社会福祉士から弁護士へ。福祉・医療に長年携わってきた知識と経験であなたらしい最期をサポート
佐賀市城内で「江越法律事務所」を経営する江越正嘉弁護士(佐賀県弁護士会所属)に、遺産相続案件を手掛ける上での心構えや事務所の強みなどを伺いました。江越弁護士は社会福祉士として約5年働いた後、弁護士の道に進みました。福祉・医療の現場での知識や経験も活かし、自分らしい最期を迎えるための法的サポートなどに取り組んでいます。
インタビュー
社会福祉士としての問題意識から弁護士へ転身
これまでのキャリアについて教えてください。
私が弁護士を目指したのは、社会人になってからなんです。まず佐賀大学経済学部卒業後に専門学校に通い、社会福祉士の資格を取りました。そして1999年から約5年間、社会福祉士として高齢者在宅福祉、医療福祉に携わりました。
その中で、認知症高齢者や消費者被害にあう方を支援するにあたって、法律知識が足りないことを思い知らされました。そこで一念発起して法科大学院(ロースクール)へ進学し、2008年に弁護士になりました。
そして相続、特に遺言書作成など生前からの準備に一層力を入れたいと思い、2017年に当事務所を設立しました。
社会福祉士から弁護士という経歴は非常に珍しいですね。事務所として、どういったことを大切にされていますか?
相談しやすい事務所であることを大切にしています。というのも、社会福祉士として働いていたとき、法律的にわからないことがあっても、弁護士に相談するハードルがとても高かったんです。いつも忙しそうで遠慮してしまったり、こんなこと相談して良いんだろうか、すごくお金が必要なんじゃないかと思っていました。
社会福祉士でもそうなのですから、一般の方はもっと敷居を高く感じると思います。その結果、「よほどのことがない限り弁護士に相談しない」と思われてしまい、早く相談すれば防げたトラブルも起きてしまうんですよね。
相談しやすくするために、どういったことに取り組まれていますか?
事務所で待っているのではなく、ご自宅や施設まで行って相談をうかがったり、講演をしたり、こちらから積極的に出ていくようにしています。
高齢の方や障がいをお持ちの方は、事務所までお越しいただくだけでも大変です。「事務所に行くことが難しいから」という理由で相談を諦めてしまう方も少なくありません。だからこそ、私から会いに行くと皆さん喜んでくださいます。
また、施設や病院の職員の方から電話で相談を受けて、その場で回答することも多いです。
先生の事務所ならではの強みや、他の事務所との違いはどんなところでしょうか。
社会福祉士として福祉や医療の現場で働き、弁護士になってからも一貫して福祉や医療関係の仕事をしていますので、高齢の方や障がいをお持ちの方の特性、業界のことをわかっているのは強みです。
また、福祉や医療ではカルテをはじめ膨大な記録があり、知識や経験がないと速く正確に読むのは難しいです。その点、私は長年の経験がありますので問題なく読めますし、どこからどんな記録を取り寄せれば良いのかも熟知しています。
さらに医療機関や福祉施設とも連携できるネットワークも持っていますし、医療ソーシャルワーカー(MSW)の協会などにも長年所属しており、最新の現場の情報や業界の動向なども学び続けています。
ご自身の最期に向けたご相談から相続人同士のトラブルまでお任せください
相続に関して、どういうご相談が多いでしょうか?
一般的には、親や配偶者が亡くなって、相続人から「遺産分割協議でもめています」という相談を受ける法律事務所が多いと思います。
当事務所の場合は、もちろんそういったご相談も多いですが、いわゆる終活、つまり自分自身の最期に関するご相談が多いのが特徴です。尊厳死や終末期の医療ケアに関するご相談もありますよ。
どういう最期を迎えるかというのは、その方に与えられた権利だと思います。ですから最期を迎えるとき、ご本人の想いがちゃんと実現できれば良いなと思っているんです。そのために、私は「オーダーメイド終活」と呼んでいるのですが、一人一人のお話をしっかり聴いて想いを形にするお手伝いをしています。そうすることで、相続トラブルの予防にもつながります。
終活に関して、弁護士にどういったことを相談するのでしょうか?
わかりやすいのは遺言書の作成です。自分が亡くなった後に、どういうふうに遺産を分けるか決めるものですね。
また、死後事務委任契約というものも増えています。難しく聞こえるかもしれませんが、たとえば、自分が亡くなったときに、SNSのアカウントを消してほしい、ペットの世話をこうしてほしい、遺品整理をこうしてほしい、お葬式をこうしてほしいといった様々なことを弁護士に依頼しておいて、亡くなった際に弁護士がそれを行う契約です。
遺言書は遺産のことを書くのが基本ですが、死後事務委任契約はもっと広く様々なことを任せられるのが特徴です。
家族に頼めないようなことも頼めるのですか?
はい。弁護士には守秘義務がありますから、家族などに知られたくないことでも安心してお任せいただけます。家族が先に亡くなることもありますから、その意味でも準備は大事です。
近年は生涯独身という方も増えていますし、自分が他界した後のことをちゃんと考えて最期を迎えたいと考える方が増えてきた印象です。
弁護士に色んなことをお願いできるのですね。相談に来られる方は、遺言書を書きたいとか、内容をこうしたいという具体的なイメージをお持ちなのでしょうか?
ある程度自分で決めている方もいらっしゃいますが、「こういうことが心配だけど、どうすれば良いでしょうか?」といったご相談も多いですよ。
遺言書や死後委任事務契約は、依頼者が望むゴールを実現するための1つの手段です。他にも有効な手段はいくつもありますので、こういうふうにしたい、こういうことが不安だと率直にご相談いただければ、最適な方法を提案させていただきます。
遺言書などを書かずに亡くなる方も多いと思うのですが、「遺産分割協議がうまくいかない」というご相談も多いですか?
そうですね。お金の問題だけではなく、感情的な対立が起きてうまくいかないというケースも多いです。近年の傾向としては、預金の使い込みが問題になるケースが多いですね。典型的には、被相続人(=亡くなられた方)と同居していた相続人(=子どもなど)が、被相続人の預金を自分の生活費や遊興費に使い込んでいるようなケースです。
使い込みだと立証するのは難しいと聞いたことがあるのですが、いかがでしょうか?
たしかにハードルは低くありません。1つポイントになるのは、預金が引き出された当時、被相続人がどういう心身状態だったかということです。
たとえば認知症がひどかったら、銀行まで行ってお金を引き出すことは難しいので、きっと同居していた相続人が引き出したんだろうと推測できますよね。
このような推測をするために、介護記録やカルテなどを取り寄せて、被相続人がどのような状態だったかを精査していきます。私は社会福祉士として働いていた頃から認知症の方にずっと関わってきましたので、記録の読み方や状態の判断などは他の弁護士より得意だと自負しています。
自分自身と家族のために、より良い方法を一緒に考えていきましょう
相続について弁護士に相談するメリットを教えてください。
弁護士は、水先案内人のような存在だと思っています。弁護士は様々なケースを見ていますし、特に私の場合は社会福祉士としても弁護士としても多くの方の最期を見てきました。そして相続人同士が揉めたり、困ったりする姿も見てきました。反対に、すごく良い最期を迎えた方や、トラブルなく相続手続きを進める相続人の姿もたくさん見てきました。
これまでの経験から、今の財産や親族の状況を考えれば、他界された後はこういうふうになると予想できます。その前提で、どうしていきたいですかとお尋ねして、想いを実現するお手伝いができます。私はカウンセリングも学んでいますので、本当はどうしたいのかというところから寄り添って丁寧にお話をうかがいます。
すでに発生した相続に関して、早めに相談するメリットはどういったところでしょうか?
早めにご相談いただくことで、揉めにくくなります。ご自身の考えで動いてしまった結果、余計に揉めたり、いつの間にか大事な書類にサインさせられたりしていることもあります。相続人同士で話し合う前に、まずはご相談いただいて、相続の基本的な知識を頭に入れたり、見通しを立てたりすることが大事です。
先生に相談したい場合は、どのようにすれば良いでしょうか?
電話かWebフォームから予約をしてください。業務時間は基本的に平日9時から17時ですが、夜間や土日祝も可能な限り対応します。また、ご自宅・施設・病院などへの出張相談も可能ですのでお気軽にお問い合わせください。一定の基準を満たす方は、法テラスの公的制度を使って相談料が無料になる場合もありますので、予約時にお申し出ください。
最後に、相続について悩み、弁護士への相談を検討している方に向けてメッセージをお願いします。
人生は、最期を迎えるその時まで続きます。これまでとこれからのこと、そしてお亡くなりになった後のことまで一緒に考えていくスタンスで関わりたいと思っています。お元気なうちに遺言書作成などの備えをしておくことで、ご自身も安心できますし、残されたご家族が相続トラブルに巻き込まれることも防止できます。
弁護士に相談するのはハードルが高いと感じるかもしれませんが、少しだけ勇気を出してご相談ください。これまでの知識と経験を活かしてサポートさせていただきます。