「相続の方法は一つではない」依頼者の話を傾聴してオーダーメイドの解決を目指す
依頼者一人一人に合わせたオーダーメイドの解決を理念とする東京都調布市「シャローム法律事務所」の井堀哲弁護士に、事務所設立の経緯や相続案件への取り組みについて聞きました。感情が複雑に絡む相続問題においては、「関係者の話をしっかり聞いて、共感することが大切」とのこと。相続問題を扱う際に心掛けていることや弁護士に相談するメリットについてもお話しいただきました。(第二東京弁護士会所属)
インタビュー
依頼者の平和を回復する弁護士事務所
事務所設立の経緯を教えてください。
元々は新宿区にある弁護士事務所で働いていたのですが、出身地である多摩地域でリーガルサービスを提供したいと考えて独立しました。以前の事務所は弁護士が10人以上所属する中規模事務所ゆえに活気があって賑やかだったのですが、事務所内の意思疎通に時間と労力を要することが多かったため、新しい事務所はコンパクトでアットホームな事務所にしたいと思い、少人数の事務所にしました。
事務所名の「シャローム」はヘブライ語で「平和」を意味します。弁護士事務所に相談に来る方は、家庭や職場での問題や経済的問題によって、生活の安定が損なわれている方が多いです。そうした方々の平和を回復するための手伝いをしたいという思いから、シャロームと名付けました。
事務所の理念や大切にしていることを教えてください。
オーダーメイドの解決を目指しています。大量受注大量解決を目標にしてしまうと、一つの事件に割く時間が短くなり、型にはまった対応になってしまいます。そうならないように、一件一件時間をかけて依頼者の話を聞き、その人に合った解決をすることが、当事務所の理念です。
また、依頼者と話をする際は親身になって聞き、共感することを心掛けています。「アットホームな事務所にしたい」という話をしましたが、弁護士やスタッフだけではなく、依頼者との関係においても、そうありたいと思っています。
相手方の話をよく聞くことで双方に理想的な解決を目指す
相続分野ではどのような相談がありますか?
遺産分割協議の相談や遺留分に関する相談、相続放棄や遺言作成など幅広いです。遺言の無効を訴えたいという相談もあります。
相続案件を扱う際に心掛けていることはありますか?
事前説明をしっかりすることです。弁護士を代理人に立てれば、相手との関係に軋轢が生まれることもあります。一般の訴訟であればそれも構わないかもしれませんが、相続案件は基本的に家族の問題ですので、事件終了後も関係は継続します。もちろん、円満な解決を目指して最善を尽くしますが、相続案件は解決まで時間がかかることが多く、依頼者に精神的な負担がかかるため、心構えのための説明をしっかりすることが大事だと思っています。
また、依頼者の中には自分の権利を把握していない方がいます。例えば、日本の古い風習である家督相続の考えが今も残っていて、「長男以外は相続できない」と思い込んでいるケースです。現在の法律に則った相続の方法や依頼者の権利をわかりやすく丁寧に説明することも大事だと考えます。
相続案件では関係者の感情の対立などもあると思いますが、感情的な問題にはどのように対応していますか?
話をよく聞くことに尽きると思います。思っていることを全て話してもらい、依頼者の立場に立って考え、最適だと思える解決策を提案します。
中には依頼者の希望に沿った解決が難しいケースもあります。そのような時に「法律で決まっているから」と頭ごなしに否定しても、依頼者の納得は得られません。依頼者の気持ちをしっかりと受け止めた上で、法律に落とし込める問題と落とし込めない問題を分けて説明することが大事です。
相手方に対しても同様に、話をよく聞くことが大切だと思います。依頼者の要望を一方的に伝えるのではなく、仲介役になって双方の考えをまとめることが、早期円満解決に繋がることもあります。
「相続は歴史であり、ドラマである」
相続問題を弁護士に相談するメリットにはどのようなものがありますか?
紛争やトラブルが起きた時に相談するのが弁護士だと考える方が多いと思いますが、弁護士に相談するメリットはそれだけではありません。
例えば、遺産がどれだけあるかわからない時に、弁護士の調査力を使って明らかにできることがあります。あるいは、紛争になっていなくても、遺産をどのように分割するのが良いか相談することも可能です。
不動産のように単純に分けられない財産がある場合、いろいろな遺産分割の方法が考えられます。そのような時に、依頼者のニーズに合わせた方法を教えてもらえることも、弁護士に相談するメリットだと思います。
相続案件を手掛けていて、やりがいに感じることはありますか?
相続というのは、「歴史であり、ドラマである」と感じます。亡くなられた方が築いてきた人間関係や財産があり、その財産を巡ってドラマが繰り広げられる。弁護士はそのドラマをハッピーエンドに導くためのシナリオライターのようなものだと思います。
良いシナリオを書くには、知識だけでなく想像力や表現力など、クリエイティブなスキルが必要とされます。自分が持っているスキルを全て注ぎ込んで、主人公である依頼者が笑顔で終わる物語を書く。それが相続案件のやりがいです。
また、相続案件は解決までに時間がかかることが多いため、依頼者との信頼関係が深まります。それだけに、無事に解決して依頼者から感謝されると、喜びも大きいです。
最後に、相続問題で弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
「問題が起きてからでないと相談してはいけない」と思われる方もいるかもしれませんが、そんなことは全くありませんので、気になることがあればご相談ください。
「相続の手続きって何をしたらいいのだろう?」という相談でも構いません。相談したら弁護士に依頼しなければいけないということもありません。ご自身で手続きを進める上での相談役になることもできますので、どうぞお気軽にご相談ください。