丁寧な聞き取りがモットー。依頼者1人ひとりの想いに光を当て、相続トラブルを納得の解決に導く
東京都港区新橋で「新橋辻法律事務所」を経営する辻勲雄弁護士(第二東京弁護士会所属)。依頼者の話を丁寧に聞いて真意を汲み、納得できる解決を導くために尽力しています。「相続の手続きは想像以上にやるべきことが多い。1人で抱え込まず、専門家を頼ってほしい」と話す辻弁護士に、相続問題を手がける上での心構えや、相続について弁護士に相談するメリットなどを聞きました。
インタビュー
どんな相談も丁寧に掘り下げて、解決の糸口を探ります
事務所設立の経緯を教えてください。
弁護士を目指したときから、将来は、生まれ育った新橋で自分の事務所を構えたいと考えていました。司法修習中から開業に向けた準備を始めて、弁護士登録後は一旦都内の法律事務所に入って勉強させていただき、翌年4月に現在の事務所を設立しました。
事務所の理念を教えてください。
困っている方の話を丁寧に聞き、1つひとつの案件に真摯に向き合うことです。これは、私が弁護士を目指したきっかけにも関わっています。
大学時代は法学部に在籍していましたが、弁護士になることは考えていなかったため、卒業後は一般企業に就職しました。
あるとき、友人の親族が痛ましい事件に巻き込まれて亡くなるということがありました。友人は加害者に対する損害賠償請求を希望し、事件を受任してくれる弁護士を探すため、私も一緒に複数の弁護士事務所を回りました。しかし、いずれの事務所でも、加害者に資力がなく回収可能性が低いなどの理由で門前払いをされたのです。
困って相談したのに、まともに話も聞いてくれないのか#### 。法学部時代に思い描いていた弁護士像とのあまりの違いに、愕然としたことを覚えています。この出来事がきっかけとなり、「自分が味わったような思いを他の人にしてほしくない」「どんな悩みにも丁寧に耳を傾ける弁護士に自分がなろう」と思うようになりました。大学卒業から時間は経っていましたが、弁護士を目指そうと一念発起し、会社を辞めて法科大学院に進学しました。
このような経緯があるので、私のもとに来てくださった方の話には、どんな内容であっても、しっかり耳を傾けることを徹底しています。よく検討もせずに「それは無理です」と突き放したりすることはありません。話を聞きながら解決の糸口を探し、可能な限り依頼者のニーズに合った結果を導くための方法を提案できるよう努めています。
気持ちの上でも納得できる解決を目指します
相続問題では、どのような相談が多いですか。
遺産分割や遺留分、遺言作成に関する相談が多いです。
遺産分割においては、誰がどの遺産をどのくらい受け継ぐかをめぐって、相続人同士で争いになり、話合いが停滞することが少なくありません。もともと仲が良かった家族が、相続をきっかけに対立してしまうこともあります。
当事者で話し合っても折り合いがつかない場合に、弁護士が第三者の立場で介入することで、感情的な対立が落ち着き、法律のルールに基づいて冷静に話合いを進められるようになります。
相続問題を手がける上で心がけていることはありますか。
遺産分割の話合いに介入する際は、依頼者と相手方それぞれの気持ちや、対立してしまった理由、経緯を汲むようにしています。相続する割合や金額などの数字だけで割り切るのではなく、当事者が気持ちの上でも納得できる解決を目指しています。
「皆さんが争っている遺産は、亡くなった方が懸命に築いてくれたものです」「亡くなった方は、ご家族がこんなふうに争うことは望んでいないと思いますよ」というふうに伝えて、被相続人に想いを馳せてもらうこともあります。当事者が「自分の利益ばかりに固執していたな」と気づくことで対立関係が和らぎ、交渉の余地が生まれるケースも少なくありません。
遺言作成のサポートをする際は、財産をお持ちの方ご本人の想いを反映した内容にするために、財産の内容や分け方はもちろん、財産を取得した経緯や今までの人生についてもじっくり聞くようにしています。ご本人が納得できる内容になるまで、打ち合わせを重ねながら文案を作成していきます。
ネットでは得られない、個別の状況に応じたアドバイスを伝えます
相続問題を弁護士に相談するメリットを教えてください。
個別のケースに合ったアドバイスを受けられることです。
今はインターネットで情報を手軽に入手できます。弁護士に相談する前に、ある程度情報を調べている方も少なくありません。ただ、中には、同じようなケースで成功した事例を見て、「自分もうまくいくだろう」と思い込んでいる方や、自分に有利な情報だけを切り取って理解している方もいます。
ネット上の事例は色々な要素が重なってうまくいったのであり、状況が似ているからといって同じように成功するとは限りません。弁護士に相談して、自分のケースの見通しや対処法について、適切なアドバイスを受けることが不可欠だと思います。
ネット上の情報を真に受けないことが大切なのですね。
そうですね。ネット上の情報をもとにご自身で対処しようとすると、解決からは遠のいてしまうことがあります。
たとえば、遺産分割の話合いを進める際、私たち弁護士は、相続人同士の対立がこれ以上深まらないように、意識して段階を踏んだ交渉を行なっています。法律的に正しい情報であっても、タイミングや伝え方を気にせず、ストレートに相手にぶつけてしまうのは考えものです。相手の態度が頑なになり、それ以降の交渉が難航する可能性があります。
交渉をうまく進めるには、個別の事情を踏まえて、慎重に戦略を立てる必要があります。「どのカードをどのタイミングで出すか」「相手がこう言ってきたら何と反論するか」といったポイントをあらかじめ考えておくからこそ、交渉がスムーズに進みます。
一般の方が、自分で戦略を立てるのは難しそうです。
はい。インターネットには法律の情報はあっても、交渉の進め方についての記載はそれほどなく、あったとしても一般論です。
「遺産分割の話合いをどのように進めればいいのか」と悩んだときは、ぜひ弁護士に相談してください。「こういう切り口で話合いを始めるとうまく進むと思いますよ」「この資料を提示しながら説明すると、相手に納得してもらいやすいです」というふうに、専門的な知識や経験に基づき、交渉の進め方をアドバイスします。
相続は親族間の問題なので、話し合ううちにお互いの感情がヒートアップしやすい傾向があります。交渉の進め方を誤って揉めごとが生じると、当事者同士では解決が難しいです。揉める前に専門家に相談し、交渉の手順や注意点についてアドバイスを受けることをお勧めします。
相続の相談をするのに「早すぎる」はありません
相続の相談をするベストなタイミングはいつでしょうか。
遺言書作成に関しては、思い立ったときに相談してもらうのが一番です。たとえば、定年退職をしたタイミングや、大病を患って入院したことをきっかけに書く方もいます。30代、40代の方で、お子さんが生まれたことをきっかけに、「万が一に備えておいた方がよいと思って」ということで相談に来る方もいますよ。
突然の事故や病気で亡くなる可能性はゼロではなく、遺言書を作成するのに早すぎるということはありません。身も心も元気で、判断能力も十分にあるうちに、将来の備えをしておく意義は大きいと思います。
相続発生後についてはいかがでしょう。
四十九日法要が1つの目安になると思います。相続には期間制限がある手続きがあります。たとえば、相続放棄は相続開始を知ったときから3か月以内、相続税申告は相続開始を知った日の翌日から10か月以内というふうに、期限が決まっています。
相談が遅くなると期限に間に合わず、手続きができなくなる可能性があるため、葬儀などの手続きがひと段落した時点で一度ご相談ください。
「相続人間ですでに揉めている」「所在が不明な相続人がいる」など、すでに問題が生じている場合は早めに対処をした方がいいので、四十九日を待たずに、相続が発生した段階で速やかに相談してもらえればと思います。
最後に、相続問題で悩んでいる方にメッセージをお願いします。
当事務所では、依頼者の思いを丁寧に掘り下げて聞くことを大切にしています。その上で、法律の観点から状況を整理し、悩みを解決するための方法をご提案します。
相続は多くの方が人生で一度は経験する出来事ですが、やらなければならない手続きが想像以上に多いです。私自身、父の相続を経験しているので、大変さはよくわかります。法律の知識が求められる複雑な手続きもあり、相続の渦中にいる方は、「何から手をつければいいのか」「自分のやり方は正しいのか」と不安になることもあるでしょう。
ご自身で抱えきれなくなる前に、ぜひ弁護士を頼ってもらえればと思います。早めに相談してもらえれば「まずはこの手続きから始めましょう」「今の段階でここまでできていれば安心ですよ」「もう少し急ぎ足で頑張りましょう」というふうに、全体のスケジュールを踏まえて状況を伝えられます。
悩みを1人で抱える必要はありません。第三者の意見を聞くことで、不安が軽くなったり、悩みを解決する糸口が見えてきたりすることもあります。少しでも不安に思うことがあれば、気軽に相談してください。