談しやすいよう、オンライン対応もOK
初回の法律相談の流れについて教えてください。
まずは電話で相談内容を簡単にお聞きし、事務所に来ていただいた際により詳しい話を伺います。
遠方にお住まいの方や仕事で忙しい方は、オンラインでの対応も可能です。書類のやり取りや打ち合わせの回数を減らし、なるべく依頼者に負担をかけないように心がけています。
相談で一番大切にしているのは、最終的に依頼者がどのような解決を望んでいるか、つまり「着地点」を明確にすることです。特に相続問題では、誰がどの財産を引き継ぎたいと思っているのかをしっかり確認した上で、着地点に到達することを目指して具体的な対応を進めていきます。
相続のトラブルを抱えて弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
相続問題は、単純に法定相続分で分けるだけでは解決できないことが多いです。財産の評価や相続人の立場によって主張が異なり、複雑になることがよくあります。弁護士を入れることで、こうした複雑な部分を整理し、依頼者にとって最善の結果を目指すことができます。
相続について悩んだら、一度ご相談ください。冷静に問題を整理し、ご自身の希望を叶えるための方法を一緒に考えていければと思います。