相続問題の解決が過去の清算と未来へのステップに繋がる〜丁寧なヒアリングで依頼者に寄り添う
山口県岩国市で「森重法律事務所」の代表を務める舛本行広弁護士(山口県弁護士会所属)に、注力する相続案件について聞きました。依頼者との対話を重視し、一人ひとりの歴史や背景、「なぜ、そのような解決を希望するのか」といった思いに向き合い、納得のいく解決を導きたいと話す舛本弁護士。相続案件を手がける上で心がけていること、弁護士に相談するメリットなどを詳しく聞きました。
インタビュー
初回相談は45分。依頼者の話をしっかりとお聞きします
弁護士を志したきっかけと現在の事務所の代表になった経緯を教えてください。
私が大学を卒業した2000年は就職氷河期真っ只中で、卒業して就職先を見つけることが非常に厳しい状況でした。大学を卒業したら地元で働きたいと考えていたこともあり、企業に就職するのではなく、資格を取って自分で事業を営む道を選択したのです。そこで、以前から興味のあった弁護士を志すことを決めました。
修習を終えて、2010年に森重法律事務所に就職し、当時の代表である森重知之先生のもとで経験を積みました。2015年に森重先生が病で倒れたことから私が共同代表者になり、2017年に株式の譲渡を受けて代表に就任しました。
事務所の理念や大切にしていることを教えてください。
依頼者の話はしっかり聞きたいと考えています。そのため、初回の相談は45分無料で行っています。45分に設定しているのは、30分では依頼者の話を聞くのに十分とはいえず、資料を精査したり、事案化するか判断するには時間が足りないと思うからです。
もちろん、45分で収まらないこともあります。しかし、そのような場合でも「時間になりましたから」と話を途中で終わらすことはしません。必要に応じて時間を延長したりなど、柔軟に対応しています。
相続案件に注力している理由を教えてください。
取り扱い案件の中で相続分野が占める割合が多く、自然と注力するようになりました。
人が死ぬのは自然の摂理です。そして、誰かが亡くなれば、権利関係の承継が生じ、法律上の手続きが必要となります。そこに関わることに法律家としての意義を感じます。また、人の人生に携わるという点において、関心を持っています。
使い込みの返還や寄与分の主張など、依頼者の希望をしっかりと聞いて対応します
相続についてよくある相談内容と解決までの流れを教えてください。
相続には、親などの尊属から財産を承継する「縦の相続」と、自分の兄弟が亡くなって、身寄りがないためにその財産を受け継ぐ「横の相続」とがあります。
2つのうち後者は、争いもなく協議のみで終わることがほとんどです。単身者で配偶者もいない高齢者は今後ますます増え、「横の相続」も増加すると考えられます。
「縦の相続」で相談が多いのは、使い込みへの返還請求や寄与分の主張などです。寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加に貢献するなど「特別な寄与」をした場合、他の相続人よりも相続財産を多く分割してもらうことができる制度です。
寄与分は、調停が不調に終わり審判に進んだ場合、法定相続分で分けるようにという判断が出ることがほとんどです。しかし、要件に該当するように主張を組み立て、丁寧に証拠の裏付けをとっていけば、寄与分が認められる可能性があります。
以前扱った案件で、金銭拠出型の寄与を行っていた事例がありました。相続人が所有している物件の賃料を母親に渡すことに加え、療養看護費用も出していました。客観的に相続人の金銭拠出によって相続財産が増加していた証拠を提出でき、1000万円の寄与分が認められた例があります。
使い込みがあった場合は、単に財産分与に関する審判のみならず、民事訴訟で不当利得返還請求を争うことになります。証拠を積み重ね、利益供与が被相続人の意思に基づいて行われたものなのか、そうでないのかを判断します。
被相続人の意思に基づいていないものが不当利得という認定になりますが、不当利得と認定されれば返還請求を行います。不当利得でないという場合は、金銭を受け取っていることは確かなので、特別受益という形で主張し、同様に遺産から減額した上で分割協議をするという流れになります。
相続案件を手がける上で心がけていることがあれば教えてください。
まずは、相談・依頼を受けた時に、「解決まで時間をかけてもいいのか」「直ちに解決したいのか」「その理由」など、案件に直結することも含め、依頼者の背景や歴史をしっかりとヒアリングし、向き合うことを心がけています。
「時間がかかってもいいから、納得した解決にたどりつきたい」という方もいますが、中には、「相手が解決を急いでいるので、こちらは時間を引き延ばして譲歩を引き出したい」と、交渉を有利に進めるために、あえて時間をかけたいと希望する方もいます。
相続は「過去からの巻き戻し」。清算して新しいステップを
相続問題を弁護士に相談するメリットを教えてください。
弁護士はそもそも、紛争があるときに必要とされる役割です。自分たちで話し合い、解決する余地がない場合には弁護士の出番です。
当事者間で争っていても、「最終的にどこを落とし所にしたらいいのかわからない」という方がほとんどです。弁護士に相談することで、「どこを目指すのか」「どうなったら解決なのか」をはっきりさせることができます。
被相続人の方が亡くなる前でも、亡くなった後でもかまいませんので、「他の相続人と揉める」と感じたら、早めに相談に来てほしいです。
相続は家庭ごとに個別の事情があり、それぞれの事情に応じた対応が必要となります。そのため、様々な相続のケースを類型化できている弁護士の知見を活かすことが、最善の解決に繋がるといえます。
どのようなケースが紛争化しやすいのでしょうか。
被相続人が再婚しているケースです。前妻が亡くなり、子どもの手が離れた60歳から70歳頃になって再婚した場合などは、特に揉めやすい傾向にあります。
被相続人と過ごした時間とは関係なく、配偶者は2分の1の財産を相続することになります。そのため、長い時間を一緒に過ごした子どもからすれば、後から来た後妻が多くの財産を取得することに対して、「はいそうですか」と素直に受け入れ難いのです。
相続分野における事務所の強みや特徴を教えてください。
私自身が事務所の承継を経験している点が、特徴としてあるかと思います。遺産の中に株式が含まれている場合などは、自らの経験をもとにアドバイスできます。
以前、親族経営の事業承継に携わったことがあります。その企業は親戚同士で創業したのですが、創業者の1人が亡くなったことで、株式譲渡によるトラブルが発生しました。
依頼者である相続人は、全体の8割の株を取得したのですが、会社経営には携わっていなかったために、経営者側から買い取りの申し入れを受けたのです。しかし、株式の評価は難しく、専門家の判断が必要になります。
相手方からの提示額はかなり低い金額でした。そのため、経営者個人が買い取るのではなく、法人に自己株式取得として買い取ってもらうことで、双方ともに納得のいく解決を図りました。
このようなケースに対応できるのも、私自身の経験や、事業承継に取り組んでいるからだといえます。
最後に、相続問題を抱えている方へメッセージをお願いいたします。
少しでも揉めそうだと感じたり、自分たちでは解決が難しそうだと思ったら、早めに相談に来てください。
相続をきっかけに、家族や親族の関係が壊れてしまうこともあります。相続は「過去からの巻き戻し」だと私は思います。もともと仲が悪かった方や、表面的には仲が良いように見えても不満を溜めている方などが、相続をきっかけに感情を表面化し、紛争に発展するケースが多々あります。
過去に遡って人間関係をやり直すことは困難ですが、弁護士に依頼して相続問題を解決することで、過去の精算につながることがあります。できるだけ負担のない形で清算し、次に進むお手伝いができればと思っています。