長野市で25年の歴史。広い視点でベストな解決を提案〜自身の経験から介護者への理解も
長野県長野市妻科で「弁護士法人すそ花法律事務所」を経営する有吉美知子弁護士(長野県弁護士会所属)に、遺産相続案件を手掛ける上での心構えや事務所の強みなどを伺いました。社会人経験を経て弁護士になり、25年に渡り長野市内で弁護士を続けてきた有吉弁護士。長年家族の問題に注力してきた経験を踏まえ、依頼者に寄り添い、依頼者にベストな解決を提案しています。
インタビュー
弁護士を目指し、会社を辞めて法学部へ。子育てしながら挑んだ司法試験
これまでの経歴を教えてください。
東京都出身で、高校卒業後は航空会社に就職して約6年働きました。もちろんやりがいのある仕事でしたが、女性が男性と同じように活躍するには国家資格がないと難しいと感じました。国家資格にも色々ありますが、弱い立場の人を助けることで社会に貢献したいと思い弁護士を目指しました。
そこから会社を退職し、日本大学法学部へ進学しました。在学中に結婚・出産したため、子育てをしながら司法試験の勉強を続け、1996年に念願の合格を果たしました。
全く違う分野から弁護士になられたのですね。その後の歩みについても教えてください。
1999年に弁護士になり、長野市に「有吉法律事務所」を開設しました。2010年には事務所名を「すそ花法律事務所」に変更し、2014年に「弁護士法人すそ花法律事務所」を設立、2016年には上田市にも事務所を開設しました。現在は長野事務所に私を含め2名、上田事務所に1名の弁護士が在籍しています。
事務所として、どういったことを大切にされていますか。
目の前の解決だけでなく、その解決が長い目で見て依頼者にとってハッピーなのかしっかり考え、ベストな提案をすることを常に心がけています。
実は依頼者自身も本当は自分がどうしたいのか、なにに怒ったり悲しんだりしているのかわかっていない場合も少なくありません。ですから依頼者のお話をよく聴いて、丁寧に深堀りすることで、奥底にある想いや希望を探るようにしています。
依頼者とのコミュニケーションで気をつけていることを教えてください。
弁護士として経験を積むと、依頼者の選択に危うさを感じることもあります。そういう場合は、その選択をした場合のリスクなども丁寧に説明します。ただ、いきなり否定するのではなく、まずは依頼者の気持ちを理解し、「私のために言ってくれているんだ」と思っていただけるように信頼関係を築くことも心がけています。
介護を担ってきた方へのリスペクトを忘れずに
相続案件に注力している理由を教えてください。
家族に関する問題だから、というのが大きな理由です。私も結婚して子どもを育ててきましたが、やはり女性や子どもは色々な場面でしいたげられたり、弱い立場に置かれることが多いです。弁護士として、そういった方の力になれればと思い、家族の問題に注力するようになりました。そして相続は、まさに家族の問題ですから力を入れています。
依頼者に喜んでいただけることはもちろん、複雑に絡み合った糸を丁寧に解きほぐして解決することは得意ですし、自分だからこそ解決できたという達成感も大きい分野です。
相続について、どのようなご相談が多いでしょうか。
遺産分割協議に関するご相談です。特に、遺言書の内容に納得いかない、被相続人の介護に尽力したことを考慮してほしいといったご相談が多く寄せられます。法律的にそれほど難しい問題はなくても、相続人同士の関係が悪くて話し合いがうまくいかないというご相談もあります。ほかにも遺言書作成や相続放棄など、幅広くご相談いただいています。
介護に尽力したことが相続で考慮されることもあるのですね。
はい。寄与分といって、法定相続分より多く相続できる制度が民法に定められています。ただ、すべての介護が寄与分に当たるわけではなく、「特別の寄与」といえるほどの介護に限られます。
なにが「特別」かは法律上具体的に定められていないので、ケースごとに具体的に検討して、証拠とともに他の相続人や裁判所に主張する必要があります。寄与分が認められるハードルは低くないので、弁護士としては正確な見通しを立て、的確に主張・立証する必要があります。
実際に介護してきたけれど、寄与分として認められるのは難しそうという場合は、どうされるのでしょうか。
過度な期待を持たせるのは依頼者のためになりませんので、難しいという見通しはお伝えします。ただ、法律上は寄与分というお金の問題として扱われますが、介護をしてきた方は、お金が欲しくて介護してきたわけではないんですよね。
介護がどれだけ大変だったか、どれだけ自分の生活を犠牲にしてきたか、どれだけ神経をすり減らしてきたか、そういうことを理解してもらい、一言「これまでありがとう」「大変だったね」「お疲れ様でした」と言ってもらいたいという場合もあります。
ですから見通しとしては難しくても、介護の状況や依頼者の想いを書面にまとめて、とにかく主張することも多いです。そうすることで、結果的に寄与分として認められないとしても、依頼者の気が少しでも晴れればと思っています。
相続案件を手掛ける上で大切にしていることを教えてください。
介護を担った人へのリスペクトを忘れないことです。私自身、同居している義母の介護を10年ほど続けており、介護の大変さを自分事として理解できます。ですから介護を担ってきた方の気持ちに寄り添い、これまでの努力が報われるように努めています。
また、できるだけ円満に解決することも大切にしています。親族間の問題ですから、相続を機に完全に関係が切れてしまうのはよくありません。もちろん主張すべきことは主張しますが、他の相続人に対する配慮も忘れないようにしています。
長年の弁護士経験やネットワークを使い相続トラブルを解決
先生の事務所ならではの強みや、他の事務所との違いはどんなところでしょうか。
私は弁護士として25年の経験があり、弁護士になった当初から相続問題を扱い、多くのトラブルを解決してきました。その経験から、見通しや解決方法について自信を持って言葉にできるようになったと感じます。
また上田事務所の荒川弁護士は2013年、長野事務所の小林弁護士は2016年に弁護士になっているので、それぞれ十分な経験を積んでいます。互いに知恵を出し合ってベストな解決方法を導き出せることや、人手が必要な案件でも対応できることは当事務所の強みです。
この地域で長年事務所を運営されてきたからこその強みはありますか。
地域のことをよくわかっていますし、様々なネットワークもできました。特に相続では、税理士・司法書士など他の専門家の力を借りる場面が多いです。また不動産が絡むケースも多く、通常の売却はもちろん、山林や空き家などの処分に困ることもあるので、不動産業者との連携も不可欠です。そういった場合に信頼できる専門家に相談したり、依頼者に対して紹介できるということは強みです。
過去の依頼者の口コミでご相談いただくことも多く、それもこの地域で長く事務所を運営してきたからこそだと思っています。
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相続について弁護士に相談するメリットを教えてください。
客観的な見通しがわかることは大きなメリットです。相続自体が初めての方は特に、これから一体どうなるのか、どういう手続きが必要なのか、不安に思うでしょう。一方、弁護士はたくさんの相続案件を手がけてきていますから、その経験や法律知識を元に、今後の見通しをお伝えできます。見通しがわかると、ずいぶんストレスは減ると思います。
また、自分の主張が法律的に通るのか確認できることもメリットです。法律的に通らないと知らずに主張を続けることで、状況が余計にこじれて解決に時間がかかる可能性があります。ご相談いただければどのように軌道修正すればよいかお伝えできますので、ぜひ一度専門家のアドバイスを聞きに来ていただければと思います。
これまで取り組んできた相続案件の中で、印象に残っている案件を教えてください。
先ほど介護に関する寄与分の話をしましたが、ご依頼いただいた案件では、法定相続人の妻が、義母である被相続人の介護をしていました。ただ介護が寄与分として認められるのは、相続人自身が介護を行っていた場合です。
つまりこのケースでは、妻は相続人ではないので妻自身に寄与分が認められないことはもちろん、その夫は相続人ですが介護を行っていない以上、夫にも寄与分は認められないのが大原則です。
しかし、妻が献身的に介護を行ってきたのにそれが全く評価されないのはおかしいということで、夫の寄与分として認められるべきだということを、介護状況に関する証拠とともに主張しました。その結果、裁判官の理解を得られ、妻の介護が夫の寄与分として認められました。
依頼者も大変喜んでくださいましたし、法律上は本来認められないことを、介護現場の実態に沿って丁寧に主張・立証したことが功を奏したという意味でも印象に残っています。
相続のトラブルを抱えて弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
人間誰もが、いずれは亡くなります。そして自分が他界した後は子どもたちが円満に話し合って相続してくれるだろうというのは、いわば幻想です。子どもたちがもめないように遺言書という形で自分の意思を遺すことは、親としての最後のお仕事かなと思います。どのような遺言にするか決まっていない場合も、一緒に考えながら作成しますのでご安心ください。
また相続トラブルになった場合も、ご自身で対応してもめた状態で相談に来られると、どうしても解決までに時間や労力がかかります。できるだけ早くご相談いただくことで、スムーズに解決することも多いです。「このままだと面倒なことになりそうだな」と思った段階で、弁護士への相談をご検討いただければと思います。
相談したからといって、必ず依頼しなければならないということはありません。一度の相談で済めばそれでよいですし、継続的に相談していただくことも可能です。ぜひお気軽にご相談ください。