29年間の検事経験と9年間の公証人経験が強み〜多角的な視点で相続問題を解決
東京都港区「東京エクセル法律事務所」の齋藤博志弁護士(東京弁護士会所属)に、相続分野の取り組みについて話を聞きました。検事歴29年、公証人歴9年の豊富なキャリアを持ち、多角的な視点から問題解決に取り組む齋藤弁護士。相続問題を弁護士に相談するメリットや問題解決に向けて意識していることなどを伺いました。
インタビュー
検事と公証人を経て弁護士に転職
弁護士登録から現在の事務所に入所するまでの経緯を教えてください。
東京地検や福岡法務局などで29年間検事として働いた後、新潟県で9年間公証人として勤務しました。
東京に戻る際、これまでの検事や公証人としての経験を活かせる職業として、弁護士が最適だと判断しました。
また、弁護士としての実務経験がなかったため、東京エクセル法律事務所に入所することを決めました。
相続分野に注力している理由を教えてください。
公証人時代に、遺言書、任意後見契約書、民事信託契約書などの作成業務に携わりました。この経験が直接活かせる分野だからです。
また、相続は家族に関わる問題であり、家族の形態が時代とともに変わるように、相続に関連する法律や制度も変化しています。特に、後見制度や信託制度は、この変化を如実に表す例だと思います。
これらの制度は、一般の方々にはまだ十分に浸透していないのが現状です。その要因として、制度の複雑さがあると考えます。そのため、依頼者1人ひとりのニーズに合わせて最適な形で制度を活用し、依頼者の利益を守ること、その実例が積み重ねられることが必要だと思います。
どのような相談が多いですか。
遺産分割に関する相談です。特に、相続人が多数いるケースでは、紛争に発展しやすい傾向があると感じます。家族関係が複雑になればなるほど、意見の相違や感情的な対立が生じやすくなるためです。
また、不動産が絡む相談も多いです。中でも、不動産が共有財産となっているケースは、当事者だけでは解決できない複雑な問題が多く、専門家としてのアドバイスを求められます。
そのようなケースでは、まず権利関係を正確に把握することから始めます。戸籍謄本や登記簿謄本などの書類を丁寧に確認し、相続関係図を作成して全体像を明らかにします。その上で、各相続人の意向を慎重に聞き取り、公平かつ実現可能な解決策を検討していきます。
どんな感情にも必ず理由が存在する
相続案件を扱う上で心がけていることはありますか。
依頼者の感情に寄り添いながら、問題の本質を見極めることです。相続問題は依頼者の感情が絡みますが、その感情には必ず理由があります。どこから来ているのか、何がきっかけなのか、感情の根源を探り、見極めることで、問題の本質が見えてきます。そして、本人がその問題の本質を自覚し、整理することが問題の解決へと繋がります。
そのためにも、争いの表面的な部分にだけ目を向けるのではなく、依頼者からしっかり話を聞いて、背景を知ることが重要だと考えています。
また、全ての当事者が満足できる解決策を可能な限り模索しています。なぜならば、目前の相続問題が解決しても、家族の関係は継続するからです。次に発生する可能性がある二次相続や三次相続に備え、遺恨を残さない解決を目指すことを心がけています。
相続問題を弁護士に相談するメリットにはどのようなことがありますか。
1つは、自分が抱いている考えや感情が法的にどのように判断されるのかを知ることができる点です。
相続は家族間の問題であり、そこには様々な感情が絡みます。例えば、「自分は親の面倒を長年見てきた」「兄は大学に行かせてもらえたのに、自分はそうではなかった」という不満や感情を抱いていた場合、それが法的に認められず相続に反映されなければ、本人は不条理に感じることでしょう。
弁護士はそのような思いを法律という枠組みの中で整理し、具体的な解決策を提示することができます。親の介護であれば「寄与分」として認められる可能性があります。生前に贈与を受けていれば「特別受益」として考慮されるかもしれません。
こうして法律の視点から「あなたの状況は法律でこのように救済される可能性があります」と示すことができれば、不条理に感じていたことも解消され、納得感を得ることができます。
これまでの活動で印象に残っている案件やエピソードを教えてください。
進行中の案件のため詳細は控えますが、不動産の共有関係に関する問題が印象に残っています。
ある土地を4人が共有していました。当初、4人は良好な関係を保っていたのですが、そのうち2人が他界し、相続による代替わりが起きたことで状況は一変しました。
相続により所有権を獲得した1人が土地の売却を希望し、他の2人の持分を贈与と不明土地の持分取得請求によって4分の3取得しました。しかし、残りの1人は土地の従前どおりの継続的な利用を望んでいたため、対立が生じ、私のもとに相談に来たのです。
一見すると、4分の3の持分を取得した側が有利な立場にあるように見えます。しかし、法的にはそう単純ではありません。確かに過半数以上の持分を持っていますが、包括承継、その包括承継者による取得であるため、もとの同盟関係も受け継がれます。つまり、4分の3の持分を取得したからといって、残りの4分の1の所有者の権利が失われるわけではないのです。
問題はそれだけにとどまりません。私の依頼者には兄弟がいるため、相続した共有財産に対してさらに相続共有状態が発生していることです。共有財産の中にさらに相続共有関係が存在するという、非常に複雑な権利関係になっているのです。
このような案件を扱うと、生前の対策や準備の重要性を改めて痛感します。もし、代替わりを見越して共有状態を早期に解消していれば、このような複雑な事態は避けられたでしょう。また、適切な遺言を残すことで、共有関係の中の相続共有という問題の複雑化を防ぐことができたかもしれません。
こうした問題を未然に防ぐためにも、生前対策の啓発活動にも力を入れる必要があると感じます。
生前対策に力を入れて相続トラブルの回避に努める
相続分野における強みを教えてください。
29年間の検事経験と9年間の公証人経験から培われた、複合的なスキルと知識と思います。
検事の経験により、事実を調査して突き止めていく能力が培われました。法廷では何より証拠が重要です。たとえ事実であっても、それを裏付ける証拠がなければ意味をなしません。事実を見極め、それを立証するために必要な証拠を集める。この、真実は何かを見極め、それを証明する証拠を見出す調査能力は、相続問題においても非常に役立っています。
公証人の経験は、遺言・信託・任意後見の各分野において深い知識を得ることに繋がりました。状況に応じてどの制度が最も適しているかを見極め、依頼者にとって最適な提案ができます。
さらに、これまで多くの遺言書作成に携わってきた経験から、遺言を残す方々がどのような思いで作成するのかを理解しています。依頼者が相続について何を考え、何を意図しているのか、その心情を汲み取ることができる点も強みだと考えています。
最後に、相続問題で悩まれている方へメッセージをお願いします。
相続問題はさまざまな形で悩みを抱えるものですが、1人で悩まず、ぜひ相談に来ていただければと思います。
悩みをざっくばらんに話すことで、解決の糸口が見つかることがあります。自分の気持ちを話すことで問題の見え方が変わり、気持ちが楽になることもあります。
弁護士は対立を煽ることを目的としているわけではありません。依頼者がより良い解決策を見つけ、納得のいく結果を得られるようサポートすることを目的としています。
まずはお気軽に相談に来てください。相続問題が解決することで、今後の人生をより穏やかに過ごせる一助となれば幸いです。