母親の医療過誤を乗り越え弁護士に。依頼者としての原体験を強みに、人生に寄り添う相続サポートを
兵庫県神戸市で「弁護士法人セラヴィ」を経営する崔舜記弁護士にインタビューを行いました。在日韓国人3世の崔弁護士は、韓国人・在日韓国人の相続に関するワンストップサポートを提供しています。事務所の理念や弁護士として大切にしていること、相続の対応方針、事務所の強みなどを聞きました。(兵庫県弁護士会所属)
インタビュー
人生を見据えた解決を目指し悩みに寄り添う
事務所設立の経緯を教えてください。
私は在日韓国人3世として大阪市に生まれ、ずっと関西で過ごしてきました。その後は紆余曲折を経て、2009年に弁護士登録しました。弁護士を目指した理由は、私自身が母親の医療過誤の当事者となり、依頼者としての苦しみを知ったからです。今は弁護士という仕事に、心からやりがいを感じています。
弁護士としての経験を重ねた後、2021年に独立し、弁護士法人セラヴィを設立しました。法律事務所というと堅いイメージがありますが、私は空間づくりから法律事務所らしくない形式を目指しました。今では業務効率化はもちろん、LINEやSNSを活用して、依頼者のニーズへの柔軟な対応を実現しています。
事務所名に込めた思いと、理念を教えてください。
「セラヴィ」はフランス語で「これが人生だ」という意味です。当事務所は、依頼者が人生を肯定的に受け入れられるようなサポートを目指しています。
「これが人生だ」というと「人生こんなものだ」という諦めの気持ちとも受け取れますが、前向きに捉えれば「これこそが人生」とも解釈できます。二面生があるところが人間らしく、良い言葉だなと思い、事務所名にしました。
当事務所は、問題解決までのサポートを通して、依頼者が前向きになれるように努力しています。単なるトラブル解決にとどまらず、先の人生を見据えた解決を後押ししたいと考えており、勝ち方や終わり方にもこだわっています。解決すべき問題が依頼者の人生においてどのような位置づけなのか、どのような解決が幸せなのかを常に意識しております。
依頼者の経験があるからこそ実感を込めて言えますが、相手をやりこめることで人生が完結するわけではないことは確かです。トラブルだけに囚われるのではなく、先の人生を見てほしいと思います。弁護士としてサポートできるのは人生の一部に過ぎませんが、一人ひとりに向き合って、できるだけ深くサポートさせていただくよう心がけております。
トラブルも人生の一部として前向きに捉えられるように
依頼者の満足度を高めるために、具体的に取り組んでいることはありますか?
「W・A・O(わかりやすく・あたたかく・おもしろく)」をモットーに、依頼者目線でのトラブル解決を目指しています。具体的には、わかりやすく伝えること、あたたかく接すること、そしてユーモアを交えること、その全てが欠かせません。どんなに暗い気持ちで来られた方でも、少しでも明るい気持ちになって帰ってもらえるよう心がけています。
また、依頼者からは「納得のいく解決ができた」と喜んでもらうことが多いのですが、そのために、まずは依頼者の思いや希望をしっかりと受け止めています。もちろん相手方がいるものである以上、全てのご希望を叶えられるわけではないため、法的に見て難しいものは難しいと率直にお伝えしています。
希望を聞いたあとで、本当にそうしたいのか、深いところまで確認することも忘れません。例えば、身内ともめていて「徹底的に相手方を追い詰めたい。とにかく財産を多く取りたい」と言われたとしても、「本当にそこまでの手続きをしたいと考えておられますか?一度落ち着いて考えてみられてはいかがでしょうか?」と見つめ直していただくきっかけをお作りすることもあります。
依頼者の先の人生を見据えた解決を後押しするためには、法的な部分だけでなく、一人ひとりの方のお気持ちや状況に合わせた対応をすることが大切だと考えています。
相続の対応で心がけていることを教えてください。
相続は親族間の問題だからこそ、どういう形での解決を望んでいるのか、本当に望んでいることは何かを慎重に探る必要があると思っています。
親族であるという関係性を考慮すれば、無茶な主張をしてでも「勝てばよい」というわけでも、無理をしてでも「仲良くしましょう」というわけでもないでしょう。もちろん、場合によってはとことん争うこともあります。
一方で、悩んでおられることがあれば、ご一緒に悩むこともあります。私の口癖は「自分だったらこうする」です。私自身が依頼者の立場であったことがあり、その気持ちを心から理解できるからこそのものなのかなと思っています。
依頼者が悩んでいるときに、弁護士ではない依頼者としての感覚と、弁護士としての法的判断とを合わせて、総合的な指針を示せることは強みの一つだと思います。
韓国籍の相続人が関わる相続にも対応できる
韓国人・在日韓国人の相続問題に関して、どのような対応が可能ですか?
当事務所の強みの一つは、韓国人・在日韓国人が関わる相続トラブルへの対応が可能なことです。翻訳担当のスタッフもおり、全ての手続きをワンストップで承っています。もちろん一般的な日本の相続についても経験豊富ですので、安心してご依頼いただけます。
韓国籍の相続人が関わる相続は複雑です。韓国の民法は日本と異なり、相続人の範囲が違います。また韓国の人は日本に戸籍がないため、韓国から証明書を取り寄せ、日本語に翻訳する必要があります。さらには日本の役所に出生届を出していても、韓国に出していないケースもあるのです。相続人を特定するだけでも大変な作業といえます。
相続人調査、韓国戸籍の訂正、相続関係書類の取得・翻訳、韓国における手続きなど、幅広く対応しております。
先生は「相手を敵にしない交渉術」が得意と聞きました。具体的に教えてください。
弁護士経験を経て、依頼者はもちろん相手に対しても徹底的に向き合うことで、より良い結論が導けるようになりました。明らかに敵意を出してくる相手の場合は別ですが、基本的には相手には相手の立場があることを理解して、主張をしっかりと聞いたうえで交渉することが重要だと考えています。そうすることで,結果としてより良い解決につながることが多いです。
依頼者を思うあまり、若手の頃は、依頼者の希望を強く主張しすぎてしまったことがありましたが、様々な経験を経て、必ずしも力技だけでは解決しないことを痛感しています。また、無駄に敵を作るような戦い方は、結局、依頼者のためにもなりません。感情をぶつけるだけでは良い解決につながりません。
今は、「北風と太陽」の寓話のように、とにかく強い風をもってコートを脱がせるのではなく、自分からコートを脱ぎたくなる状況を作ることが大切だと思っています。これは、様々な経験を経てつかんだ私なりの考え方です。私自身、今が一番自分らしく弁護士業務に取り組むことができているという実感があります。
依頼者から、どのような先生だと言われることが多いですか?
ありがたいことに、弁護士ドットコムの「感謝の声」にも多くのお言葉をいただいておりますが、「弁護士に見えない」「気軽に相談しやすい」「面白い先生」などとよく言っていただきます。
依頼者と過ごす時間はあえて雑談なども積極的にして、笑顔の時間も増やしたいと考えているので、話しやすいと思ってもらえているようでありがたいです。あえて、弁護士らしく見せようという意識はせず、プライベートと同じ自然体でフレンドリーに接しています。
私自身、事件の当事者としての経験があり、また、さまざまな挫折や紆余曲折を経てきた人生でした。だからこそ依頼者に寄り添い、より深いところまで向き合った対応がしたいと考えています。話をするなかで、時には本筋から離れた愚痴が入っても構いません。親戚の甥っ子やおじさんくらいの感覚で接してもらえたら嬉しいです。
私たちと一緒に乗り越えませんか
相続のトラブルを抱えて弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
抱えている問題を解決するために、まずは「自分が本当に望んでいることは何か」を一緒に考えてみませんか?今だけでなく今後の人生にとってより良い解決を目指すためにも、今のお悩みにけじめをつけるためにも、ぜひ一度ご相談ください。
当事務所は、一緒に解決の方向性を考え、一緒に乗り越えていきたいと考えています。あなたの人生に寄り添い、「これが人生だ」と前向きに捉えられるよう、全力でサポートします。