被相続人の意思を受け継ぎ、相続人の未来を見据えた視点で相続問題を解決。リモート対応も可能
東京都東大和市で「オンライン法律事務所タマ」を経営する増田周治弁護士(第一東京弁護士会所属)に、事務所設立の経緯や、相続案件に携わる上で心がけていることなどを伺いました。過去の出来事にこだわるのではなく、「これからどう未来を見据えていくか」という視点で問題解決を重視していると語る増田弁護士。相続について弁護士に相談・依頼するメリットについても詳しく聞きました。
インタビュー
リモート対応を中心にしつつ、地域の方々からの対面での相談にも応じる
事務所設立の経緯を教えてください。
弁護士になってからは都心の事務所で勤務していましたが、コロナ禍でリモートワークが普及し、リモートでの仕事が一般的になってきました。そこで、事務所もリモート対応をメインに据えて運営したら面白いのではないかと思い、リモート対応を中心とした事務所を設立することにしました。
普段は企業法務案件を多く取り扱い、基本的にはすべてオンラインやリモートで対応しています。しかし、相続案件に関しては「自宅の近くに事務所があるから」という理由で地域の方々から相談を受けることもあり、その際には対面での打ち合わせを行うこともあります。
事務所の理念や大切にしていることを教えてください。
企業経営と同様に、相続においても、何世代にもわたる長い視点で考えることを大切にしています。これまで築いてきた財産をしっかり次の世代に受け継げるよう、計画を立てていくことを大切にしています。
相続発生後の遺産分割についてのご相談はもちろん、生前から相続対策や分け方についてのご相談を受けられる事務所でありたいと考えています。事業を行っている方には事業承継についてのサポートも行っています。
相続案件に注力している理由を教えてください。
地域の方々の相談を受ける中で、相続が個人にとって大きな問題となることが多いと実感しています。そうしたときに、誰に相談すればよいか分からず困ってしまう方を少しでも減らしたいという思いから、相続について気軽に相談できる場でありたいと考えています。
長年放置されていた相続案件や、会社の事業承継に豊富な経験
相続について、よくある相談内容を教えてください。
大きく2つあります。
1つ目は、相続手続きが何代にもわたって放置されている不動産に関する相談です。不動産を売却したり、建て直したりする必要が生じた場合、まずは遺産分割を行い、相続登記をしなければなりません。
しかし、多くの場合、当時の相続人がすでに亡くなっており、その相続権を引き継ぐ子孫を特定する必要があります。このような場合には、登記手続きも関係するため、信頼関係のある司法書士と連携して対応しています。
2つ目は、経営者が亡くなった際の相続です。たとえば、被相続人が会社を経営しており、実質的に子どもが経営を引き継いでいる場合に、株式を相続人で分けると、経営権が分散し、会社の経営に支障をきたす恐れがあります。経営権を跡継ぎの相続人に集約しながら、公平な遺産分割を行うためには法的な工夫が必要です。
また、相続人の間で事業の価値に対する意見が異なるために遺産分割で争いが生じることも少なくありません。そのため、会社やその他の財産の評価を明確にし、経営を続けるために必要な財産と相続人に分けられる財産、手元にある資金を整理する必要があります。
経営者自身が自社の状況を客観的に把握していないことも少なくないので、こうした点を丁寧に説明することが重要だと考えています。
会社の事業承継については、相続手続きだけでなく、その後に発生する課題についてもサポートしています。
例えば、代替わりした後に、親の経営方法が現代の状況に合っていないことが判明することもあります。また、急な経営者の変更によって従業員が指示に従わなくなることもあります。このような場合、具体的な課題を明確にし、適切に対応することが求められます。
最近の相談の傾向を教えてください。
相続登記の義務化に伴い、これまで放置されていた不動産の遺産分割を進めなければならないという相談が増えています。
また、不動産価格の上昇や高齢化の影響もあり、亡くなる時点で現金などの流動資産が使い切られているケースが見られます。不動産を特定の相続人に引き継ぐ場合、通常は現金などの流動資産を用いて他の相続人との分配を調整しますが、流動資産が不足するとそれが難しくなります。
このような状況では、土地を売却して代金を分配するか、不動産を引き継ぐ人が資金を借りて他の相続人と調整する方法を取ることが考えられますが、こうした対応が難しい方も多く、問題となっています。
相続案件を手掛ける上で心がけていることを教えてください。
過去の出来事や不満にこだわるのではなく、「これからどう未来を考えていくか」という視点で問題を解決することを心がけています。
相続案件に携わる中で、被相続人の過去の財産の推移を調べることがありますが、多くの方が未来に向けて積み立てなどの準備をしてきたことが分かります。
被相続人も未来に希望を持って生きてきたのですから、残された方が過去にとらわれてしまい、現在の大切な時間を失うのは望ましくないと思います。前向きに考えていくことが大切だと考えています。
ウェブ会議を活用し、外出が難しい方や遠方の関係者がいる案件にも対応
相続について弁護士に相談するメリットを教えてください。
相続に関する問題について、相談者が曖昧なイメージや誤解を抱いていることもよくあります。法律の知識が不足しているために思い込みをしてしまったり、自分の希望が実現可能なのかどうかが不明確であったりすることがあります。
弁護士に相談することで、法律の実際の内容や自分の希望をしっかり確認し、実現可能かどうかを明確にしながら進められることがメリットです。
早めに弁護士に相談した方がよい理由を教えてください。
相続について早めに相談いただくことで、相続人同士でトラブルになりそうなポイントを事前に把握して対策を講じることができます。そうすることで、無駄な疑念を抱かずに話し合いを進めることができます。
相続が発生した後になるべく早めにご相談いただくことはもちろん、被相続人が亡くなる前に遺言を作成する段階であっても、早めにご相談いただくことが有益だと思います。
先生の事務所ならではの強みを教えてください。
当事務所では、ウェブ会議を使った相談や面談も積極的に行っています。たとえば、足が不自由で外出が難しい方などにもご利用いただければと思います。
また、関係者が遠方にいる場合や各地に散らばっているような案件にも対応可能です。そのような状況で、ウェブ対応ができる弁護士をお探しの場合には、当事務所をご検討いただければと思います。
弁護士選びは「この人なら任せられそうだ」と感じる直感を信じるのも一つの方法
これまで取り組んできた相続案件の中で、印象に残っているものはありますか。
2代前から放置されていた不動産の相続手続きを行った案件が印象に残っています。依頼者は当時の被相続人の孫で、他の相続人がどれだけいるのか分からない状況でした。不動産を処分するにしても活用するにしても、まずは遺産分割をして相続登記を行う必要があるということで、依頼を受けました。
私はまず戸籍謄本を取り寄せ、関係者の特定を進めました。しかし、相続人の中にはすでに亡くなっている方もおり、その子孫も含めると相続人が20人以上にのぼる状況でした。各相続人がどのような意向を持っているのかも分からなかったため、全員に連絡を取り、意向を確認するところから始めました。
幸いにも、相続人の方々が依頼者の意向を尊重してくださり、大きな争いにはならず、約1年半かけて全員から合意を得て、相続登記を無事に完了できました。
何十年も停滞していた問題を解決し、依頼者の状況を前進させることができたことにやりがいを感じました。また、長年放置されていた不動産を整理できたことは、社会的にも意義のあることだったと思います。
初回相談の流れを教えてください。
初回相談では、被相続人を中心とした親子や兄弟などの親族関係、だいたいの財産の額、相続人同士の方針に大きな違いがあるかどうかをお伺いします。可能な範囲で事前に調べてきていただくと、相談がよりスムーズに進みます。
特に相続人間の方針の違いについては、例えば、会社を誰が継ぐのか、大きな土地を誰が相続するのかといった点で、ある程度の合意が取れているかどうかを確認していただけると助かります。
相続のトラブルを抱えて弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
弁護士選びは、多くの選択肢を比較するよりも、事務所が近いなどの理由や「この人なら任せられそうだ」と感じる直感を大切にして、数人の弁護士と話してみることをお勧めします。
「人生に一度のことだから」と慎重に選ぼうとする気持ちは理解できますが、探し続けるうちに疲れてしまうこともあるかもしれません。あまり迷いすぎず、直感を信じて決めるのもよい方法だと思います。